――シングルとしては2022年11月に発売した「Let Go」以来、1年以上ぶりのリリースとなる「BREMEN」。2024年第1弾シングルにこの楽曲を選ぶ決め手となったものは、どういった点でしたか?
本田康祐「デモを聴いて“ビビッ!”と来たのが、この「BREMEN」でした。こればっかりはフィーリングなので。何十曲も聴いた中で、この「BREMEN」は、次に出すシングル曲として、そのタイミングも全てがいいなと思いました」
――みなさんが“ビビッ!”と来たポイントを伺いたいのですが、個人的にラスサビ前に入るパートがアクセントになっていていいなと思いました。
浦野秀太「えっ、本当ですか!?」
佐野文哉「あのパート、ダンスブレイクなんですけど、実はデモのときはなくて。僕らから提案して作ってもらったんです」
――そうだったんですか…!
佐野「そうなんです。なので、僕ら主導でやったところが耳に残るって言ってもらえたのは、すごくうれしいです」
中川勝就「話し合いの段階では“本当にいるのか?”みたいな議論もありましたからね」
佐野「僕が我を貫きました」
中川「確かに文哉を筆頭にでしたけど、僕たち4人の意見として、この曲で表現したいものがあるからっていうので付けていただいた部分なので、そこがいいと言ってもらえるのはすごくうれしいですし、報われた感じがしました。ありがとうございます」
――いえいえ、本当にいいなと思ったので。
――とはいえ、そのパートはデモの段階ではなかったということで、最初はそれ以外のところで“ビビッ!”と来たことになりますね。
中川「そうですね。各々で違うと思うんですけど、僕の場合は、今回に限らずデモの試聴会では、トラック感であったり、歌のハメ方だったり、“楽曲が良い”と思って僕たちを知ってもらえるといいなってことを意識しながら聴くようにしていて。「BREMEN」も、そういう意味でいいなと思ったんです。特に、勝手に頭を振らせるようなトラック感に惚れて、この曲にしたいと思いました」
浦野「僕はライブで乗れるビートが印象に残りました」
本田「僕は「BREMEN」のイントロとアウトロが好きで。イントロを聴いた瞬間に“なんだ、この曲!?”っていうワクワク感があって、“ビビッ!”と来ました」
――佐野さんがダンスブレイクを付けたいと思った理由は何だったんですか?
佐野「最終的に2曲に絞られたんですけど、デモの段階だと「BREMEN」は、おそらく仮歌の雰囲気もあって、もう1曲と比べて盛り上がりに欠ける印象が拭えなくて…。なので、曲にもう一つメリハリをつけるために、ビートとかトラックをラスサビ前に差し込んで転換したらいいんじゃないかな?と思ったんです。逆に、それができなかったら僕はこの曲を選んでなかったかもしれないっていうくらいです。でも、話し合いの末、ダンスブレイクの追加にゴーサインが出て、しかもイメージ通りの音を入れていただけたので。結果、“「BREMEN」最高だな!”って思います」
浦野「ダンスブレイクのパートは文哉が先頭でバチバチに踊っているんですよ」
中川「MVもぜひ観てもらいたいですね」
――また、歌詞を書かれたZE®️O(YVES&ADAMS)さんは「Last scene」(2ndアルバム『JACK POT』収録)を手掛けた方ですね。
本田「僕たちの中で「Last scene」の歌詞とかフレーズの言い回しとかが、バシッとハマった感覚があったんです。どの世代が聴いてもカッコいいと思える歌詞でありながら、内容もしっかりあるところがすごく魅力的だなって。だから、またお願いしたいなとずっと思っていたんですよね。今回の「BREMEN」の歌詞が上がってきたときも、“一緒に音楽を楽しもうぜ!”っていうメッセージが込められているのが素敵だなって思いましたし、QWV(注:OWVのファンネーム)のみんなはもちろん、これからOWVを知って、一緒に僕たちの曲で盛り上がってくれる方々にも、しっかり受け取ってもらえる曲になったんじゃないかなと思います」
中川「ZE®️Oさんが書く歌詞って、言い回しがすごく今っぽかったり、耳に残りやすかったり、“こんな言葉をハメるんだ!?”みたいな驚きがあるというか…歌詞として伝えたいことはしっかりあるけど、遊ぶところでは擬音とかを使って、言葉じゃなくて音としても聴かせられるような、そのメリハリのバランスがすごくいいんです」
――『OWV LIVE TOUR 2023 -MUSEUM-』ですでに披露されていますが、QWVのみなさんの反応はどうでしたか?
本田「昨年12月の大阪公演で初披露したんですけど、手応えを感じましたね。実は、10月のツアースタート時から、エンドロールで「BREMEN」のインストを流していたんです。大阪でそれをいきなり披露させてもらったときの湧き方はヤバかったですね」
中川「今までで一番盛り上がったよね」
本田「歌い終えた後もヤバかったですね。拍手が鳴り止まない、みたいな」
中川「たぶん今も続いています」
――今、この瞬間も(笑)。
本田「それは確かに。冗談じゃないでしょ?」
中川「冗談です(笑)」
本田「って思うくらい、すごく手応えがありました。曲も、パフォーマンスもカッコいいので」
――パフォーマンスの見どころを教えてください。
佐野「振り付け自体にちょっと余裕感があるというか…」
浦野「デビュー曲の「UBA UBA」からそうなんですけど僕らのこれまでの曲って、“俺たちについて来てくれ”みたいな感じだったんですけど、「BREMEN」は何て言うか、“最高の景色を見せてあげるよ”っていうほうで」
――“ついて来い”じゃなくて“連れて行く”、と。
佐野「なので、振り付けも“着いて来い”系のテンションっていうよりかは余裕感。その中に強さだったり、洒落た感じだったりがしっかり含まれたものに仕上がったと思います。そういう楽曲の方向性もそうなんですけど、今回、振付師の方も初めての方にお願いしたので、僕ら的にもかなりチャレンジな1曲でした」
――どなたにお願いしたんですか?
佐野「KAITAくんです。KAITAくんとは同世代なこともあって、セッションしながら作品作りができた気がします。パフォーマンス自体もそうですし、MVも、KAITAくんが撮影現場に足を運んでくれて、ディレクションしてくれたんですよ。そのおかげで、ダンサー視点、振付師さん視点のこだわりというか、パフォーマンスをより映えさせるようなカメラワークが組まれていると思うので、ぜひ注目していただきたいです」
本田「今回すごかったのが、メンバー同士で“KAITAくんにお願いしたいね”って話してる段階で、スタッフさんから“この人どう?”って来たのがKAITAくんだったんですよ」
――それはすごいですね。KAITAさんにお願いしたいと思った理由は?
本田「KAITAくんがOWVをどう料理してくれるかが楽しみっていうのもありつつ。あと、「BREMEN」の裏テーマじゃないですけど、僕らの新しい一面が見せられるように衣装とかも決めたりしているので、そういう意味でも今までやったことがない振付師さんと組みたいっていうのはありました」
――振付師さんが現場に来ることって少ないと思うのですが、経験されてどうでしたか?
佐野「撮影ではとにかくめちゃくちゃ踊ったんですけど…つまり後半になればなるほど僕らは追い込まれるわけじゃないですか。そこでKAITAくんが、“マジで次が最後なんで、ブチ上げていきましょう!”とか、どんどん鼓舞してくれるんですよ」
浦野「“頑張ろう!”って思えるよね」
中川「現場にKAITAくんがいてくれて本当に助かりました」
佐野「僕らもまだ完成したものを見れてないんですけど(※取材時)、MVは監督さんとKAITAくんと、僕らメンバーのこだわりたい部分とっていうのが、いい具合に組み合わさった最高の仕上がりになっていると思います!」
――そして、カップリングには「YOU ARE THE ONE」と「SLEEPLESS TOWN」を収録。「YOU ARE THE ONE」のほうは、「BREMEN」での“みんなを連れて行く”という世界観から一転、1対1のミニマムな世界観になる、そのコントラストが面白いところですね。
佐野「そうですね。QWVのみなさんの中には、僕らのミッドバラードを好いてくださる方が多い印象もあって。「BREMEN」みたいに勢いで新しさを提示するのもカッコいいですけど、「YOU ARE THE ONE」はインナー部分でグッとくるQWVのみんながいるんじゃないかなって思います」
中川「ただ、今回のシングルのテーマが“ノレる”ってことで、「YOU ARE THE ONE」はミッドバラードでありながらビートがしっかり入っているので、ノリやすい曲にはなっているんじゃないかな、と」
佐野「ラップパートもありますし」
中川「歌詞は割と重めというか、“不器用な自分だけど、やっぱりあなたのことが1秒でも恋しい”みたいな一途な内容なんですけど、そのなかでも、ラップのパートでは大人の男のセクシーな部分が見えたり、純粋できれいなメロディが重なっていたり。何て言うんですかね…フフッ(笑)」
浦野「あ〜、惜しかった!あとちょっとだったのに(笑)」
中川「話しながら“いろんなものがいっぱい詰まったきれいなものって何だろう?”って考えてたけど、何も出てこなかった(笑)。しかもこの曲、2分ちょっとで短いんですよ。にもかかわらず、1曲でいろんな感情を楽しめる、そんな楽曲になっています」
――短い中にいろんなものがギュッと詰まっているからこそ、歌うのが大変だったりするんですか?
中川「逆に消化しやすかったかもしれないですね」
浦野「そうだね。想いを込めやすかったです。やっぱり、“想い”ってタラタラ言うもんじゃなくて、バシッと言ったほうが伝わるじゃないですか」
本田「確かに」
浦野「これくらいがちょうどいいというか、これくらいでもちゃんと伝えられるのがOWVだと思うんです。これまでは結構長い歌詞が多かったけど、これからは…(と言って紙資料をめくって「SLEEPLESS TOWN」のページを見る)」
中川「なが〜〜〜い!あんま見たことないよ、ここまで長い歌詞(笑)」
佐野「「YOU ARE THE ONE」の3曲分くらいある(笑)」
浦野「この流れで「SLEEPLESS TOWN」にいっちゃいますけど、これね、本当にすごい喋るよね(笑)」
佐野「全部説明してくれてるもんね」
浦野「そう。でも、この曲に関してはほぼラップだから、どうしても文字が詰まってこれくらいのボリュームになっちゃうし、一つひとつのリリックをピックアップするのも野暮というか…」
――「SLEEPLESS TOWN」も「BREMEN」と同じZE®️O(YVES&ADAMS)さんの作詞なんですね。
中川「ZE®️Oさんってラッパーなんですよ。なので当たり前ですけど、言葉のハメ方がすごく上手で。例えば、2連符をめっちゃ使うとか、歌詞も1音に対して日本語1文字が基本なんですけど、ZE®️Oさんの場合は2文字入れたりとか…そうすることによって疾走感が増すんです。そのスピード感って、僕たちがこういう曲を歌う上で欠かせないんですよね。そういう意味でも、めちゃくちゃ信頼している方です」
――「SLEEPLESS TOWN」は和の雰囲気が漂う音色が印象的ですが、もともとこういったサウンド感だったんですか?
浦野「そうです。ただ、これも「BREMEN」と一緒で、デモの段階ではダンスブレイクがなかったんですよ」
本田「でも、もとから日本ぽい音源が使われていて、最初に聴いたときから面白いなと思いましたし、何よりカッコよさが際立っていて。メンバーの間でも“この音源でダンスブレイクしたらかっこいいよね”って話がすぐに出ました。聴きながら“ダンスブレイク来い!”みたいな感じで待っていたら来なかったので、入れてもらいたいなっていう…」
浦野「このサウンド感でダンスブレイクを作ったら、絶対キャッチーになるなって」
本田「そうそう。そういう話がどんどん出てきたから、この曲をやるっていうのは、その場ですぐに決まりました。 “この音で踊りたい”って強く思ったのを今でも覚えています」
――振り付けはどなたが?
佐野「この曲もKAITAくんです」
浦野「まだ振り入れしてないんですけど(※取材時)、おそらくこれもカッコいい振り付けになると思います」
――シングル「BREMEN」はまさにOWVの新機軸を提示する作品に仕上がっている印象ですが、それを打ち出せる背景には、2023年の活動が充実していたこともあるのではないかと想像します。今作に影響を与えた出来事や特に印象深い出来事といえば、どんなことですか?
浦野「2023年はツアーを2本やったっていうのが大きいですね。春の『OWV LIVE TOUR 2023 -CASINO-』と秋から年明けにかけての『OWV LIVE TOUR 2023 -MUSEUM-』とでOWVの成長というか、“OWVってやっぱすごいな!”っていうのを改めて感じたので。あと、個人的には2月に舞台をやらせていただいて…初舞台だったんですけど、舞台があったからツアー2本ができたと言っても過言ではないくらい、学ぶことが多かったです」
本田「秀太も言いましたけど、ツアーを2本やらせてもらって、そこでアーティストとして成長できたんじゃないかなとは思います。それに加えて、2023年は各々いろんな活動をして。秀太の舞台もそうですし、文哉はフルマラソンを走ったり、DJとしてイベントに出演したり、それこそ『ぽかぽか』に勝(就)と秀太が出ることになったり。僕も初舞台、初主演をさせてもらって(メンバーから拍手)。演劇とライブはちょっと違うかもしれないけど、同じエンターテインメントとして、この3人にも何か伝わるものがあったと思うし。文哉なんか4回も観に来てくれて…」
佐野「観てないよ(笑)」
本田「4回のうち3回は泣いたんだっけ?」
佐野「いや、それ、スラムダンクの映画(『THE FIRST SLAM DUNK』)の話だから(笑)。でも、舞台1回は観に行きましたよ」
本田「あ、スラムダンクの話だったか。ごめん、ごめん。まあ、そんな感じで、僕としても新しい経験ができましたし。2023年は本当に学びの多い1年で、それを経ての今年がどうなるのか、より楽しみに感じています」
――佐野さんと中川さんはいかがですか?
佐野「2023年は、“どうやってOWVというスタイルを確立し、貫いていくか?”を、これまで以上に意識して過ごした1年だった気がします。自分たちのツアー以外にも、オムニバスなイベントに出演する機会が増えて、いろんな方々と交流するなかで、そこを自然と考えるようになったというか…そこで得たものを、今回の「BREMEN」と共に2024年の活動に繋げていきたいですね」
中川「僕は昨年、初めて俳優の仕事をさせてもらいまして。役を通して得るものもありましたし、これは前代未聞と言っていいと思うんですけど、いわゆるボーイズグループの活動をしながら、恋愛モキュメンタリー(『恋するシナリオ』)に出演するっていう。なんか、あれ?って」
浦野「伝えたいのはそこだよね」
中川「正直な話をすると、番組に出るの、ビビってました。本当、スタッフさんにも“ちょっと考えてください”って何度も言ったんですけど、もうスケジュールに入ってるってことだったので、意を決して出ることにして」
浦野「勝就も最初話を聞いたときは、出演することでファンの人たちを悲しませちゃうかもしれないって言っていて。だからこそ、そのオファーを受けたってことは相当な覚悟を持ってのことだし、実際、勝就の成長にも繋がったと思うし…」
中川「何目線(笑)。いや、でも、本当そうなんですけど」
本田「やっぱり、1人の女性と触れ合うことは…」
中川「何?俺より喋るやん(笑)」
本田「1人の女性と触れ合うことは、すごい大事なことだと思って。やっぱり僕らも恋愛の歌を歌ったりするので。そこで勝就が、歌詞を体現する表現者としての新たな一歩を踏み出せたので、僕は評価したいですね」
中川「ありがとうございます。リーダーもこう言ってくれてるし、文哉も満足そうな顔してくれてるし」
――この件について、佐野さんはまだ一言も言葉を発していませんが…(笑)。
中川「文哉は内に秘めるタイプなんで」
浦野「そうなんですよ。だって、文哉は有料会員にまでなって観ていたくらいですから」
佐野「(中川に向かって)…愛を知ったよな?」
中川「はい。って、モキュメンタリーなんですけど。でも、面白いですよね。メンバーがこんなにいろいろやっているのはOWVくらいなんじゃないかな?って」
浦野「1人は恋愛だけどな(笑)」
本田「ともすれば違反行為になりかねないのに、公式で恋愛してるから(笑)」
――確かに稀有なグループですね(笑)。多岐にわたって活躍する4人が、2024年にOWVとして目指すものを最後に教えてください。
本田「そうですね…2024年は、今話したような昨年各々が各々の場所で培ったものを持って、より良い1年にしたいですね。今の段階では、何か年末に大きい目標を掲げて、そこに向かって走って行くような年にしたいなって思ってます。例えば、武者修行みたいなのもしたいし、無料でいろんなところに行くとか、小さいハコでもライブするとかもしたいし。というのも昨年、音楽に触れる機会と僕たちOWVの音楽を聴いてもらえる機会をもっと増やしたいって、すごく思ったんです。なので、2024年はそういうことを実現しながら、個々の活動も頑張っていけたらと思っています」
(おわり)
取材・文/片貝久美子
写真/野﨑 慧嗣
- OWV『JBREMEN』 × radio encore
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