──2023年を振り返って、Natuimi.さんにとってどんな1年になりましたか。
「楽曲をリリースするごとに、毎回、チャレンジさせていただいた年だったと思います。あと、地元でも活動することができたので、すごく楽しかった1年でした」
──昨年はドラマ『アトムの童』の劇中使用曲「ラストノート」とドラマ『バツイチがモテるなんて聞いてません』のEDテーマ「Knock」の2曲をリリースしました。それぞれにどんなチャレンジがありましたか?
「「ラストノート」はドラマの劇中使用曲であるアコースティックバージョンとフルアレンジバージョンの2パターンを録ったっていうこともそうですし、私は元々バラードにちょっと苦手意識があったんです。「Knock」は自分の高音を生かしつつ、歌唱力を強調する歌い方をしました」
──そうなんですか!?歌のスキルが高いので、バラードは得意なのかと思ってました。
「広島にいた頃はアップテンポのアニソンが大好きだったんです。でも、上京してからはバラードが好きになって、いつかバラードも歌いたいなと思っていたら、自分が想像していたよりも早い段階でこのような機会をいただいたので、自分で出したい歌の表現と聴いてくださる方にちゃんと歌詞が届くようにっていうことをしっかりと考えて…。<さよなら>という歌詞をを繰り返す曲なので、最初はもうちょっと暗めの歌声だったんですけど、未来に向かって背中を押すような歌声で明るく表現したいと思っていて。声色やテンション感の部分でのチャレンジができたと思います」
──続く、「Knock」はアッポテンポのエールソングになってました。
「明るい雰囲気で歌いやすい方の楽曲ではあったんですけど、何より高音がすごくて!」
──もうすぐでホイッスルヴォイスになるんじゃないかっていうくらいの高さですよね。
「あははは。自分で調べたら、今まで歌っていたどの曲よりも高い音で歌っていました。歌うのは大変ですけど、聴いてくださる方には大変そうに聞こえないように歌いたかったんです」
──勢いもあるので突き抜けていく気持ちよさがありましたよ。
「ありがとうございます。レコーディングでは頑張れたので、今後ライブでしっかりと歌えるかっていうのが自分の中での課題です。あとは、制作期間が短かったので、割と早いスパンで曲を仕上げるという意味でもチャレンジでした」
──そして、地元の広島での活動もあったとおっしゃっていましたね。
「地元でラジオの公開生放送があり、そこで歌唱しました。幼い頃から何度も通っていた場所で、皆さんにアーティスト=Natumi.としてデビューしたっていうことを歌声を届けることができたことがとても嬉しかったです。その他にも、ラジオ局へ挨拶に行かせていただいたり、番組に出演させていただいたラジオもあったんですけど、“今日、ファンになりました”というコメントが届いたりもして。イベントで歌ったステージを見て、すごく気持ちが伝わってきたので新しくファンになりましたっていうストレートな感想もいただけてとても嬉しかったです。2022年も地元で歌う機会はあったんですけど、その時よりも成長したNatsumi.を見せることができたし、ちゃんと心の部分を歌で伝えることができたんだなっていう実感があって、とても印象に残った出来事でした」
──2022年4月に、アニメ『境界戦機』第二部エンディングテーマで、澤野弘之楽曲プロデュースの「pARTs」でデビューしてから約1年9ヶ月が経ちましたが、ご自身の活動のペースはどう感じていますか?
「もっとたくさんの人に届けられたらよかったなと思うところはあるんですけど、その中でも2曲目、3曲目とリリース出来たのは嬉しかったです。ただ、やっぱり内心ではもっと皆さんに歌を届けたいと思っていて2023年はワンマンライブをやりたいという目標を立てていたんですけど、そこまではいけなかったことが少し残念ではありました。まだまだNatsumi.を知らない方がたくさんいらっしゃると思うので、歌ってる姿を皆さんに見ていただく機会を増やしたいなと思っています」
──そして、2024年の第1弾として、新曲「クルワセ」がデジタルリリースされます。ドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法Seson2』の主題歌に決まった時はどんな心境でしたか?
「もともとSeason1を知っていて、主題歌だった伶さんの「So Addictive」をTikTokで歌わせていただいてたりもしていたぐらいだったので、お話をいただいたときはすごく嬉しかったです」
──前作のドラマを見てどう感じてましたか?
「旦那さんが悪役でしたけど、正直、ちょっと憎みきれないところがあって。主人公の妻が復讐していく中でも、“これでいいんだろうか?”みたいな戸惑いが見えたりしつつ、最終的にはそれぞれ未来に向かって進んでいくっていう描写があって。賛否はあると思うんですけど、訴えかけられるものがありましたし、考えさせられる素敵なドラマだなって思っていました」
──新曲は書き下ろしですよね。Natumi.さんは台本を読んだりしましたか?
「はい、読みました!本当に引き込まれました。Season1もそうだったんですけど、一気に台本を読み終わるぐらい面白くて。前回は悪役も“ちょっと憎めないな”って感じだったんですけど、今回はちゃんとした悪役がいるので、前回よりももっと重いというか…サスペンスの要素もあるので、ネタバレにならないように話すのが難しいんですけど(笑)、台本を読みながら、“この子がこういうことかな?”って考えていたことが、最後、“そういう終わり方なんだ!?”っていう驚きもあって。復讐劇で終わらない再生の物語になっているので、それもちょっと楽しみに見ていただければいいなと思います」
──楽曲は受け取ってどう感じました?
「R&Bのリズム感がありつつも、最近流行りのおしゃれなサウンド感もあって、今までに歌ったことのない、新しいNatumi.としてチャレンジさせていただいた楽曲でした。歌詞の内容は高梨さんが演じられる主人公、美咲さんの感情を歌っている楽曲かなって思います」
──そうなんですか。曲だけを聞くと、許されない恋に溺れている人の方なのかな?って思いました。
「確かにそれもあるかもしれないですね」
──割と官能的な曲でもあるし、<たとえ歪みきった愛でも>というフレーズもあるので。
「詳しくは言えないんですけど、歪みきった愛がある登場人物も出てくるので、そういう捉え方もあると思います。でも、私は主人公の視点かなと思っていて。周りも狂わされるし、主人公も狂わされていくっていう部分を表現した歌詞だと思いました」
──自分の心情とリンクしたり、わかるなと思うところはありますか?
「やっぱり、誰しもが心の奥底にはちょっと黒いものがあると思うんですよ。それを理性でせき止めているんだけど、それが壊れてしまって、感情に委ねてしまったら、こんなふうになっちゃうんじゃないかなって」
──その感情というのは?
「美咲は息子が亡くなっちゃって、旦那さんの裏切りが発覚する。息子と旦那への大切な愛があったからこそ、怒りと絶望と悲しみがすごく大きいものになっているのかなと思いました。あと、これは歌ってみたイメージでもあるんですけど、私は主人公の美咲を想像していたので、狂わされている感情を隠しながら復讐をするっていう意味も込めて、ちょっと抑えてるというか、演じてるみたいな、平然を装ってるみたいなところも表現していて。息子が亡くなったときの悲しさ、旦那さんの裏切りがわかったときに湧き出てきた、決して許せない憎しみの感情があると思うんですけど、復讐とてして夫を社会的に抹殺していくので、平然とだますわけですよね」
──NaturalなNatumi.さんにもそんな部分がありますか?
「“女は女優よ”って言いますからね(笑)」
──(笑)レコーディングも抑えて歌ったっていうことですか?
「そうですね。「pARTs」や「Knock」のサビでは100%出すところを、「クルワセ」は75とか80ぐらいにしてて。基本的に70〜60ぐらいのテンション感で、ちょっと抑えるイメージで歌っています。1回、100%で歌ってみたんですけど、やっぱりイメージが崩れるし、ちょっと強すぎるなって感じて。それは、台本を読ませていただいたことが大きかったですね。台本を読ませていただいた上で歌うという経験が初めてだったので、それは貴重な経験になりましたし、ドラマのイメージにマッチする歌い方ができたんじゃないかと思います」
──歌い上げてはいないけれども、感情の激しさはしっかりと込められてます。
「感情はあるんだけど、抑えているっていう、微妙になりすぎないように表現をしたくて。やっぱり歌っていると、ついつい感情が乗っちゃって、強く歌いすぎちゃったりすることもあるので、そこは難しかったです。私は、自分の嫌いなところとか、ちょっと気になるところをマイナスしていくと、歌声がのっぺりしちゃう癖があるんですよ。だから、“ここでちゃんとしゃくりをちょっと強めに入れよう”とか、ビブラートの入れ方なども計画的に考えて、のっぺりしすぎないようにしています。あとは、リズム感も大事なので、リズムに合わせてタイトに歌うっていう部分。リズムに合わないと、どうしても間延びしてしまいがちなので、そこは歌っていてすごく難しかったですし、楽曲自体が淡々としてるので、できるだけ抑揚をつけるというか、聞いてる方が退屈にならないような歌い方の雰囲気やニュアンスを意識しました」
──他にも大変だったところはありますか?
「英語のフレーズですね。何にも考えずに歌ってみたら、すごくダサくて。“どうしよう?”って思ったんですけど」
──あははは。カタカナ英語になっちゃうんですよね。
「そうなんです。だから、めちゃめちゃ発音を練習して歌わせていただきました」
──最後のフレーズも印象的ですよね。
「<もう少しだけ クルワセテ>っていう。あえてちょっと不安定に切れている感じにしているので、ぜひフルで聴いて欲しいです」
──また新しい曲をチャレンジしてみて、ボーカリストとして感じたことはありましたか?
「楽曲をいただく前に自分の中で課題としていたのが、中間の歌声だったり、淡々とした楽曲をどう引き寄せられるかっていうところだったんです。その部分にチャレンジできたし、他のアーティストさんの曲を聞いてみて、どういうビブラートの掛け方をしているのか、どこでしゃくりを入れているのかもたくさん勉強したので、そういった面でも成長できたし、たくさんの得るものがあったと思います」
──ご自身のやりたい音楽は固まってきましたか?
「デビュー前は自分の得意な曲や好きな曲ばかりをカバーしていたんですけれど、こうやっていろいろチャレンジしていくことで、新しい自分を見せられるし、その中で、自分のいいところや自分の好きな歌い方もちょっとずつわかってきて。今は、徐々に自分の中で固まってきている段階です。デビュー当時は、それがわかるようになりたいっていうのが大きかったんですけど、少しずつ詰めていけてるのかな?っていうふうに思っています。もちろん、今後はファンの皆さんの声を聞いた上で、方向性が変わっていくこともあると思うんですけど、自分の好きな歌や、好きな歌い方みたいなものは徐々にわかってきました」
──現時点では、これらからも幅広い曲を歌っていく?
「はい!私はいろんな曲にチャレンジさせていただけてすごく嬉しいです。何よりも歌を歌うことが好きで、歌を聞いてくれる人がいるっていうことが何よりも嬉しいです」
──歌うことが好きという気持ちは一貫してブレてないんですね。
「そこは変わらないです。もちろん、思うようにいかないことはありますけど、私の歌を聞いてくれる人がいるっていうことにすごく幸せを感じていて。やっぱり聴いてくださる皆さんがいてこそ私なので、そこに誠実でいたいです。飾らないナチュラルな自分のままで、私と私の楽曲が好きになってもらえるようにこれからも精一杯頑張っていきたいです」
──「クルワセ」から始まる2024年はどんな1年にしたいですか?
「もっとたくさんの方にNatumi.の歌を届けたいです。ライブが難しいようだったら、TikTokやインスタでのライブを増やして、もっとたくさんの人の目に入るっていう事にチャレンジしていきたいです!」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ