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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」 by SMART USEN



新型コロナウィルス流行の影響で、世界中の人々の暮らしは一変した。

友人や恋人との食事やクラブで踊るといったフィジカルな人間らしい楽しみを享受することが困難になり、仕事、プライベートを問わず家にいる機会が増えた。

人に会う、見られる機会が減るわけで、そうなるとファッションなんて快適ならどうでもいいと思ってしまうのが普通の人の思考だろう。

しかし、多くのファッションデザイナーはそんな状況を憂いているのか、今シーズンは予想以上にドレス寄りのテーラードの提案が多く見られた。

まるで「コロナ明けは思いっきり着飾って人間らしい生活を楽しもう!」と鼓舞しているかのように。

「DIOR(ディオール)」は、旧き良き時代のユニフォームや軍服に宿る男らしさと、画家のピーター・ドイグのアート作品を融合させることで、新しいドレススタイル=「キム・ジョーンズのニュールック」を提案した。
とくに目立ったのが、第一次世界大戦以前に主流だった詰襟型の式典用礼装を連想させるスタンドカラーのジャケット。フランス芸術アカデミーのコスチュームから着想を得ていると言われており、ボタンをジャケットと同布のくるみボタンにしたり、金属の紋章部分を刺繍で表現することで、過剰になりがちな要素を中和させている。

「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」は、ウエスタン、ヒップホップ、アフリカの民族衣装などの様々な要素が融合したテーラードを提案した。
クラシックなダブルブレストのチェスターコートは、レッドカーペットを歩くためのドレスのような床に引きずる長さ。テーラードスーツにはウエスタンブーツや大きなバックルのウエスタンベルトを合わせ、相反する要素を大胆に組み合わせている。

旧き良き時代のF1の華やかで貴族的なカルチャーに焦点を当てたのは、パリの新鋭ブランド「カサブランカ」。
鮮やかなオレンジや淡いピンクのスーツは、パンツの裾が程よくフレアしていて70sのムードが色濃く漂う。今シーズンから本格的にスタートするウィメンズも話題を呼びそうだ。

日本でも人気が出てきている「HED MAYNER(ヘド メイナー)」は、上襟とショルダーラインが一直線に斜めに繋がった個性的なテーラードを提案。デザイナーの出身地であるイスラエルの民族衣装を連想させるルックも新鮮に映った。

ドイツ・ベルリンを拠点とする「GmbH(ゲーエムベーハー)」は、メンズながら大きくデコルテを露出したり、大きな包帯で肩と胸を巻きつけたようなディテールのテーラードを披露。ジェンダーを超越した新しさを感じた。

一方で、部屋着と外着との境界線を曖昧にする試みも多く見られた。

その代表的なブランドが「Ermenegildo Zegna(エルメネジルド ゼニア)」。
「THE(RE)SET」をテーマに、コロナ禍で人々のライフスタイルが劇的に変化し、生活と仕事の場がシームレスになった世界に相応しいテーラーリングを再解釈した。部屋着のローブとテーラードを融合させた「ローブスーツ」は、ショート丈にして軽やかなテーラード仕立てにすることで「内外共用」のシームレスな服に。同様にサルトリア仕立てのパジャマスーツも、ウィズコロナ時代の新しいテーラードとして満点の出来だ。

「FENDI(フェンディ)」は、ショールカラーのラウンジコートやパイピングを施したパジャマスーツなど、インドアとアウトドアの融合をコンセプトにしたスタイルを提案。襟の部分が袖のように長く伸びたケーブルニットなど、遊び心に溢れたアイテムもある。

日本勢では、パリの公式スケジュールでは初参加となった「KIDILL(キディル)」の評価が高かった。末安弘明のDNAに深く刻まれているパンクのテイストはそのままに、これまでは見られなかったモードの要素が加わっている。

「Children of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)」は、新世代ラッパーのHideyoshi(ヒデヨシ)とRalph(ラルフ)をフックアップし、現代日本のストリートの最先端を映像で発信した。ミラノではあまりにも異質だったが、反響は非常に大きく、イタリアのTVをはじめ100以上の海外メディアで取り上げられたという。

「doublet(ダブレット)」はモデルが後ろ向きに歩くショーを横浜のリサイクル工場を舞台に行い、それを逆再生した映像をパリの公式スケジュールで発表した。テーマは「リバース(再生)」。「潰したものが復活する過程を逆再生して見せることで、コロナ禍でも前進するという前向きな気持ちを表現した」とはデザイナーの井野将之の弁。

日本では初めてのランウェイショー形式での発表となった「kolor(カラー)」は、その模様を少しの時間差で動画で配信した。様々なアイテムを融合&コラージュしたり、アイテムの境を超えて侵食するような阿部ならではのテクニックは、 ハイブリッドという一言で形容するのが陳腐に思えるほど独創的。多くの色を使いながらも、不思議にまとまって見える色彩感覚も冴え渡っていた。



「ディオール」
?DIOR

「ルイ・ヴィトン」 Louis Vuitton / Ludwig Bonnet

「カサブランカ」

「ゲーエムベーハー」

「エルメネジルド ゼニア」

「フェンディ」

「キディル」
?Ko Tsuchiya

「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス」

「ダブレット」

「カラー」



(おわり)

取材・文/増田海治郎

増田海治郎(ますだ かいじろう)
ファッションジャーナリスト。雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める“デフィレ中毒”で、コロナ禍前の年間のファッションショーの取材本数は約250本。著書に『渋カジが、わたしを作った。』(講談社)がある。





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