──シングル「もっとサヨナラ」でメジャーデビューを果たす未来さんですが、10代の頃から活動されていて既に10年以上のキャリアをお持ちです。ただ、2024年の日韓共同プロジェクトのオーディション番組『TROT GIRLS JAPAN』で初代女王に選ばれた際のコメントでは、“音楽を諦めなくてよかった”と涙されていました。現在に至るまでに“音楽を諦めよう…”と思った時期もあったのでしょうか?
「はい、ありました。もともと歌手になりたくてこの世界に飛び込んだんですけど、いろんなオーディションを受けても、特に10代の頃は“アイドルにならないか?”と声をかけていただくことがほとんどでした。その中で、可愛さというよりショートカットのボーイッシュさが売りのグループ(風男塾の弟分、THE HOOPERS)で活動をしていましたが、やっぱり“ソロアーティストになりたい”という気持ちは変わらなくて…25歳のときにアイドルを卒業しました。でも、なかなかうまくいかなかったです。ちょうどコロナの時期とも重なっていましたし。『TROT GIRLS JAPAN』に参加したのが29歳のときですけど、“これを最後の挑戦にしよう”という決意でオーディションに臨みました」
──『TROT GIRLS JAPAN』では敗者復活から初代女王の座に輝く劇的な展開でしたね。
「予選の時点で全員の手が上がらなかったときから敗者復活が決まるまでの数時間が、人生で一番のどん底でした。その間、“これが私の最後の挑戦か…明日から就活するのか…”なんてことが頭の中でグルグル回っていて(苦笑)。でも、敗者復活で名前を呼んでいただけた瞬間、“まだ頑張っていいんだ!”と思いました」
──そこから2年を経てのメジャーデビューですが、“もっと早くデビューしたい!”とはならなかったのでしょうか?
「不思議と焦らなかったです。むしろ私以外の周りのみなさんが焦っていたかな(笑)。“未来ちゃんを待たせ過ぎてるのでは!?”みたいな(笑)。私自身は一度は(歌手を)諦めた身ですから、“こんなチャンスをいただけるのであればいくらでも待ちます”という気持ちでした。それに、私は私で大きなことばかり言ってハードルを高くしてしまったのもあります(笑)」
──(笑)。例えばどんなことを言っていたんですか?
「ちょっとした雑談の中で“誰に(曲を)書いてほしいとかあるの?”と聞かれたとき、私の中にはその答えが明確にあったので“来生たかおさんです”って。もちろんそのときは“なかなかハードルが高いね…”って感じでしたけど、いろんなご縁が繋がり今回、来生さんに辿り着くという奇跡が起きました」
──未来さんにとって来生さんは憧れの存在なんですよね?
「はい。お母さんが言うには、私が1歳の頃に来生さんの「はぐれそうな天使」を聴いて、まだ言葉もちゃんと喋れない頃なのに、お母さんに“もう1回、もう1回”とねだって、その曲だけを聴いていたそうです。物心ついたときから“歌手になりたい”と思っていたのも、その経験がきっかけだと思います」
──その来生さんが作曲を手掛けた「もっとサヨナラ」でデビューを果たす…いろんな意味で待った甲斐がありましたね。
「ありました! もう、最初にして一番のところに行けたと思っています。実は来生さんに“書いてください”とお願いさせていただいたとき、来生さんもツアー真っ只中だったので、“ちょっとスケジュール的に厳しいです”と一度は断られてしまって…。でも、“本当に大好きなんです!”という私の愛をこれでもかと伝えさせていただいたら“頑張ります”とおっしゃっていただけた経緯があって。半ば無茶振りですよね(苦笑)」

──実際に届いた楽曲を受け取ったときはどんな気持ちでした?
「まだ歌詞がついてない、来生さんがラララで歌われているデモが届いたんですけど、フォルダ名が“福田未来 来生たかお”と書かれていて…“こんなことが起こるなんて!”と感動しました」
──楽曲をオファーする際はお任せでしたか? それとも何かリクエストされたのでしょうか?
「図々しくもリクエストさせていただきました(笑)。リクエストというか…来生さんが歌われている楽曲や提供されていた楽曲の中で私が特に好きな曲をお伝えさせていただきました。その中にはもちろん一番大好きな「はぐれそうな天使」もありましたし、“「スローモション」とか「セカンド・ラブ」も好きです”って伝えました」
──「もっとサヨナラ」にはそれらすべての要素が入っている気がします。
「本当にそうですよね! いただいた曲を聴いたときは“すごすぎる…!”の一言でした。そして、この曲の詞を担当してくださったのが前田たかひろさんなんですが…」
──前田さんも未来さんとは非常に縁がある方ですね。
「そうなんです! もう話したいことがたくさんあって(笑)」
──ぜひ聞かせてください(笑)。
「前田さんは私が最初にメジャーデビューしたTHE HOOPERSのデビュー曲「イトシコイシ君恋シ」の作詞してくださった方です。今回、表題曲の「もっとサヨナラ」とカップリング曲の「陽だまり2026」、どちらも作詞していただいているんですけど、実は「もっとサヨナラ」の歌詞は最初2パターン上がってきて、一つは「もっとサヨナラ」として歌われているもので、もう一つが「陽だまり2026」になっています」
──えっ!? そうだったんですか!
「実は、そうなんです。「陽だまり2026」が完成したのは、前田さんがこの歌詞を気に入っていて、ご本人から“ぜひ未来ちゃんに歌ってほしい”と言っていただいたので、私も“ぜひ!”ということで違うメロディでこの歌詞を残すことになりました」

──前田さんにも何かリクエストされたのでしょうか?
「かなりざっくりとしたイメージでお伝えしてしまったと思うんですけど、私、自分ではポジティブな言葉とか雰囲気があまり似合わないと思っていて…これまで壁にぶち当たることが多かった人生ですが、そのときに“頑張っていれば報われる”みたいな言葉は得意ではないんです。どちらかと言うと、どん底にいるときはもっともっとどん底に落ちて、デトックスのように吐き出す方が好きなんです。なので、前田さんにも“明るすぎない歌詞のほうが感情移入しやすいです”みたいな話をさせていただきました」
──なるほど。そうしたテイストは「もっとサヨナラ」にも「陽だまり2026」にも感じられますね。「もっとサヨナラ」に関して言えば、来生さんのメロディ、前田さんの歌詞ときて、さらに武部聡志さんの編曲・プロデュースが加わります。武部さんにも未来さんから何か希望を伝えたのでしょうか?
「編曲についての希望と言うか…歌詞とメロディが揃ったときの感想をお伝えしました。(曲の主人公は)大人の女性ですけど少女のような純粋な心を持っていて、未熟さだったり、みずみずしさを感じました、と。そしたら武部さんからこのアレンジが届いたんです。“女性らしく、みずみずしく、ちょっと孤独な感じも出してみました”って。曲も、歌詞も、単体でもすごくいいのに、武部さんのアレンジが加わって全てが1つに重なったとき、“ピカーン!”みたいな感覚がありました」
──「もっとサヨナラ」によって未来さん自身の歌い方に変化を感じることはありましたか?
「そうですね…楽曲自体がすごくきれいに仕上がっているから、“私の歌で汚しちゃいけない”という気持ちが強くて、最初の段階では猫を被った歌い方をしたんです(笑)。でも、それだと取っ掛かりがなくて、ただ“歌が上手な子”で終わってしまっちゃって。スタッフの方からも“これが未来の歌声だって感じを残したほうがいい”とアドバイスをいただいて、最終的には“これが私!”という感じで歌いました。それに、この曲をきれいに歌うと、か弱すぎる女性になってしまうんです」
──「もっとサヨナラ」は失恋の歌ですけど、主人公の女性は決してか弱くはないですよね。むしろ芯の強い女性のイメージがあって、それは未来さんの歌声からも伝わってきました。
「伝わって嬉しいです! 最後の<だけど夢が・・・ちがった>も悲しすぎるフレーズですけど、それを“自ら決断した!”という気持ちで歌いました」
──そういう意志の強さは「陽だまり2026」で歌われている女性にも感じました。
「確かにそうかもしれないです。“陽だまり”って聞くと温かいイメージがありますよね? でも、この曲は、全体的に暗いんです…ずっと気分が晴れないと言うか。歌詞で唯一、光を感じるフレーズは最後の<夜明け>しかなくて。それを陽だまりと言っているわけではないですけど、その夜明けのように感じるかすかな光に希望を持とう、みたいな。今はどん底かもしれないですけど、“今日だけ頑張ろう”みたいな気持ちになってもらえたらという想いを込めて歌いました」
──その「陽だまり2026」の歌詞は最初、「もっとサヨナラ」のために書かれたものなんですよね? 前田さんはどんな想いで書かれたんでしょう…。
「それ、私から言ってもいいですか?」
──もちろんです!
「「陽だまり2026」の歌詞は<キミ>と<僕>で1対1の関係性を感じさせると思うんですけど、前田さんは、是非、この<キミ>を“平和”に置き換えて聴いてほしいとおっしゃられていました」
──おお…! 平和に置き換えると全く聴こえ方が変わりますね。世界観が一気に広がりますし、その壮大さを前田さんは未来さんの歌声で届けたかったんですね。なんだか…感動してしまいます。
「ありがとうございます。嬉しいです!」
──この曲の作曲と編曲は「残酷な天使のテーゼ」(アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』オープニングソング)などで知られる大森俊之さんが手掛けられています。
「大森さんもこの曲にピッタリなメロディとアレンジをつけてくださいました。さっきも言いましたけど、歌詞はとても暗いんです。もし「もっとサヨナラ」のメロディに合わせていたら、もっと暗くなったかもしれません。でも、大森さんのアレンジによって“夜明け”を感じさせてもらえます。個人的に、この「陽だまり2026」は海とかに1人で佇んで、波音を聴きながらこの曲を聴く…みたいなシチュエーションが似合うと思いますし、やっぱり私は“大丈夫だよ”って励まされるより、ただ夜明けを待つのが好きです(笑)。そういう意味でも、「陽だまり2026」はこれからも私の人生に寄り添ってくれる曲だと思います」
──今作「もっとサヨナラ」で念願だったソロシンガーとしてメジャーデビューを果たすわけですが、これからどんな活動をしていきたいですか?
「私が10代の頃にアイドルグループを始めて初めて人前に立ったのが、代々木公園の路上ライブだったんです。そのグループの目標が“いつか(国立)代々木競技場第一体育館に帰ってこよう”だったんですけど、それは叶えられなくて…。だから、私は“1人でも叶えるぞ!”という気持ちで、代々木競技場第一体育館でライブをするというのを目標の一つにしています。それとは別に夢というか…目標とする歌手像として、生きているうちに名曲を残したいです。今の時代ってSNSとかでも流行り廃りが激しいですよね?」
──新しい曲が生まれては消えて、生まれては消えてという感じです。
「そうですよね。そういう中で、“まだその曲を聴いてるの? 古いね”ではなく、ずっと愛されていく、残り続けていく名曲を、私の声で生みたいです」
──今作で既に誕生している気もしますが…。
「あはは、ありがとうございます! そうおっしゃっていただくと、1曲と言わず、何曲も…っていう夢がまた出来るんですけど(笑)」
──きっと年齢を重ねるごとに歌える世界観も広がって、さらに幅が広がるのではないでしょうか?
「楽しみです。それこそ、「もっとサヨナラ」みたいな曲は若い頃には歌えなかったと思いますし。大人の恋が歌われているので、私と同世代の方だけでなく、上の世代の方にも聴いていただけたら嬉しいです!」
(おわり)
取材・文/片貝久美子
写真/野﨑慧嗣
RELEASE INFORMATION
EVENT INFORMATION

福田未来 デビューシングル「もっとサヨナラ」発売記念イベント
8月25日(火) 19:00~ 東京 MAGNET7F CROSS STAGE SHIBUYA(クロステ)
8月26日(水) 19:00~ 東京 HMV & BOOKS SHIBUYA 5F イベントスペースB
8月27日(木) 19:00~ 東京 HMVエソラ池袋
8月28日(金) 19:00~ 東京 タワーレコード錦糸町パルコ店








