昨年7月に音楽活動20周年を迎え、今年7月には芸能活動25周年となる節目を迎えた柴咲コウが、自身の誕生日当日である85日(土)に東京・ビルボードライブ東京にて、柴咲コウ MEMBERSHIP“KO CLASS”限定のバースデイパーティー『GIFT』を開催した。

昨年は東京・ビルボードライブ東京と大阪・ビルボードライブ大阪の2会場で12公演のバースデーライブ『KO SHIBASAKI Birthday Party 2022 HINOMIKO UTAGE ~陽の巫女の宴~』を開催。柴咲コウは、自身の誕生日を「ファンのみなさんに感謝を伝える日」と位置付けており、今年も2年連続でのバースデーライブを企画し、85日(土)に東京・ビルボードライブ東京、810日(木)には大阪・ビルボードライブ大阪で各2公演が行われた。ライブはもちろん、気になる近況報告や年表の振り返り、サイコロトークや朗読した手紙の手渡し会など、バラエティに飛んだ構成となっており、俳優、声優、歌手、アーティスト、環境特別広報大使と様々なフィールドで活躍する彼女の多面的な魅力と素顔を全方位から堪能できる、歌手デビュー20周年イヤーの締めくくりにして、芸能活動25周年の幕開けに相応しいスペシャルなステージとなっていた。本稿では東京公演の模様をレポートする。

開演時間となり、客席後方から柴咲が姿を表すと、場内からは大きな拍手と歓声が湧きあがった。笑顔で手を振りながらステージに上がると、改めて満員の客席を見渡した後、ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌として多くの人に親しまれている「かたち あるもの」をそっと歌い始めた。その歌声に次第に切実な祈りにも似た力が込められていき、やがて観客の“生と愛”に寄り添い、見守るような温かい視線で会場全体を満たしていった。

1stセットの最初のMCでは、「歌だけでなくて、いろいろと思い出を振り返りながら、皆さんと交流できる機会ができたらいいなと思っています」と語り、2ndセットでは「皆さんに歌とトークで癒しを与えられればいいな、何かのギフトが届けられたらいいなと思った」と本イベントに込めた思いを解説。続いて、「21年目に入った音楽活動を続けるきっかけになった大切な曲です」という言葉とともに、2003年に公開された映画『黄泉がえり』の主題歌で、自身の役名であるRUI名義でリリースして大ヒットした「月のしずく」をドラマチックに歌唱。楽曲の中の物語に引き込むパワーが凄まじく、最後に歌い終えた彼女を照らしていたライトが消え、ステージ上が真っ暗になった瞬間は、まるで映画のクライマックスを見ているかのような驚きと余韻が残った。改めて、シンガーであり、アクターでもある彼女にしかなし得ない魅力がはっきりと伝わってくるシーンとなっていた。

ここでステージ後方にスクリーンが降り、トークコーナーへ突入した。スクリーンに映し出される写真や映像を見ながら、まず、最初にとある撮影でフランスに2ヶ月半滞在していたことを報告。続いて、声で出演したジブリ映画『君たちはどう生きるか』については、「夢のようなひと時でした。小さい時から宮崎監督のアニメを見ていたので、憧れの人にアドバイスをいただきながら声でお芝居ができたことは本当に光栄でした」と喜びを口にした。そして、2017年に放映された大河ドラマ「おんな城主 直虎」で主演の直虎を演じた際のロケ地だった浜松に6年ぶりに訪れ、棚田の田植えを体験し、映画『黄泉がえり』を撮影した熊本県阿蘇市の国立公園にも環境特別広報大使として訪れ、「私の人生では出会えないような人や景色との縁が、役柄や物語を通じて広がっているような気がして、やっていて良かったなと思います」と感慨深げに語った。

MCとしてラジオDJのトムセン陽子を迎えた<活動年表振り返り>のコーナーでは、「過去を振り返るのが苦手」という柴咲の25年に渡る歴史を回想。「14歳でスカウトされて、2年後に事務所に所属。一番最初の仕事はTBSの番宣番組『倶楽部6』(1998年)だった」という始まりから、1999年に化粧品のCMで話題となり、映画『バトル・ロワイアル』やドラマ『Dr.コトー診療所』に出演した際の心境などを語り、2002年にラジオの企画から始まった歌手活動については、20048月にリリースした6枚目のシングル「かたち あるもの」まで、「忙しすぎて、ジャケットの撮影をしてない」ことを明かすと、客席からは驚きの声が上がった。

さらに「月のしずく」については、「ちょびっとだけ映像を早くやっていたので、役の表現の方がしやすかった。RUIそのものになり、その人の感情で歌うことができたし、そこから私には歌とお芝居の循環が必要なんだなって軸が生まれた」と語り、2007年の初ライブで「人前で歌うことでエネルギーの交感になる」ことに気づき、大河ドラマ後の2017年の秋に池上本門寺と平安神宮で行われたライブで「確固たる信念を持ちながら大義的なことを表現していく始まりになった」と振り返った。

2ndセットでもデビューから現在に至る柴咲コウを「アクター」と「シンガー」の両面から掘り下げたが、もっとも心に残ったのは、年表を振り返った後、サイコロトークの<衝撃的だった制作秘話>というテーマで飛び出した、20114月にリリースされた23枚目のシングル「wish」のMV撮影に関する秘話だった。当時、ハリウッド映画『47RONIN』の撮影のためにイギリスに滞在していた彼女は、帰国した翌日に東日本大震災が起こり、そして予定されていたMV撮影が中止となった。「撮れなかったという事実がありました。映像とともに音楽を届けることがみんなに対する感謝の気持ちだと思ってて。そこが完結できなかったことが、ずっと自分の中に残ってて。その思いを昇華するために、ツアーで歌を届け、パフォーマンスで伝えていくということにつながってます」と吐露。「これからも何が起こるかわからないけど、私は音楽も映像も心の栄養だと思っているし、荒んだ心を揺り動かしてくれたり、勇気をもたらしてくれたりした経験があるから、元気な限りまだまだ続けていきたい」と決意を表明すると、場内は感動の拍手で包まれた。

次のブロックでは、ファンから事前に募集したリクエストに応え、1stセットではドラマ『Dr.コトー診療所』の主題歌である中島みゆきの「銀の龍の背に乗って」、2ndセットでは福山雅治とのユニットKOH+による最新映画『沈黙のパレード』の主題歌「ヒトツボシ」を歌唱。歌の前には、投票してくれたファンによるエピソードを紹介したが、思いを乗せて歌うという彼女のシンガー/アクターとしての魅力が大いに感じるパフォーマンスであった。

そして、コロナ禍を思い返し、「皆さんの体温やエネルギーを感じられないことはすごく切なかったし、ちょっと孤独でした。だから、みんなからの声を聞きながら、歌えることはなんて贅沢なんだろうと思います」と話し始め、今年の秋にこれまで俳優として出演してきた作品の主題歌や挿入歌をカバー、そして、自身が担当した楽曲も収録した『柴咲コウACTOR'S THE BEST Melodies of Screens~』のリリースとツアー『柴咲コウ CONCERT TOUR 2023 ACTOR'S THE BEST』の開催を発表。アルバムについて「映像と音楽、一人の人間がやってるから、分けるのは難しいんです。映像と音楽がリンクしてくる、それが私にできるオリジナルなんじゃないかな。歌とお芝居のミックス、その集大成ができればいいなと思います」と語ると、喜びと期待を込めた、この日、一番となる声が上がり、大きな拍手が送られた。

柴咲コウMEMBERSHIPKO CLASS」会員に呼びかけて、1週間で500名以上が参加したという合唱パート、そして、ポストクラシカルの雰囲気を漂わせる昨年末リリースした新曲「TRUST」を通して、<今までの記憶を抱きしめてあげたら/あなたに出逢えたの>というこの日を象徴するようなフレーズを届けた彼女は、ファンに向けた感謝を綴った手紙を朗読すると、客席に降り、スペシャルシートに座る観客一人一人の目を見つめながら、手渡しで手紙をプレゼント。そして、最後に「小田和正さんに作ってもらった、私とファンの皆さんの絆を繋ぐ曲です」と語りかけ、「ホントだよ」に込めたメッセージを真っ直ぐに聴き手の心に贈り、会場全体が温かく優しい光に包まれる中で、「心の交流ができて本当に嬉しかったです」と感想を述べ、「冬のツアーでまた会いましょう」と再会の約束をしてステージを後にした。

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