──メジャーデビュー後初のフルアルバム『POP SOS』が完成しました。
「まず、フルアルバムをCDという形があるものとしてリリースできることが、すごくうれしいです。2021年の夏にデビューして以降、配信リリースのみだったんですけど、ずっとCDを出したかったんですよ。僕は今までポップミュージックに救われ続けてきた人生を送ってきて、そこで憧れたアーティストたちはみんなCDを出していたので。でも、今は配信の時代で単曲配信のアーティストが多い時代じゃないですか。だから、今回は自分が憧れてきたアーティストと同じようにCDが出せたという意味でも、すごくうれしいんです」
──TikToKでバズり、メジャーデビューのきっかけになった「なにやってもうまくいかない」を始め、NHKで放送中の「Venue 101」のMCを務めるかまいたちの濱家隆一さん、生田絵梨花さんによるユニット、ハマいくに提供した「ビートDEトーヒ」などのセルフカバー曲、新曲、インディーズ時代の楽曲のアルバムバージョンと、見どころしかないアルバムになりましたね。
「2018年にmeiyoという名前での音楽活動を始めてから、現在までのすべてを総ざらいできる集大成で、ベストアルバムにかなり近い作品になったと思います。最初はそんなこと考えてなかったんですけど、メジャー初アルバムはやっぱり名刺になるようなものにしなくちゃいけないなと考えるようになって。当初、脳内で考えていた曲順はまったく違ったんですよ。その曲順を実際に並べて聴いてみたら、流れが全然気持ち良くなくって。それで考え直したんですけど、1曲目から12曲目までは作った順に並んでいて、13曲目はアルバムの中では1番古い曲。14曲目がその次に古くて、その次が1曲目なんです。だから、13曲目と14曲目を聴いて1曲目から聴くと、僕が作った順で聴けるっていう。この曲順の方が圧倒的に流れがいいし、飽きずに聴ける感じがあったんです」
──『POP SOS』というアルバムタイトルは?
「アルバムのタイトルを考えているときに、スタッフから“これまでの人生でテーマになっていたものって、何だったの?”って聞かれたんです。そのときに、自分の人生のテーマになっていたのはポップミュージックだなって。そこから、ポップってワードを入れたいねって話になっていきました。SOSは、ずっとポップミュージックに僕は救いを求めていたので。プラス、このアルバムに救いを求めてくれる人がいたらいいなって願いもあったりします。英字表記にしたのは……見た目がかわいいからです(笑)」
──字面がいいですよね(笑)。そして人生のテーマが、ポップミュージックだった?
「アルバムに収録されている「ビートDEトーヒ」で歌っていることが、自分の人生を象徴しているかもしれないです。歌詞にある<とりあえず ポップなビートで逃げ出したい 現実から遠く目を逸らしたい ずっとずっと鳴り止まないで ミュージック>って、完全に自分そのものだし、本当に自分が思っていることのど真ん中で。書いてる途中から、いい曲を書いてるなって自分でも思ってたんですけど(笑)、NHKの番組で使われる曲だから大きなテーマで書きたいなという思いがあったんです」
──それは影響力の大きさとか自分の原体験を踏まえてということですか。
「子どもの頃から、NHKの番組で流れる音楽が大好きだったんです。「みんなのうた」とか、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんが音楽を手がけていた頃の「天才てれびくん」ですね」
──子どもたちが好きになる。口ずさむ。踊りたくなる。そういった音楽が、meiyoさんの原点にあるんですね。
「小学生のときに見ていて、中学生の頃に自分の中で再ブームが起きたんです。それで、タケカワさんがアレンジした洋楽、邦楽のカバーや、「天才てれびくん」で使用された小川美潮さんの「おかしな午後」が入ったCDを買いました。そのCDを聴いて、すごく懐かしいなって思ったんですよ。たった数年前に聴いた音楽なのに。その懐かしく感じた体験がずっと忘れられなくて、ことあるごとにそのCDを聴いてましたね。そのたびにめっちゃいい曲だな、なんでこんなにいいんだろうって考えると、コードとメロディなんですよね。そこに気づいてからは、とにかくコードとメロディに執着して曲を作ってました」
──その意識は、今も変わらずに続いている?
「そうですね。子どもが歌ってもいい曲であるみたいなこととか、アレンジは打ち込みだけど、分解してメロディとコードだけにしたら童謡みたいだなとか。曲の心臓は、メロディとコードの良さ。それがポップだなと思ってきました。今回の『POP SOS』に収録されているのは、そんな自分の中で“ポップであること”を条件に、ジャンルを飛び越えて集まった曲たちですね」
──『POP SOS』はmeiyo名義で活動してからの集大成という話がありましたが、楽曲制作を続ける中での変化であったり、あるいはあらためて気づいた部分はありますか?
「メロディとコードが重要だと思ってずっと生きてきたんですけど、それが覆されたのが「なにやってもうまくいかない」だったんです。あの曲は、リズムが受けている感じがあったので。でも、よくよく考えたら今回のアルバムの中でいちばん古い「魔法の呪文」の時点で、リズムは意識してるんですよね。作ったときは気づいていなかったんですけど、今回アルバムバージョンを作るにあたって気づきました。あと、時系列に並べてみるとちょっとずつ歌詞が素直になっている感じがしますね」
──本音を綴るようになった?
「そうですね。ミニアルバムの『間一発』に収録されていた「あとがき」を書いたときに、もっと素直に歌詞を書かなければいけないという気持ちが、自分の中に芽生えた芽生えたんですよね。その上で、『POP SOS』に収録している「未完成レゾナンス」と「ビートDEトーヒ」の歌詞では、自分が音楽をやっている意味にかなり近いことを素直に書いています。「希望の唄」もそうですね。以前の僕だったら、<愛があれば それだけで充分さ>なんて、恥ずかしくて歌わなかったと思うんですよね。でも、恥ずかしいって何だよ?って。こんだけ人前で歌ってて、今さら何が恥ずかしいんだ?って。そう思えるようになってから、自分の気持ちをなるべく素直に歌にすることが増えたと思いますね」
──そう考えると、『POP SOS』は素直になっていったmeiyoさんの心情的軌跡が感じ取れる作品でもある?
「そうかもしれません。11曲目の「っすか?」とかも、素直というかシンプルですしね。ただ、曲調やサウンド面でのひねくれは増えてるのかもしれないです(笑)。やったことのない、新しいことをしたいという気持ちがあるので」
──そこが面白いですよね。原点にはメロディとコードのポップさがありつつ、歌詞が素直になっていく。一方、曲調やサウンド面では一筋縄ではいかないアイデアを盛り込むっていう。普遍性は担保しつつ、面白い音や新しい音もどんどん追求したい?
「そうしないと、ワクワクしなくなっちゃうんですよね。曲の中で、何か1個だけでもいいから発明的なことをできてないと、満足できない体になっちゃいました(笑)」
──メロディや歌詞がシンプルに届くような、王道のサウンドアプローチにはならない?
「それは面白くないんですよね。試してないんでわからないですけど、ワクワクしながら音楽を作れなくなっちゃうような気がします」
──アルバムリリースを経て、12月15日には初のワンマンライブが開催されます。
「いろいろ考えてるって感じですね。自分が憧れてきたポップミュージックの先人たちを意識して、彼らがやってきた演出をオマージュしようかなとか」
──meiyoとしての集大成的なアルバムをCDとしてリリースして念願叶ったわけですが、これからについてはどんなことを思い描いていますか?
「曲をいっぱい作ることもそうですけど、ライブをたくさんしたいですね。純粋にライブが好きなんです。なので、2024年は2023年よりもライブの本数が増えるだろうなと思っています。いろんなところに行きたいです。未定ですけど、ツアーとかでみんなに会いに行けたらいいなと思っています。あとは、meiyoという活動をとにかくいろんな人に知ってもらいたいです。メジャーデビューをしてからいっぱい種を蒔いてきた2年間だったので、これからちょっとずつでいいから花が咲いたらいいなと思っています」
(おわり)
取材・文/大久保和則
meiyo『POP SOS』DISC INFO
2023年12月6日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/TYCT-69289/4,950円(税込)
ユニバーサル ミュージック
2023年12月6日(水)発売
通常盤(CD)/TYCT-60221/3,300円(税込)
ユニバーサル ミュージック