──キャリア初のベストアルバム『A・S・A Vol.1』が、6月28日にリリースされました。どんな反響が届いていますか?
「収録曲のほとんどが、ファン投票(オンライン投票)で上位になった楽曲から選ばせていただきました。だから、ファンのみなさんの熱気がすごいです。“うれしい!”という声を、たくさんいただいています!」
──ファンの方たちからの投票結果を受けて、今井さん自身はどんな印象を持ちましたか?
「1位は「朝焼けのスターマイン」でした。確かに私にとっても大事な楽曲ですし、よく“今井麻美の代表曲”ともいっていただけます。ただ、これまでにいろんな場所でたくさん歌っているので、“だったら、あえてベストアルバムに入れる必要はないな?”って、ファンのみなさんが思ってもおかしくないんです。だから“入ってもギリギリかな?”、“もしかしたら入らないかな?”って思っていたら、「朝焼けのスターマイン」がぶっちぎりの1位! その結果を見て、みなさんガチセレクトというか…純粋に好きな曲、“本当の一番を選んでくださったんだな“って思いました。あと、最終的にベストアルバムに揃った楽曲のバランスが、すごく取れていたんです。これは私の持論なんですけど、アーティストとそのファンの方って似ていると思いません?」
──何か共感する部分があるから惹かれるし、その上で長く関係性が続くほど似てくる部分もあると思います。
「そうなんですよ。今回のバランスのいい選曲を見て、“私とファンのみなさんは似ているな“と思いました。私もバランサータイプなんです。アーティストとしてもそうなんですけど、エンターテイナーとしても共演者とバランスを取るタイプなので、本当に同じで笑っちゃいました(笑)」
──だとすると、今井さん自身が選曲しても同じような内容になっていたかもしれないですか?
「これが、まったく違ったんですよ。自分で自分の楽曲を選ぶと、“ライブで歌うと楽しい”とか、“むずかしいけど頑張ろうと思える、いい意味で自分の緊張感が増す楽曲”を選びがちなんです。だから、多少は被った曲もありますけど、今回の投票結果は“面白いなー”と思いました。もし私がいちファンで、今井麻美のベストアルバムに収録してほしい楽曲に投票するなら、ファンのみなさんと同じ選曲をすると思うんですけど…」
──いつか今井さん選曲のベストアルバムも聴いていたいですね。
「“いつかは!“とは思っています」
──ベストアルバム『A・S・A Vol.1』を聴いて、改めて感じたことを教えてください。
「初期の楽曲が多めに収録されていますが、当時から歌はずっと好きでしたけど、技術的な拙さがどうしてもあって…自分の歌が魅力的だとは思えなかったんです。でも、今、改めて聴くと、あの頃でしか得られない透明感があって強くて、でもどこかやさしさもあって。今のほうが確実に歌の技術は上がっていますけど、初期は初期で“もっと自信を持っていいよ”って、当時の私に声をかけられるなら言ってあげたいです(笑)」
──『A・S・A Vol.1』の1曲目には、今井さんの現在地である新曲「ジャンヌの末裔」が収録されています。
「2年ほど前に、作詞家の森由里子先生が私をイメージして歌詞を書いてくださいました。ご依頼したのではなく、ご好意で書いてくださったんですけど、そのときはリリースの予定が特になかったので、森さんの歌詞だけがある状況が続いていました。それ以来、“どこかのタイミングで形にできたらいいね”と話していて、今回のタイミングで森さんの歌詞に曲をつけて編曲して、「ジャンヌの末裔」が完成したんです。森さんから私がどう見えているのか?…それがとても壮大なヒロインの物語のように描かれています。何かに立ち向かっていったり、信念を曲げずに貫こうとしている姿を、比喩的にジャンヌ・ダルクとかけてくださいました。そういった女性に見えるのは正直驚きでしたが、これまでも歌詞を書いてくださったり、ステージも含めて20年近く見守ってくれている森さんに“そう見えているんだ“って、すごく誇らしかったです」

──声優アーティストとしてデビューしてからの17年で、歌に対する想いはどう変化しましたか?
「私は生まれてすぐくらいから歌が好きだったようで、記憶にはないですけど、テレビで歌が流れているとすぐに“また聴きたい!”とせがむ子だったそうです。当時は社宅に住んでいたんですけど、同じ社宅で暮らすみなさんにも歌いかけたりしていました(笑)。それからは、合唱をやったりしました。でも、まさか声優になってから仕事で歌うとは思っていなかったです。あまりにも“歌が好き!好き!”って言うもんだから、今のプロデューサーに見つけていただいて音楽活動を始めるんですけど、“歌が好き”っていう気持ちと、“自分は純粋な歌手じゃない”っていう、2つの気持ちがずっとありました。当時は、“歌手”という表記もやめてほしいと言っていたくらいでした。自分は歌が好きで運良く歌わせていただいていても、あくまで軸足は声優に置いているわけで、そんな自分が歌手と名乗るのはおこがましくて。ライブでも私ごときがこんなすごい会場でいいのかな?って、そういう気持ちが最初の数年はありました。ただ、“歌は好きなのでやめはしません!”っていう(笑)」
──でも、そこから変化があったんですね。
「きっかけの1つは、東日本大震災です。震災の数ヶ月後に自分のバースデーライブが控えていたんです。でも、私を応援してくださっているファンの方も被災地にいらっしゃいました。そういう方たちが、“まだどういう状況になるかわからないけど、今井さんのバースデーライブに行くためにも1日1日を頑張ります!”と言ってくださって、そこで意識が変わりました。“こんな自分でも生きがいにしてくれている人が例え一人でもいるんだったら、もっともっと頑張らなきゃいけない“って」
──他にはどんな転機がありましたか?
「『THE IDOLM@STER』という作品で、如月千早というキャラクターに出会ったことです。彼女は歌うことが大好きで歌姫という評価までもらっている子なのに、そんな彼女を演じている自分の歌の技術が追いつかなくて、ずっとすごく苦しかったんです。“どうしたらもっとうまく歌えるんだろう?”と悩みましたし、最初は自分と千早さんの歌声の切り分けもできないから、“演技をしながらうまく歌うにはどうすれがいいのか?“とか、たくさん悩みました。でも、もっと歌の技術を持たないと、彼女を輝かせることはできないと思ったときに、自分の音楽活動におけるすべての機会が修行の場になりました。すべてのライブやレコーディングをいい機会にして、成長していくことができたというか…。ただ、理想は描けるようになりましたけど、その理想に追いつかない自分がくやしくて、レコーディングが終わってさめざめと泣いて、机を叩いて帰ることもありました。そういう経験があるから、今の年齢でも”歌がうまくなりたい!“と思ったり、でも、うまいだけがすべてじゃないからこそ、他の部分でまだまだまだまだ魅力的になれるように努力できるんだと思います」
──“演じているキャラクターが自分の考え方や人生観に影響を与えることがある”と、声優の方はよく言いますが…。
「千早さんが“歌姫”って言われれば言われるほど、自分にないものは出せないので、“彼女を輝かせるための武器を増やさないと“って思うんです。結果的に、今もライフワークのように千早さんを演じさせていただいていますが、それは”彼女に追いつかなきゃ“って一心で努力したからでもあって。努力をし始めるのはいつからでも遅くないんだなって、実感しています。今でも、”現状をキープしたい“と思う自分もいますけど、まだピークがわからない部分もありますし…。私って保守的な感情と革新的な感情が同居している人で、”ここがピークだろ!“、”いや、まだまだ!“って争っている感じが自分の中にあって、面白い人生だと思います(笑)」
──今回のベストアルバムはファン投票をベースに選曲されましたし、東日本大震災時のエピソードもありました。今井さんにとって、ファンの方たちは改めてどんな存在なんでしょうか?
「私ってポカも多くて、本番中に時間がなくて裸足で飛び出していったり、ライブ中に靴を飛ばしちゃったりするんです(笑)。それを一緒に笑ってくださる方が多くて、本当に私のことを温かく見守ってくれている存在です。一生懸命やってることに対して寛容で、でもポカの度が過ぎると“しっかりしてくださいね!”って鼓舞してくださる。そんなみなさんから、いつも愛情を感じています。今回のベストアルバムをきっかけに、“久しぶりにライブに行こうかな”ってメッセージをくれた方もいて。長く活動していると、ファンのみなさんの生活もどんどん変化して、現場からはどうしても足が遠のく方もいらっしゃって。でも、こういうベストアルバムのタイミングだとそういう方も反応してくださって、“離れていてもちゃんとつながってるんだな”って、うれしい気持ちにもなります」

──今後はどんな活動をしていきたいですか?
「大きな野望はあまりないんですけど、“ここで終わらずに続けられたらな“って思います。17年続けていたらこそ、今があるので、”これが途切れないといいな”って思っています」
──続けていたら何かが生まれるでしょうし、どこかにたどり着くはずですからね。声優としては、どんなこれからを思い描いていますか?
「私は本当に作品に恵まれていて、長期で続く作品に出演させていただくことが多いんです。その一方では、それらとは別にまた新しい演技が提供できるように、常に準備をしておかないといけないと思っています。長く続いている作品はもちろん長く続いてほしいですし、いつかおばあちゃんになって演じられなくなるまでは、現役でいたいです。最近は、そういう気持ちが強くなってきました。声優も歌手も1日でも長く続けられたら、本当に幸せな人生だと思います」
(おわり)
取材・文/大久保和則
RELEASE INFORMATION

今井麻美『A・S・A Vol.1』
2025年6月28日(土)発売
SZK-0000010/3,300円(税込)