――11月にリリースされたEP「若草」は本当に素敵な作品ですが、1月10日から「Live House Tour“若草”」もスタートします。今の心境を教えてください。
「リハーサルが年末から始まったのですが、ものすごくバンドの雰囲気がいいんです。今回のバンドは大樋祐大くん(SANABAGUN.)がいちばん年下で、あとのミュージシャンは同い年というメンバー構成なんです。それなのに、祐大くんがいちばんしっかりしているという(笑)。その関係性もすごく心地がいいんですよね」
――大樋さんもそうですが、弓木英梨乃さん、澤村一平さん(SANABAGUN.)、山本 連さん(LAGHEADS)と、名前を聞くだけでワクワクするようなメンバーですね。
「「若草」では、“吉澤嘉代子とナインティーズ”という、同世代のミュージシャンを集めてレコーディングをしたいという想いがあり、それを叶えることができました。ツアーでも、青春を追体験するような日々になればいいなと思い、私の大好きなギタリストである弓木英梨乃ちゃんに声をかけて、バンマスをしてもらったんです。さらに(澤村)一平ちゃんにベースの山本連くんを紹介してもらって、続々と仲間が揃っていきました」
――90年生まれとなると、そろそろ若手から中堅と呼ばれるキャリアに差しかかってきて、先輩ミュージシャンと後輩ミュージシャンの間でいろんなことを考えなくてはいけないし、反面、楽しいことも増えてきたのでは?と思うのですが。
「まさに最近、そのようなことを考えていました。レコーディングにしろ、ライブのリハーサルにしろ、今までも自分がやりたいことはあったんですが、それをどう伝えたらいいのかわからなかったんです。でも、今回はレコーディングが久しぶりだったにも関わらず、今までよりもスムーズに伝えることができたんです。他の人から見たらそんなことはないかもしれないんですけどね(笑)」
――となると、バンドメンバーとも意思疎通が取りやすい分、より開けた作風になりそうですね。
「そうなんですよね。“ちょっと怪我してもいいからやってみよう”というポジティブな気持ちが芽生えたのにはすごく驚きました」
――その気持ちから生まれてくる曲にどんな変化がありましたか?
「これまでは、自分が作った作品を抱え込もうとしていた節があったんです。誰かに渡さないと完成しないのに、渡したくないような感覚があったんですよね。でも、「若草」に関しては、いろんな人の手に渡りながら、“育ったらいいな”という気持ちになれたんです。人に預けることもできるようになった気がします。もし、アルバムのテーマがものすごく内省的なものだったとしたら、また変わってくるかもしれませんが、今回、そう思えたのはすごく大きなことでしたね」
――素敵ですね。きっと、預ける部分、預けない部分でバランスをとれてきたのかもしれないですね。
「なんだか、いますごく楽になりました。きっとどちらも正解ですね」
――だと思います(笑)。だからこそ生まれたであろう「ギャルになりたい」は、ギャルになりきれなかった多くの人達にかなり響いたと思いますよ。
「実は、“私もそうだったんだ”って言ってもらえる機会がすごく増えました。これまで、あえて言わなかったけれど、心の中にあるような、青春の疼きのようなものを打ち明けてもらえるのはすごく面白いですね」
――「若草」は、振り返ってみてどんなEPになったと思いますか?
「今回は自分視点の歌が思っていたよりも多く入ってきているなと感じているんですが、それなのに聴いていただいている方のものになるような器の大きさを感じています」
――確かに、老後は友達と同じアパートで住みたいという「夢はアパート」をはじめ、みんなの願望がぎゅっと詰まっている曲が多いですよね。
「これは、夢ですよね。10代の頃の青春も楽しかったけれど、70代、80代もさらに楽しく生きられたらいいですよね」
――そしてこれらの曲が聴けるツアーが10日から開催されますね。すごく楽しみです!
「ありがとうございます。私自身、久しぶりのライブハウスツアーになるので、生演奏にこだわって、曲をリアレンジしながら演奏をしていきたいと思っています。ただ、私の曲はかなりコーラスが多いんです。なので、みんなでかなり練習をしてもらっていて。もしかしたらバンドメンバーがいちばんドキドキしているかもしれないですね(笑)。でも、それを楽しめるくらい身体に叩き込んでツアーが出来たらいいなと思っています」
――吉澤さんからみても、メンバーみなさんとのセッションはかなりワクワクしているのではないでしょうか。
「そうですね。私がデビューをしたころは、大人のミュージシャンの方たちと一緒に演奏をしていて、その背中はすごく大きくて遠いものだと思っていたんですが、今回同い年のミュージシャンとリハーサルをしたときに、“みんなこんなにできるんだ!”って驚いたんです。演奏は素晴らしいし、コミュニケーションの仕方が素敵で、同い年なのに本当にすごいって感動したんですよね」
――32歳、33歳で、ミュージシャンとして生計を立てている方は、やはりスペシャリストが多いですよね。
「そうなんです。音楽の世界って、どうしても浮き沈みが激しいですし、やっぱり厳しい世界だと思うので、今も続けられている方は、そこに理由があるんです。今回、そのみなさんの実力をまざまざと見せつけられたというか、本当に素晴らしいミュージシャンがいるんだということを心から実感しました」
――音を鳴らした瞬間、歌った瞬間にみんながリスペクトし合えるメンバーが一緒にライブができるのは、本当に素敵ですね。
「いま、リハーサルを終え、どんな本番になるのか、すごく楽しみなんです。だからこそ、健康面にはすごく気を遣っています」
――だいぶ駆け足になりそうですが、ツアーでは札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡とさまざまな場所を訪れますね。
「私は乗り物が好きなのですが、なかでもロープウェイが大好きなので、どこかでロープウェイに乗りたいですね。あとは、お寿司も好きなので、1人でもフラッと食べに行くんです。そこで各地のお寿司が食べられるのをすごく楽しみにしています」
――魚が美味しい季節ですしね。
「そうですよね。東京でも美味しいものを食べられる場所はたくさんありますが、やっぱりその土地でいただく旬のものは格別なので食べに行きたいですね」
――お土産話を楽しみにしていますね。そして、ツアーが終わった後、3月には早くもEP「六花」が発売されます。
「いま、レコーディングが終盤を迎えています。今回、「若草」と「六花」は、青春の光と影の二部作でリリースをしようと決めていたんです。「若草」は光、「六花」は影の部分となる、お別れや青春の儚い部分を描きたいなと思っています。そういえば、私はこれまで、なるべく季節感を曲に出さないようにしていたんです。でも、今回の2枚は、季節感を盛り込んだものにしようと思い、「六花」には春の曲をたくさん書きました」
――歌詞を書く上で、季節感を出さないってすごく難しいのでは?
「これまで、季節感を出さないことをあえて決めていたわけではないんですが、季節を感じる言葉を入れてしまうと、違う季節に聴いた人は共感できないのかなって思っていて。いつでも、聴いてくれた人にぴったりくるように、少しでも特定するようなことはしないようにしていたんですよね。でも、今回季節を解禁することで、ものすごく曲の幅が広がりました」
――この2作で1作のようになるんですね。
「そうですね。あとは、アルバムをリリースするたびに、10代の頃に温めていた曲を、テーマに合わせて引っ張って来てリリースをするということをしているんですが、「若草」も「六花」も、昔に書いた大事な曲を最高な形でレコーディングすることが出来て、スケジュールに追われながらも“めちゃめちゃいい作品だな”と思うことが出来たんです。
――10代の頃に書いた曲は、黒歴史化してしまったり……という話をよく聞きますが、そんなことはない?
「あります(笑)。まだ、私の手に負えないものもたくさんあるんですが、それもいつか最高の形で出せたらいいなと思っています」
――さて、新年ということなので、2024年のロードマップや抱負を聞かせてください。プライベートの話題でもいいですよ(笑)。
「2024年はデビュー10周年ということもあり、最初にやっていたことをあらためてやってみたり、今の自分だからこそできる、誰かを招いての演奏、録音をしてみたいなと思っています。プライベートでは……ちょっと待ってくださいね!私、プライベートにしたいリストを常に書いているんです」
――ぜひ聞かせてください!
「まず……“モロッコに行く”です。これはぜひ行きたいですね。あとは、“車を運転して海に行く”も書いてあるんですが、免許もまだないので、これはやめておきます(笑)。なので、モロッコに行けたらいいですね。今年じゃなくてもいいので」
――モロッコでのMV撮影などもいいかもしれませんね。
「絶対素敵!いつか叶えてみたいですね」
――最後に「Live House Tour“若草”」を楽しみにしているファンへのメッセージを。
「私は高校生の頃、あるライブを見て“音楽を仕事にしよう”と決めたんです。そのくらい、ライブって人生を変えてしまうものだと思うんですよね。そんなライブにするという意気込みで、想いをさらけ出しながら各地で歌を歌えたらいいなと思っています。そして、みなさんと一緒に青春の渦の中で冒険が出来たらいいなと思っているので、ぜひ遊びに来てください!」
(おわり)
取材・文/吉田可奈
写真/KeiFuiwara
LIVE INFO
■吉澤嘉代子 Live House Tour "若草"(チケットぴあ、イープラス、ローチケ)
2024年1月10日(水)仙台 darwin
1月12日(金)Sound Lab mole(札幌)
1月15日(月)Zepp Shinjuku(TOKYO)
1月18日(木)Spotify O-EAST(東京)
1月19日(金)名古屋 CLUB QUATTRO
1月24日(水)梅田 CLUB QUATTRO
1月25日(木)福岡 BEAT STATION
■吉澤嘉代子10周年記念公演~まだまだ魔女修行中。~
2024年5月14日(火)LINE CUBE SHIBUYA
吉澤嘉代子「若草」DISC INFO
2023年11月15日(水)発売
初回限定盤(CD+Blu-ray)/VIZL-2243/7,700円(税込)
ビクター