──テレビドラマ『夫婦が壊れるとき』の主題歌「WRONG」からドラマ『インターホンが鳴るとき』のエンディングテーマ「answer」、ドラマ『シークレット同盟』のエンディング主題歌「Wonderland」、ドラマ『完璧ワイフによる完璧な復讐計画』のエンディング主題歌「Crush」、そして、「breath」はドラマ「五十嵐夫妻は偽装他人」の主題歌とドラマタイアップが続いていることをどう感じていますか?
「本当にありがたいと思っています。1つの1つの作品に関われることが私にとってはすごい光栄ですし、幸せな気持ちでいっぱいです!」
──7月に配信リリースされた新曲「flashback」も平祐奈と丸山隆平がW主演するドラマ「FOGDOG」のエンデイング主題歌です。起用されることが決まった時はどんな心境でしたか?
「これまではなぜか不倫やストーカーがテーマの作品が多かったんです(笑)。もちろん、どの作品も嬉しかったんですけど、今回は初めての刑事もので“嬉しい!”って気持ちでいっぱいでした。私、サスペンスやミステリーものが好きなので。見ていて飽きないですし、次の展開が気になって引き込まれて、ついつい見ちゃう作品が多くて…今回もどういう雰囲気の刑事ドラマで、どういうストーリーなのか?って、すごく気になっていました」

──ドラマはオリジナル脚本ですね。
「楽曲制作する上でプロットを見せていただいたんですけど、“これは映像で早く見たい”って思う内容でした。ただ、楽曲を受け取った時に“今までの私とは違うテイストだな”と感じて…。だから、レコーディングする時にも、“どういうふうな歌い方をすればいいんだろう?“って考えてましたし、少し迷いもありました」
──今までと違うテイストっていうのは?
「これまではもう少しR&Bっぽい楽曲が多かったんですけど、「flashback」はちょっとフラットな感じというか、J-POP寄りになっていて。サウンド的には80年代の雰囲気を感じたので、その年代のテイスト感で歌った方がいいのかな?とか、少し声色を変えようかな?とか。レコーディング前はいろいろと考えていましたし、私の中では違うアプローチで歌っています」
──歌詞はどう捉えましたか?
「今まで歩んできた過去も大事ですけど、不安もありながらも“今を一生懸命に生きる“ってメッセージが強い歌詞だと思いました。特に<鮮やかなFlashback刻まれた/傷ついた 日々を抱きしめた 強くなれるはずと>というサビが印象的ですし、ドラマの登場人物も”今を大切に生きる“というメッセージでリンクしていると思いました」
──ご自身の心情と重なる部分もありましたか?
「ありました。ドラマで平佑奈さん演じる狗飼錐(いぬかい・きり)は“相貌失認”という人の顔を認識できない病気を抱えているし、8年前にたった一人の家族である父をある事件によって亡くしています。でも、人の表情を読み取れない代わりに優れた記憶力や五感を使って、自分ができることを精一杯やっていて。それって、まるで霧の中にいて、目の前が見えないような状態になることもあるけど、とりあえず今を精一杯生きる、みたいな気持ちで…そこは、本当に自分のことを言っているのかな?って思うくらい重なりました。だから、本当にyukaDDの楽曲らしいなって思いました」
──忘れられない過去に引きずられてしまっている人はどうしたらいいでしょう?
「いくら過去のことを考えたところでどうにもならないですし、過去は変えられないですから…。忘れることはできないかもしれないですけど、気にしなようにすることが1つの手段だと思います。誰にだってあることなので、「flashback」を聴いて、少しでもいいから“前を向いていく”、“今を生きる”って意識にすることが大切なんだと感じてほしいです」

──歌詞は音源とドラマ版では違っていますよね。
「そうなんですよ! “レコーディングで2パターン、歌ったな“ってくらいで、初めは気づかなかったです」
──音源では<優しさは人に歩幅を合わせることとちがう/キミと出会って気づいた/曇る同じ空 見上げよう>ですが、ドラマでは同じ箇所を<同じ空を見上げて綺麗と言った二人の/思いも迷いもいつか/霧の中歩く地図になる>と歌っていました。
「実際の音源とはちがう、ドラマオリジナルの歌詞が使われているのは、テレビで流れているのを聴いて知ったんです。プロデューサーのJin(Nakamura)さんからは何の説明もなくて、サプライズでした(笑)。ただ、“ドラマとリンクさせたい”という想いが強かったので、レコーディングでも歌い方や譜割りを変えて歌ったんです。これは個人的な想像ですけど、狗飼錐(平祐奈)と猿渡刑事(丸山隆平)の2人と、山口馬木也さん演じる錐のお父さんと錐の二人を指しているのかな?って思いました」
──レコーディングはどんなアプローチで臨んだのでしょうか?
「いつもレコーディング前に“どういうふうに歌おうか?”ってかなり考えるんです。微妙な違いだったりするんですけど、それでかなりニュアンスが変わるので。だから、いろいろと考えた上で、今回は歌い方をかなり変えています。前作「breath」と聴き比べると、声質も歌い方も全然違うふうに仕上がっているので、その違いを聴き比べていただきたいです」
──まず、リズムの取り方が全然違いますね。
「難しかったです。これまでは「breath」寄りのR&Bが多かったので、今までにないイメージをどういうふうに歌おう?って悩んで。バラードなんですけど、バラードになりすぎたくなかったですし、私にとっての挑戦でした」

──オートチューンが使われている冒頭は今っぽいですけど、全体としては80年代のアナログシンセや打ち込みのビートを使ったバラードっぽい雰囲気になっています。
「そうですね。でも、私、歌謡曲も大好きで、普段からよく聴いています。だから、歌いながら、“こういう楽曲ももっとyukaDDスタイルとして増やしていきたいな”って思いました」
──歌謡曲だとどんな曲を聴いているんですか?
「私、小さい頃は演歌が好きで、演歌歌手になりたかったんです。特に島津亜矢さんの曲をよく聴いていました。テレサ・テンさんやアン・ルイスさんも好きですし、小柳ルミ子さんも好きで、今でもカラオケに行ったら普通に歌います」
──現在、26歳にしては珍しいチョイスですね。
「おじいちゃん子だったので、おじいちゃんがすごく好きでした。だから、4歳くらいの時におじいちゃんが好きな「瀬戸の花嫁」を一緒に歌ったりしていました。私にとっては思い出の曲です」
──そのお話を聞くと、「flashback」にテレサ・テンさんのニュアンスが少しあるかもしれないですね。Jinさんからは何かディレクションありましたか?
「ドラマは刑事ものですけど、皆さんハンデを抱えていて。霧がかかっている状態だけど、もがきながら前に進むストーリーなので、そこを自分と重ねる想いで歌ってほしいというディレクションしていただきました。そこが肝だと感じでいたので、“絶対に崩しちゃダメだ”という想いで歌いました」
──実際にドラマのエンディングで流れたのを見たときはどう感じましたか?
「“お、流れてる! すごくいい感じだな!”って(笑)。毎回、役者さんの演技やドラマのストーリーと相乗効果的になっているといいなと思いながら、流れるたびにドキドキしています。しかも、話数が進むごとに、“えっ!? ここで終わるの?”って感じで終わるじゃないですか。どんどんハラハラする部分が多くなってきて、“見応えがあるなぁ”って思っています。ドラマの視聴者の皆さんにも、「flashback」とともに楽しんでもらえているといいなーって思いながら見ています」
──8月末には「flashback」のMVも公開されましたが、ドラマの監督がMVも監督していますね。
「ドラマとすごくリンクした楽曲だったので、MVもドラマ『FOGDOG』の世界観とリンクさせたいという想いがあったので、ドラマの制作スタッフさんが再集結してくださいました」
──しかも、ドラマのオープニングと同じくビデオカラオケ風の映像ですね。
「監督から最初に“昔のビデオカラオケを意識したイメージで撮るよ”っていうアイデアが送られてきました。私はあまり見たことがなかったので、昔のビデオカラオケの映像を見るためにカラオケに行きまくりました(笑)。ドラマ風になっているけど、セリフは音で出ないから、表情で伝えるしかなくて。オーバーにやった方が伝わるのかな?とか、自分なりに考えながら撮影に向かって。撮影現場ではこれまでとは違う緊張感がありました。ドラマの監督さんやスタッフさんがいますし、演者さんもいらっしゃって。ドラマの雰囲気は絶対に壊したくなかったので、すごくドキドキしました」
──撮影はどうでしたか?
「平さんや、錐の幼馴染役の福山翔大さんが演技していらっしゃるのを間近で見させていただきました。私も少しなんですけど、出演させてもらって…」
──共演と言っていいですよね。
「自分もドラマに参加できているようですごく嬉しかったです。自分の楽曲のMVで役者さんが演技をされているっていうのも嬉しかったですし、現場では平さんと福山さんが気さくに接してくださって。私、演技をするのがすごく苦手なんです。演技っていうほどの演技じゃない、ちょっとした役だったんですけど、すごくドキドキしていて…」
──占い師役ですよね。
「はい。ほんとうにお二人が気さくに接してくださったので、無事に撮影を終えることができました(笑)。平さんには“DDさんの歌、素敵です”って言ってくださって。嬉しかったんですけど、あまりにも緊張していたので、どんな会話をしたのかは覚えていません(笑)。とにかく、目の前で演技しているっていうのに“すごいなぁ”と思いましたし、ドラマの世界観と一緒になれている実感ができて、完成がすごく楽しみでした」
──完成したMVを見てどう感じましたか?
「“ドラマの中に入っている!”って思いました。平さんや福山さんをはじめ、本当に豪華なキャストさんたちに恵まれていて。あと、MVでは、ドラマとは違うところにフォーカスしていて、ドラマでは描かれていない部分を描いているんです。特に、錐がお父さんと再開するシーンはじんわりと感動しましたし、泣けてきます」
──なんだか心がほっこりするドラマになっていました。しかも、海でスイカを割るシーンがありましたね。7話でスイカを食べているから、あのスイカかな?って。
「そうなんです! 食べていましたね。確かにそのシーンともリンクさせているのかな…“監督、すごい!”と思いました。ドラマも見応えありますけど、「flashback」のMVもとても素敵に仕上がっていて、すごく見応えある作品になっているので、いろんな人に見て欲しいです」
──ドラマはまもなくクライマックスを迎えますね。
「あっという間でしたよね。本当に見応えあって、ハラハラドキドキなシーンがたくさんあって。目が離せない内容になっていると思うんですけど、果たしてどういう感じで終わるのか? 私も皆さんと同じタイミングでドラマを見ているので、展開はまだ分かっていないんです。だから、どういう終わり方をするのかが楽しみです」
──ドラマを見て、初めてyukaDDさんを知った方に、既発曲の中でお勧めするなら、次はどの曲を聴いてもらいたいですか? yukaDDの沼にハマらせる曲を教えてください。
「全部お勧めなんですけど、「BAD CANDY」(2021)と「HIGH SCHOOL FUNK!!!」(2017)、初期の2曲が“これぞyukaDD!”というスタイルだと思います。まずはこの2曲を聴いていただけると嬉しいです」
──「HIGH SCHOOL FUNK!!!」はインディーズデビュー曲で、今から8年前、18歳の頃の曲ですね。
「そうです。初めてyukaDDとしてレコーディングした思い出深い曲です。「HIGH SCHOOL FUNK!!!」も「BAD CANDY」も英語詞なんですけど、もともと洋楽が好きで歌っていたので、私が大好きなサウンドになっていますし、yukaDDスタイルですね」

──ちなみにルーツになっている洋楽アーティストというのは?
「小学校3年生の時にクリスティーナ・アギレラに出会って。私、小さい頃はテレビっ子だったので、ずっとテレビを見ていたんですけど、当時好きだったテレビ番組『ザ!世界仰天ニュース』のエンディング・テーマとして、クリスティーナ・アギレラの「エイント・ノー・アザー・マン」が流れて…最初は誰が歌っているか分からなかったんですけど、“すごく太い声が流れているな”と思いました。誰なんだろう?と検索したら、アギレラでした。そこからすごくハマっちゃって。当時はまだ演歌を歌っていたんですけど、“こういうジャンルもあるんだ!”と思って、演歌からシフトチェンジして、そこから洋楽を歌うようになりました」
──「HIGH SCHOOL FUNK!!!」と「flashback」は対照的ですよね。
「そうですね。でも、エイティーズサウンドも大好きなので、どんどん幅を広げていきたいという気持ちがあって。それが、この「flashback」で確立できたんじゃないかな?って思うので、いろんな人にyukaDDにハマってほしいです」
──今後はどう考えていますか?
「最近はライブ活動を積極的にしているんですけど、日本全国、いろんなところでライブをしていきたいと思っています。「flashback」でyukaDDを知ってくださった方にも来ていただきたいです。ライブに来ていただけると、きっとハマると思う…というか、ハマらせますので(笑)。ぜひ、生で歌っているところを見に来てほしいです」
──近々では9月19日(金)に東京・下北沢440でのワンマンライブが控えています。
「ワンマンライブをやるのが久々なんです。4年ぶりぐらいなんですけど、今回は入場無料のフリーライブです。久しぶりということで、遠方から足を運んでくださる方もいるでしょうし、タイアップで知って、初めて見に来てくださる方もいると思うんですけど、皆さんに楽しんでもらえるようなライブにできるように頑張ります!」
──オープニングアクトとして、都市ボーイズのはやせやすひろさんの出演が発表されていますね。
「私、怪談が大好きなんですけど、実は最近、MCで怪談話をさせていただいていて。こう見えて霊感があるんです。本当の体験談をMCで話させていただいているんです。だから、歌だけじゃないんですよ。そっちの面でも楽しめます。最近、怪談アーティストとしてやっていこうかな?って思っていて…」
──あははは、怪談アーティストになる?
「はい。頑張っています。都市ボーイズさんのYouTubeチャンネルも好きで見せていただいていたので、今回、思い切ってオファーさせていただいたら、本当に来てくださることになったので、すごく楽しみです。私も一緒に出て話をさせていただくので、怪談が好きな人にも来ていただきたいです」
──実体験を話すということですよね?
「そうです。怖がりなのでホラー系の作品を見るのは得意じゃないんですけど、リアルで見ているのでネタはすごくあって。私、寄っていきやすいんですよ。常にお守りの数珠を持ってないと不安なんですけど…」
──「flashback」の制作の現場で何か怖い体験はありましたか?
「なかったです。現場もクリアな場所でしたし、気持ち悪い場所はなかったです。でも、今、インタビューしているこのスタジオ、ちょっといますよね?」
──…終わりましょう! ありがとうございました!

(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/中田智章
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

yukaDD ワンマンライブ『I Can’t Stop Singing!!!』
2025年9月19日(金) 開場/開演:18:30 / 19:00 SOLD OUT
会場:下北沢440
オープニングアクト:はやせやすひろ