──今夏は「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演されましたけど、会場の雰囲気はどうでしたか?

小野武正「個人的にもすごく刺激を受けた、かつ憧れのフェスだったので、出演が決まったときは、驚きはありつつもうれしかったです。本番は天候にも恵まれ、お客さんはKEYTALKを知っている人もいつつ、ライブが始まってからは初めて観るという方がどんどん集まってきてくれる状況になって。そこも含めて新たな出会いがあって、すごく楽しくライブができました」

──小野さんは「いつかフジでたらオレンジやりたいと思ってた」とSNSに書いていましたけど、「orange and cool sounds」は、2010年に発表した「KTEP」の1曲目に収録していた楽曲ですよね。

小野「2009年に初めてフジロックに行ったんですけど、その当時の曲が「orange and cool sounds」だったんですよ。当時の洋楽に影響を受けていた日本のバンドしかり、その大元になっていた海外のオーセンティックなファンクバンドしかり、初めて生で体感したのがフジロックだったし、そこで得た刺激から、こういうアプローチでやってみようかなというのがひとつ見つかったフェスでもあったので、いつかこういう場所でこの曲をやれたら気持ちいいんだろうなって。まぁ、それは目標にまではいかない、個人的な思いというか願望みたいなものだったので、バンド活動を続けていくことで忘れてしまってはいたんですけど、改めてフジに出るのが決まって、そういえばそんなことを考えていたなって思い出して。で、実際にプレイして、ちょっと感慨深いというか、よかったなって思いましたね」

──確かにそれは感慨深いですね。寺中さんは初のフジロック、楽しめましたか?

寺中友将「初めて行ったんですけど、やっぱり他のフェスとは雰囲気が全然違っていて。気温的にも結構暑かったんですけど、リハーサルのときにお客さんがほとんどいない状態でのフェスというのが、最近はなかなかなくて。そこから本番が始まって、どんどんお客さんが増えていったあの感じは、こういう場所でも僕らの音楽は届くんだなというのを実感できましたね」

──シンプルにうれしいですね、その状況。

寺中「やっぱり自分達はこうやってやってきたし、こうあるべきだなって、やりながら感じましたね。やっぱりフェスって、僕らを観に来た人達ではない人達もたくさんいるし、そういう人達の心をどうやって掴むのかというところで戦ってきたことを思い出して。今後のイベントとか、そういうところにすごく活きてくる1日だったんじゃないかなと思います」

小野「2012年に「Spring Scream」っていう台湾のフェスに出させてもらったことがあったんですけど、あのときと似た感じだったよね?」

寺中「ああ!雰囲気も近かったし、お客さんでだんだん会場が埋まってく感じがね」

小野「そうそう!最初は集まっていなかったけど、音を聴いてどんどん人が集まってきて、徐々に盛り上がっていくという。台湾のライブもすごく楽しかったのを覚えていて。なんか、すごくゆるいというか、時間が押すのが結構当たり前で、みんなアンコールをやってたんですよ、トリじゃないのに(笑)」

寺中「俺らが始まる時点でもうだいぶ押してて(笑)」

小野「1時間半ぐらい押してました。そんなこともありつつ、あのときはまだ駆け出しの頃で、とにかく目の前にいるお客さん、僕らのことを知らないお客さんを楽しませてやるぞという気概に溢れていて。その頃のことをいろいろと思い出させてもらえたRED MARQUEEのステージだったなと思います」

──そういった中で、2年振りのアルバム『DANCEJILLION』をリリースされます。KEYTALKといえばダンスというイメージがありますけど、実はアルバムタイトルに「DANCE」というワードが入ることって、何気に初めてですよね。

小野「あー!確かに」

寺中「特に避けていたわけでもなかったんですけどね」

小野「タイトルはドラムの八木(優樹)くんがつけてくれたんですけど、元ネタは「ワッショイ!」という曲の仮タイが「danjiri」で、そこから広げていった感じでしたね。略して“ダンジリ”になったらいいなとか、いろいろ考えてくれたと思うんですけど、“無限の踊りを提供する”という意味で、八木くんが閃いたらしく。それをすぐ共有してくれて、満場一致でめちゃくちゃいいねってことで、このタイトルになりました」

──じゃあ『DANCEJILLION』というワードに向かって曲を作っていったというわけでもなく、とにかく自分達がやりたいと思うものを詰めていったと?

小野「そうですね。4人で作った「shall we dance ?」という曲をきっかけに、メンバー同士の共作が増えていったので、一緒に何かを作ろうっていう感じではあって。ダンスというテーマに関しては、もはや言わずもがなという感じで突き進んでいったんですけど、曲が出揃ったときに改めて見てみたら、確かにそういう曲目になっているなって、改めて感心しました」

──「shall we dance ?」は「KTEP4」にも収録されていましたが、寺中さんとしては、4人で「shall we dance ?」を作った経験は結構大きかったですか?

寺中「そうですね。あの曲を作ったことで進めやすくなったところはたくさんあるし、分担することによって時間もかかるけど、いい意味で時間をかけてできた部分もたくさんあったりするのかなって。そういう作り方をしたことは大きかったし、去年の夏に「KTEP4」の会場限定盤を出しながら廻ったツアーも大きかったです。50本廻ったんですけど、コロナ明けなのもあって、しばらくなかなかライブもできていなかったし、お客さん達もまだ遠征しづらいタイミングでもあったので、僕らがみんなの街に行こうというのが、ツアーの大きなテーマとしてあって。そこで毎公演披露していたことも大きかったですね。完成させて、50本のツアーがあったからこそ、大事な曲になっていったと思います」

──共作といえば、「君とサマー」は、歌詞を首藤さん、小野さん、寺中さんの3人で書いていて。

小野「この曲は(首藤)義勝が大元を作ってきたんですけど、最初は2Aメロがなくて、リフが最初しか出てこない感じだったんですよ。でも、せっかくキャッチーなリフなんだから、またあったほうがいいんじゃない?とか、そこにラップとかあったらおもしろいよねっていうところから、僕が歌詞を書いたりとか。巨匠(寺中)が担当した部分は、もう巨匠節というか。義勝は祭りとか夏の感じを曲に入れたかったと思うんですけど、そこを話し合いながら進めていって。だから、最初から一緒に作ろうぜというよりは、そこに自分らが乗っかっていった感じでしたね」

寺中「コール&レスポンスとかが欲しいというのを義勝から元々聞いていて。方向性は見えてたから、わりとサラサラ書けました」

──アルバムに向けて曲を作っていく中で、寺中さん的にこういう曲を持って行けたらいいなと考えていたものはありましたか?

寺中「今もツアーを廻っていて、アルバムをリリースしてからZeppツアーに切り替わるんですけど、久し振りのアルバムをどれだけみんながワクワクした状態でリリースできるかなというのは考えていて。で、アルバムに収録している「MAKUAKE」を、今のツアーの入場SEにしてるんですよ」

──実はアルバム曲をいち早く流していたという。

寺中「“これは新曲で、「MAKUAKE」という曲です”みたいな説明はしていないんですけど、あきらかにKEYTALKの音で、ボーカル2人の声が入っているので。“この曲って何?”というのをツアーで見せながら、期待感をもっと高めていくっていう」

──「MAKUAKE」はまさにそういう目的で作ったと?

寺中「そうです。そういう曲が1曲あったらおもしろいなと思っていたので、まさにそういう曲を作ろうっていうところから作り始めました」

小野「レコーディングした後にその話を聞いたんですけど、どの曲よりもぴったりだなと思ったし、アルバムの中でも曲順としておもしろい位置にいるというか」

──そうですよね。「MAKUAKE」というタイトルからしたら1曲目のイメージがありますけど、実際は4曲目に置かれていて。

寺中「1曲目にする案もありつつ、他にもいろんな案があったんですよ」

小野「メンバーそれぞれが考えてきたんですけど、最後は「shall we dance ?」だよねとか、この辺りは前半、この辺は後半みたいな共通認識はありつつも、四者四様っていう感じで」

──その中で1曲目に選ばれたのが「ハコワレサマー」です。

小野「そうですね。『DANCEJILLION』というアルバムがスタートする上でばっちりな曲だなと思ったので。勢いづけてくれるところもあるし」

──この曲は八木さんが作曲されていますが、八木さんの曲でアルバムが始まるのも初めてですよね。

小野「初めてだと思います。だいたい義勝の曲で始まってたと思うので。確かにおもしろいですね」

──なんていうか、何気に初が多いですよね。

小野「そうですよね。いまインタビュー受けながら、そうだったんだって(笑)。“初めてのことをしよう”という話は特にしていないので、結果的にそうなった感じではあるんですけど」

──特に意図せず、自分達としては自然なことを出していたらそうなったということですね。

小野「それこそメンバー間で意見をフレキシブルに出し合える環境がそうさせているのかもしれないです」

──小野さんは「Supernova」を単独で作詞作曲されていますけども、かなりアッパーな曲になっていて。

小野「この曲のデモは、2020年のコロナ禍でステイホーム中に作っていたんですけど、マネージャーに“あの曲いいんじゃない?”って言われて、そういえばこんな曲作ってたなと思い出して。それで、リフとかサビは変えていないんですけど、AメロとかBメロをガッツリ変えて、その当時のモードと今のモードをすり合わせながら作れたのはおもしろかったですね」

──その頃に作ったものを改めて聴き直して感じたものはありました?

小野「たぶん今だったらこの原型になってないんだろうなとは思いましたね。だから、こうやって取っておくことって大事なんだなって、改めて思いました。歌詞は最初悩んだんですけど、過去に「KARAKURI夢ドキュメント」と「赤いサイコロのMAYAKASHI」という曲を作っていて。それはどちらも同じ世界軸の中で架空の物語を描いていたんですけど、その世界軸の曲をまた新しく作りたいなと思って。それで過去曲からリフを引用して散りばめたりとかもしてますね」

──あと、「MY LIFE」は、小野さんが作曲しつつ、作詞は小野さんと首藤さんとお2人でされていて。イントロから軽快でホーンも入ってきて楽しげなのに、<あっという間に死んじゃいました>という出だしが衝撃的。

小野「これは僕が最初にサビの歌詞を作って、義勝にAメロ、Bメロを作ってもらったんですけど、曲の大きいテーマとしては、最終的に人は死んじゃうから、人生楽しく歩みたいよねっていう。それを元に義勝もイメージを膨らませてくれたりとか、大学の友達で作編曲家をやっている塩野くんにホーンアレンジをやってもらったりとかもしてますね。あと、my life=自分の人生でもあるから、友達の声を入れたいなと思って。本当はこれまで関わってくれた人全員入れたかったんですけど、さすがに無理なので、最近よく会う人にお願いしました。ご飯を食べに行ったついでに、ゴッパーのマイクとMacBookを持って行って、“とりあえずハイハイハイ!って言って”って、曲も聴かせずに録ったりとか(笑)」

──はははは!すごいけど、雑いですね(笑)

小野「レコーディングをするのが初めてな人も多かったから、みんな楽しんでやってくれて。あと、学祭に出させてもらった愛媛大学の学園祭のお客さんにも協力してもらって、声を録ったりとか。結構な人数の声が混ざってますね。このレコーディング期間でできることはフレキシブルにやらせてもらいました」

──寺中さん作詞作曲の「未来の音」は、今年3月の日本武道館ワンマンでも演奏されていましたよね。

寺中「デモが出来上がったタイミング的には「君とサマー」をレコーディングしているときと同じ頃だったんですけど、武道館に向けての1曲があったらどうだろうっていう話があって。KEYTALKにとって武道館は大切な場所だから、そこに対しての思いだとか、音楽に対しての思いだとか、そういうのを詰め込んだ感じでしたね」

──この曲も「Puzzle」もそうですけど、『DANCEJILLION』というタイトルではありつつ、KEYTALKってそれだけじゃないし、じっくり聴かせる曲もやはり必要だろうという思いがあるのかな?と。

小野「そうですね。昔からその節はありますけど、その辺はここからよりしっかり出していくタイミングなのかもしれないです。ワンマンライブでそういう曲を披露する機会もあったりするので、盛り上がる曲と聴かせる曲のコントラストみたいなものはしっかりと見せていきたいし、そこもKEYTALKの武器だと思います」

──個人的には、「Puzzle」が3曲目というのもおもしろいなと思いました。よくあるアルバムのイメージだと、前半は勢いよく行って、途中で落として、みたいな感じですけど、聴かせる曲を3曲目に持ってきたという。

小野「僕らも最初はガー!っとあげて、後半で「Puzzle」が入ってくることを想定していたんですけど、義勝がこの案を持ってきて。これはこれでおもしろいし、アルバムが引き締まるなと思って。特に八木くんは、3曲目に「Puzzle」が入ることでアルバムとしてよく聴こえる気がするって言ってましたね」

寺中「アルバムの1曲目から3曲目までって、“このバンドはこういう音楽をやります”みたいな、名刺代わりになる曲達が並ぶイメージがあって。だから、最初にこの案を見たときに、おもしろいなと思いましたね。自分の中になかったものだったし、ミドルテンポを2人で歌うことはこれまでもあったけど、ここまでストレートなバラードを2人で歌うこともなかったし。そういう意味では、名刺代わりになるアルバム前半に入ってくるのはありだなって思いました」

──寺中さんの声もかなり優しい感じが出ていて。

寺中「ああ!バンドをやっていると、荒く歌うほうがやりやすいといえばやりやすいんですけど」

小野「元々はそっち優しい声のほうが巨匠らしいよね」

寺中「そうそう!元々はね」

──寺中さんの声って包容力ありますよね。

寺中「声に包容力があるのかはわからないですけど、包容力があるとはよく言われますね。人として」

──ははははははは!

小野「かっけえ!インタビューの見出しができた(笑)」

──考えときます(笑)。しかし配信全盛の時代にアルバムの曲順でこれだけ悩めるのも幸せなことというか。

小野「確かに」

寺中「やっぱ盤で出すならそこはこだわりたいですからね」

小野「うん。だからこそ、これしかないなっていう曲順に巡り会えたと思うので。こういう時代だけれども、一回はこの流れで聴いてもらいたいなっていうのはありますね」

──そして、アルバムのリリースツアーとして9月からZeppを廻り、10月28日には日比谷野外音楽堂でワンマンライブです。実は日比谷野音ワンマンも初なんですよね、ものすごく意外なことに。

小野「ずっとやりたいなとは思っていたんですけど、今回いいタイミングでやれますね」

──やりたい会場ではあったんですね。

小野「まだやれてないことでやりたいことのひとつにあったかもしれないです。仲のいいバンドも、かっこいい先輩達も野音でやっているし、観に行ったこともあるし。なんか、節目節目であの会場でやる印象もあったりして。個人的に印象深いのは、SUPER BUTTER DOGの解散ライブが日比谷野音で、チケットが取れなかったから音漏れを聴きに行ったりとか(笑)。そういうこともあったりして、個人的に野音はエモい場所になっていたりするので、すごく楽しみですね」

寺中「大阪城のほう(大阪城野外音楽堂)はよくやらせてもらっていましたけど、やっぱり外でやるライブは、フェスも含めてですけど、いつもとは雰囲気も違うし、僕らの音楽にも合っている気がすごくするので。そういった場所で自分らのワンマンをやれるのはうれしいし、楽しみですね」

──寺中さんの野音の思い出というと?

寺中「「水曜日のダウンタウン」のイベントに行きました。水ダウのイベントというか、番組の企画から生まれた都内某所っていうアイドルさんのライブに行きました」

──あー!結構最近の話ですね(笑)。

寺中「クロちゃんも見れたし楽しかったです(笑)」

──はははは!アルバムもそうでしたけど、初のことってまだ意外とありますね。

小野「メジャーに来て10年、結成15年ですけど、まだまだ初めてのことがあるっていうのはワクワクしますね」

寺中「まあでも、おそらくメジャーデビューしてからの10年間は、毎年初なことだらけだったと思うんですよ。“KEYTALK史上初”というのを意識してやってきたわけではないけど、この先も来年以降も、結果的にそういうことが多いよねっていう感じでやっていけたらいいですね」

──個人的にやってみたい、初なことってあります?

寺中「細かく言っていくと、まだやれていない会場ってたくさんあるんですよ。ウチのバンドには埼玉出身のメンバーが2人いるので、さいたまスーパーアリーナでもやってみたいなと思いますし。イベントではやってますけど」

小野「あとはNACK5で冠番組を持ったりとか?」

寺中「僕は持ってるんですけど。熊本出身なのに(笑)。KEYTALKとして冠番組、欲しいよね。まあ大事なのはコネっすよね!」

小野「その通りすぎる(笑)。激しく同意!」

寺中「ぶっちゃけ、昔のバイト先の後輩がラジオ局に就職したので、番組レギュラー決まりました!」

──ある意味、ちゃんとパーマネントな人付き合いをされているということで。

寺中「そうですね(笑)」

小野「いい感じでまとめてもらえた。“コネ最高!”で終わるところだった!危ねー(笑)」

──ははははは!Zeppも野音も楽しみにしてますんで。

(おわり)

取材・文/山口哲生
写真/後藤壮太郎

LIVE INFO

■DANCEJILLION Release Tour 2023e+ローチケチケットぴあ
9月1日(金)KT Zepp Yokohama
9月7日(木)Zepp Nogoya
9月9日(土)Zepp Osaka Bayside
9月10日(日)Zepp Fukuoka
9月13日(水)仙台GIGS
9月15日(金)Zepp Sapporo
9月20日(水)Zepp Haneda
9月30日(土)沖縄Output

■日比谷公園大音楽堂 - KEYTALKワンマンライブ
2023年10月28日(土)日比谷公園大音楽堂

DISC INFOKEYTALK『DANCEJILLION』

2023年8月30日(水)発売
UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤(CD)/PDCV-1209/5,280円(税込)※完全数量限定
ユニバーサル ミュージック

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KEYTALK『DANCEJILLION』

2023年8月30日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/TYCT-6927/4,180円(税込)
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2023年8月30日(水)発売
通常盤(CD)/TYCT-60211/3,080円(税込)
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