──5月のメジャーデビュー以降、どんな場面でそのことを実感していますか?

「一番実感したのは、「終わらない夜の守り方」をTVアニメ『世界最強の後衛 〜迷宮国の新人探索者〜』のエンディングテーマに起用していただいて、ミュージックビデオを公開すると、YouTubeのコメント欄に、たくさんの外国人の方からのコメントが付いていたんです。それを見た時にいろんな人に見てもらえている…しかも海を越えたというのが分かって。そこが一番実感した場面でした」

──そしてMajor 1st EP『その瓶を覗けば』は8曲を収録した、ボリュームのあるEPですね。

「コンセプトがあるというか…ストーリーがちゃんとできているものになったので、そういう意味ではアルバムという言い方よりもEPの方がしっくりくると思っています。EPと言うことによって、最初から最後までの作品の波、“ここから始まってこう着地するんだよ”という一つの作品としてちょうど良いと思います」

──新曲ができる過程で“テーマを持たせた方がいい”と思ったのでしょうか?

「そうですね。最初2曲目から8曲目までの並びをを考えていた時に、“この曲の中で共通するもの、ずっと言いたいことってなんだろう?”と考えて。すると、誰かの居場所を作るというか、感情の旅をしていって最後に愛という形で着地していると思って、そこから、これを上手く繋げる1曲目、このEPの表題となる曲を作ろうと思って「その瓶を覗けば」を一番最後に作りました」

カモシタサラ(Gt./Vo.)

──その1曲目の表題曲「その瓶を覗けば」からかなり驚かされる構成の曲で…でも正真正銘インナージャーニーのギターサウンドでもあって。

「ああ〜、そうです。本多くんに“大暴れしてほしい”と言いました(笑)」

──でも、大暴れする前のイントロからインナージャーニーらしいですね。

「本当ですか? 嬉しい。空から降ってきて、どんどん地球というか現実世界に降り立つ感じを表現したくてシンセを使ったんですけど、インナージャーニーらしさ出てますかね? すごい不安だったので、よかったです(笑)」

──Aメロはそれこそ瓶の中から歌っているような音像ですね。そこは意識しましたか?

「意識していなかったのですが、別の惑星にいる生物が、偶然メッセージボトルのようにインナージャーニーの音楽と出会って、“地球という素晴らしい星があるよ。よかったらちょっとそのつらい境遇から逃げ出して一緒に旅しない?”というような歌に誘われて地球に降り立ち、感情の旅をするというストーリーになっています。だんだん場所が変わっていく様子を転調と歌詞とともに表現していて、だから演奏も徐々に激しくなっていって(笑)。この曲で、音の力を借りながら歌詞を選択していく楽曲制作をしてみました」

──サビでバーン!と音像が開くところで、外に出るような体感があります。

「確かに。このサビの開けたところの<見下ろす街の灯の>という歌詞は、別の星から飛んで、地球という星を俯瞰で見た時にいろんな街明かりが見えて、その一つ一つの明かりにそれぞれの生活があってそれぞれの名前があって命がある。それを見て、その一つ一つの命を自分で消そうとしなくていいよ、誰かのためになんて消す必要はなくて自分の命を大事に生きていこうよ。そんなことをここで歌いたくて」

──EP全体を繋ぐためにできた曲なのが納得です。

「本多君といろいろ相談しながら考えたんですけど、EPの最後の曲は「誰も知らないところ」にしようというのは共通していて。この曲で終わった時にもう1回最初から聴きたくなるEPにしたいというか…人生って続いて行くし何回も循環していくから、EPも循環して聴けるようにしたくて、「誰も知らないところ」のテーマになるアルペジオと「その瓶を覗けば」の一番最初のアルペジオが繋がるようにしました」

本多 秀(Gt.)

──「誰も知らないところ」と「その瓶を覗けば」の共通点として、本多さんの中にある“オアシス節”もあると思ってしまいました。

「ああ、本多君のオアシス節(笑)。確かにオアシスですよね、本多君のギターって」

──特にこの2曲のギターは無敵感があります。

「そうですね。「その瓶を覗けば」の歌録りの時に私が風邪ひいてしまって、録った後に“今日は喉の調子が無理すぎるから、1回休んで明日に回そう”となったんです。でも、その時に同時並行で本多君は家でギターを弾いてレコーディングしてくれていて。で、歌録りを諦めた日の“本当に最悪だ!”という気持ちの時にギター入りのアレンジが送られてきたんです。その時にあのギターソロが鳴っているのを聴いて、“わあ! これだ!”みたいな(笑)。ギターを聴いて“歌、頑張らなければ!”と、奮い立たせられたギターでもあります。最高でした」

──「その瓶を覗けば」の歌詞で個人的にグッとくるところが<夕方のチャイムの中へ そのまま>というところで、インナージャーニーのルーツでもあるandymoriの「1984」を想起させるラインでした。

「ああ、それはあるかも(笑)。少し影響されちゃったかもしれないです。学生時代というかあの頃の気持ちに帰れるものというか…それって夕方のチャイムかな?という気持ちになっていて。ここはかなり悩んだんですけど、レコーディングの前に“やっぱりこれで行きたい”と思って当てはめた歌詞です」

──それはカモシタさんの経験から来ているのでしょうか?

「いろいろ混ざっているんですけど、音楽を聴きたくなる時って帰り道とかが多くて。学校で嫌なことがあって一人で帰っている時にそれを反芻して、川沿いの夕方のオレンジ色とその中を一人で歩いて行ってチャイムが鳴った瞬間…あの瞬間って人生において、とても大事だったというか、あの傷つきを含めて大人になっていく感じ。でもその時のギュッとなって押し殺した自分も、今の私を作っているので、そういうことを忘れないでいたいです。“あの時があるから今あなたが飛べるよ”というのを言いたくて、そういう気持ちで作りました。「Toi toi toi!」もそうですけど、やっぱり14歳の頃の自分を大事にしてあげたいですし、14歳の自分に歌いたくて、一貫してこういう歌詞になっています」

──「風のひと」はこれまでにインナージャーニーで一番の掛け値なしのロックンロールですね。

「大暴れです(笑)。この曲がEPの中で一番古い曲で、2023年のKaitoの卒業くらいの時にできた曲です。始めより良くなるというか…いろんな人との出会いと別れがあって、出会ったことには全部に意味があって、その偶然の出会いが人生と共にする大事なエッセンスになっていく…人との出会いは風のような感じだと思って。だから、“すべての出会いを風に乗せてもっといい場所に行ってやろうぜ!”って、割と無理やり押し上げる感をこのギターの大暴れと共に作った曲です」

──人との関係のあり方の理想みたいな感じもします。

「別れってとても寂しいものに捉えられがちだと思いますけど、そうではなく、“出会えたことがまず良かったよね”って。大事な出会いだったらまた出会うこともあるだろうし、どんどん新しい場所に行けたらいいよねと思って」

──「グッバイ来世でまた会おう」にしてもそうですけど、カモシタさんはあまり人間関係に執着していないのでしょうか?

「バレてる(笑)。もちろん人への執着はありますすけど、それよりももっと軽い気持ちで生きた方が楽しい気がしています。人は一人だからこそ、いつか絶対何かしらの別れはくるわけで、でもそれも終わりがあるからこそ逆に“今、一緒にいれたらいいよね”くらいの温度感で人と接したいと思っています」

──でも今って関係性が全部SNSの中で終始したりもしますよね?

「確かに。SNSでしか会ったことない人もたくさんいますし、だからこそ会いたい時には絶対に会うべきで、“会う”ということはとても大事だと思います。だけど執着しすぎないくらいのテンション感だから、逆に会いに行けるのかもしれないです」

──“軽い気持ちで生きていく”という面ではカモシタさん自身の変化が出ているのかもしれないですね。

「そうですね。今、思い出したのが、八王子の実家に住んでいた頃です。駅から25分くらい歩かないといけない場所で…そもそも八王子って人に会うのもかなり一苦労なんです(笑)。終電はすぐに終わってしまうし。音楽をやっていると、“もう少し話したかったけど”と思っても、家では親も待っているし、いろいろ考えて泣く泣く帰ることが多かったんです。でも、この3年、一人暮らしをするようになって少しは東京に近いところで住み始めるともう自由だから何時まででも話せて、“朝まで語ろうぜ”みたいなことも全然できて。一人になって“自分自身が何か?”とか、自分がしたいことが何なのかを考えることがすごく増えました。その自由を手に入れたことによって、よりいろんな人と話すという選択を自分でしていると思います。自分の身の置き方とか境遇が、自分自身と向き合うきっかけを作ってくれている気がします。だから、曲もどんどん“人間って何?”、“楽しいね”というモードになってきていると思います」

──カモシタさん自身の人生観そのものはそんなに変わらなくても、インディーズ時代の曲が物語や映画の脚本のようだとしたら、今はより“自分がどうしたいか?”が前面に出てきているのかもしれないですね。

「そうかもしれません。そのお話と自分の中の思っていることがリンクしていって、そこの間を見つけながら曲を書いている感じです」

──そして「海底ランデヴー」も面白かったです。音場が広いというか、大きいサウンドですね。

「この曲も歌録りで少し苦労したんですけど、初めてサビのボーカル…主旋(律)を左右に振り分ける試みをしてみました。最初は一本で真ん中にボーカルを作ってみたら、“いいんだけど潜ってる”というか、ボーカルが今イチ立たなかったんです。レコーディング中に試行錯誤しながらエンジニアさんと相談して、“逆に左右に振ってみるのはどうだろう?”と試してみたら、一気にバーって広がった感じです。海の中の設定なので、囁いてもいて、“隣にいるよ”という感じがボーカルの振り分けによって出たと思います」

──そう思います。サビで大きくなるのではなくて近くなる印象です。

「海と陸のそれぞれの違う場所で生まれた2人の恋の話で、“ここは君の生まれた場所なんだよ”と言って出会うんですけど結局帰らなければいけなくなって…“でも、繋がっているからいつでも想うことでまた会えるから”というのを歌いたくて、それって耳元で囁くことによってより確かになったと思います」

──ライブでどう表現するのかが楽しみになる曲も増えました。

「最近、ライブで踊るってすごく大事だと思っています。“じゃあ、ここで手あげて”と言うのも在り方としていいと思いますけど、そうではなくて私が好きなライブとか音楽ってみんなが自由に踊っているもので、それぞれの感情でそれぞれのリズムでノっている光景が私も見たくて。今回、「海底ランデヴー」や「ノイズラジオ」に関しては、“みんな、それぞれの身体表現で感情を解放してくれ!”っていう感じで作っています」

──「ノイズラジオ」は従来のバンドサウンドから逸脱したアレンジですしね。

「はい。Pulpみたいになりたくて(笑)。去年の1月に大阪の単独公演を見に行ったんですけど、ジャーヴィス・コッカーはおじいちゃんだけどいつまでもカッコよくあり続けて。くねくね踊っていて、フロアでは私も含め、Pulp全盛期に生まれていなかったであろう人や老若男女がめちゃめちゃ踊っていて、すごく感動したんです。そういう人間になりたいですし、インナージャーニーもそうあれたら嬉しいと思って、そこから楽しいけど少し切ない曲でダンスミュージックを作りたくて、「ノイズラジオ」でやってみました」

──最近90年代のUKロックを20代の人も好んで聴いていますし、オルタナバンドも増えていますよね。

「そうですね。多分、今の20代の人が最初に影響を受けたのは日本の音楽だと思うんです。でも、それをどんどんディグって遡っていった先にあるのがそういう90年代や80年代のロックな気がしているので、やっぱ原点っていうのはカッコいいものなんだと思います。今、何重にもなってリバイバルでもないですけど、昔を踏襲して今に落とし込んでいる人が増えている中での原点の力ってすごく強いと思いますし。あと不便さが残っていた時代への憧れもある気がします。映像もそうですし、見せ方とかすべての粗さがよくて、カッコいい。音像としての粗さもあって、試行錯誤しながらやっているものの美しさがあると思います」

──ちなみに今回のアートワークに登場しているこの子は誰なんですか?

「(笑)この子はレレという名前で、海王星から地球に来た生物という設定…設定って言っちゃった(笑)、設定なんです。この子が最初にメッセージボトルの歌に誘われて“地球行ってみるか”と思って、今いろんなところを旅している最中の生き物なんですけど」

──それはEPの内容を象徴するキャラが必要だと思ったからですか?

「そうです。1曲目の「その瓶を覗けば」を作っている途中に、誰かいた方が分かりやすいと思い、地球から1番遠くて寒い惑星にフォーカスしました。今地球で居場所を求めている誰かにも届けばいいなって。だから、“レレは実はあなた自身でもあるんだよ”というのを伝えたいです」

──名前のレレに何か意図はあるのでしょうか?

「名前の由来は、今年の3月に名古屋に本多君とスタッフの3人でアコースティックライブに行った時に、お昼ご飯にエスニック料理を食べに行ったんです。そしたらレレゴレンというナマズを揚げた料理が出てきて(笑)。ライブ前だったからさすがに食べれなかったんですけど、そのインパクトがすご過ぎてしばらくレレが流行ってしまって(笑)。それで今回、この生き物が生まれて名前考えていたときに、“レレって絶対に何か他に意味があるはずだ”と思って調べたら、ハワイ語で“飛ぶ”とか“跳ねる”とかいうウクレレのレレの意味があって、“ぴったりじゃない?”と思いました。きっかけはナマズの料理だったんですけど(笑)、相応しい名前だと思ってレレにしました」

──11月から全国5都市をめぐるツアー『インナージャーニー TOUR2026「その瓶を覗けば」』は対バンとワンマンの両方がありますが、趣向は変えていくのでしょうか?

「変えていきます!(笑)」

──各地の対バンのカラーも違いますし。

「かなり違いますよね。Sakurashimejiさんだけ一度、渋谷で企画に誘っていただいて共演したことがあるんですけど、その他のゲストの方は全員初めてやる人たちです。香川はKEPURAと元SongbirdsのCÓHE(上野皓平)さんが弾き語りでやってくれて、福岡はKEPURAと岩崎桃子さんに加えて、ねぎ塩豚丼というバンドも出てくれて、それぞれ違った良さを持つライブを見れると思います。どの日も対バンのお客さんにもインナージャーニーの魅力を知ってもらいたいですし、インナージャーニーのお客さんにも対バンそれぞれの良さが伝わって相互作用が生まれたらいいなって思っています。それこそこのEPのテーマが偶然の出会いによって生まれる人生を変える衝撃…偶然による衝撃を大事にしているので、対バンしたことによる偶然で誰かの人生が輝けば嬉しいという気持ちでやろうと思っています。ワンマンライブに関してはもうインナージャーニーの世界をとことん見せられる場所になると思うので、盛り上がりももちろん考えつつ、いかにEPの世界を目で見て引き込んでライブでどう伝えるか?をより一層やっていきたいです!」

(おわり)

取材・文/石角友香
ライブ写真/森山 学浩

RELEASE INFORMATION

インナージャーニー『その瓶を覗けば』初回限定盤(CD+BD)

2026年10月21日(水)発売
KIZC-90795~6/6,800円(税込)

インナージャーニー『その瓶を覗けば』

インナージャーニー『その瓶を覗けば』通常盤(CD)

2026年10月21日(水)発売
KICS-4270/3,000円(税込)

STREAM/DOWNLOAD >>

インナージャーニー『その瓶を覗けば』

LIVE INFORMATION

インナージャーニー TOUR2026「その瓶を覗けば」

11月12日(木) 香川 高松TOONICE Guest:KEPURA、CÓHE(上野皓平)
11月14日(土) 福岡 天神ライブハウス秘密 Guest:KEPURA、岩崎桃子、ねぎ塩豚丼
12月13日(日) 東京 渋谷O-Crest One Man Live
12月18日(金) 愛知 名古屋HeartLand Guest:Sakurashimeji
12月20日(日) 大阪 心斎橋Pangea One Man Live

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