──3rd mini Album『POP OUT! III』についてお聞きする前に、この1年のバンドにとって大きかった出来事と言えば?

Kazuki Ishida(Vo/Gt/Key)「この1年で大きかったのはSpotify“RADEREarly Noise 2024”に選出していただいて。それまでは北海道内だけでずっと活動してきて、正直リスナー数やお客さんの数も札幌の数あるバンドの1つだったんですけど、そこから大きく取り上げていただいて、プレイリストに入れていただく機会も増えたので、道外の東京とかでもライブをさせてもらう機会もいただきました。より楽曲をしっかり作ってプレイリストの中に楽曲がちゃんと入って行くように、リリースを重ねていった1年間でした」

──ラブネバは“POP OUT!”というテーマは初のミニアルバム『POP OUT!』(2023年2月リリース)から一貫してるじゃないですか。このワードに込められているバンドのテーマがあるんですか?

Keita Kotakemori(Gt/Key/Cho)「僕たち、かなり楽曲のジャンルがバラバラだったりする部分もあったりするので、ジャンルから飛び出していくって意味と、北海道に住んでいるので地方から飛び出していくという意味も込めてつけたタイトルなんです」

──このテーマは何作目まで続いていくんでしょうね。

Keita「今作『POP OUT! III』で最後になるのかわからないですけど(笑)、思い入れのあるタイトルなので今回もつけさせていただきました」

Kazuki Ishida(Vo/Gt/Key)
Keita Kotakemori(Gt/Key/Cho)

──先行デジタルシングル「挿入歌」も含めて、いい意味でキャッチーになったことに驚きました。今回の3rd Mini Album『POP OUT! III』に先立ってどんなことを考えていましたか?

Kazuki「去年、プレイリストの中で映えて聴いていただきたいと思って頑張って制作した既発曲と、直近でリリースした「挿入歌」。そしてこれからリリースさせていただく曲。ちょっとフォーメーションが変わったかな?っていう感じがあるんですけど、ここ数年、ずっと曲作りを続けてきて、よりたくさんの方に聴いていただくためにはどういう要素が必要なんだろう?って課題が自分たちの中にも溜まっていて。それは詞とか曲とか、いろんなことなんですけど、それをちょっと違うチャンネルに変えて制作した最初の曲が「挿入歌」です」

──これまでの楽曲はブラックミュージック寄りでグルーヴがあるものと、割と8ビートのバンドサウンドに分かれてたような気がするんですけど、「挿入歌」は全然違う位置にある曲というか…。

Kazuki「「挿入歌」に関してはメロディというか、曲の雰囲気から先に少しできてはいたんですけど、その直前にリリースした曲(「それが恋だと言ってくれ!」)が完全にトレンディドラマに焦点を当てた楽曲で、それつながりでドラマの挿入歌みたいなことをもう少し一般的なテーマにして曲にできないかな?と試行錯誤しながら作っていった楽曲です」

──「挿入歌」の歌詞は結婚している方が、生活自体は自然になってきたけど…みたいな人生の中のある日常という印象です。

Kazuki「はい。ちょうど自分の親戚とか周りにも結婚して日が経ってふたり目の子どもが生まれるとか、そういう自分のまわりの身近な人を見て、その心境とか思ったこととかを歌詞にそれこそ挿入しているような部分もあります」

──バンドアレンジに関してここを聴いてほしいというところは?

Keita「BIGMAMAの東出真緒さんにストリングスを生でレコーディングしていただいたのが「挿入歌」に関しては、大きなポイントです。そこはもちろん聴きどころになっているんですけど、僕たちとしても、いつもの楽曲だとかなり尖ったアレンジをしたりだとか、フレーズひとつにしても飛び出たようなアレンジをしたりするのが、この曲に関しては今、Ishidaが言ったチャンネルを変えたじゃないですけど、ポップシーンにより刺さっていくという目標みんなそこに向かって、楽曲を支えるようなアレンジになったと思います。そこが今までの僕たちとは違うところなのでぜひ聴いていただけると嬉しいです」

──ストリングスが入るイメージも自然と共有されていたのでしょうか?

Arata Yamamoto(Gt/Cho)「バンドでスタジオに入っていて初めて楽曲を聴いた時に、この曲は曲としての規模がかなり大きいから、それなりに見合ったアレンジをしなきゃいけないんじゃないか?っていうそれはみんなの中で一致していて。そこからいわゆる生弦系をやっぱり入れたいよねといった話になりました」

Yuji Sato(Ba)「あと、この曲はカノン進行で最初始まっているから、アレンジのイメージはつきやすかったっていうのはあります」

Mizuki Tsunemoto(Dr)「ドラムに関しても楽曲を聴いた時にちょっとオーケストラチックというか壮大なイメージがあったので、アレンジはまずリズムから基本的には作るんですが、そのビートがある段階で、そこに生弦系がいた方がいいんじゃないか?みたいな話になって」

Kazuki「バンドとしてはある意味ちょっと避けがちなサウンドなのかな?と思うんです。弦を入れて聴きやすいバラードにするのって、なんというかライブハウスからやってきたバンドからすると、やめとこうかなってなるところかもしれませんけど、そこをそういうふうに思わずにメンバーが受け入れてくれましたし、やれるタイミングだったんだなと思いました」

──ミュージカル的な広がりもありますし楽しい曲だと思います。

Arata Yamamoto(Gt/Cho)
Yuji Sato(Ba)
Mizuki Tsunemoto(Dr)

──それにしても今回のミニアルバムは「それが恋だと言ってくれ!」以外にも90年代的なキーワードがたくさん出てきますね。

Keita「ハマってた?(笑)」

Kazuki「ハマってたのかなぁ? そういうサウンドのリバイバルみたいなのがあってもいいんじゃないかな?と思って、そういうサウンドを作っていたらメッセージをどうしよう?ってなって。僕のメッセージはどちらかというと、今、それをリバイバルとして捉えている人というよりはかつてその時代をリアルタイムで生活していた人に向けて、2025年に贈る。そんなテーマとして、書いています」

──ミニアルバムに収録されている新曲「僕らの行進曲」はバンドの自己紹介的な感じもありますね。

Kazuki「不思議なことに結果的にそういうような内容になりました。でもテーマとしてはこのタイミングで自分たちを説明する曲にしたいっていうエモさで始まったわけではないんです。シンプルにメッセージとしてはDMとかメールを送ったけど全然返信が返ってこないっていう人ってたくさんいるから、その気持ちを曲にしたいってところがスタートでした。リアリティを持たせるために何がいいかな?と思って、自分がバンドを始めた時に、メンバーを誘ったけどぜんぜん断られて(笑)、いつまで経っても(ベースのYujiと)二人のままやっていたっていうこととかを、ちょっと重ねてみようかな?って作り始めたら、音楽性も相まってたまたまそういう感じになりました」

──この曲のアレンジ面での聴きどころは?

Mizuki「この曲ってテンポがすごく変わるんですよ。そのテンポの切り替わりとかテンポ感ってどれくらいにすればいいんだろう?って、スタジオですごく試行錯誤して何回もBPMを変えたりした記憶があります。2Aのジャズセクションみたいなところも、急にそうなるところをどうやったらスムーズになるんだ?って。結果、BPMをボリュームをカーブするような感じでなだらかに変化して行く方向にさせたんですけど、そこはかなり詰めました」

──前作まではバンドが自然に流れていく感じの構成というか、それはそれの気持ち良さもあるんですけど、今回は明快に覚えられる構成に変化していますね。

Kazuki「今まで、身近な人とかに自分たちの曲を聴いてもらって、反応を訊いてきたんです。この曲はこういう音楽を聴いてくれている人がいい!と言ってくれるんだ、でも、こういう曲は全然刺さらないんだ。みたいな反応があって。例えばK-POPとかアイドルさんとか、よりポップなものを聴いてる人には全然僕たちの曲って刺さっていないんだとかが分かって。それで、どんな曲を聴いているんだろう?聴いてもらうためにはどういう曲だったらいいって言ってくれるのかな?みたいなところから、今は実際にトライするところにきていると思いました。だから「挿入歌」をリリースして前向きな反応をいただけると、トライしてみて良かったなと思います」

──そして『POP OUT! III』にはKotakemoriさんとYamamotoさんの楽曲も収録されていますね。一人で作詞作曲、両方やるっていうのは決めているんですか?

Keita「そうですね。曲を作るやつは歌詞も書けというIshidaからのお達しがあったので。もともと僕たち二人はバンドのフロントマンで作詞作曲もしていたので、そこは僕たちとしては何も疑問も抱かずに“O.K.って感じでやらせていただきました」

──Ishidaさんご自身が作詞作曲をして1曲っていう作り方をしてるからですか?

Kazuki「そうですね。できれば同一の人が作った曲の方がより雰囲気って濃くなると思いますし、それを僕が歌う側として歌ってみたいって気持ちもありました」

──お二人の楽曲がいいフックになっている気がするんです。Kotakemoriさんの「メモリーフラッグ」はそれまでの流れに比べると若干ソリッドな感じで。

Keita「何かひとつのフレーズで覚えてもらうところを意識して作ったりだとか、ベースのスラップがバキバキに入ったりとか、もう狙ってソリッドにしました。僕たち、これまで楽器にフォーカスした楽曲がなかったんですけど、それだと大学の軽音学部とか高校の軽音楽部の人がじゃあこの曲をコピーしてみようってバンドにはならないんじゃないかな?ってちょっと思っていて。そういう曲もあったほうがいいと思ったので、Nothing’s Carved In Stoneとか、ヒーローがいるようなバンドをイメージして今回は作らせていただきました」

──歌詞はいわゆる27クラブ的な年齢を超えた主人公が描かれているのかな?と感じました。

Keita「そうですね、まさに」

──それは楽曲のソリッドさと同時に歌詞の内容も出てきたんですか?

Keita「これはアニメ『遊王』の武藤遊戯と海馬瀬人を演じている風間俊介さんと津田健次郎さんの対談からちょっと着想を得て作った歌詞です。お二人は声優と自分自身で、僕たちは社会人とバンドマンいうところでの発想なんです。声優自身とキャラクターで言えば、みんなに風間さんと言えば遊戯だよねってイメージがあるじゃないですか。なので、僕たちは今、社会人とバンドマンをやっていますけど、最終的には音楽人になれたらいいよね、なりたいよねっていうところで書きました」

──そしてYamamotoさんの曲(「落日々」)はバックビート気味のノリがいいですね。この曲はどんな発想からできたんでしょうか?

Arata「Ishidaさんから曲を作ってくれって提案があった時に、僕は今も別バンドで活動しながらFirst Love is Never Returnedをやっているんですけど、自分が作る楽曲でバンドのカラーの差を付けたいっていうイメージがとてもあって。そこで今回やってみたのはメンバーの得意分野にフォーカスして楽曲を作ってみたいと思いました。例えば、ベースだったら源流にR&Bとかネオソウル系とか、ちょっとシックなものを持っているのでその辺を踏襲しつつ、ドラムはもともとロックドラムがすごい得意なのでそれに伴ってパンチのあるものにしてみたり、Ishidaさんだったら綺麗にメロディを歌い上げる雰囲気が強いと思っていて、それに寄り添っているものしたりとか。Kotakemoriさんはキーボーディストなんですけども、今回ボコーダーを初めて楽曲に使ってみたんですけど、着想を得たのがいつもロバート秋山さんの真似をしてふざけていて(笑)」

Keita「口メロディです。いろんなものメロディにする癖がありまして(笑)」

Arata「楽曲のフックとして入れてみたら面白いんじゃないかな?と思って、試して入れてみました」

──他の楽曲が日常的なニュアンスな中で割と強い言葉が出てきますね。

Arata「もともと楽曲としては7年くらい前からその自分の中ではあったものなんです。歌詞の内容としては当時、僕は大学生で、音楽サークルに入っていたんですけど、その中で割と控えめなというか、世間一般的に言われる陰キャみたいな感じだったので(笑)、サークルの飲み会とかザ・大学生みたいな雰囲気をどうしてこういうテンション感でいけるんだろう?って考えていた時期だったので、歌詞の中で皮肉もちょっと込めた<イイね>で表現しています。もちろん羨ましいとか劣等感みたいなものも入っているんですけど、それを自分の中で完結させるのではなく、女性目線だったらどう考えるだろう?というところにフォーカスさせて再構築しています」

──本作から新レーベル“HEiLO RECORDS”(読み:ヒイロレコーズ)からのリリースになりますが、これまでのD.I.Y的な活動から変化は起こりそうですか?

Keita「自分達でやるところはやる、楽曲はいいものを作る、ポップを作る。そこは基本的に変わらず継続させていただきつつ、それを後押ししてくれる、応援してくれる方たちと今回タッグを組んで“HEiLO RECORDS”を立ち上げて、そこからリリースしていくことなりましたので、これまでD.I.Yだとどうしてもアプローチできなかったリスナーだったりだとか、それこそフェスだったりとか、そういうところをにもう少し僕らラブネバがアプローチして行けるようになると思うと、これからが楽しみです」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFORMATION

First Love is Never Returned『POP OUT! III』

2025年528日(水)配信

CD+DVD
2025年5月28日(水)発売
AVC1-63722/B/3,080円(税込)

First Love is Never Returned『POP OUT! III』

LIVE INFORMATION

#FLiNR S/A TOUR 2025 [WHAT IS "POP OUT"?]

8月23日(土) 大阪 梅田Shangri-La
9月5日(金) 東京 Shibuya WWW X
9月27日(土) 北海道 ペニーレーン24

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