──約5年ぶりのミニアルバム『スカイブルー、エモーション』がリリースされました。NHK「みんなのうた」に起用された「ぼくも(feat.松崎ナオ)」などの既発曲に加え、仲井戸麗市さんと竹原ピストルさんをフィーチャーした「光芒」などもあり、賑やかな作品になりましたが、長澤さんの中でどのような流れを経て完成に至ったかから教えてもらえますか?

「「渋谷のスーパーラット」がたぶん一番古い曲だと思うんですけど、「渋谷のスーパーラット」を配信でリリースして、そのあとに「朝日(feat.THE BED ROOM TAPE)」、「ぼくも(feat.松崎ナオ)」、「約束(feat.はらかなこ)」のリリースを積み重ねていって、ひとつのものにまとめようぜって話になって……で、こういう1枚にまとまったっていう感じですかね」

──1曲1曲、作っていく中でだんだん全貌が見えてきた?

「そうですね。本当にそういう感じです」

──そうして完成した『スカイブルー、エモーション』には、長澤さん自身どんな印象を抱いていますか?

「今回に限らずなんですけど、相変わらず空のことばっか歌ってんなってあらためて思いましたね(笑)。それと、やっぱり自分は直情型の人間なので、自分の中にある楽しいも感動も、怒りもそのまんま曲に詰まってるんです。じゃあ、それをタイトルにするなら『スカイブルー、エモーション』だなって。そういう曲もできていたので、最終段階でそれをミニアルバムのタイトルにしました」

──空のことを歌うのは?

「よく見てるんですよ。人よりも見ていることが多いかもしれないです。暇なんでしょうか(笑)。よくわからないですけど」

──無意識だとしても、何かしらの理由はあるんでしょうね。

「生まれた環境として、ちょっとロマンティックに育っちゃったところがあって。だから見やすいのかなとは思います」

──スカイブルーではないですけど、夜空も見ますか?

「夜も見ますね。でも、最近はお酒を飲んでばっかりだから、グラスを見てることが多いと思います(笑)。ただ、夜空、星空っていうか、天体観測が好きなんで。宇宙の話も大好きですし。例えば、2019年に初めてブラックホールを撮影できたとか、そもそもブラックホールって何?とか。どうやら宇宙には10次元ぐらい存在するらしいぜとか、そういう話って飲みながらでも盛り上がるじゃないですか。そういう感覚、好きですね、うん」

──楽しいですし、夢がありますよね。

「なんかこう、人間社会に住んで生きていると、僕らは横を見やすくなるんですけど、そうすると人間関係や考え方が横に広がって、どうしても平面っぽくなっちゃって。でも、空を見上げたら立体的になるというか、よくある話かもしれないですけど、自分の悩みとかがちっぽけに見えるというか。あとは、また宇宙的な話になりますけど、もしかしたら並行世界があるんじゃないかとか、そういう話をしたり考えたりしていくと、いろんな可能性があって楽しいのかもしれないとか。そういうことを話したり考えたりすると安心する部分が僕はあるし、それもあって空も見やすいのかもしれないですよね」

──そういう行為が、長澤さんの音楽表現に影響を与えている?

「そこで得たものの延長線上で曲を書いている、周りから影響を受けたものを自分なりにアウトプットしているだけなんだろうなとは思います」

──自分は直情型の人間だという話がありましたが、今回のミニアルバムを聴いてもそれを感じます。音楽を作っていく上で、自分の感情の揺れ幅に素直に向き合って、それを受け入れる。あるいは受け入れられなくて混乱するときもあるかもしれないですけど、そういう場合も含めて大切というか。

「そうです。めちゃくちゃ大事だと思います。それを、どうアウトプットできるかっていう。自分の中の感情をどうやって表現するか、その見せ方であんまりかっこつけずに、でもかっこつけたいみたいなところのバランスを図りながら、音楽としてアウトプットしていくのが好きですね。基本的に、楽しかったりムカついたり、そういう感情がないと何も出てこないです」

──感情の揺れ幅は広がったり激しくなったりしている感じですか?

「根本は変わらないと思うんですけど、その出し方ですよね。例えば10代の頃みたいにむやみやたらに出していくとか、20代の頃のようにちょっと混乱気味に出していくとか、そういう時期よりも出し方がうまくなったかなとは思います。人それぞれだから別にいいとは思うんですけど、今はSNSに怒りをぶちまける人もいる。でも、僕はSNSに怒りをぶちまけるよりも、その感情を作品に込める。そっちのほうが作品の密度が上がって、人の心に刺さりやすくなる。その刺さりやすい状態までどんどん密度を上げていって表現するっていう、今はそんな感じです」

──本作では、実にさまざまなアーティストとコラボレーションしています。

「「光芒」は、僕、ピストルさん、チャボさん、世代が全然違う中で、僕が10代のときに感じていたキラキラとかイライラとか、そういうものを3人でバンって出してみませんか、というお願いをしてできた曲です。「朝陽」のTHE BED ROOM TAPEは景山 奏くんのソロプロジェクトなんですけど、奏くんとはほぼ同世代で。10年前ぐらいに彼が当時組んでいたバンドとコラボさせていただいたことがあったんですけど、今のソロプロジェクトのTHE BED ROOM TAPEを聴いたときに、めっちゃいいなと思ったんです。それでいつか一緒にできたらいいなと思っていたんですけど、それが実現した形です」

──松崎ナオさんとはらかなこさん、2人の女性アーティストの印象はいかがでしたか?

「ボーカルって、けっこういろんな人に影響を受けて、声の出し方に無意識でフィルターをかけている人って、多いような気がするんですよ。でも、松崎さんってノンフィルターな気がして、歌がドスンと入ってくるんですよね。だから、何かを訴えかけたい歌詞を歌ってもらいたくなるんです。自分も割とフィルターをかけないで歌っているつもりなんですけど、彼女はそういう意識的じゃない部分でノンフィルターな感じがするので、そこがうらやましいなというのもあってお願いしました。はらさんはご紹介いただいて今回コラボしたんですけど、一緒にリハに入ったらめちゃくちゃ楽しくて。もう本当に天真爛漫で、最高な人でした。ピアノも素晴らしくうまいし、僕が言いたいことをすぐに汲んでくださるし、すごいなってリスペクトしかないです」

──得たものも多かったのかなと思います。

「はらさんはクラシック畑の人なので、僕らとはやっぱり違うから、そこがいいですよね。自分が持っていないものを持っている人とコラボできるのが、やっぱり1番楽しいことだと思うので。そういう意味では、チャボさんもピストルさんも、奏くんも松崎さんもそうだし、みんなとやさしい空間でずっとやれたのが楽しかったし、うれしかったですね」

──新しい作品を作り上げたことで、アーティストとしての進化や深化を感じている部分はありますか?

「うーん……今、ちょっと考えてみたんですけど、意識的にはそういう感覚はないです。深まったとか進んだっていうのは、もしかしたら無意識のうちにそうなっているものなのかなって思います」

──『スカイブルー、エモーション』がリリースされた今、これからの活動についてはどんなことを考えていますか?

「早く次のことをやりたいな、やらないとなって感じではあります。ライブもそうですし、曲を書いたりもそうですし、今度は全然違うアプローチの作品を作ろうとか、そういうことを考えることも含めて。でも、せっかくいいアルバムができたんで、なるべくいろんな人に聞いてもらいたいなって気持ちは、すごくありますね。なので、ライブだったり、いろんなやり方でこのアルバムのことをどんどん伝えていきたいです。そんな中で日常を過ごして、またいろんな曲を書いていくっていう感じだと思います」

──長澤さんの日常に何が起こって、どんな感情になって、どういう新しい曲ができるのか……楽しみですね。

「先日、朝から米米クラブの「浪漫飛行」を聴いてたんですよ。子どもの頃に大ヒットした曲ですけど、ミュージックビデオには真っ白な浜と青い海と青い空が映し出されていて、子どもながらに“父ちゃん、こんなところに連れてってくれないかな”って思ったりもして。「浪漫飛行」を聴くと、そういう子どもの頃の記憶を思い出すんです。その日も、そういう記憶を思い出してワクワクする気持ちになりたくて、「浪漫飛行」を聴いてたんですよね。で、そのあとにタクシーに乗って移動したんですけど、ギターを持ってたからか、タクシーの運転手さんが“音楽やってるんですか?”って聞いてきたんで、“はい”って答えたんですよ。そしたら、その運転手さんが、“昔、米米クラブの「浪漫飛行」でミュージックビデオの制作で衣装を作ったんだよ”って。すごくないですか?」

──え!長澤さんから「浪漫飛行」の話を振ったんじゃないんですか?

「してないです。こんな偶然ってあるんだな!ってびっくりしましたけど、面白かったですね(笑)」

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真提供/ユニバーサル ミュージック

Nagasa Oneman 10 ~スカイブルー、エモーション~LIVE INFO

6月22日(土)BANANA HALL(大阪)
6月27日(木)KD ハポン(愛知)
6月29日(土)ROOMS(福岡)
7月5日(金)荻窪 The Top Beat Club(東京)

Augusta Camp 2024

9月21日(土)富士急ハイランド コニファーフォレスト

Augusta Camp 2024

長澤知之『スカイブルー、エモーション』DISC INFO

2024年5月22日(水)発売
CD/POCS-23046/2,600円(税込)
Au(g)tunes

長澤知之『スカイブルー、エモーション』

長澤知之『スカイブルー、エモーション』
2024年5月22日(水)配信
Au(g)tunes

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