──前回、10周年アニバーサリーライブツアーにまつわるインタビューで“まだまだみんなの知らないアーティスト=水瀬いのりを提示していきたい”と語っていただきましたが、11年目の第一歩として、9月に初の野外ライブ『Inori Minase OPEN AIR LIVE 2026 Summer Challenger』の開催を決めた経緯から聞かせてください。

「私自身、ワンマンライブを野外でやってみたいというのは心の中にずっとあって…ただ、“なかなか難しいものだよな”と思いながら温めていました。でも、10周年を迎えるにあたって、“次にやりたいことは?”と聞いていただく機会が増えて、ファンクラブライブツアーやリクエストライブに加えて、“野外ライブにもいつか挑戦したい”と伝えていたんです。その挑戦がこんなにも早く実現するとは思ってもいませんでした。“やっぱりレコード会社さんってすごいんだな!”って思いました(笑)」

──あはははは。口にしてから実現するまでが早すぎましたか?

「“え? もう?”ってくらい早かったです。今、このインタビューをしていただいているのが6月上旬で、私が 3ヶ月後にはコニファーフォレストで野外ライブをやっているというのが、まだ想像が全然できてなくて。今はまだ緊張感はなくて、“楽しいライブになりそうだな”という明るい気持ちですけど、7月になったら、リハでグロッキー気味になっているかもしれないです。楽しいのは今だけかもしれないですけど、ライブタイトルの通り、サマーチャレンジしていく夏がここから始まるので、今はすごくワクワクしています」

──ちなみに野外ライブの経験はありますか?

「お客さんとしてはあります。10年くらい前のコニファーフォレストであったSEKAI NO OWARIさんの野外ライブが私の初の野外ライブ体験でした」

──ああ! 僕もその場にいました。2014年10月に開催された野外イベント『TOKYO FANTASY』ですね。

「時計みたいなのをつけました?」

──入場証の変わりになる時計型の光るリストバンド“スターライトリング”をつけていました。

「あの時は右も左もわからず、母と流されるようにエリアに入っていって。“とにかく楽しもう!”と思って参加した野外ライブでした。まさか未来に自分がその場所でライブをやるなんて、その時は微塵も想像していなかったので、そういった意味でも“すごいことが起こっているんだ”というのは感じています」

──そして、野外ライブに向けて、テーマソング「Summer Challenger」が完成しました。水瀬さんからは“どんな曲にしたい”とオーダーしたのでしょうか?

「“夏”で言うと、私は12月の生まれなので、諸説あると思いますが、“冬生まれは夏が苦手説”みたいなのがあって、夏がすごく苦手で…。冬は寒くても我慢できるのですが、夏はもう暑くて苦しくて、あまりいい思い出もなくて。夏になると急に元気になる人が周りに多かったのも怖かったです(笑)」

──あははは。怖かったですか。

「“危険だな”と思っていました。“これも暑さのせいなんだ”と思っていましたし、学生時代は特に、“夏を楽しむ!”ってことに馴染めませんでした。大人になってからもなかなか夏とは仲良くなれなくて。夏が来て、気分が高揚するということもなかったです。ただ、水瀬いのりという“水”が名前にあることもあって、“夏に思い出はありますか?”と聞かれることも多いですけど、こういうネガティブなワードしか出てこないのも残念だったので、今回、夏の野外ライブを…9月ももう夏と言ってもいいでしょう?」

──野外ライブの開催は9月ですが、夏と言っていいですか?

「いいとしましょう。3ヶ月周期で区切っていけば、 789月が夏なはずなので。なので、夏というこの 3ヶ月間をみんなと一緒にだったら好きになれるんじゃないか?というテーマで楽曲を作りたかったです。ただ、そこでも、ハチャメチャに夏を肯定して“夏を楽しんで、あげてこうぜ!”という曲というよりは、人それぞれの夏があっていいっていう…“私が見つけた夏はこれ”ということを歌える曲にしたいと決めていました」

──作詞作曲がヤマモトショウ、編曲が宮野弦士といういわゆるアイドルソングでお馴染みのメンツにオーダーしたのが意外でした。

「そうですよね。お二人とも初めましてでした。ヤマモトさんはFRUITS ZIPPERさんをはじめ、令和の“可愛い”を一手に担っていると言っていいくらいキラーチューンを生み出している方ですけど、私自身もヤマモトさんの“可愛い”楽曲たちに触れたときに、どこか泣けたんです。“可愛くて泣けて、綺麗な心になるのはすごいな”って感じて。それで、“水瀬いのりにヤマモトショウさんが曲を書くなら、どんな角度から来るんだろう?”という好奇心からお願いをさせていただきました。宮野さんはヤマモトさんがとても信頼している方ということで、ご指名をいただいたという流れがあって、このお二人とのタッグでした」

──「Summer Challenger」を受け取った時はどう感じましたか?

「ヤマモトさんの他の楽曲とも違うんだけど、“ヤマモトショウらしさ”がたくさんあって。それが、“水瀬いのり”といい具合に混ざっていると思いました。楽曲が届くまでは、“ヤマモトさんの作る曲というチャンネルに自分でギアを上げないといけないかな?”と少し身構えていたんですけど、いざ届くと、アーティストとしての私で歌っても調和できるという落としどころだったので、さすがだと思いました」

──歌詞はどう捉えましたか?

「もう1フレーズ目から大好きです。<仕方なくやった宿題/その日記に、助けられる思い出、>ってまさにそうだと思って。当事者になっている時には辛く苦しいことも、いつかの自分の励みになったり、宝物になります。私はアーティストとしては10年、声優としては16年になりますけど、デビューしてからそれくらいの月日が経ってやっと、“当時、あの音響監督さんに怒られたことも大切だった”と思えます。当時は“どうしてこんなに怖いんだろう…”ってメソメソしていましたけど、それすらも自分に向き合ってくれていたことなんだと気づけるようになって。当時は辛かったことが、今となってはそれが思い出として助けになってくれて、糧になるというのは、まさにそうだと思います。もうこの2行の時点で私の中では“勝ちました!”って思いました」

──(笑)。ネガティブなイメージがあった夏という季節はどう描いてますか?

「この曲での夏は、9月の野外ライブのことで、必ずあなたと私は“君と過ごす夏”になるということを書いてて。そういう意味での<駆け抜ける夏を、君といるときを、>という素敵なフレーズが、私にとっての“楽しい”のきっかけだと感じました。<駆け抜けた夏が、私たちになる>ことで、<今日を生きていく>というところにも関わってきます。誰かと一緒に“楽しい”を共有したり、この夏をみんなと一緒に駆け抜けていくことが、夏の思い出なんだな、夏の楽しみなんだなって思います」

──<君>は、ライブに足を運ぶファンというイメージですか?

「今回は明確にファンの皆さんを思い浮かべて歌いました。それこそミュージックビデオの撮影でも、カメラの向こうにいる、見てくれている君を涼しいお部屋から手招きして、熱い道に引きずり出すような気持ちでいて。“もっとこっちおいで”って、ポジティブな意味での夏に誘う歌い方や表情になったと思います」

──サビ頭の<超>というフレーズのインパクトも大きいいですね。

「ここはライブで是非、皆さんに歌ってもらいたいパートです。私がここを歌うと次の<センチメンタル>に入れないコーラスパートになるんです。なので、<超>のとこはみんなが言ってくれないと!」

──でも、いろんなパターンで<超>を歌っていますよね。

「そうなんですよ。だから、みんなにもその情緒を汲んでもらいたいです。落ちサビのところは、少し落とし目の<超>にして…そこは、みんなで一体感を出すように頑張って欲しいです。それで言うと、<Summer day>のところの追っかけパートも、みんなと一緒にライブでやりたいと思っているパートなので、ぜひ練習してから会場に来てほしいです」

──追っかけの<君と>のコールは練習しておきます(笑)。

──先ほどお話に出たMVはどんな映像になっていますか?

「楽曲の明るさをそのまま表現しつつ、私のテンション感というか…。私が思う夏の温度感って、いろいろ言ってきましたけど、ギラギラな夏ではまだないです。“君と過ごす夏”という、ちょっと甘酸っぱいと言うか、清涼感のある夏のシーンを切り取っていただいたミュージックビデオになっているので、炭酸が出てきたり、扇風機の風を浴びていたり、海岸にも行ったりして。夏ですけど、決してハジけるような元気さだけではなく、少ししっとりとした夏の楽しみ方とか、避暑地感もあります。暑い夏ですけど、“あ、この人は暑さにあまり耐性がないのかな?”ってバレそうな私が都度都度映り込んでいます(笑)。夏なのに何か羽織っているなみたいな」

──(笑)。水瀬さんがビーチに行くだけでも珍しいかもしれないですね。

6thシングル「TRUST IN ETERNITY」で浸かるくらいまで行ったんですけど、あれもシリアスな海だったので。こういうご機嫌な海は、あまりMV撮影では訪れたことがなかったです。でも、梅雨入りするかしないかくらいの時期だったのに、その日だけピンポイントで快晴でした。背中を押されているとしか思えず、これはもう完全にコニファーも晴れたなと確信するMV撮影日でした」

──水瀬さんにとっては、この夏の1番のチャレンジが野外ライブになりますね。

「そうですね。この野外ライブが成功したら、私の中ではもう夏と親友と言ってもいいくらいです。和解っていうところまで行けるくらいの一世一代のイベントなので。結果次第では、“ここまでしてもダメか”という感じになってしまうので、絶対に成功させたいです!」

──夏と決別することもあるってことですか?

「はい。四季の中で夏がデリートされる可能性があるので、そういう意味では本当に大団円を迎えたいです」

──(笑)。夏の1日で言うと、「Summer Challenge」は何時ごろのイメージですか?

「お昼です。日中の夏という感じです。それこそシングルのカップリング曲、「ハートノフレーバー」と「リフローレセンス」が夏の夕暮れと夜を担ってくれているので。この子はスタートダッシュを切る曲です。朝から昼にかけてのお出かけする道中で聴いていただいても、夏の思い出を作るのがワクワクしそうだと思います」

──それも最初から意図していたのでしょうか? シングルは夏の昼、夕方、夜という流れの3曲になっています。

「いえ、明確に決めていたわけではないです。でも、3曲目の「リフローレセンス」はかなり以前にレコーディングしていた曲なので、まさかこの曲が、『Summer Challenger』のカップリング曲になるというのは、当時は決まってもいない未来だったんです。でも、すごく必然というか、運命的な出会いをして。ある意味、この夏のギラギラな夜にぴったりな曲になってくれました。となると、「ハートノフレーバー」という2曲目に入る楽曲は、少しチルっぽい曲を作れたらいいと思って、少しボサノバ的な楽曲に挑戦しました」

──夏の夕暮れを感じるシティ・ボサで、ジャジーなピアノも入っていますね。

「これもやりたいことの1つだったんです。私も年齢を重ねていって、こういう曲の良さがどんどんわかってきました。20代の頃はわかりやすいサウンドや起承転結というものにどうしても惹かれていたんですけど、いい意味で BGMのように聴ける曲って、大人になると“心地いいな”と感じるようになりました。いろんな音を聴きすぎて、ちょっと疲れてしまった日とかもあるじゃないですか。そういう時に、私は劇伴やクラシックとか、歌詞のない曲を聴いたりしています。歌詞を受け取ることに耳が注目してしまう時ってあるじゃないですか。この曲は歌なので、歌詞は歌っているんですけど、片手間に聴いてもいいという温度感です。熱唱していないというのが、ある意味、みんなの中の夏のひと時、“ちょっと休憩”という位置になればいいと思って。そんな気持ちで歌いました」

──そして、3曲目「リフローレセンス」には<月明かり照らし出す>というフレーズがあります。「リフローレセンス」とは“再び咲く”という意味ですよね?

TVアニメ『デッドマウント・デスプレイ』のEDテーマ「アイオライト」とOPテーマ「スクラップアート」を歌わせていただいて、「リフローレセンス」は遊技機の搭載楽曲になっています。「アイオライト」では一度壊れてしまったものがあり、自分が迷い、不安みたいなものに侵食されながらも、信じて僕たちは進んでいくという勇気や覚悟を歌っていました。「スクラップアート」は廃材芸術ということで、これもまた不要なものとされているものからアートを作る中で、「リフローレセンス」でまた再び咲くっていう。一度枯れてしまった、もしくは、消えかかっていたり、腐りかかってしまったものが再起する美しさと強さを歌った曲になっています。<ねえ、誰かそこに居るの?>というフレーズだけで『デッドマウント・デスプレイ』だなって思います。過去 2曲を知ってくださっている方にとっては、よりこの二人の集大成というか、覚悟が伝わる1曲だと思いましたし、私も受け取って、まずは、仮歌を聴いた時に、自分がこの曲を歌えると思えなくて、1回諦めたというか…」

──そうなんですね。

「すごく難しいですし、すごく高くて、早くて、メロも変わっていくので。“あ、1回ちょっとやめよう”という感じで、閉じて。もう少し心に余裕のある時に再び向き合ってみて、かつ、「アイオライト」、「スクラップアート」をもう一度自分で聴いたりしました。歌詞にカタカナで書いてある<アイ>の部分が全部繋がっているので、その物語をしっかり受け取った上で、もう一度しっかりと向き合った自分で歌いきることを使命としてレコーディングに臨みました」

──この3曲を収録したシングルが7月22日にリリースされます。この夏、皆さんにはどう届けたいですか?

10年やってきて、11年目ということも相まってなのか、自分の歌を聴くマインドも少し変化してきたんですよ。いい意味で、客観的に自分の曲を聴けるようにやっとなってきて…それこそ、例えば「ハートノフレーバー」で鳴っている楽器の音を探せるようになったりもして。トラックダウンの時もどうしても自分の歌に赤点をつけてしまうような場面が多かったんですけど、“一人のシンガーさん”として聴けるようになったことも、ある意味、今までの楽曲とは違ったエッセンスが入ったシングルだったからだと思います。自分で聴いていても、とても楽しいシングルになりました。この言葉を信じて受け取ってほしいです」

──時間経過を感じる野外ライブで聴くのが楽しみな3曲ですが、リリースから2ヶ月後となる初の野外ライブはどんなステージになりそうですか?

「願わくば、“OPEN AIR LIVE”という副題を何年か後にまた続きが作れるようなライブにしたいです。私の夢は、野外ライブが達成した時に叶ってしまいますけど、でも多分、その景色を見た時に、また違う野外を体験したいと思ってしまう気がしています。“『Summer Challenger』とはまた違う野外だったらこうかな? ああかな?”って、次のことを想像し始めるような気がしています。だから、私自身がこの公演で燃え尽きないように気をつけたいと思っていて…ここがゴールではないので。なんならまだ11年目が始まって、本当にスタートダッシュのタイミングで、このクライマックス感なので」

──そうですよね。アニバーサリーイヤーみたいです。

「そうなんですよ。周年は去年、終わったはずなのに。本当にそれだけ、周年が終わっても、この熱量で活動を続けさせていただいていることや皆さんに音を届けられるという環境に本当に感謝しています。みんなが付いてきてくれなければ実現できないことの連続なので、みんなにこれからも新しいことだったり、私らしいことを提示して、みんなと“楽しい!”を続けていくことが私のチャレンジです。「Summer Challenger」で歌っている<今を生きていく>というのを、5年後も10年後もみんなで<今を生きていく>って歌えていたらいいな…そんな気持ちでこのライブに臨みたいです。みんなでいいライブにしたいと思っていますし、私のように夏が苦手だけど、私がいるからコニファーフォレストに来るという方もいると思うんです。その方が“来なければよかった”って思わないようにしたいです。会場に来た意味があるライブになるよう頑張ります。応援と、そして、みんなの声援を楽しみに待っています!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ

RELEASE INFORMATION

水瀬いのり『Summer Challenger』

2026年722日(水)発売
KICM-2174/1,540円(税込)

配信はこちら >>

水瀬いのり『Summer Challenger』

LIVE INFORMATION

Inori Minase OPEN AIR LIVE 2026 Summer Challenger

2026年912() 15:30開場/17:00開演(19:30終演予定)
2026年913() 15:30開場/17:00開演(19:30終演予定)
会場:山梨県 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

Inori Minase OPEN AIR LIVE 2026 Summer Challenger

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