──ニューシングル「ゲレンデ・ファンキー・ラブ」で広瀬香美さんとのコラボが実現した経緯から聞かせてください。
奥津マリリ「広瀬さんがXに“ライブに行きたかった”とポストしてくださってるのを見つけたんです。“あの広瀬香美さんが私たちのこと知ってくださっているの?”という驚きがきっかけで、そこから雑誌の対談を組んでいただきました。そこで、広瀬さんから“スタッフさんのおすすめでフィロソフィーのダンスを知って、「シュークリーム・ファンク」を聴いて好きになったんだよ”というお話を聞きました。それから、広瀬さんがプロデュースするライブイベント『Kohmi EXPO 2025』(8月27日にLINE CUBE SHIBUYAで開催)に呼んでいただいて…ステージ上で“曲を書いてくれませんか?”と直談判して、超特急で作っていただいたのが「ゲレンデ・ファンキー・ラブ」になります。こんな流れでございます」
──何かリクエストはされたんですか?
日向ハル「香美さんは“このグループはファンクよ!”とおっしゃっていたので、そこはお任せしつつ、“「ゲレンデが溶けるほど恋したい」や「ロマンスの神様」を聴いていた母世代から私たちの世代にゲレンデの熱量を受け継ぎたい”という話をしました。それがちゃんとストーリーとして歌詞に反映していただいたし、いい感じのマリアージュが生まれたと思っております」
──楽曲を受け取ってどう感じました?
香山ななこ「本当に難しい曲なんです。“この曲は広瀬香美さんの声で、広瀬香美さんが歌うからいいんじゃないか?”と思って…最初は、“私たちに歌えるのか?”という気持ちでした」
木葭のの「私も初めて聴いた時は“難しい!”と思って。しかも、プリプロでキーが3つ上がったんです。キーが上がった時は正直、ほとんど歌えなくて…。お家に帰って、お母さんに電話で“全然歌えなくて、歌割ゼロかもしれない…”と泣き言を言ってしまいました」
──あははは。お母さん!
木葭「本当に歌えなくて落ち込んでたんですけど、無事に歌割りをもらえて。練習を重ねて、最近は声も出るようになっています。少しずつ完成して行っているので、もっともっと成長した姿を広瀬さんに早くお見せしたいです」
佐藤まりあ「私は特に高音に苦手意識があるので、プリプロで三つ上がった時に、“あ、もう他のメンバーに任せた”と思いながら、その日は帰った記憶があります」
日向「みんなが“難しい”と言っているように、広瀬さんに“フィロソフィーのダンスならこの曲を歌える”と思ってもらえたことが嬉しかったです。その期待を超えていきたいですし、チームで“この曲が一番映えるキーはここだよね?”と相談して、自らキーを上げたので。フィロソフィーのダンスだとあまり使わない音域の高音が入っているんですけど、全部の曲が同じ音域になると聴き慣れたものになってしまうというのも常々思っていて。高音も低音も頑張れば新しい色が出せると思っているので、いいきっかけだったと思いますし、“出そうと思えばみんな出せる“というのも分かったので、自信にもつながりました」
──先ほど、ハルさんから少しありましたが、歌詞はどう捉えましたか?
奥津「“こんなにいただいちゃっていいのかな?”という驚きがありました。<永遠のPromiseちょうだい>とか、広瀬さんが生み出してきた子供たちのエッセンスをふんだんに盛り込んでいただいて。それってかなり大事な話じゃないですか」
──冬の女王を受け継いだってことですよね。
奥津「魂をいただいているような歌詞がたくさんあるので、ほんとうに大事にしようと思いました」
香山「完全に「ゲレンデが溶けるほど恋したい」で結ばれたカップルの子供ですよね? ゲレンデから生まれた…」
日向「桃から生まれた桃太郎みたい(笑)」
佐藤「ゲレ太郎? ゲレ子かな?」
香山「ゲレ子だと思って(笑)。<あたしのママとパパもゲレンデでFall In Love>と言っているので、歌詞の主人公はお母さんからゲレンデでの恋のお話を聞いて育っていて…恋に対して猪突猛進なところはお母さんに似ているし、DNA を感じて可愛らしいですよね」
木葭「私は<暴走妄想迷走爆走逃走幻想追走回想>の部分が…」
──覚えるのが大変そうです。
日向「今も一番の課題となっております」
木葭「毎回練習してライブに臨んでいます。全体的に勢いのあるところが香美さん節が出ていて好きですし、歌っていても楽しいです」
奥津「そこは広瀬さんもレコーディング中に心配してくださっていました。しかも、一人ずつ歌い継いでいくパートなので、“言えないよねこんなの。びっくりだよね”と言ってくださっていて。“ライブでちゃんと出来なかったら、その日、言えなかった人を探して、MCのネタになるんじゃない?”とも言ってくださってたんですけど、せっかくなので、“一度も間違えずに頑張るぞ!”と思っています」
奥津「今は、かなり完成度が高まってきています」
──(笑)ハルさんは?
日向「人生をハッピーにするのもバッドにするのも自分次第じゃないですか。この曲は、自らをドラマの主人公にしていて…毎日同じことが起きていても、“平凡だな”と思う人もいれば、“え? 私ってドラマの主人公?”と思う人もいて。そう思えるポジティブさがあるかどうかで、同じ出来事に対してもどれだけ楽しめるかが変わってくると思うので。この心を忘れずにこれからも生きていきたいと思える歌詞です。それに、こんなに冬に全振りした曲はなかなか歌えないです。やっぱり冬の女王が書いたという、香美さんの原液をそのまま飲ませていただくような楽曲だからこそ表現できたと思います」
──<コウミのメッセでGO>というのは、“広瀬香美さんから来たメッセージ”ということなんですか?
奥津「そう受け取っています。香美さんからメッセージが来たら行きますよね?」
日向「即ね。猛吹雪でも」
奥津「あと、平成感のような雰囲気もリクエストさせていただきました。私たちはゲレンデで盛り上がる恋をあまり知らないですけど、馴染みがある世代に刺さる歌詞を詰め込んでいただいて。でも、<推し活>とか<ソシャゲ>とか、今っぽいワードもしっかり入っていて」
──あくまでもゲレ子の視点ってことですよね。
日向「はい。日々、<猫吸い>しています」
奥津「広瀬さん世代と私たち子供世代がミックスされていて素敵です」
佐藤「猫ちゃんを飼っているメンバーもいるし、私も推し活やソシャゲをしているので、第三者目線ではなく、自分たちのことのような気持ちで歌詞を受け取りました。香美さんのメッセが来たら、もちろん猛吹雪でも全員這ってでも行きますし、私の家にスキーウェアやゴーグルもあって。実際にお父さんとお母さんもゲレンデに遊びに行っていた世代なので、“私のパパとママもゲレンデで楽しい思い出作ったんだろうな”とか想像しながら、かなり自分目線で歌っていました」
──レコーディングはどうでしたか?
香山「最初は少し自信がなかったんですけど、何回も何回も曲を聴いて、理解を深めて、レコーディングに挑みました。広瀬さんがレコーディングにも立ち会ってくださったので、直接その場で指導もしていただいて。レコーディングの時はまだ自分自身、胸を張って“うまくいきました!”とは言えなかったですけど、レコーディングを経て、ライブでもたくさん披露して…やっと最近、完成に近づいてきました。難しい曲ですし、置いていかれないようについていくことに必死だったんですけど、最近はファンの皆さんとも一緒になって盛り上がれる曲になって、“フィロソフィーのダンスらしいな”と思うところもあったりします。すごくいい作品に仕上がったと思っています」
──広瀬さんからはどんなディレクションがありました?
香山「例えば、<メイクは完璧 瞳はビー玉>の<瞳>が裏声で<ビー玉>が地声なんです。どうしても戻ってこれなくて、声がカスカスになっちゃっていたんですけど、広瀬さんに“お尻の穴を締めるのよ!”というアドバイスをいただきました。すると、その次のテイクにはもう声が出るようになったので、本当に的確なアドバイスをくださって、改めて“すごい!”と思いました。スーパーレジェンドな方なのに優しく接してくださいましたし、的確なアドバイスを頂いて。レジェンドであり、指導者としても素晴らしい人なんだと思いました。愛もすごいですし、そして、みんなに愛をもって優しく接してくださるので、お母さんのような大好きな方です」
木葭「本当にすごく優しくしてくださいましたし、とてもフレンドリーでした。私は<Get it on!>と<ゲリオン>の中間地点がわからなくて…“どこが正解ですか?”とお聞きして、香美さんが発音してくださったのを聞いて、そのまま歌う。そういうふうにやりました」
佐藤「今回は自分のパートが来たらブースに入る形式でレコーディングしたんです。頭からフレーズごとに一人ずつ歌っていくっていう、カッコいい流れが続いていたので、“いつも違う感じで歌った方がいいのかな?”と思って。でも、第一声は自分の声になってしまうので、そのまま歌ったら、“その感じも可愛い”と言ってくださいました。自分の色を肯定してくださったおかげで、自分らしく歌えました。緊張していたんですけど、“そのままでいいよ”と言ってくださったので、安心しました」
奥津「レコーディングでは気合いが必要なポイントが多かったです。私は“高音はどうやると出るんですか?”と聞いたら、“空手です”とアドバイスをいただきました。“殴ってください。空手してください”とおっしゃられたので、本当に正拳突きをしながら歌ったらグッドテイクが録れました。全部殴りながら歌ったので(笑)、気合いが入ったテイクになっていると思います」
──広瀬香美さんといえば、やはり高音の伸びと迫力が特徴的ですよね。
日向「そうなんですよ。しかも、何十年もずっと同じパワーで出されていて。高音って単発だと出るんですけど、続くとのどが締まってきたり、キンキン声に聴こえてしまうので。出る音域のはずなのに辛そうに聴こえてしまったり、まだ自分の中で使いこなせてないと思っていたので、私も高音の出し方について質問すると、香美さんがご自分の喉の筋肉を触らせてくださって!」
──どうでしたか?
日向「首周りの筋肉がすごかったです! “これ、どうやってつくんですか?”と聞いたら、“筋トレよ。"とやり方を教えてくださったり、あとふくらはぎの筋肉も触らせていただきました。やっぱり喉と体の筋トレを継続してやられているから、パワフルな歌声がずっと続くんだということを実感しました。広瀬さんはボイトレのメソッドを持ってらっしゃるので、質問したことに対してすごくわかりやすく教えてくださって、すごくためになりました」
──勉強になりますね。
──MV はどんな映像になっていますか?
香山「黒バックに白いタイツのダンサーさんと白い衣装を着た私たちのシンプルな構成なんですけど、ダンサーさんたちが雪の結晶を表現したりとか、集団で表現するコレオになっています」
佐藤「この曲のパワフルさに負けないぐらいのダイナミックな動きが多くて。20人ほどのダンサーの皆さんと一緒に踊った圧巻のダンスシーンに注目してもらいたいです」
木葭「ダンサーさんはみんな同じ冬の妖精さんなんですけど…例えば、<私のママとパパもゲレンデでフォーリンラブ>ってところでは、ななこちゃんの横にパパとママの妖精さんがいたりとか、細かいところまで監督さんのこだわりが詰まっています」
佐藤「そう! スキーのリフトも出てくるんですけど、そのリフトも監督が自ら手作りしてくれているんです。“シートの布選びから自分でやった”と言っていて…クッションが入っていて、座り心地も最高でした」
奥津「大きなスノーボートの上にメンバーが寝転がって、その周りに妖精さんがいる…俯瞰で撮るカットがあったんですけど、それがかなりな高さだったんです。高さ150cmくらいにセットされた板の上でまりあが寝てて。その周りで白い妖精さんたちが踊ったり、ジャンプしたりとかしているシーンで、“あ、マリアが連れていかれちゃう…”って感じてしまいました。MVで見ると、“まりあがただ寝ていて、周りを妖精さんがいる”という状態なんですけど、横から見ているとなにか儀式をやっているような不思議な光景だったので、“まりあ、今までありがとうね”と言いに行って…」
佐藤「たしかに。何度か顔を見に来ていました」
奥津「あれはまりあもいけないよ。手を組んで寝ているから。不思議と忘れられない光景になりました」
日向「ずっとお世話になっている監督なので、空き時間にお話をしたんですけど、“絶対に後悔をして帰りたくないんだ”とおっしゃっていて。後で“もうちょっとこうできたな”とか、“撮り残しちゃった”とか、そういうことをしたくないんだって。今回は監督のこだわり…生産者さんの声を直接、聞けたことで、改めて、私もその熱量に応えないと!と思いました。あと、ダンサーの皆さんもその場で振付師の方が振りを入れて、すぐ撮影するってテンポ感で撮影が進んでいったシーンもあったんです。みんながこんなに本気でやってくださっているなら、私たちが引っ張っていかなきゃ!と感じたというか…私たちも背筋が伸びることが多かったですし、演者としてきちんといい作品を作ろうって、いい意味で緊張感がある現場でした」
──「ゲレンデ・ファンキー・ラブ」はクリスマスイブにリリースされますので、クリスマスの思い出を聞いてもいいですか?
香山「私は小学生の頃に2年連続、たまごっちをサンタさんにもらいました。お手紙を書いて窓に置いておくと、クリスマスの朝に枕元に置いてあって。1年目がノーマルのやつで、2年にちょっとキラキラしたのをもらいました。その2個目のたまごっちの色が私のメンバーカラーの紫色だったので、その頃から紫色が好きだったのかもしれません」
木葭「私はクリスマスはほとんど家族と過ごしてきたんですけど、大学生4年生の時に初めて4人組の女の子の友達とクリスマスを過ごしました。その時に初めてクリスマスパーティーというものを経験して…人生ゲームとかもして!」
日向「ウェ〜イ! 陽キャ!」
木葭「ふふふ。人生ゲームでは借金まみれになったかと思えば、急にお金が入ってきたりして。“友達と過ごすクリスマスってこんなに楽しいんだ!“と知りました。友達と初めてオールしたのも楽しかったですし、今でも思い出に残っています」
佐藤「私は少し方向性違うんですけど…食のこだわりがあって。イオンに売っている、袋のままオーブンで焼く“味付けローストチキン”がすっごい美味しくて、2年連続で食べています。それまではフライドチキン一択だったんです、ずっと。でも、一昨年にイオンでそのローストチキンに出会ってしまいました。それからは毎年食べているので、このインタビュー記事を読んでる方にもおすすめしたいです。あと、私、大のシャンメリー好きで。その日はまるまる一本を一人で瓶でそのまま飲むのが楽しみなんです!」
奥津「酒豪だね。ジュースだけど」
佐藤「いつも家族がピカチュウのシャンメリーとか、何本か買ってきてくれるんです。それをありがたく瓶で飲んでいます。そんなクリスマスの過ごし方です」
奥津「マリリは“クリスマスにも哲学しちゃう!?”を掘り起こしておこうかな?」
日向「言おうと思った! 2015年、結成した年。学芸大学のMAPLE HOUSEで行われたフィロソフィーのダンスのクリスマスイベントです!」
奥津「人数制限があったので、五十人以下の少ない大古参の皆さまと過ごした、アイドルとして初めてのクリスマス」
佐藤「なんか料理付きだったよね?」
奥津「そう。紙皿で簡易的ではあるけど、お料理とシャンパンがあって、初めてサンタコスもして。“あ、アイドル始まったな。アイドルっぽいな、これ”と思った記憶があります。そこから毎年のようにサンタコスを着るようになって。アイドルになってからはクリスマスはファンの方と過ごすものになっているので、そこから始まったと思って…」
日向「なつっ。その時に、“日本武道館でライブをやったらバックステージに入れます“という、すごく簡単な書類を作って、その場でファンの人がサインと押印かなにかをして…」
──契約書を発行して、サインももらっているんですね。
奥津「ソニーからしたら、“やめてくれよ、勝手にそんなの!”って感じですよね(笑)」
日向「正式な書類ではないですけど、今も何人かは持ってくれていると思います。私たちはそこから始まっているから。私はアイドルを始めるまで、全てにおいてイベント事をしてこなかった人生でした。“クリスマスが楽しい”とか、“夏はフェスがあって楽しい”とか。そういうのを教えてくれたのは全部アイドルのおかげです。イベントの季節が来るたびに、“アイドルになって、フィロソフィーのダンスで良かったな”と感じますし、フィロソフィーのダンスで過ごした時間が今の私を形成しているので、感謝の気持ちでいっぱいです!」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/中村功
RELEASE INFORMATION

フィロソフィーのダンス「ゲレンデ・ファンキー・ラブ」初回生産限定盤(CD+BD+フォトブック)
2025年12月24日(水)発売
SRCL-13475〜7/10,000円(税込)
LIVE INFORMATION

フィロソフィーのダンス One Man Show 2026 at Billboard Live YOKOHAMA ~Halu Hinata Birth Anniversary~
2026年1月25日(⽇) ビルボードライブ横浜(1 ⽇2 回公演)
1stステージ 開場14:00 開演15:00 / 2ndステージ 開場17:00 開演18:00
※THANK YOU SOLD OUT※
フィロソフィーのダンス One Man Show 2026 at Billboard Live YOKOHAMA ~Halu Hinata Birth Anniversary~
















