――辻井さんの考える“究極の協奏曲コンサート”と“ソロ・コンサート”の違いは何でしょうか?
「“ソロ・コンサート”の場合は自分一人でのリサイタルということで、自分の演奏をたっぷりと皆様にお届けすることが出来るコンサートになりますが、今回の“究極の協奏曲コンサート”は、僕と三浦文彰さん、ソリストが2人いて、ピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲の2つの協奏曲が聴けるという、とても贅沢なコンサートになります。普段、オーケストラと演奏する際、協奏曲は1人のソリストが参加する場合が多いのですが、今回は2人が参加するということで、たっぷりと協奏曲の世界に浸ってもらえるコンサートになると思います」
――そんな贅沢な“究極の協奏曲コンサート”のもうひとりのソリスト、三浦文彰さんはどんな印象でしょうか?また、これまでの三浦さんとの共演で感じた事などがあれば教えてください。
「三浦さんとは仲が良くて。初めて出会ったのが5~6年前、それも“究極の協奏曲コンサート”(2016年2月)で初めてツアーをご一緒した時でした。ツアーなので、演奏以外にも一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりして本当に意気投合しました。そこから2人でデュオをやったり、“室内楽の演奏とかも一緒に出来たらいいね”って盛り上がって、2人で共演する機会が増えて、素晴らしい仲間と室内楽をやったりもして、お互いの音楽もすごく分かり合える関係です。プロとして活躍している音楽仲間が、今まであまりいなかったのですが、三浦さんは音楽仲間でもあり、プライベートでも友達なんです。彼は素晴らしい音楽家だと思いますし、プライベートでも仲良くさせて頂いています」
――観客や共演者の息づかいを感じながら演奏される辻井さんにとって、三浦文彰さんとの共演だからこそ生まれる“気”はどういうものなんでしょうか?
「そうですね、彼とは何度も演奏を重ねてきているので、お互いの音楽もわかりあえるんです。リハーサルと本番でも全然違うんですが、お互いにやりたい事がすぐ表現できて、すぐに音でわかりあえるので、そこが凄く共演してても楽しいなと思います」
――今回のツアータイトル“究極”にちなんでお聞きします。辻井さんはラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」における“究極”の聴き所や演奏し続ける魅力はどういった点にあるんでしょうか?
「この作品は僕にとってすごく思い出のある作品で、2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールのファイナルで演奏した、ラフマニノフの作品の中でも有名な作品です。最初の交響曲でちょっと失敗して落ち込んでしまって、精神的にも大変な時期があったラフマニノフがこの作品で復活しました。曲の途中とか最後のほうに、未来に向かっていく、新しい人生が始まる感じが込められていると思います。僕自身もこの作品をコンクールで演奏して優勝したので、もちろん自分自身は変わっていませんが、“(この作品で)人生がちょっと変わったかな?”と思います。そういう意味でもラフマニノフと通じるものがあるので、演奏していると色んなことを思い出します。新たなスタートラインに立てた思い出の詰まった、僕にとっても大切な作品です。ぜひ皆さんにもこの曲の魅力をたくさん音で表現出来たらと思っています」
――コロナ禍でも演奏やコンサートの配信を行い、暗い日々の中で過ごす人々を勇気づけてくださった辻井さんですが、今回は全国にいる辻井さんのファンの方々に音楽を直接届ける事が出来るツアーでもあります。辻井さんの考える配信と実際の有観客のコンサートとの大きな違いについて教えてください。
「もちろん配信と生の演奏という違いはあります。コロナ禍で生の音楽を届けられなかった時期に、音楽家として“何とかして音楽を届けたい”という思いがあったので、オンラインコンサートをしたり、YouTubeチャンネルを立ち上げてYouTubeで色んな曲を聴いて頂けるようにしました。生の音楽を聴いて頂くのが難しかった分、配信を通じて音楽を届けたかったのです。やってみて思ったのは、実際のコンサートだと席によってはどうしても指の動きが見えづらい方がいらっしゃるんですが、配信だとカメラアングルなどで見て頂いている方にも指の動きが良く見えるんです。こんなところも配信ならではのいいところなのかな?と思います。そして、有観客のコンサートでは画面越しで聴くのとは本当に違う、ライブならではの臨場感や迫力は生の音楽の最大の魅力なので、そういうライブならではの迫力を皆様に味わって頂けると思っています」
――今回のツアーは中国・四国地方、九州地方、全7カ所ですが、楽しみにされていることはありますか?
「訪れた街ならではの地元の美味しい食べ物やお酒、温泉に入ったりすることもツアーの楽しみだったりします。大好きな街でまた演奏できることが楽しみです」
――今回、ツアーで来場されるお客様へのメッセージを頂けますか?
「今回は三浦文彰さんとの“究極の協奏曲コンサート”ということで、三浦さんがチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏して、僕は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏するので、2人それぞれの協奏曲を是非、生で楽しんで頂きたいです」
――名匠ゲルギエフが絶賛したことでも知られる辻井さんと三浦さんの演奏で、たっぷりと協奏曲の世界に浸ることができる『究極の協奏曲コンサート』を楽しみにしています。
(おわり)
取材・文/encore編集部
辻井伸行写真/©Yuji Hori
<<公演情報>>
『辻井伸行×三浦文彰 究極の協奏曲コンサート』
<出演>
辻井伸行 三浦文彰 沼尻竜典指揮 読売日本交響楽団
<演奏曲目>
三浦文彰(ヴァイオリン):チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
辻井伸行(ピアノ):ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
沼尻竜典指揮 読売日本交響楽団
<日程>
3月26日(土) 山口 周南市文化会館 大ホール 開演時間14:00
3月27日(日) 佐賀 佐賀市民会館 大ホール 開演時間15:00
3月29日(火) 鹿児島 川商ホール(鹿児島市民文化ホール) 第1ホール 開演時間19:00
3月30日(水) 宮崎 メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)アイザックスターンホール 開演時間19:00
3月31日(木) 大分 iichiko総合文化センター グランシアタ 開演時間19:00
4月 2日(土) 香川 レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール 開演時間18:00 Thank You SOLD OUT!
4月 3日(日) 愛媛 松山市民会館 大ホール 開演時間16:00
<チケット>
各プレイガイドにて好評発売中!
チケットぴあ
ローソンチケット
イープラス