──中村さんにとって初のミニアルバムとなる『Twinkle』ですが、作り始める際に全体像は何かイメージをしていたのでしょうか?
「1st EPは『Moonlight』(2023年3月リリース)というタイトルで、月をイメージしたものでした。そこから、今作について考えていたら、“輝き””月”というキーワードが浮かんであ!『Twinkle』だ!“って急にひらめいたんです。そのタイトルが決まってから、コンセプトを考えました。“暗闇の中だとしても、自分だけの光を見つられるようなアルバムにしたいね”と、プロデューサーのCHIHIROちゃんと話し合いながら作り始めたんです!今いる場所が暗闇に感じたり、恋に迷った夜や不安な思いを乗り越えたい時に聞いて欲しいなって思います。このアルバムを持ってTOURも始まったのですが、”気持ちを掻き立てれます”というコメントもいただいてて嬉しいです!」
──“キラキラした輝きを詰め合わせた曲たち”というのは、まさにもらったコメントのような気持ちを掻き立てられたり、背中を押してくれたりするような曲というイメージですか?
「そうですね。特に今回収録しているのは、女の子が主人公の曲が多くて。失恋の曲も入っていたり、人生に対して悩んでいる曲もあります。そういう時に女の子の背中を押す応援の曲や、自信を与えられるような曲になったらいいなと思っていました。聴いてくれた方が「自分の気持ちに重なる」と感じてくれたり、「もう一歩進んでみよう」と思ってもらえたら嬉しいなと思っています」
──1曲目の「Like U」は女の子の可愛い恋心を歌った曲ですね。
「まさに女の子の気持ちを代弁したような曲です。努力すればまた自分の新しい姿や新しい魅力に出会えるかもしれないと思っている女の子の背中を押せたらいいな…。そう思って作りました」
──歌う上ではどのようなことを意識しましたか?
「この曲は自分が思っているよりもカッコいい声を出したいと思って、何度も歌ってベストのテイクを見つけていきました」
──曲が可愛いからこそ、歌声はカッコよく?
「そうです。そういうところも欲しくて。実は『Twinkle』のレコーディングに入る前、スタジオで何度も歌のレッスンに入りました。今までももちろん練習はしていたんですけど、自分の中でのイメージに行き着くまでかなり頑張りました笑!今回は“アーティストとしてどう輝くかを考えたい”を意識して、息の使い方、表現の仕方や声の出し方をプロデューサーのCHIHIROちゃんと一緒に研究しました。その模索をする時間がすごく私にとっては大切でした」
──曲にあわせた声の出し方というのは、どのように探していったのでしょうか? 例えばリファレンスのようなものを立てて、それにあわせていくのか、それともとにかくいろんな声を出していったのでしょうか?
「私は女優という職業柄なのか、声を聞くと、その声の真似をしちゃうんです。だから自分なりの声の出し方を見つけるのが本当に難しかったです。でもスタジオやレコーディング中にCHIHIROちゃんが、“それ!””その出し方がいい”と言ってくれるので、私の個性をどんどん見つけてくれて。それをたくさん聴いているうちに、徐々に自分の中で“これが私の声なんだ”と掴んでいきました」
──自分の歌声が見つかると、きっと歌うのも楽しくなっていきますよね。
「自分の声が見つかるまでは、少し恥ずかしいという気持ちもあったんですけど、今は自分の歌声が好きになってきました。これからはそれを大事に…もっと強化していきたいと思っています。そう思うとやっぱり自信を持つべきだと思いました。聴いた人に自信を与えられるような曲を歌っているのに、自分に自信がなかったら意味がないなって。CHIHIROちゃんの存在やCHIHIROちゃんの作る音楽が、私から自信を引き出してくれて…。すごく信頼していますし、ありがたいです」
──話を「Like U」に戻しますね。<名前呼ぶたびheart beats so fast>、<近づきたいけどjust can’t move past>など、この曲で歌われている、好きだからこそ前に進めないという感情は中村さんにもあったりすることですか?
「はい。自分が告白する立場になったときって、やっぱりすぐにはできないと思うんです。そうなると、自信を持つためにチリツモですけどいろんな努力をして自信をつけてから“よし、今だ!”ってなる。だからこの曲の歌詞はすごくリアルだと思いました。共感します」
──そんな気持ちも乗せて歌ったと思うのですが、ボーカルで特に気に入っているところを教えてください。
「ラップっぽいところです。ラップは初めてやったのですが、ラップにもカッコ良さのなかに甘さも交えようと思って頑張ったのでお気に入りです」
──初めてのラップは難しかったですか?
「最初は難しかったですが、今は楽しいです。いつもそうなんです。レコーディングに挑んでいるときは大変なんですけど、出来上がるといつの間にか自分のものになって“ウェーイ!”みたいな(笑)」
──納得がいく歌になると楽しくなるんですね。素敵です。

──続いて「Jelly」。この曲は恋する女の子の重たい愛情を歌った、これも恋している人なら共感してしまうような曲で、個人的にすごく好きです。
「ありがとうございます。私もこの曲が好きです。今まで私が演じてきた役柄が、報われずに不幸せなまま終わる女の子の役が多くて…。だから、こういう思いをしたことのある女の子はいるはずだと思いましたし、そういう子が主人公になれる曲になっていると思います」
──中村さんが演じてきた役の印象からか、この曲は勝手に“中村さんらしい曲だな”と思ってしまいました。
「確かに、私も思います(笑)」
──でもご本人としては“本来の私はそういう人間じゃないのに”と思ってもいいところなのに、“演じてきた役の気持ちの通り”だとおっしゃって。そこに乖離や違和感がないんですね。
「ほんとうだ。何で私、否定しないんだろう?(笑) でもやっぱり、演じてきているからこそ、こういう女の子っているし、なんなら、その子たちを守りたい、味方になりたい。そんな気持ちがあるんですよね」
──なるほど。きっと、その“守りたい”、“味方になりたい”という想いがあるからこそ、この曲がただの嫉妬心をぶつけるだけの曲になっていないんでしょうね。
「うれしいです。演じるときも、その子に向き合わないとその子の気持ちはわからないと思っていますし、そのためには寄り添うことが大切だと感じていて。曲もそうだと思います。報われなくても重たくても好きな気持ちは尊いですからね。その好きになったことは誇りに思って欲しいな」
──そして『Twinkle』の中で最もドロドロしていると言っても過言ではない曲が「Monsta」です。
「この曲、歌うのがすごく楽しかったです!(笑) この曲は本当にMVの通り、世の中に転がっている悪口や欲望、ねじ曲がった感情がモンスターなんですけど、それを喰べて乗り越えていけるくらい強くなれた女の子の曲なんです」
──この曲は中村さんが主演のドラマ『裏アカ教師』の主題歌でしたが、最初に聴いたときはどう思いましたか?
「ダークっぽくもありながら、おしゃれな曲だと思いました。“役になりきって歌ったらどうなるんだろう?”と思いました」
──で、なりきってみたら楽しかったんですね。
「はい。でもこの曲の歌詞のようなモンスターって、誰の心の中にも潜んでいるんじゃないかな?って思うところもあって。 みんなそれを乗り越える強さも持っているはずだって」
──確かにそうですね。
「だから歌っていても共感しましたし、楽しかったんだと思います。MVもすごくこだわって作ったので、たくさん見てもらえるとうれしいです。頑張って赤いものを集めたので!(笑)」

──ミニアルバムの終盤、「Starlight」というインタールードを挟んで、タイトル曲「Twinkle」につながる流れも素敵ですね。
「インタールードを入れたのは初めてなんですが、すごくキュンとします。こういう曲をアルバムにずっといれたくて」
──「Starlight」というインタールードを入れるというのはCHIHIROさんと相談してですか?
「はい。ツアー(『1st One Man Tour -MOONOVA-』)のテーマでもあるんですけど、“今は暗くて見えないけど、みんなには光があって、絶対に見えるようになるから大丈夫だよ”っていうことを伝えたくて。「Starlight」はそういう想いをCHIHIROちゃんに表現してもらいました。この曲から続く「Twinkle」は、自分が夢見ていたものに、いつしか手が届かなくなったり、夢が失われてしまったりしたとしても、もう一度思い出してほしくて、その背中を押す曲にしたいと思って作りました。「Starlight」は、そんな「Twinkle」の前兆のような存在になってくれていると思います。ツアーではロングバージョンを使っているので、ツアーに来てくださった方は、「Starlight」を聴くと、今回のツアーを思い出してくれるんじゃないかな…」
──「Twinkle」には“忘れそうになっていた夢をもう一度思い出してほしい”というメッセージが込められているということですが、中村さんご自身も“初心を思い出して頑張れた“といった経験はありますか?
「私は女優として前が見えなくなってしまった時期に、音楽と出会いました。正直、心が折れそうになっていたけど、音楽がいつも寄り添ってくれていたから、なんとか前に踏み出せたんです」
──その音楽というのは?
「CHIHIROちゃんの「失恋のあと」という曲のMVに出させてもらったんです。それがちーちゃんとの出会いでした。それをきっかけにCHIHIROちゃんのスタッフさんがゆりかちゃんが音楽が好きだったらとすすめてくれて私と一緒に音楽をしてくださるようになって。それまで音楽を聴いてはいましたけど、まさか自分が歌うようになるとは思っていなくて…。でも、音楽を始めてからどんどん元気になって…枯れていた花に水を注いでもらったような感じでした。そのときの光が差したような気持ちを、今回のツアーでは聴いている人に届けたいと思っています」
──中村さんを救ってくれた音楽で、また別の人を救ってあげられるようになるというのは、すごく素敵なことですね。中村さんが音楽をやる意味のようなものを感じました。
「ありがとうございます」

──初めてのミニアルバムが完成して、どう感じましたか?
「大満足です!」
──それこそレコーディング前に声を探る作業もされたとのことですが、『Twinkle』を作ったことで、ご自身には何か変化や影響はありますか?
「それまでは1曲ずつのリリースだったので、こうやって曲が集まってミニアルバムになった瞬間、“あっ、私の宝物だ”って思えたんです。キラキラした大切に箱に入っているようなイメージで。。それはすごく大きな変化ですし、だからこそ、“これをもっとみんなに届けたい!”という気持ちが大きくなりました」
──心から“聴いてほしい”、“届いてほしい”と思えているということですね。
「はい」

──そして、お話にもありましたが、現在はミニアルバム『Twinkle』を携えたワンマンツアー『1st One Man Tour -MOONOVA-』がスタートしています。現時点で数公演が終わっていますが、手応えはいかがですか?
「初日の大阪公演はすごく緊張しました。準備してきたのに、やっぱり本番を前にすると、ぐっと肩に力が入って、緊張しちゃいました笑。でもそれも含めて自分にとってはすごく良い刺激になりましたし、ツアーを通して自分がどんな成長を遂げるのか、どういうふうにこのツアーと向き合っていくのか、怖さよりも楽しみのほうが大きいです。自分が自分のことを超えていけるようなパフォーマンスをお届けできたらいいなと思いますね」
──残りの公演はどんなライブにしたいですか?
「みんなの声が、大阪、上海公演もかなり大きかったんですが、最終公演の東京ではもう会場が割れるくらいの声援が欲しいです(笑)。それくらいみんなの感情を高めたくて。あと、もし落ち込んでしまったり、元気のないファンの子(YULUNA)がいたとしたら、その子の気持ちに少しでも輝きが差し込めるように、と思いながらステージに立っています。このライブを通して元気になってくれたり、笑顔になってくれたりしたらうれしいです」
──ミニアルバムを完成させたことで、一度区切りがついたと思いますが、この先はどんな歌を届けていきたいと思っていますか?
「さらに自信を持てる曲だったり強い曲もつくりたいですし、いつでもそばにいられるような、お守りのような曲たちを届けていきたいですね。私自身パワーアップした姿をファンの皆さんに見せていけたらと思います。俳優としても、アーティストとしてもみんなに輝きを感じてもらえるような人になれたらいいなと思います」

(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/中村功
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

YURIKA NAKAMURA 1st One Man Tour –MOONOVA–
2025年8月17日(日) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
2025年8月30日(土) 上海 バンダイナムコ上海分かセンター
2025年9月14日(日) 福岡 DRUM LOGOS
2025年10月4日(土) 宮城 仙台PIT
2025年11月21日(金) 東京 ヒューリックホール東京