――新曲「melty」は、これまでのソロの楽曲に比べるととても切ない楽曲になりますね。
「ソロデビューを果たしてから、聴いている人たちを元気づけるような明るい曲をリリースしてきたんですが、自分のなかでずっと“失恋ソングを歌いたい”という気持ちが強かったんです。そんななか、スタッフさんの紹介でこの曲のデモを聴いたときに、“絶対に歌詞を書いて歌いたい!”って思ったんです」
――運命的な出会いだったんですね。
「はい。最初に聴いたときに、「雪の華」や「メリクリ」のような、切ないメロディに、温かい歌詞が乗るような、冬の王道の曲が作れると思ったんです。そこから、この曲の制作が始まりました」
――まるりとりゅうが時代の楽曲も合わせて聴くと、もともと胸を締め付けるような曲が好きなんでしょうね。
「そうなんです。ソロデビューから、ありがたいことに連続してタイアップを頂き、ドラマにフィットした明るい曲を制作してきたんですが、今回は“自由に楽曲を作っていい”ってなったときに、今、改めて自分が本当に作りたい曲を作ろうと思ったんです。だからこそ、この曲は個人的に勝負の曲になりました」
――歌詞もすごく切ない失恋が描かれています。書いている時はどんな心境でしたか?
「失恋をした時のことを思い出しながら書いたんですが、どんどん苦しくなってしまって…。たとえば、クリスマス前に別れてしまったとしたら、いざ当日を迎えた時に、ものすごく悲しくなるじゃないですか。“本当は一緒に過ごせたはずなのに”って、より苦しくなると思うんです。私自身、恋人とお別れをする時は、きっぱりと別れるので、その後何をしているかわからないくらい、縁を切ってしまうタイプなんです。もちろん、“もう次の恋に行っているかな?”、“どこかでまだ想ってくれているかな?”という期待はありつつ、“もう忘れているかも”って、知りたくなくなるところもあるんですけどね。そういった失恋経験をしたことがある人達に届いてくれたら嬉しいです」
――いまはSNSなどでどうしても近況が見られてしまうから複雑ですよね。
「そうなんです!もう何も思っていなくても、地元の友達から情報が入ったり、結婚したとか子供が生まれたとか…。全然なんとも思っていないのに、どこかざわっとする気持ちがあるんです」
――戻りたいとは絶対に思わないのに。
「ね!(笑)でも、過去って美化されてしまうんですよね。強がりながら、“もう一度出会えたら上手くいくのかな?”って思ったり…。そんな願いが入っている曲になりました」
――強がってしまうタイプですか?
「めっちゃ強がります(笑)。別れようっていうのは自分なのに、いざそうなったら“止めてよ!”って思うタイプで(笑)」
――あ~、それはダメだ!
「わかっているんですよ!(笑)その時の後悔は本当にすごいんです。“なんであんなこと言っちゃったんだろう?”って思いますし…。恋愛って、付き合ってからは駆け引きなんていらないんですよね。“好きだってちゃんと言わないと悪い結果になるよ”ということが、この曲を聴いてわかってもらえたらいいですね(笑)」
――あはは。まさかの教訓ソングになるんですね。
「私、わがままを聞いてくれる人が理想なんです。でも、それでうまくいった試しがないんですよ。長く続くためには、わがままがない方がいいんです。この曲を書いていて、本当に思いました。そう考えると、反省もこもった曲になっています。それに、この季節のリリースなので、雪に例えているところもポイントになっているので、注目してもらいたいです」
――作詞をしていると、どんなに違う主人公を書いたつもりでも、自分の思考が入ってしまうと思うのですが、そこで気づいたことはありますか?
「ありますね。自分がきっぱり前を向くタイプだと言いつつも、こういう歌詞が生まれるということはどこかに“こうしたほうがよかった”と後悔をしてきたのかな?って思ったんです。最後の歌詞で、<この雪が溶けるまで/君を大好きなアタシ消えないで>と歌っているんですが、恋愛をしている時って、相手のことを好きなのはもちろん、その人のことを好きな自分も好きなんですよね。だからこそ、その頃の自分に戻れないことが悲しくて…。いま、私は26歳なんですが、19歳の頃って、もっと何も考えずに恋愛をしていたんです。写真などを見ると、それを実感するんですよね。でも、今はいろんなことを経験してしまっているから、良くも悪くも恋愛に控えめになってしまったり、邪念が入ってしまうこともあるんです」
――大人になるって、そういうことですよね。
「そうなんですよね。でも、純粋にその人のことを好きだった自分が消えるのがすごく悲しいから、せめて今年の冬だけでもありのままの自分でいたいという気持ちが最後の歌詞に詰め込まれているんです」
――この寂しい歌詞をレコーディングしている時って、ものすごく悲しい気持ちになると思うのですが、いかがでしたか?
「レコーディングって、いつも休憩をしながら取り組むんですが、この日は6時間ずっと休憩しないでぶっ続けで録音をしたんです。そのくらい入り込んでいました。こんな経験をしたのは初めてだったので驚きました。でもだからこそ出せた歌声もあったのかなって思うんです」
――その間は何も食べず…?
「食べませんでしたね。それもあっていつもよりハスキーになったりしていて。いい効果になったんじゃないかなと思っています」
――まるりさんは失恋したときや落ち込んだときは、何も食べられなくなるタイプですか?
「それが、めっちゃ食べるタイプで(笑)。嫌なことがあると逆に食べちゃうタイプなんです。関係ないかもしれないですが、小学校の卒業文集に、“長生きしそうランキング”があって、その1位だったんですよ!」
――健康でよかった(笑)。
「きっと私は、どんなことがあってもちゃんと食べて、健康に過ごすと思います(笑)」
――安心しました(笑)。
――それにしても、すごくポジティブに見えるからこそ、歌詞にある、“絶望感”はより色濃く伝わると思うんです。
「そうだと嬉しいですね。今回、レコーディングも1人のために歌っているように歌ったんです。歌詞も、“乗り越えていこうよ”というフレーズは一切入れていないんです。どうしても辛い時って、“乗り越えようよ”と言われても無理なんですよね。なので、“辛い時は一緒に思い切って落ち込んでいこう”と、寄り添う曲になりました」
――これまで、ビジュアル面ではポップなものが多かったですが、今回はまるりさんが表に出ていないジャケットで驚きました。
「今回もジャケット写真はいつもお願いしているデザイナーさんではあるんですが、まるりを前面に出すのではなく、この曲が、私が歌っているということがわからないとしても、曲の良さだけで広まってほしいという想いで、こういったジャケットにしました。聴く時点で先入観を持ってほしくなかったですし、私の顔を見て“歌っているのは失恋ソングなのに、元気そう”って思われないように(笑)。すっぴんでナチュラルな表情を出すことも考えたんですが、そういうことではなく、曲の力を信じてシンプルに届けたいなと思ったんです」
――色合いもすごくシンプルですよね。
「ありがとうございます。何のために歌手になりたかったのか?って改めて考えた時に、私は人を癒やしたいと思ったんです。もともと合唱団を12年間やってきたこともあり、歌はそういうものだと思っています。歌が寄り添ってくれたり、聴くことでふとラクになったり、そういう部分を大事にしようと思いながら制作していきました」
――合唱団であることが、アイデンティティになっているんですね。
「そうですね。ハモリもすごくこだわっていて、ゴスペルっぽくレコーディングしたところがあるのもポイントです。学生の頃も、自分で音を重ねることがすごく好きだったんです」
――たしかに、ハモリはもちろん、最初の息遣いもすごく素敵でした。
「その最初の息遣いもすごくこだわったところなんです。最初から聴いてみようと思ってもらえたら、嬉しいです」
――さて、もうすぐ2024年を迎えますが、プライベートでしたいことはありますか?
「最近は、映画館で映画をみることにハマっています。半券を集めるのもすごく楽しくて、いろんなインプットもできますし、そのために時間を使う贅沢さがすごくいいんですよね。最近は『マイ・エレメント』を見て感動しました。ジャンル関係なく、いろんな映画を映画館に観に行きたいですね」
――いつか映画主題歌もしてみたいですね。
「今の大きな夢です。あの映画館の素敵なスピーカーから自分の曲が流れる日が来たら、泣いてしまうかもしれない!その夢が叶うように、がんばります!」
(おわり)
取材・文/吉田可奈
写真/中村功
- まるり「melty」 × radio encore
- インタビューアフタートークは近日公開!
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION
MARURI Christmas Li”Eve” -Radiant-
2023年12月24日(日) 開場16:45 開演17:30
会場 ダンスホール新世紀