――新曲の「寒流」は、二度と逢えない人への想いや哀しみを、情熱的に歌い上げた作品です。発売から1ヶ月ちょっと経ちましたが、手ごたえはいかがですか?
「作曲をシンガーソングライターの小田純平先生にお願いした作品です。僕は何年も前から小田先生の「オモニ~母へ~」という曲をカバーさせていただいていて、“いつか僕の曲を作っていただきたい”とずっと思っていたんです。小田先生からも“ジュニョンくんのために曲を書きたい”と言ってくださっていたので、お互いの念願が叶った曲です。小田先生が“ジュニョンくんにピッタリ合う曲だよ”とくださった「寒流」です。僕も”この曲は本当に僕のための曲だ“と、歌うたびに感じています」
――お互いに何年も思い合っていたことが実現したのは、本当にうれしいことですね。
「はい、すごくうれしいです。曲だけでなく、今回は歌詞も僕のために書いていただきました。作詞家の水木れいじ先生に書いていただくのは初めてでしたが、水木先生は今まで僕が歌ってきた歌を全部聴いて、発音なども研究してくださったんです。韓国人の僕がきれいに発音できる言葉を選んで、書いていただきました。たとえば、出だしの<海峡はるか>の“か”などがそうです。歌っていて、まったく引っ掛かるところがなくて、まるでオーダーメイドのスーツを着たみたいピッタリなんです。皆さんの心にまっすぐ届けられる曲をいただきました」
――カップリング違いで【Aタイプ】と【Bタイプ】が同時発売でしたね。【Aタイプ】の「赤い雪」はどんな曲ですか?
「「寒流」とは曲調が全然違いますが、こちらもすごく情熱があるバラードです。“赤い雪”って存在しないものじゃないですか。この歌の主人公は、あってはならない恋をしてしまった。そういう女性の存在を、白い雪にはなれない“赤い雪”にたとえているんです。“あなた”に出会えて恋をしたことを後悔してはいない。ただ悲しんでいるのではなく、冷たい雪に埋もれながら幸せを感じている女性なのだと、水木先生に教わりました。普通に声を出して歌うよりも、声にブレスを込めて…。寒くて手に息を吹きかけるようなイメージで歌って、雰囲気を表現しています」
――【タイプB】のカップリング「愛が壊れた日」は疾走感がある曲ですが、ジュニーさんご自身が作曲を手がけたそうですね。
「はい。韓国のトロットを日本の歌謡曲に取り入れたいとずっと思っていたので、トロットのメロディーで作ってみました。先に曲を作って、最初は歌詞も自分で韓国語で書いてから、それに日本語の詞に付けていただんです。僕が書いた詞は別れがテーマでしたが、もう覚えていないですね(笑)。作詞も作曲も韓国にいたころに何度か挑戦していました…日本に来てからは素晴らしい先生方からたくさん作品をいただいていたので、自分で作ってみようとは思っていませんでしたけど。トロットは韓国の演歌で“成人歌謡”ともいうんですが、ノリノリの歌謡曲もあれば、日本のど演歌みたいなものもあります。少し前まではお年寄りが楽しむ音楽というイメージがありましたが、4、5年前にトロットのオーディション番組が大ヒットして、今の韓国では若い方からお年寄りまで愛されるジャンルになっています」
――日本と似ていますね。日本の演歌も、昔はお年寄りが聴くものというイメージでしたが、近年は若手の演歌歌手が活躍しています。
「僕の役目はそこにあると思っているんです。若い方にも楽しんでいただけるような演歌・歌謡曲を歌うことが、僕の役目であり使命なんだと。そして今は日本を拠点にがんばっていまが、いつか日本の演歌・歌謡曲を韓国に持って行きたいと思っています。今の韓国では日本の音楽、特に演歌・歌謡曲はあまり知られていないんです。でもそれはただ知られていないというだけで、僕が出会ってこんなに好きになって、歌手になるくらいハマっているんですから(笑)。韓国の皆さんにも、“日本にはこういう素晴らしいジャンルがあるんですよ”と紹介して好きになって欲しいです。僕の夢は、歌を通して日韓の交流の架け橋になること…ずっと変わらない僕の一番の夢です」
――お忙しくてなかなか帰れないと思いますが、韓国へ行かれる機会はありますか?
「つい先日、日本のファンの皆さんと、ソウルで2泊3日のファンミーティングツアーに行って来たんですよ(※)。コロナもだいぶ落ち着いて、皆さんからは何年も“連れて行って!”と言われていたのがようやく実現したツアーです。僕もすごく楽しみで、何をしたらファンの皆さんが喜んでくださるかを考えて、プランを決める段階からすべて関わりました。参加者の方がツアーの途中で、まだ終わってもいないのに“また連れて行ってね”と言ってくださったくらい楽しかったです(笑)」
(※3/11~3/13 パク・ジュニョン ツアー2024 昼も夜も真夜中も in ソウル)
――ファン思いのジュニーさんと過ごした時間は、参加された方にとっては一生の思い出ですね。どのようなプランだったのでしょうか?
「ファンの皆さんに、日本各地の空港から仁川国際空港に来ていただいて、僕はお出迎えをして、一緒に観光したり、グルメを楽しんだりしました。ソウルのお城では、僕が時代劇の王様の衣装を着て、皆さんとツーショットを撮ったんですよ。僕が初めて経験したのは、“お部屋訪問”です。皆さんの泊まるお部屋にお邪魔して、薔薇の花をお渡ししました。僕のファンであっても女性の方じゃないですか。女性のお部屋に入っていいものか、ワクワクドキドキで(笑)。なんだか不思議な感じがしました」
――プラーベートで楽しんでいること、趣味などはありますか?
「海水魚を飼っています。その子たちと一緒の時間を過ごすことが、僕の趣味です。渋谷で買い物をしているとき、すごくきれいな水槽を見て、“僕もこういうのをやってみたい”と思って飼いはじめました。いまはカクレクマノミとナンヨウハギが全部で8匹と、エビも1匹います。2020年の3月からだから、もう丸4年になります。ちょっと恥ずかしいんですけど、話しかけてみたり(笑)。エサをあげて、みんながちゃんと食べているのを確認したりしています。家にいるときは自分でエサをあげますが、家にいないときは毎日エサが自動で出るようにしています」
――魚の観察することを、“その子たちと過ごす”とおっしゃる(笑)。他にはストレス解消に、どんなことをされていますか?
「僕は、学生の頃からまったくスポーツをやってこなかったんで、外で身体を動かすような趣味じゃなく、家でやることが多いですね。海水魚の他にはレゴ・ブロック。大人向けのレゴには4,000ピース以上のものもあって、それを作ろうと思ったら、一日がすぐ過ぎてしまいます(笑)。ビルディングセットと言って、建物や街づくりのセットもあるんです。それを作っていると、集中してストレス発散ができるんです。一番の大作は「ブティックホテル」です。レゴのホテルの中に、ベッドとかトイレも作ってあるんですよ」
――歌もプライベートも楽しんでいらっしゃいますが、どんなことでも楽しめるコツがあれば教えてください。
「そうですね…今しかできないことは、今やることにしています。もう遅いと後悔しないように。たとえばの話ですけど、学生時代だからこそできる恋ってあるじゃないですか。年を重ねると恋に対しての感情も変わってくるし、他のこともそうだと思います。そのときでなければ感じられないこと、そのときだから感じられることを大切にして、何にでも挑戦していきたいです。僕は好奇心が旺盛なので、いろんな経験をしてみたいと思っています。そういう気持ちがなかったら、日本で歌手になりたいと思っても、途中であきらめていたかもしれないですよね」
――逆に経験してみることによって、“ああすればよかった”と後悔するようなことがあったときは、どうやって気持ちを切り替えますか?
「その時は、“ああすればよかった”という後悔かもしれませんけど、時間が過ぎてみると“ああ、これでよかったんだな”と感じられることが多くないですか? 先日「新・BS日本のうた」に出演して、沢田研二さんの「時の過ぎ行くままに」を歌わせていただきましたが、その通りだと思いました。時の過ぎ行くままに、流れに逆らうことなく身をまかせていく。歌詞だと<堕ちてゆく>ですが(笑)、前向きに考えていくのが一番いいと思います」
――K-演歌の旗手として、日韓の架け橋として、これからも活躍してください。最後にファンの皆さん、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
「パク・ジュニョンは今、「寒流」をがんばって歌わせていただいています。ぜひ皆さんにも聴いていただきたいです。歌っても気持ちのいい曲ですので、それぞれの思いを乗せてカラオケなどで歌ってみてくださいね。まだ寒暖差のある日が続いていますので、風邪などひかないように。桜のシーズンも楽しんでください。これからもどうぞよろしくお願いします!」
(おわり)
取材・文/夏見 幸恵
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION
3人の歌仲間#70 in大阪
出演:大江裕/パク・ジュニョン/松尾雄史
2024年5月25日(土) 大阪府 朝日生命ホール
パク・ジュニョン「歌のコンサート」in塩原鳳凰座
2024年5月14日(火) 栃木県 ホテルニュー塩原西館2F「塩原鳳凰座」