――まず8月に約2年ぶりの有観客のライブをされて。この間、リリースは重ねてきて、音源との答え合わせみたいな部分はありましたか?

ヨシダタクミ「2年前と今では大きく状況が変わってしまったじゃないですか。僕ら自身、前のバンド名で長らく活動していたので、2年前はその財産というか、楽曲もスタイルも受け継いでいく形でライブをやっていくのかなと思ってました。でも、ライブが出来ない間に新曲が30曲ぐらい出来た結果、これはもうバンドとして新しい様式と言うか、sajiだけで成立しちゃうなっていう部分はあって。ただ、今、形をすべて変えてしまうと、“なんか方向が変わるのかな?”と不安に思われるファンの方も恐らくいらっしゃるなという思いもあって、一部はphatmans after school時代の曲を歌いながらも、あくまでも大枠はsajiの曲で構成しました。僕らも“どれぐらい変わるかな?”って3人で喋ってはいたんですけど、やってみたら意外と変わらなかったです」

ユタニシンヤ「sajiとしての曲が溜まった上でお客さんの前でライブをしましたが、やっぱりsajiの曲をちゃんと求めてくれてて。僕らもライブでそれを出し切れたので、満足してくれたように見えました。なので正解だったというよりは、満足してくれたのかなと思いますね」

ヤマザキヨシミツ「“答え合わせ”っていうのは感じなかったです、久しぶりすぎて。もう“特別な日”みたいな感情だったんで。それはたぶんお客さんも同じだと思います」

ヨシダ「新しいお客さんが増えたなっていう印象はありましたね。2年ぶりっていうこともあって、ライブに足を運んでくれたお客さんの顔がフレッシュな感じというか(笑)。学生さんのような方がすごく多かったですね。高校生、大学生とか」

――ヨシダさんがアルバムの時におっしゃってた、“17、18ぐらいで出会って欲しい”というのが実現していたと。

ヨシダ「まさにティーンエイジャーの方たちがリアルタイムで聴いてくれてるんだなと実感できたライブでしたね」

――そして今回、ちょっと大きいですね、タイアップが。

ヨシダ「そうなんですよ(笑)」

――アニソン界の新勢力感が。

一同「(笑)」

――皆さんリアルタイムで原作を『週刊少年ジャンプ』で読んでた感じですか?

ヨシダ「読んでましたね。厳密に言うと「SHAMAN KING」は僕らより少し世代が上なんですが、僕やヤマザキは上に兄弟がいるんで、その影響もあるかも知れないですね」

――このお話が来た時は嬉しかったですか?

ヨシダ「嬉しかったですね。やっぱり国民的作品ですし、当たり前ですけど面白いですしね。いわゆるたくさんの人が愛している作品に音楽で端緖になることができるというのは光栄ですし、自分たちならではの最大限の敬意を持って作品と対峙する必要があるなと思って歌いました。演奏もみんなそういう気持ちでしたね。ちゃんと想いを伝えよう、と」

――皆さんなりの「SHAMAN KING」像ってあるんですか?

ヨシダ:僕らが担当させていただいたこの第3クールのこの辺って、「SHAMAN KING」の中でもいちばん面白いんですよね。僕が好きな物語の根幹を成す主人公たちの過去が描かれるんですよ」

――物語の中でも特に好きなタームなんですね。

ヨシダ「そうなんですよ。本人たちが幼い頃の話なんですけど、大切な人の死であったり、乗り越えていく試練の過程っていうのがちょうど僕らが歌わせていただくところで展開されるようなので、“sajiさん第3クールをお願いします”と言って頂いた時に、“やったぜ!”という思いと同時に“バラードを書いてもいいですか?”ってお伺いしました(笑)」

――確かに曲を聴いても思います。たぶん喪失の物語なんだろうなと。

ヨシダ「僕らの曲のなかでも異質な方だと思いますね」

――ヨシダさんとしてはこのお題ありきでもあるし、sajiとしても新しい曲が書けるなと?

ヨシダ「そうですね。まずsaji的な話をすると、僕らのバラードナンバーって基本的にラブソングが多いんですよ。普段は僕が10代だった時を思い出して、“あの頃の自分だったら、どういう曲ハマるかな?”っていう思いで書いているのですが、今回はいわゆるタイアップありきでバラードナンバーをリリースするのが初めてなんですね。だから、より多くの方に聴いてもらえる機会を頂いた上でどういう曲書こうかなと思った時に、学生の恋みたいなものではなくて、物語の中のことを書き下ろしで歌えたら、この感覚ってアニメを知らなくてもふと街で聴いた時に、“ああ、でも確かに幸せってそういうもんだよな”と感じられるんじゃないかと思って。曲自体のテーマは噛み砕いて言うと、“幸せってその場にあると気づかないけど、なくしてから痛みになるよね”、“喪失してみないとわからないでしょ”ってことを歌ってる曲なんですよ。それって街で聴いても、“ああ、なんかそういう時もあったな”とか、“もしかしたらここから先の人生、俺もまだあるかもな”とか、そういう意味で共感してもらえる曲になってるかなという気がしますね」

――ピアノもストリングスも目一杯入ってますが、素直な印象がありました。

ヨシダ「潔い感じですね。バンドの楽器はどのパートもいないときはいないし(笑)」

――普遍的な曲だし。

ヨシダ「何歳で歌ってても違和感のない曲な気がしますね。10年後も歌ってそうだし」

――今回のシングルは全曲振り切ったなって印象を持ったんですよ。

ヨシダ「バンド的には「ハヅキ」がちょっと異質で、M2、M3に収録されてる「Pumpkin Wars!!」、「SHE is.」がいわゆる僕らが普段からやってる範疇ではあるんですよね。「ハヅキ」という曲がバンドとして鳴ってる音を極限まで減らしているので、逆に他の2曲はいわゆる生音で鳴ってる音を中心に構成したんですよね」

――いま、この曲を出すことの意味というか、第二章なのか、バンドとしてどういう意味があるなと思いますか?

ヨシダ「けっこう前から気づきはあったんですけど、割と自分の中で最近確証を得てることのひとつとして、よくも悪くもsajiっていうバンドはどういう音を鳴らしていて、どういう楽器が入っていたとしても、そこに違和感覚える人があまりいないなっていう印象です。例えば今回の曲みたいにピアノと歌だけでほぼ志向性が進んで行って、メインであるはずの俺ら3人の楽器が全然出てこないのに、そこに違和感覚える人はいい意味でも悪い意味でもあまりいなくって。反対に思いっきりギターとかがずっと鳴ってて、他の音を排除した曲が出ても許される。これ、けっこうバンドだと異質だと思うんですよね。なんかそういう幅の広さみたいなものは今後も作りやすくなっているなと思います。その反面、皆さんが求めてくれてるのがメロディであったりとか、歌詞の共感性だと思うので。よくメンバー3人で喋りますけど、歌に対してどうアプローチするか、アレンジかっこよくするかとか、寄り添うか、なんかそういう楽しみ方になってる気がしますね」

――じゃあ、この曲はこのテーマだからこういうアプローチをしようと、究極までいった感じですか?

ヨシダ「そうですね。「ハヅキ」は痛みを知る人の歌、みたいな感じですね。それまでにリリースしてきた恋愛ものの歌って、基本的には手に入らない人の歌であったり、別れの歌なんですけど、ここまで自分以外の人間を失って傷ついている人が出てくるのは初めてです」

――レコーディングはどうでした?

ヤマザキ「嬉しさが勝ってましたね。「SHAMAN KING」は子どもの頃から知ってましたし、“力強いバラードにしたいな”と思ったので、それが実現できたというか。音数も少なくなって、その分、楽器の幅が出たので、イメージ通りになりました」

ユタニ「僕はこの曲を初めて聴いたとき、すぐにギターソロのフレーズが思い浮かんできて。伸び伸びと粘りっこく弾いて主張してみましたね」

――ギターソロがスパイス的に聴かせやすい曲ではありますね。

ヨシダ「うちはとりわけ、他のアーティストさんに比べて、ギターソロが多いんですよね。たぶん同世代のバンドと比べても、僕らのギターソロ採用率は5倍ぐらい違うんで」

ユタニ「5倍(笑)」

ヨシダ「だってアルバムに入る曲の半分ぐらい、ギターソロあるじゃん」

ユタニ「ちゃんとしたギターソロですね(笑)」

ヨシダ「それもユタニと昔から言ってるんですけど…本来彼がそういうのを得意とするプレーヤーでもあるし、あとは同世代のギタリストはあまりやらないってことなので、それをずっとやってればその世代でのパイオニアになれると思うので。今、多分、僕ら世代で音楽をやってる人たちって、ギターソロ然としている90年代のロックを聴いきた人が少ないと思うんですよね。僕らはそのあいだ、ずっとWANDSとかB’zとか聴いてた人間なんで、そういう分野を伸ばせるっていうのは強みかなと思いますね」

――突然ですが、皆さんにとっての普遍的な名バラードってなんですか?

ヤマザキ「過去に1曲だけバラードをコピーした曲がありました。JUDY AND MARYの「ラバーソウル」が唯一ですね」

――バラードの印象があまりないバンドのバラードですね。じゃあバンドのバラードにしましょうか。

ユタニ「B’zの「いつかのメリークリスマス」ですね。」

ヨシダ「じゃあ僕はミスチルの「抱きしめたい」で」

――そしてカップリングの2曲はすごくsaji っぽくて。「Pumpkin Wars!!」は今年こんなことできるのか?はおいておいて、逆にもう今後、ディズニーソング的な立ち位置になるのかな?と。

ヨシダ「これはそうですね。ミッキーの「ビッグバンドマーチ」をリファレンスで書いたんで」

――これから何年でもできますね。

ヨシダ「ハロウィンソングを作ったことがなかったんですよ。クリスマスソングは書いたことがあるんですが。ハロウィン自体を認識したのが、東京に来てからなんで(笑)」

――そういう意味でいうと、いまのsajiをプレゼンしやすいシングルですね。「SHE is.」はすごくsajiらしい曲というか。恋愛系の曲を期待される中で、新鮮な表題とまた違う2曲でだし。

ヨシダ「シングルは決め打ちでどういう曲入れるか考えてるので。いまの時代、アルバムよりもシングルの方がパッケージ全部通して聴いてもらいやすいんですよ。十数曲を一度に“聴いてください”って言っても聴いてくれないけど、“ああ、3曲なら聴いてみようかな”と。昔よりもカップリングの意義が強い気がしますね。」

――多面的であることを知ってもらうにはいいですね。よしんばサブスクでもシングルとして出せば3曲続けて聴くでしょうし。そういう意味でsaji として活動してきて軸が見えてる感じのシングルだと思って。

ヨシダ「それは無理せずやれてるので、それはよかったなと思って。最初はどうなるかなと思いました。僕らに限らず、バンド名が変わると、“今後どうなっていくんだろう”って不安視されてしまいがちなので。だから僕らが意図してない解釈のとらわれ方もけっこうするんですよ。自分の中ではどの曲も大切に歌ってるんですけどね」

――自分たちでロックバンドだと思ってればいいと言うか、聴く人は何が好きかこちらは選べないですからね。

ヨシダ「そうですね。出会った曲がすべてなんで。だからsajiにできることは、どの曲から知っても良いと思って頂ける曲を作ることじゃないですか。いまはアーティストが意図しない曲でバズるって言いますからね。TikTokとかも」

――そこは良い面でもありコントロールできない面でもありますね。今回アニメで入ってくる人もいるだろうし、アニメも新たなシリーズでもあるし。

ヨシダ「いい意味で第3クールから奈々さんと僕らで一気に雰囲気を変えさせていただくので、そこから新しい目で見ていただけるとありがたいなと思います」

(おわり)

取材・文/石角友香

■Release Informationsaji「ハヅキ」

2021年10月27日(水)発売
KICM-2108/1,320円(税込)
KING RECORDS

saji「ハヅキ」先行配信

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