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2020.06.19

ロックダウン解除後のミラノは今

2020年5月18日にロックダウン解除のフェーズ2第二段階へと移り、すべての小売業が再開されたミラノだが、以前のような活発な購買行動には、ほど遠いスタートとなった。リナシェンテをはじめとした大型小売業から個店まで、政府のガイドラインに則りつつも独自の感染予防対策を講じている。ミラノ在住20年のフリージャーナリストで、一般紙や雑誌にも数多く執筆している押田ゆきさんによるレポートをお届けする。

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新型コロナウィルス感染拡大防止措置として、3月10日から全土がロックダウンに入ったイタリア。生活必需品購入や通院以外の外出は原則禁止され、食料品店、薬局などの最低限の生活必需品の小売業以外は全て休業となった。4月14日から、子供服、文房具、書籍など、一部は営業再開が可能となっていたが、5月18日、フェーズ2の第二段階の緩和策として、ついに全ての小売業の営業再開が認められた。

5月18日の営業再開当日や、23日の営業再開後はじめての土曜日、ミラノ市内中心部の百貨店「ラ・リナシェンテ・ドゥオモ」や「ザラ」の前には行列ができた。しかし、あくまでも検温や手指消毒のためにゆっくり入店するためにできた短い列であり、客が買い物に詰めかけるという様子は特に見受けられなかった。パンデミック以前の週末は、ドゥオモ周辺のショッピング街は歩くのも大変な混雑ぶりだったが、営業再開後は予想していたよりも人出が少なく平日の午前中のような静けさ。やはりツーリスト不在や郊外からのビジター減少の影響は大きい。 その一方で、運河地区やブレラ・ガリバルディ地区など、オープンエアのカフェがたち並ぶエリアは混雑していた。ミラネーゼたちは、ショッピングよりも、人に会っておしゃべりすることに飢えていたらしい。また、州内は自由に移動できるようになったため、郊外で自然を満喫している人も多いようだ。



ドゥオモ近くのショッピングストリートは閑散としていた

営業再開初日、カフェが立ち並ぶガリバルディ地区コモ通りは、かなりの人出



ガリバルディ地区のセレクトショップ「ブル・ドゥ・ネージュ」や「エラル55」では、「大勢の顧客が、とりあえず挨拶しに訪れた」。顧客の心をつかむ個人経営店の底力は健在だ。「エラル55」では、バカンスに思いを馳せるバミューダや、テレワークのキーアイテムともなるカジュアルなシャツが売れているという。

「バールの営業も再開したし、街の偵察も兼ねてショッピングに出てきた。」という20代の男性二人組は、ロンバルディア州(州都ミラノ)では、屋外でもまだ着用が義務付けられているマスク姿。「マスクはエコ素材。おしゃれが好きだし、もともとエコやサステナビリティーには関心があったけれど、ロックダウン中に色々考えさせられて、関心がもっと高まった。もうサステナブルなものしか買わなくなりそう」。 モンテナポレオーネ通りを歩く40代の女性二人組は「まだ感染者も多いし、大規模店舗に入るには、まだ抵抗がある。」と、ウインドーショッピング中だ。



エコ素材のマスク姿の20代男性二人組

モンテナポレオーネもすいていた

「グッチ」のウインドーに張り出された感染予防のための注意書き



ロンバルディア州は、イタリアの中でも一番感染が拡大した州(6月15日現在までの感染者総数は約9万2千人)。6月半ばに入っても、新規感染者数は州全体で毎日200~300人、伊全体の85%を占める。そんな状況下での緩和政策であり、感染予防措置に関する政府のガイドラインに沿って安全を重視した上で営業再開されているとはいえ、人々は屋内のショッピングよりも、より安全な屋外活動にシフトしているようだ。

イタリアファッション連合の調べによると、ミラノでは、営業再開第一週目に95%のファッション関連の小売店が営業を再開。そのうち、66%が前年の同時期と比較して減収だとしている。減収率平均は30%。よく売れたアイテムは、下着、レディスの夏物ワンピース、パンツ、Tシャツ、ポロシャツ、シャツ、レディスのサンダルなど。支払い方法は、カードなどの電子マネーが96%。現金は、感染源として避けられる傾向があり、店も電子マネーを推奨している。

営業再開にあたって、感染防止のためのガイドラインが設けられた。主なものは以下の通り。①入店客、店員共にマスク着用、②入口で手の消毒が義務。70%以上のアルコールを含む消毒剤を店入口に配置、③店内や入店の行列の際には、1メートル以上のソーシャルディスタンスを取る、④試着の際の客への商品の受け渡しには、店員は手袋を着用、客は商品を触る際には手袋着用、⑤支払いには電子マネーを推奨、⑥レジ近くにも消毒剤を配置。POSも定期的に消毒する、⑦40㎡以下の店には、店員2名まで。客は一度に1名のみ入店可能。それ以上の売り場面積の店では、なるべく入口と出口を分け、動線を確保し、ソーシャルディスタンスを保てる入店者数に制限する、⑧密を避けるため、営業時間の延長を認める、⑨エアコンにフィルターを設置、⑩店内は一日2回清掃する。⑪試着済みの商品は、なるべく長時間、隔離して保管した上で再び売り場に出す。 この他、「入店にあたっての手袋着用の義務」「試着済み商品の消毒」などに関しても検討されたが、ガイドラインには含まれなかった。またスーパーマーケットやショッピングセンターでは、入口での検温が義務で、37.5度以上の入店は禁止だが、百貨店や小売店でもほとんどの店で検温が実施されている。

3月11日から5月17日まで全館休業した百貨店「ラ・リナシェンテ・ドゥオモ」では、政府のガイドラインを遵守し、厳密な感染防止措置が取られている。 22000㎡の売り場に、1500人の入場制限。本館、別館ともに、入口と出口を分け、入口では検温を実施。37.5度以上の人は入館禁止だ。入館にあたってマスク着用は義務。ロンバルディア州では、屋外、屋内の公共スペースでのマスク着用が義務づけられているが、万が一持参していない人には、入口でマスクを提供している。手指の消毒用ジェルを入口や売り場内に設置。商品に触れる際に着用を義務付けたビニール手袋も売り場内のいたるところに配置されている。ソーシャルディスタンスを保つよう注意を促すために、入口の行列やレジ前には、黄色の円形のシールを床に貼って距離の目安を示す。試着室やPOSは定期的に消毒。試着後、売れなかった商品は、24時間別室で隔離してから販売している。

営業再開初日の来店者数は約4000人で、ロックダウン直前よりも増えたという。しかし、パンデミック以前、5月の平日には約3万人が来店していたのと比較するとまだまだ少数。営業再開後、一人当たりの平均購入額は伸びた。 営業再開記念セールとして、50%オフのセールを開催したことも追い風となった。初日に 来店した人の6割が何かを購入し、靴、婦人小物、紳士服がよく売れたという。



「ラ・リナシェンテ・ドゥオモ」では、入口と出口を分け、入口では検温を実施。入店待ちの列でも、ソーシャルディスタンスを保つための目印が床に示されている

「ラ・リナシェンテ・ドゥオモ」商品に触れる際は手袋着用!

「ラ・リナシェンテ・ドゥオモ」店内至る所に、ソーシャルディスタンスを保つよう、注意書きが



イタリア国内に46店舗を展開するレディスウェアの「ディクシー」は、イタリアのジョエル社製空気清浄機兼スチーマーを各店に導入。空気清浄、試着済み衣類の清浄を行っている。「試着済み商品は一定時間隔離してから販売」という店が多い中、試着直後に商品全体にスチームをかけ、試着室も同様に消毒する。ガリバルディ通り店では、全商品2割引きのセールを実施中だった。

レディスカジュアルのセレクトショップ「ファルファッレ」は、入口での検温、手指の消毒をクリアすれば自由に商品を触れる。「直接触れないと素材の質感が分からない」のが理由。その代わり店内数か所に消毒用ジェルを配置。消毒が癖になったミラネーゼたちは、ジェルのボトルを見ると反射的に消毒している。同店では営業再開にあたって特にセールは行っていない。オーナーと友達感覚の常連客が多く、「オーナーの人となりを知っているし、見知らぬ人がいっぱいいる店より怖くない。ロックダウン中はインスタグラムで服の写真を見て、家まで届けてもらったほど、この店のファン。」という常連もいた。



「ファルファッレ」にて。商品の受け渡しも距離を保って



経済的不安により購買欲が鈍り、また不特定多数の人がいる店舗でのショッピングには、まだまだおっかなびっくり。その上、ずっと家に閉じこもっていた市民の興味は、ショッピングよりも屋外でのレジャーに向いている。「普通の生活に戻ろう」というキャッチフレーズのもと、緩和政策を進めるイタリアだが、「人と集う」や「密」が生活の一部となっているイタリア人が、この長期ロックダウンで受けた精神的影響は大きい。またコロナの第二波、三波を考えた時の経済的不安もある。営業再開に合わせてセールを行うなど、イタリアのファッション小売業は努力を続けているが、回復には長い時間がかかりそうだ。



営業再開セールに踏み切る小売店も多い

セレクトショップ「10コルソコモ」では、マスクの有無と体温をチェックするタブレットを導入

ランジェリーショップもセールに。なぜかサイズ別に割引率が異なり、グラマーな人ほどお得に

手にマスクをしたディスプレイは謎

伊の大型SPA「オヴィエッセ」では、1972年創業時の広告キャンペーンをウィンドーに。「1972年OVSは初めてオープン。2020年OVSは初めて再オープン」とある



(おわり)

取材・文/押田ゆき
写真/押田ゆき



押田ゆき(おしだ ゆき)
2000年よりミラノ在住。コーディネーター、ビジネスコンサルタントとして活動するほか、 日本の新聞雑誌にイタリアのライフスタイルに関する記事を寄稿している。





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