──まず、今年9月にアーティストデビュー5周年を迎える心境から聞かせてください。

「今年に入ってから、“5周年”ということを言わせていただくことが増えて…もう周年というお祝いが出来るくらいの年月が経ったのかと思うと、すごく感慨深く思います。“初めてのことが少なくなってきたな”、“だんだんと自分のやりたいことが言語化できるようになってきたな”、“歩いてきたな”という確かな実感も“5周年”という言葉を言っていくうちに湧いてきました」

──ご自身にとってはどんな5年間でしたか? 特に印象に残っている出来事や転機などはありましたか?

「アーティストデビューしてから生活が変わったのが一番大きかったです」

──どう変わったのでしょうか?

「声優活動に加えて音楽活動が入ってきたので、1日の過ごし方も変わりました。声優現場だけを移動していたところに、音楽活動が自然に入ってくるようになって。声優活動の時は役に入っていることが基本ですけど、音楽活動は“岡咲美保であること”が基本になってくるので、自分の座標になるところが全然違うんです。もちろん、普段も岡咲美保として生きてはいるんですけど(笑)、仕事として自分自身を見せていくのはまた違って…そこが生活に加わってきたのは、大きな変化だったと思います」

──声優アーティスト・岡咲美保としての在り方はこの5年で見えてきましたか?

「声優になる前から歌いたかったので、アーティストデビューした当時は、漠然とした憧れが強かったです。でも、そこで自分がどういうふうに動いていけばいいのかがわからなくて…。だから、最初はチームの皆さんにおんぶに抱っこで導いていただいたんですけど、コロナ禍が落ち着いてきて、1stワンマンライブ『Miho Okasaki 1st LIVE 2024 ~キラメキブルーム~』をさせていただいたのが20241月。その前後くらいから、徐々にファンの方と直接コミュニケーションが取れる機会が増えました。そこで、みんなが私に求めているものがわかりましたし、それに対して私はどういうところを広げていきたいかという自分の意見を話せるようになっていきました。最初は拙かったものも、最近では割とスラスラと自分がやりたいことが言えるようになってきたと思います」

──では、アーティストデビュー5周年を迎え、それを記念してリリースするミニアルバムをどんな作品にしたいと考えていましたか?

「まず、5周年を記念した1枚なので、“手に取ってくださるファンの方に音楽を通してメッセージを伝えたい”という気持ちがあって。“じゃあ、どうすれば伝えられるのか?”という会議をチーム内でしたときに挙がったのが、リード曲「フローリア」の作詞を私自身ですることでした。その「フローリア」を軸に、どういった曲を集めていくのか?となった時に、“感謝の1枚”としてもいいんですけど、みんなが安心して、“これが美保ちゃんだ”と思える要素もありながら、チャレンジもしたくて。“今までありがとう。そして、これからもよろしくね。ちゃんとついてきてね”と言うような挑戦もある1枚にしたいと思って。これまでお世話になった作家さんもいらっしゃいますが、初めましての作家さんもいれば、神前 暁さんのように学生時代から曲を聴いていた方に書いていただいたりもして。作詞も私にとってはチャレンジだったので、“チャレンジもあるけれど、私らしさもちゃんと忘れずに”という 1枚にしたいとと思っていました」

──ご自身で作詞をしたリード曲「フローリア」の作曲・編曲をされた神前 暁さんは憧れの方だったんですね。

「はい。神前さんはアニメソングをいろいろと書かれていて、学生時代からファンとして、カラオケで歌ったりしていました。私が聴いてきた曲はアニソンらしいキャッチーなロックが多かったんですけど、自分が『アイドルマスター』に関わるようになってから、神前さんが書かれたアイマスの記念碑的ソング「M@STERPIECE」を聴いて…その時に、“今までありがとう”だけではなくて、“これからもよろしくね”という、ちゃんと続いていく喜びのメロディーを実現される方だと改めて思いました。キャッチーさもありつつ、エモーショナルな楽曲の引き出しは、私はまだ挑戦したことがなかったので、新しい風を感じさせていただけると思ったのと、私が前々から好きだったのもあって、ずっと書いていただきたいと思っていた神前さんに念願叶ってお願いさせていただきました」

──良質なポップソングになっていますね。楽曲を受け取ってどう感じましたか?

「とても爽やかなんですけど、涙が出そうな…でも、毎日聴けるような、疲れすぎない重くないメロディーをくださいました。私、意外とこういう曲をやったことがなくて。バラードはバラード、電波ソングは電波ソングに振り切ってやってきたので、作詞スイッチを入れるのに少し緊張しました」

──どんな想いを書こうと思いましたか?

「最初に聴いた時に、“呼吸”みたいなものをメロディーに感じたんです。だから、まず、サビの<息を吸って/また止まって>から書きました。そこから、私にとって歌うことは生活に直結していると思って…“呼吸”から紐解いて、この活動を充実させていくことが私の人生になっているんだということを書いていきました」

──これまで歩んできた道を振り返るというよりは、明日や未来を感じさせる歌詞になっていますね。

「まさにそうです。“こんなところまで来れました!”ではなくて。5周年は確かに区切りにはなりますけど、日々は続いていて…救えなかったものもこぼれ落ちたものもあるけれど、明日があるので。明日を積み重ねた先に、きっと頼もしい私が待っているということが伝えたかったです」

──歌詞の<君>と<僕>は、ファンと岡咲さんですか?

「これは聴いてくださる方にお任せですけど、私が歌詞を書いた時に一番繋がったのは、私と私なんです」

──なるほど。

「そう思って聴くと、かなり、歌詞の印象が変わると思います。<僕>が今の時間軸の“私”で、<君>は10年後、20年後の“私”。20年後、いろいろ知っている私が、今、5周年に向けてひたむきに走っている私を見た時に、“あ、もっとこうやればいいのに”とか、“ここの小石を取り除いてあげたいな”とか。“ここに来るまでに翼があったらいいのにね”とか思うだろうなという目線と、“そこに行けたら”と、背中が見えないけれど思う私を織り交ぜた歌詞です」

──深いですね。でも、ファンとアーティストの関係としても聴けますよね。

「ありがとうございます。そうなんです。<君と歩くから>は、<僕>(今の自分)と約束したことを忘れずに歩いていくよという意味でもあるし、ファンの皆さんと歩いていくよというダブルミーニングです」

──ここでの<夢>や<約束>というのは?

1stワンマンライブで“いつか日本武道館でライブをしたい”、“ビックになるぞ!”って、みんなと約束したんですけど、そのことも入っています。ただ、自分としては、もっと昔から…それこそ“声優になるんだ”と思って勉強していた学生時代の自分を思い描いています。“今、やっていることが未来に繋がるのかな?”って不安になっていた、その時からずっと続いてる約束でもあります」

──ご自身のこれまでとこれからが詰まった曲なんですね。

──「フローリア」というタイトルにはどんな意味を込めていますか?

「サビから作詞をしたのですが、1番と2番で伝えたいことが異なる歌詞だと思っていて。1番ではフラットな自分に感覚を戻してあげて、2番で気づきを得るようにしたかったんです。その中で“どうしようかな?”と思った時に、サビの頭のメロディーが少し魔法をかける感じに聴こえて…そこで、一見わからない、呪文っぽく聞こえるけど、意味のある単語にしようと思いました。その時に読んでいた哲学書に“クオリア”という言葉が出てきたんです」

──サビの頭で<クオリア>と歌っていますね。“クオリア”の説明は難しいですが…。

「例えば、同じリンゴを見た時に、どのぐらい赤いと思うか。どのくらい硬いかな?とか、何を彷彿するか?とか。それは人それぞれの感覚であって、立ち入りもできないという…その感覚の哲学用語が“クオリア”です。これって、例えば YouTube を見て、“あ、すごく面白い”と思っても、そこに自信が持てなくて、コメント欄を見て、“やっぱりそうだよね”と思ったりしますよね。その真逆だと思ったんです。自分が迷子にならないところに行きたいよね、自分の時間をちゃんと自分として持ちたいよね、そんな魔法をかけてくれそうだと思って、<クオリア>にしました。2番で韻を踏みたくて“どうしよう?”と、いろいろとソラで歌ってて“<フローリア>みたいな言葉があったらいいのにな”と思って調べたらありました(笑)」

──(笑)。フランス語で“花が咲く”という意味だそうですね。

「デビュー時からお花と一緒に過ごしてきた私にはぴったりでした! そこは導きというか…ご縁だったんですけど、タイトルにさせていただきました。2番からラスサビまで、<フローリア>を抱きしめてやらせていただきました」

──楽曲が完成して、ご自身で聴いてどんな感想を抱きましたか?

「自分で作詞しましたし、すごく自分事ですけど、あまり自分事感がなく聴けました。例えば、受かるか落ちるかわからないオーディションが終わった後に聴いた時に、私なんですけど、私じゃないところからのエールみたいな感じがして…それって多分、<君>の方だと思うんですけど」

──20年後の自分からのエールですね。

「すごく包容力を感じました。自分の歌ですけど(笑)、みんなも未来の自分からのメッセージみたいに聴いていただければ、魔法のような曲になると思いました」

──そして、神前さんに続き、コミック版『転生したらスライムだった件』とのコラボソング「らぱっぱ☆PARTNER!」の作詞を手がけた唐沢美帆さんとも初タッグですね。

「声優活動では『転スラ』は欠かせないパートナーで…『転スラ』では、とてもお世話になっている唐沢美帆(TRUE)さんにまだ曲を書いていただいたことがなかったですし、この後に公開される予定のコラボレーションも初めての挑戦になってていて。5周年だからこそのご縁と新しい挑戦ができた、すごく嬉しい曲になりました」

──楽曲を受け取ってどう感じましたか?

「アニメの『転スラ』は幅広い世代の方に見られているんですけど、「らぱっぱ☆PARTNER!」は、ポップな曲調ということもあり、リムルと一緒に見ている方も体が動かせるような楽しい曲です。歌詞も曲調に合わせてすごくポップに韻を踏んだりしていて、実際に歌ってみても、ものすごく字ハマりが良くて、音にしやすい言葉ばかりでした。さすが美帆さんが書かれる歌詞だと感じつつ、ところどころに『転スラ』に合わせたような言葉選びもあって…<二人なら最強>や<マイメンと毎年 更新中>、<相棒>とか。キャッチーな言葉ですけど、『転スラ』を見ているとより胸にくるものがあります。私とリムルの関係をよく知ってくださっている美帆さんだからこそいただけた言葉だとすごく思いました。でも、難しくなりすぎず、絶妙な塩梅なので、“みんなでレッツゴー!”ってできたらと思っています」

──さらに、俊龍さんによる「イイ!!」にも<スライム>が出てきます。

「これは本当に偶然です(笑)。俊龍さんがいろんな「イイ」を集めている中で、私と『転スラ』の存在に気づいて入れ込んでくださった愛です」

──お祭りソングですが、「イイ!!」というのはアルファベットで5番目の“E”のことですよね?

「名探偵! まさにそうです!」

──(笑)。<Five Star>から始まりますし、5周年をお祝いしていますね。

「俊龍さんとは、20257月にリリースした1stミニアルバム『SHAKING』で「月の季節」を書いていただいたのが最初でした。だから、まだ1年くらいのお付き合いですけど、ワンマンライブだけではなく、8月に行った『キングスーパーリリイベ夏夏夏祭り 2026』にも来てくださって。私の活動を見守ってくださっているので、この曲もお祭りソングのようで5周年らしいキーワードをたくさん仕掛けてくださっていて嬉しく思います」

──<次元>、<転生>、<チート>、<スライム>なども歌詞にありますが、<相棒>や<パートナー>はこれまた複層的な意味でも捉えられる歌詞になっていますね。

「そうですね。この<パートナー>がいろんな捉え方ができるのがこの曲の面白いところだと思っています。私と『転スラ』という作品とも、私とリムルとも取れます。『転スラ』でいうとリムルとラファエルさんとも…私とファンの方とも取れます。いろいろとひっくるめて<相棒>なんだというところに私は愛を感じました」

──そしてElements Gardenとも初タッグの爽快感あるロックナンバー「ペリスコープ」、ボカロPの一二三による紙芝居のような和風バラード「ふしぎなあの子」を含めた5曲が揃った3rd ミニアルバムに『MY ÉTOILE』というフランス語のタイトルがついています。

「自分が作詞した「フローリア」で、私自身が確信を持って、未来の私に向けて力強く歩んでいくことを歌っています。そして、みんなも同じように歩いていこうねという想いを込めたので、遠くにいるけど確実に見えている存在ってなんだろう?と思って。しかも、私がずっと大事にしてきた“きらめき”という要素を踏まえて考えたときに“エトワールってすごくいい言葉だな”と思って。「フローリア」と同じフランス語で、一番星というイメージやバレリーナさんにとって憧れでもある…『ÉTOILE』にしようと思ったんです。でも、“自分の中の小さなきらめきに気づきたい”という私の願いを込めていた前作『MY GLEAM』とも繋がると気づいて。星のきらめきもそうですし、遠くも今もどちらも大事に歩んでいきたいので、“MY”をつけて、『MY ÉTOILE』とさせていただきました」

──1st ALBUM『BLOOMING』から始まって、2nd ALBUM『DREAMING』、1st MINI ALBUM『SHAKING』と続いていた“ING”シリーズが終わって、いつの間にか“MY”シリーズが始まっていたんですね。

「気づけばそうなんですよ。自分としては日々、同じ人間ではあるんですけど、この5年を通して変わっていっていると思って。変わらないところはありつつ、できるようになったこともあって、できなくなったこともある。人は変わっていくと思っているので、まさか“ING”がこんなに続いて…いつの間にか終わるとは!?ですけど、また新たな章が始まるということでも気に入っているタイトルです」

──最初に“自分がやりたいことをちゃんと言えるようになった”とおしゃっていたので、そこから“MY”になっているのはすごく自然な流れな気がします。

「確かに。本当ですね。無我夢中の“ING”から、“私の”と主語につけれるようになったのは変化の1つだと思います」

──星=スター、憧れというのはご自身のことですか?

「これもいろんな意味を持っています。“推し”って星だとも思っていて。皆さんが私を対象として、推し活をしてくださっているから、私の曲を手に取ってくれているわけで。じゃあ、みんなにとっては、すごくおこがましいですけれど、“光の1つになれている”という意味でのエトワールでもあります。また、私にとっては、もっと頼もしく、もっとキラキラしている未来の私がエトワールですし、聴いてくださっている方もきっと“将来こうなりたい”とか、“こういう自分になれたらいいのに”という憧れの自分像があると思います。そこをエトワールとして捉えていただいてもいいですし、自由に解釈していただきたいと思っています」

──そして 、9月には5周年ライブ『Miho Okasaki 5th ANNIVERSARY LIVE フローリア』が控えています。どんなライブになりそうですか?

「毎回、インタビューでライブの前に意気込みをお伝えしているんですけど、やってみないと“こういう時間だった”ってわからないことが多いんです(笑)。だから、まだ全然想像できていないですけど、5周年を記念したライブで、私にとって最大キャパとなるLINE CUBE SHIBUYAさんでやるライブです。しかも、1日2公演なので、挑戦的な公演になると思っています」

──昼の部が“~僕の鼓動~”、夜の部が“~約束の音~”というサブタイトルがついています。

「これは、“昼と夜、違った公演になるよ”って気づいてほしいという想いです(笑)。どちらも回収していただくと、私の伝えたい想いがより濃くなると思いますが、昼夜2公演も初めてのチャレンジなので、かなりドキドキではありますし、ライブが終わったら本当に私、ぐったりしちゃうかもしれません(笑)」

──あはははは。明るくテンション高い曲も多いですから。

「お客さんが元気だから、その姿を見るとどんどん煽っちゃうんですよ。いつもはアドレナリンでなんとかなっているんですけど、果たしてどうなるか…。(取材を行った日の)明日からリハが始まるんですけど、叶えたい理想はあるので、そこに自分を落とし込めるように、今回もより気合を入れて頑張りたいと思っています。でも、皆さんはそんなことは関係なく、気楽に私に会いにきてほしいです。曲を聴きにくるだけでもいいですし、気分転換とか何でもいいので、とにかく遊びに来てもらえるとすごく嬉しいです」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/中村功
衣装/shabondama

RELEASE INFORMATION

岡咲美保『MY ÉTOILE』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2026年92日(水)発売
KICS-942639,500円(税込)

購入リンク

岡咲美保『MY ÉTOILE』通常盤(CD only)

2026年92日(水)発売
KICS-42633,000円(税込)

配信リンク >>

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LIVE INFORMATION

Miho Okasaki 5th ANNIVERSARY LIVE フローリア

2026年9月13日(日)
昼公演:Miho Okasaki 5th ANNIVERSARY LIVE フローリア ~僕の鼓動~
14:00開場/15:00開演(17:00頃 終演予定)
夜公演:Miho Okasaki 5th ANNIVERSARY LIVE フローリア ~約束の音~
17:45開場/18:45開演(20:45頃 終演予定)
会場:LINE CUBE SHIBUYA

Miho Okasaki 5th ANNIVERSARY LIVE フローリア

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