──ご自身の年齢をタイトルにした9th Album『31』。全曲プロデュースを手掛けたRyosuke “Dr.R” Sakaiさんは昨年リリースした「Mirror feat.斎藤宏介」が初プロデュースでしたが、それがきっかけでアルバムに繋がったのでしょうか?

「そうです。というのも、「Mirror」でご一緒したときに、これまで自分が制作に向き合って培ってきた価値観が一新されたので。それが、自分の音楽スタイルを模索していた時期だったからこそ、Sakaiさんとのご縁を感じました」

──自分の音楽スタイルを模索していた時期というのは、勝手ながら『Naked』や『My Name』から続いているのかな?とも思いました。

「やっぱり、ここ数年、自分のメンタルやフィジカルの変化を感じてきていて…若い頃は調子が悪くても少し休息を取れば回復していましたけど、今はそうじゃないというか。実際、自分の歌い方を冷静に捉えると、年齢を重ねていくと、声帯に負担がかかる歌唱法なのかもと感じたり、ケアだったりルーティンだったり、ルールのようなことがこの数年で増えてきていたんです。音楽の現場を離れてちょっとリフレッシュしたいと思っても、“喋ると喉に負担がかかるから”となって、センシティブになったり」

──歌うために費やす時間が以前より増えてきたんですね。

「そうなんです。歌うための人生…みたいな。もちろんそれは私が望んだことで、自分が歌いたくて歌っているのに違いないですけど。ただ、あまりにも音楽のためだけの時間が増えていったときに、そういう音楽スタイル、そして歌い方を、アップデートしないといけないというのがテーマとしてずっとあったんです」

──その意識も今回、Sakaiさんにプロデュースをお願いすることに関係しているのでしょうか?

「はい。あと、それに加えて、これまで感覚で音楽をやってきた部分を改めて学び直したい気持ちもありました」

──なるほど。

「さらに、ここ数年は1枚のアルバムを複数人のアーティストさんや作曲家の方たちとご一緒することが多かったんですけど、デビュー当時ずっとご一緒してた西尾(芳彦)先生のように1人の方とディープに向き合うことも、もう1度機会があればやってみたいという想いもありました。ただ、ワンプロデュースとなるとまた違った覚悟がいるな、と。なので、どこかでそういう機会が訪れないかな?と思っていたときに「Mirror」での手応えがあって。最初は、Sakaiさんに“次のアルバムでも数曲お願いしたいです”ということお伝えしたんです。そしたら、Sakaiさんから“ちょっと環境を変えて沖縄で制作合宿をやってみるのはどうですか?”と言ってくださって、“行きます!”みたいな(笑)。Sakaiさんと麦野優衣さんと私という「Mirror」の制作布陣で沖縄に行って、そこで1日に23曲、ハイペースに曲を作っていました。そこで次のアルバムの構想を“こんな感じかな…”と話をしていたときに、Sakaiさんから“僕と一緒に1枚作りませんか?”と」

──Sakaiさん側からの提案だったんですね。結果的にとはいえ、1人の方とディープに向き合うことになるという意味では、家入さんにも相当な覚悟が必要だったのではないでしょうか?

「はい。もちろん、私自身、このアルバムでは自分の新しい歌い方とか音楽スタイルを確立しようという覚悟を持って取り組んだんですけど、自分の不甲斐なさを感じる日々でした。今まで積み上げてきたものが絶対にあるのに、それが何一つ通じなくて。“30代になってこんなことってあるんだ…”と思ったくらい、簡単なことではなかったです。そういう私の苦悩をSakaiさんも理解した上で、“レオさんが音楽を続けていく上で、今って多分すごい岐路だから”と、真剣に向き合ってくださいました」

──制作にあたって家入さんのほうからSakaiさんにリクエストしたことはありますか?

「“こういう曲を歌いたい”っていうプレイリストみたいなものは沖縄での制作合宿の際にお渡ししていたんです。でも、実際沖縄でのアルバム制作は、現場でSakaiさんが作ったトラックに今この瞬間の自分で反応する、みたいなスタイルでした。Sakaiさんがその場で12時間でトラックを組んで、そこに私と麦野さんでトップラインを歌い、それをSakaiさんが再度組み替えている間に、私と麦野さんは、今度は前日に作った曲に歌詞を書いていく、という。」

──同時に何曲も動かしている状況だったんですね。

「はい。歌詞のプロットは私が書いて、それを“31歳の等身大の私”が歌っていくものとしてSakaiさんや麦野さんからアドバイスをいただいたりしたんですけど、そこで面白いというか、新しい発見がありました」

──どんなことですか?

「伝え方が難しいんですけど…私自身は、31歳になった今でも自分の真ん中にある“魂の色”みたいなものは、生まれたときから変わっていないと思っているんです。でも、自分が思っている自分と他者から見た自分は当たり前に違っていて。でも、自他の認識が年相応になれているか?と聞かれたときに、“はい”と答えられる人は意外と少ないと思うんですよ」

──確かに。自分は変わっていないと思っていても、他者から見たら“もう立派な大人ですよ”となりますよね。

「そうなんです。分かっているつもりではいたけれど、30代に入ると社会的な責任をより感じるようになったり。なので、そういう意味で、今回は自分が書いている歌詞をちゃんと31歳という年齢にアップデートしようということをすごく意識しましたし、逆に自分が思っていることが背伸びしすぎているんだなって気付くこともありました。みんなで一緒に磨き上げていく作業だったんですけど、私が書いたものに対して“その書き方だと20代後半で止まっているように思える”と指摘してもらうこともあって」

──客観的な指摘ですね。

「その客観性ってすごく大事だな、と改めて。私はシンガーソングライターとしてソロで活動をしているので、そういうことを指摘してもらえる機会が、それこそ年を重ねれば重ねるほどなくなってくるように感じていて…」

──シンガーソングライターの場合、その人自身の言葉が求められているという側面もありますよね?

「はい。それが自分らしさとも言えてしまう事が少し怖いな、と。それもわかるんですけど、やっぱり人生のタイミングによって自分の軸はそのままに、アウトプットの仕方を見つめ直すことも大事だと思いました」

──そういう気付き、想いの中で歌詞を書くのは大変でしたか?

「とても大変でした。でも、「Mirror」を作っているときに私が書いたものに“もっとこうしてみるといいんじゃない?”といったディレクションがあること、自分の中になかった視点が入ってくることが嬉しくて。10代から20代のある一定期間までは、自分が作ったものに何か言われるのが怖かったんです。それによって “自分らしさ”を奪われてしまうような気がして…。でも、その後は逆に何も言われないことが不安になってきました。“いいですね”と言われても“本当にこれで大丈夫なんだろうか?”って。不安だから何回も作って壊してを繰り返しても、何度やっても結局ゴーサインが出せなくて。そのときに、歌詞だけではなく音楽を“感覚でやってきた部分を学び直さないといけないかも”と思ったんです。そういうところも含めて、今回のアルバムはこれから先、もっともっと進んでいくために必死に足掻いてできた1枚になったと思います」

──“歌い方もアップデートしていきたい”と話されていましたが、その部分での手応えはどうですか? 特に新しい歌唱法を手に入れたと実感した曲とかはありますか?

「それはもう全部です。今回、レコーディングも4日連続とかもあったんですが、今までの歌い方だったら絶対に無理でした。2日連続でやるのも難しいくらいだったので」

──それが4日連続…乗り切れましたか?

「声帯的にはそれが、全然余裕でした(笑)」

──そうだったんですね! 何か具体的に変えたこととかがあったのでしょうか?

「歌う、ではなく、喋る歌唱スタイルにアップデートしました。そしてなんて言うか…無理なことをしなくなりました。私にとってそれは自分を許すことだったんですけど」

──自分を許す?

「以前は、レコーディングやライブで歌唱する前には、ストレッチをしたり、筋トレしたり、有酸素運動したり…なんならそこに理学療法も入れて、声を出せる状態にしていく感じだったんです。でも、それをSakaiさんのスタジオでもやっていたら“面白いね”って。いろんなアーティストやミュージシャンとご一緒されているSakaiさんが、“初めて見た”っておっしゃったんです。私は私で、“あ、そういう世界もあるんだ”と思って」

──家入さんにとって当たり前だったことが、当たり前ではないケースもあったんだ、と気付いたんですね。

「そうです。で、このアルバム制作を通して私にとって音楽は、朝起きて、普通に歌って…って、歯磨きしたり、ご飯を食べたりすることと同じだったよなぁって。もちろん東京に来てからもそう思ってはいましたけど、いい意味でどんどん責任を伴うものになっていました。“お客さんがいるんだから”とか、“スタッフがいるんだから”とか。でも、そうやって追い詰められながら音楽をやっている私を見て、誰が楽しいんだろう?と思って。なので、今回はそういう歌う前のルールとか感じていた責任とかを一旦横に置いて、シンプルに楽しむ。お酒を飲みながら録ったレコーディングとかもあったりするんですよ」

──わっ、なんだか素敵ですね!

「ね! 今までの私だったらそのチャレンジは躊躇っていたと思います。(笑)でもその違いが面白かったですし、あんなに懐の深い人はいないと思います。というのも、「Walk」のレコーディングのとき、120テイクくらい録ったんです」

──120テイク!? それは家入さんから“もう1回やらせてください”的な感じだったんですか?

「いえ、自分も含めて、もう全然OKが出なかったんです。その後も、新しい歌唱法を得たと思ってスタジオに行ってレコーディングしていても、“全然なってないよ”って。いろいろ試したり、いただいたアドバイスを自分なりに受け止めて向き合って…。やってもやっても届かなかったです。最後のほうは本当に、何かディレクションしていただいても、もう何を言われているのかわからなくなるくらい追い詰められていました」

──壮絶だったんですね…。でも、頑張った分、胸を張れるアルバムになったのでは?

「そうだと思います。Sakaiさんもこれだけの時間を割いて、向き合ってくださったので」

──共に作り上げたSakaiさんは家入さんにとってどんな存在ですか?

「存在…一言で言うのは難しいですね。制作を振り返ると、Sakaiさんもですし、麦野さんも、みんな本当に全力で向き合ってくださったな、って。 デビューして約15年活動してきた私の音楽人生がある中で、これからの音楽人生を想って進化をプロデュースしてくださるって、とても大きなことだと思いますし、本当に素敵なアルバムが完成したので。そして“Sakaiさんは“今までがあってのレオさんなんだよ”ということを常々おっしゃってくださってもいて。今回のアルバムは“新しく変わること”を目的としたわけではなくて…私がこれからも音楽を続けていくための“進化”必要なアップデートでした。Sakaiさんとはそのために出会うべくして出会って、このアルバムは出来るべくしてできたアルバムだと思います」

──すごく酷な質問だと思うんですけど、そんなアルバム『31』の中で家入さんが最も気に入ってる曲を挙げるとしたらどの曲になるでしょうか?

「うわ〜難しい!(笑) どの曲も思い入れがありますが…「Echoes」かな。今まで色んな事があったけど、だから今がある。今この瞬間を愛している気持ちで、過去も愛せたらいいなって。私、“過去は変えられない”と思いながらずっと生きてきていて。あの時もっとこうしていればよかったのかな、とか、弱気になってしまう瞬間もある。でも、今を全力で生きていると、“過去があったから今があるんだ”と思えたんです。それはつまり“過去は変えられる”ということ。そう感じたときに、これまでのすべてに感謝が生まれてきて、この曲が出来ました。大切な私の人生の1曲です」

──アルバム『31』は、家入さんのこれまでもひっくるめた“現在”が濃密にパッケージされた1枚になっているんですね。ちなみに、今回得た歌唱法でかつての歌を歌うと、聴こえ方が変わったりするんでしょうか…?

「気になりますよね? ぜひツアーに来てください!」

──そうですよね!(笑) 9月12日から全国ツアー『家入レオ TOUR 2026 -Log:31-』がスタートしますから、ね。

「これまでリリースした曲も今の私が歌うと本当に変わるんですよ。でも、時代や年齢とともに変化していくことが進化していくことだと思うので。なんだか勝手に、歌い方や歌声も、当時の全てをいくつになっても再現できることがプロだと思っていましたけど、年を重ねれば当然変わりますよね。いろんなことを経験してきた今、そう思えるようになりました。そんな今の私の歌を会場で確かめてください!」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/野﨑慧嗣

RELEASE INFORMATION

家入レオ『31』初回限定盤A(CD+Blu-ray)

2026年826日(水)発売
VIZL-25458,250円(税込)

家入レオ『31』

家入レオ『31』初回限定盤B(CD+Photobook)

2026年826日(水)発売
VIZL-2546/5,500円(税込)

家入レオ『31』

家入レオ『31』通常盤(CD only)

2026年826日(水)発売
VICL-66165/3,500円(税込)

家入レオ『31』

LIVE INFROMATION

家入レオ TOUR 2026 -Log:31-

9月12日(土) 神奈川 厚木市文化会館 大ホール
9月22日(火・祝) 静岡 静岡市清水文化会館マリナート大ホール
9月26日(土) 福岡 福岡市民ホール 大ホール
9月27日(日) 兵庫 戸国際会館 こくさいホール
10月4日(日) 香川 レクザムホール 小ホール
10月10日(土) 宮城 電力ホール
10月12日(月・祝) 北海道 共済ホール
10月16日(金) 愛知 岡谷鋼機名古屋公会堂大ホール
10月17日(土) 広島 広島JMS アステールプラザ 大ホール
10月25日(日) 京都 文化パルク城陽 プラムホール
11月5日(木) 東京 LINE CUBE SHIBUYA

家入レオ TOUR 2026 -Log:31-

LEO IEIRI Live in Hong Kong 2026

2026年1128日(土) 香港 PORTAL

LEO IEIRI Live in Hong Kong 2026

LEO IEIRI Billboard Live in Taipei 2026

2026年1213日(日)
1st set|16:00 open / 17:00 start
2nd set|19:00 open / 20:00 start
会場:Billboard Live TAIPEI

LEO IEIRI Billboard Live in Taipei 2026

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