──前作「Palette Days」から6ヶ月ぶりとなるニューシングル「Majestic Catastrophe(読み:マジェスティック カタストロフィー)」がリリースされます。まず、ご自身もエムル役として出演されるTVアニメ『異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~』のOP主題歌を担当する心境から聞かせてください。

「このアニメの世界観が好きなので感無量という気持ちです。私はコミカライズも読ませていただいているんですけど、キャラクターたちのいろんな表情が見れるのが楽しいですし、物語にすごく引き込まれて。だから、私も“OP主題歌で皆さんを邪悪と平和を融合させた世界に誘えるよう素敵な曲にしよう!”という気持ちになりました」

──“邪悪と平和を融合させた”というTVアニメ『異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~』はどんな作品ですか?

「ちょっとひと筋縄ではいかないような作品です。すごくカッコいいバトルシーンもあれば、ダークで不穏な空気感も漂ったりして。私は“緩急がある作品だな”と思っています。息をのむようなシーンがありつつ、クスッと笑える癒やしもあって、そのコントラストが面白くて。ヒロインの“汚泥のアトゥ“は圧倒的強者である主人公の”伊良拓斗“のことが好きすぎて、ちょっとキャラ崩壊しちゃうくらい可愛い一面も見れるので、本当に邪悪と平和を兼ね備えた作品だと思いました」

──佐々木さんが演じるダークエルフの“エムル”はどんな役柄ですか?

「眼鏡をかけた見た目通りに真面目で、事務作業を一生懸命に頑張るような健気女の子です。マイノグーラという国家のために自分は何ができるんだろう?ということを常に考えて…いつも汗汗しています。でも、一生懸命過ぎて、少し心配性かな。でも、エムルちゃんもすごく表情豊かだったんですよ。初めて食べた果実の美味しさに感動したり、拓斗に褒められて大号泣したり。そういう一面がすごく可愛くて、応援したくなるようなキャラクターだと思います」

──ご自身と通じている部分はありますか?

「すぐに表情に出ちゃうところは似ているかもしれないです。でも、エムルのようにいろんな物事を冷静に計画的に、まるでコンサルタントのようにちゃんとまとめることはできないかな。周りの人をよく見ているっていうところも見習いたい部分です」

──そんな異世界ファンタジーのオープニングを飾る「Majestic Catastrophe」を最初に受け取った時はどう感じましたか?

「内に秘めた闇の感情をさらけ出すのにぴったりのダークな曲なので、“早く歌いたい!” という気持ちになりました。私は普段、穏やかな性格なんですけど、曲ごとに自分の知らない自分の一面を解放できるのが好きなので。この曲は、まさに新たな世界の頂点に君臨するような強靭な存在というか、得体の知れない強者として歌える曲だと思ったので、もう楽しみでしたね。“早くレコーディングしたい”という気持ちでいっぱいでした」

──サウンドはヘヴィでラウドなシンフォニックメタルです。今までの音楽活動の中で新境地って言っていいですか?

「そうですね。もちろん、ロックはたくさん歌ってきましたし、闇を纏った曲や自分の中の黒い感情を歌った曲もあったんですけど、ここまでダークで、しかも、オペラというか、ゴシックというか、コーラスもクワイヤーのように重厚な曲は佐々木李子としては歌っていなかったので、新たな気持ちで挑みました」

──歌詞はどう捉えましたか?

「まず、“作品にもぴったりなフレーズが多いな“って感じました。アフレコの時にも思ったんですけど、台本のセリフが難しい漢字やゲーム用語のカタカナが多かったんです。エムルちゃんがいろんな事柄を説明するような役柄でもあったので、それを思い出しました。例えば、”<それすなわち>を漢字で書くと<其れ即ち>ってなるんだ“とか…。<贖い>も自分でも調べながら、カッコいい世界にぴったりですし、ちょっと厨二心をくすぐられる素敵な歌詞だと思って。あと、ダークで力強さがありながら、ところどころに光や希望が散りばめられている気がしました。サビでは<善き心などいらない/何も救わないなら>と歌いながらも、サビ終わりでは<愛すべき仔たちよ/安らかな今日の御胸にあれ>って包み込むような部分があって。特に好きなフレーズはDメロなんですけど…」

──<唯一 君へと/切実に願うこと/真っ直ぐに/ただ生き抜いて欲しい>ですね。

「強さの中に切なる祈りがあって。だからこそ、強者になれるんだと思うんです。人って余裕や強さがあるからこそ、優しくなれたりするじゃないですか。その闇と光は切っても切れない…表裏一体でどちらも存在しているんだなって。そこがお気に入りです」

──ご自身の心情や経験と重なる部分もありましたか?

「私は悩んだりするとどこまでも落ちていっちゃう性格で…。でも、そこで感じた悔しさや絶望、挫折、後悔をパワーに変えています。辛い感情も無駄にしたくないって思います。この歌詞も大変なことを乗り越えていて、闇に染まったけど、ありのままで、闇を極めて進もうっていう。そこがすごくカッコいいと思いました。今後、自分が落ち込んだり、心を閉ざしちゃった時はこの曲を思い出したり、歌ったりして、その感情を無駄にせずに進もうって思えるので、そこはすごく共感します」

──闇に落ちながらも、<常闇を纏う強さ>を持って光に向かって進んでいますよね。

「そうですね。闇だからこそ、微かな光が眩しく感じる。それは、自分の人生でも思うことがあって。すごくしんどかった分、少しの幸せが大きく感じられたりします。そういうところは、同じように悩んでいる人とかがいたら、この曲を聴いて、少しでも踏ん張れる力になれば嬉しいです」

──タイトルの「Majestic Catastrophe」はどんな意味と捉えましたか?

「そのまま訳すと<荘厳なる破滅>ですよね。言葉だけ聞くと、ただ壊しているという怖いイメージもあるんですけど、破壊から生み出される新たな境地っていうものもあると思います。例えば、“固定概念にとらわれずに、どんどん突き進んでいこう“って気持ちになれたりとか。いろいろな経験を経て、新たな境地に立つには、それなりの犠牲が必要なのかも…と思ったりもして。うん、好きですね、この感じは。タイトルも作品の世界にぴったり合っていると思います」

──歌入れはどんなアプローチで臨みましたか? 誰視点で歌っていますか?

「佐々木李子なんですけど、自分の想像する、新たな世界に君臨する、得体の知れない神のような存在というか…創造神のような気持ちで歌いました。冒頭の<惨状ヲ!叫喚ヲ!与え、行け───>は世界に君臨する者からの叫びですよね」

──世界を破滅に導く邪悪国家と呼ばれる マイノグーラの国王が乗り移った感覚ですか?

「いえ、自分自身がパワーアップしたようなイメージです。この世界を俯瞰して見ているような感覚で。“私についてきなさい”っていう圧倒的な存在感と余裕感。そこは、自分自身なんですけど、その世界に浸って、闇の神になったような気持ちで歌いました。コーラス部分はその世界の住民たちの声です。共に戦いに行くような激しさがあるので、聴いていてテンションが上がると思うんですけど、あのコーラス部分は…」

──オペラのような多重コーラスとなっている民衆の声も佐々木さんがやっているんですね。

「はい。元々はコーラスの方にお願いする予定だったんですけど、私がこの曲を好きすぎて、コーラスも勝手に練習してきちゃって。“試しにコーラス部分も李子の声でやってみよう”って言ってくださって。そうしたら、“いいね、挑戦してみよう”ということになって。クワイヤーのようにこんなに重なるコーラスで、ファルセットの部分は神経を研ぎ澄ませて歌わせていただきました」

──声楽のソプラノの人の声ですよね。

「そうですね。いつもメインで歌っている時の声の出し方とは少し変えて…民の気持ちで、国王を崇拝しているような気持ちで歌いました」

──実際にアニメのオープニングの映像に楽曲がついたものを見て、どう感じましたか?

「テレビの前で感動しました。主人公の伊良拓斗も微笑んでいたと見せかけて、ちょっとバグが起こったような演出で、黒い存在になったりして。そこに鳥肌立ちました。映像を歌詞にも合わせてくださって、サビの部分では、より臨場感があるバトルしているようなシーンになっていて、その激しさをアニメーションでも表現してくださって嬉しかったです」

──ご自身のMVも公開されています。

MVも“黒りこち”と“白りこち“で2種類の衣装を用意していただきました。光の方は儚げでどこか寂しげな表情で目を閉じて、想いを馳せています。”それでも祈る“というような、繊細な表情の作り方をすごく意識しました。逆に闇の方は、もう覚悟を決めて、世界を統べるものとして、その地に立っています。いろんなシーンを撮らせていただいたんですけど、サビのシーンでは、赤いレーザーのような照明を使って楽曲を全身で表現しました。何の打ち合わせもなく、思いつくままにひざまずいたり、ちょっと回ってみたりしたんですけど、カメラマンさんも私の動きにあわせて動いてくれて、ライブをしているような気持ちで、自由に楽しみながら撮らせていただきました」

──撮影場所はどこだったんですか?

「もう使われてない廃虚のような工場でした。いろんな機械がさびついたまま残っていて。あの空気感は初めてでした。“なにかいるんじゃないかな…?”って雰囲気も感じたりして。ちょっと埃っぽいのもこの曲の世界観に合っていましたし、あの場所に入った瞬間にもうMVのイメージができていました。“ここで表現しよう”っていうふうにテンションも上がりましたし、私が演じているエムルちゃんはダークエルフで、エルフたちがたくさん登場する作品なんですけど、本当にそういう存在らしき生き物と出会いまして…」

──ええっ!?

「コウモリなんですけどね(笑)。動画を撮っていた時に、すっと横切りました。「Majestic Catastrophe」の雰囲気に引き寄せられたのかな?とか思って、驚きつつ嬉しくなったりしました」

──カップリング曲についても聞かせてください。2曲目「豪華絢爛祭」も速弾きから始まる江戸風味のファストポップロック調になっています。

「激しいロックで、ギラギラした華やかさもあって。タイトル通り、お祭りっぽい雰囲気もありますし、初めて聴いた時はもうちょっと震えました」

──歌詞はどう捉えましたか? 

「作詞をしてくださったSkipjackさんが“こういう想いを込めました”って説明も一緒にくださったんです。サビに<芍薬>や<牡丹><百合の花>が出てくるんですけど、どれもすごい生命力が強いお花で。ほんとうに力強さがあるお花のような1曲だと思うんですけど、咲き誇るまでにどれだけ苦労をしたか…。“その生きざまが一番美しいんだよ”って歌っている曲です。側だけじゃなくて、中身を見てよっていう」

──<もう美しいかどうかにこだわらない/本当に美しいべきは生き方>ですね。

「そこは、歌詞を読んでいても泣きそうになるくらいでした。自分の自信や勇気が奮い立たされるような歌詞で、とても大好きです。<泥まみれの小さな蕾>もそうです。いろいろな苦労も経て、それでも諦めずに力強く咲く花たち。私もそうなりたいです。自分の理想の形というか…“こうなりたい”っていうフレーズがたくさん詰め込まれた1曲だと思います。歌っていてもパワーが出てきますし、自信がなくなりそうになったときに聴きます」

──“美しい人の魅力的な姿”を表す言葉をモチーフにしていますが、佐々木さんご自身はどんなものが美しいと感じますか。

「私はこの曲のように生きざまだとやっぱり思います。まだまだ勉強中なんですけど…私は自分に自信を持てないタイプなんです。すごく不器用だから、人が当たり前のようにできることができなかったり、言葉にするのも苦手なので。でも、ちょっと拙くても気持ちって伝わるはずだから。カッコつけずにありのままでいることが美しさかな?って思います。その自分を好きになれたら、それでいいと思います。他の人になんて思われようが、自分がどう思うか。そこは忘れちゃいけないと思います」

──今は自分を好きでいられていますか?

「はい。いろんな方と出会って、特にここ最近、考え方が変わってきました。いろんなことをうまくできない自分を許せなかったり、人と比べてしまったりした時期もあって。でも、そんなときにファンの方やスタッフさん、みんなが味方でいてくれました…“りこちゃんのいいところはもっとあるよ。人にできないこともいっぱいあるよ”とか。そういうふうに言ってくださる方に恵まれたおかげで、「豪華絢爛祭」の気持ちがすごく共感できます。“生きざまで私は見せていこう“って気持ちになります」

──そして3曲目「詩をまく者」は佐々木さんご自身が作詞をしていますが、まさにそんな想いが入っていますね。

「はい。「豪華絢爛祭」はもう咲き誇っていますが、「詩をまく者」はまだ種の状態で始まっています。夢を追って頑張っている…苦労をしているというか、もがいている過程の想いを込めた曲です」

──力強く咲き誇る花とつながっているように感じますが、どんな過程を描いていますか?

「私はコツコツと努力をする人生を歩んできました…チート技みたいなのは使えないんです。路上ライブをして、ライブやイベントが満員になるように、チラシ配りをしたりとか。そういう地道なことをずっとしてきました。一生懸命に頑張って、自分で歌った動画を撮って、編集にすごく時間をかけて、慣れないことをやっても、なかなか数字が出なかったりしたこともありました。なかなか芽が出なかった頃は“どんなに頑張っても報われないんじゃないかな?”と思ってしまったりもして。でも、いろんな人に助けられながら続けてきて、今はその努力は無駄じゃなかったって思えます。そういうふうに思えるようになったのってすごく幸せなことなんだと思います。一生懸命に頑張っている中で、コロナ禍になって、自分の生きがいであるライブができなくなったときも本当に辛かったです。同じ事務所の子もグループが解散したり、やめちゃう子も多くて、自分もこの先どうなっていくんだろう?って不安になったこともありました。本当に種のような状態ですよね。土の中にいるから、未来も見えなくて、光も見えなくて…それでもスタッフさんが優しい笑顔をかけてくれていました。その笑顔もちょっと辛くなっちゃうときもありましたし、いろんな人と比べちゃったりもしたんですけど…」

──先ほども言っていたことですよね。

「はい。それでも、ファンの人やスタッフさんが応援というか…愛をくださるので、だんだんと“その愛を養分にして咲きたい”、“まだまだ夢を持って進もう”って思えるようになりました。以前は、“もう終わっちゃったほうが楽になれるかも”と思ったこともありましたけど、今はもう絶対終わらせたくないです。ずっと歌い続けていたい。もしかしたらまた辛いことがあるかもしれないですけど、それでもいいんです。“絶対に乗り越えられる“っていう気持ちが変わったことがすごく幸せで、絶対に忘れたくない気持ちなので、それを「詩をまく者」に綴りました」

──今はどんな状態ですか? 土の中にいた種が芽吹いて…。

「現時点では、自分らしく最大級の花を咲かせたシングルになったと思います。でも、まだまだ大きく咲いていきたいです。ただ咲くだけではなくて、恩返しをしたいんです。「詩をまく者」にみんなへの感謝も込めたように、今度は自分自身が言葉を紡いで、歌を撒いていく存在…輝きや希望の種を蒔いていく存在になりたいです」

──「詩をまく者」で歌っている<夢は大きく>の“夢”というのは?

「とにかく歌い続けて大きな存在になりたいです。いろいろな場所でもっともっと歌いたいですし、日本武道館やアリーナのように大きな会場も埋められるアーティストになりたいです。ファンの皆さんを“トリコ”と呼んでいるんですけど、そのトリコの輪ももっともっと大きくして、世界中に通用する大きな存在になりたいです」

──まだ先ですが、12月にKT Zepp Yokohamaでのワンマンライブも決定しています。『RE;VERSI』というタイトルはどんな理由で名付けましたか?

「“RE”は再びっていう意味で…。5月にワンマンライブ『I'm RICO.』を約2年ぶりに開催しました。そこからまたつながるような…より進化したライブにしたくて。なので、5月に来れなかった人たちも再びここに集めたいという意味の<RE>です。その後の<;>は強く結びつけるって意味があるので、トリコやりこチーム、佐々木李子のつながりをもっともっと強いものにしていく、絆を深められる場所にしたいって想いを込めました」

──ダイス(白と黒)を転がして、純白を漆黒の世界に塗り替えた「Majestic Catastrophe」とも通じていますね。

「そうですね。私自身、いろんな楽曲を歌わせていただいて。闇も光も表現できる、そのギャップも楽しんでいただきたいですし、『RE;VERSI』のように“来た人全員をりこ色に染めるよ”という意味も込めています」

──どんなライブになりそうですか?

5月に開催したワンマンライブ『I'm RICO.』では本当に緊張も全くなくて。ありのままで、“自分の生きている意味がここなんだ“と思えるくらいライブが楽しかったんです。12月の『RE;VERSI』もそうなるように頑張りたいですし、自分だけじゃなくて、来てくださった方、全員にそう思っていただきたいです。トリコたち、そしてスタッフさんも、みんな同じ気持ちで、”ありのままの自分で一緒に夢を持って進みたい”って思えるようなライブにしたいです」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

佐々木李子「Majestic Catastrophe」アーティスト盤(CD+BD)

2025年827日(水)発売
LACM-247403,300円(税込)

アーティスト盤(CD+BD)

佐々木李子「Majestic Catastrophe」アニメ盤(CD only)

2025年827日(水)発売
LACM-247411,650円(税込)

アニメ盤(CD only)

LIVE INFORMATION

佐々木李子ワンマンライブ『RE;VERSI』

2025年1227日(土) 神奈川 KT Zepp Yokohama

佐々木李子ワンマンライブ『RE;VERSI』

©鹿角フェフ・じゅん・マイクロマガジン社/「マイノグーラ」製作委員会

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