──2023年はアルバム『DANCEHALL MAGIC』のリリースツアーのほか、コンセプトワンマンライブ『BRADIO DANCE PARTY』、5年ぶりのツーマンライブ企画『エイリアンサーカス』など、様々なライブが行われました。去年のライブを振り返って感じたことや新たに手に入れたことなどがあれば教えてください。
真行寺 貴秋「今も昔も、音楽を作る上ではライブを見据えているんですが、2023年はチームがこれまで以上に一丸となっていくエネルギーのようなものが渦巻いていた年でした。とにかくライブをする年にしたいという思いで動いて、その結果、“やっぱりライブが好きだな”ということを改めて感じました。もちろん音源もですけど、ライブで届けたいものが多いなって」
──前作『DANCEHALL MAGIC』は、“ファンキーなアルバムを作りたい”との思いから作られたアルバムで、今作はパーティーがコンセプト。それはライブをやりたい、ライブが好きだという想いと関連しているのでしょうか?
真行寺「自分たちの中では、今作は『DANCEHALL MAGIC』 PART2みたいな位置付けで、『DANCEHALL MAGIC』同様、先にテーマを設けて曲を作っていく流れになりました。いろんな事象が作品に影響するのはもちろんですが、やはり去年はライブがめちゃくちゃ多かったので、ライブを意識したアルバムにはなったかな?と思います」
──裏コンセプトに『DANCEHALL MAGIC』 PART2を掲げたのはどうしてですか? 『DANCEHALL MAGIC』で手応えを感じたから?
真行寺「最近、自分たちの思っているバンドに対するイメージと、外から見たイメージにズレがあるということを感じていたんです。ネガティブに捉えているわけではないんですけど。自分たちとして、ファンキーやダンス、パーティーといったものをうまく転がせていないんじゃないか?という感覚があって。だから、それ以外のものは他のアーティストにお任せして、我々はとにかくダンスとかパーティー、ファンキーといったものを突き詰めていきたいと思ったんです。“突き詰めなきゃいけない”じゃなくて、純粋にそっちにいきたいなと思って、前作『DANCEHALL MAGIC』を作りました。それで1年間ライブもして…そんな去年1年間の転がし方が、自分たちの性に合っていました。だからそれをわざわざ変える必要性はないなと。このまま進んでいったほうが、より強固なものになるんじゃないかなって思って、“『DANCEHALL MAGIC』 Part2”を作りたいという話をみんなでして。そこから“じゃあ、次はパーティーをキーワードにするのがいいんじゃないか?”と作っていきました」
──大山さん、酒井さんも最初から同じ意見でしたか? それとももっと違うことをやったほうがいいんじゃないかと思うことも?
酒井 亮輔「いや、全く違和感はなかったです。たぶん自分も感覚的に、このまま行った方がいいんじゃないかと思っていたので。同じ系譜で、さらにアップデートしていくのがいいなと思っていいました」
大山 聡一「自分たちの道筋の立て方みたいなものを意識しようって感覚だったんです。それは『DANCEHALL MAGIC』のときから話していたことだったし、だからといって、何か制限があるわけでもないので、何の迷いもなく、前作からの流れで今作の制作に取り掛かっていきました」
──そういう意味では、『DANCEHALL MAGIC』はBRADIOというバンドの指標のようなものになっている?
真行寺「そうですね。その第1弾みたいな感覚です」
──そんなところから今作『PARTY BOOSTER』が完成しましたが、本作を作るにあたって軸になった曲はありますか?
真行寺「「パーティーヘッド」かな」
──「パーティーヘッド」はまさにパーティーチューンですが、この曲はどのようにできたのでしょうか?
真行寺「もともとオケだけあったんですよ。だけど、俺が歌入れをサボっていて(笑)」
大山「サウンド先行で曲を作るときは、例えばファンキーで、グルーヴィーなドラムがあって…というイメージからワーっと作った原型みたいなものを(真行寺)貴秋に投げるんです。ただ、貴秋のキャパシティが一定を超えると忘れ去られてしまうことがあって(笑)。今回もそれでした」
真行寺「そう。それで俺が制作でもなんでもない変なタイミングで歌を入れたら、めちゃくちゃ良くなって。コーラスアレンジとかもがっつり作って“こんなんできました”って2人に投げたんだけど、タイミングが今じゃないからそれがまた流れていっちゃって(笑)」
酒井「確かに忘れてた(笑)」
真行寺「で、『PARTY BOOSTER』を作るタイミングで“これ、アルバムの顔になるんじゃねえか!?”と思って引っ張り出してきました」
──それが改めて掘り返されたわけですが、歌う上、演奏する上で意識したことはどのようなことでしたか?
真行寺「歌はとりあえずガチャガチャしようと(笑)。本当にパーティー曲にしたかったので、コール&レスポンスとかシンガロングがいっぱいできる、ライブで完成するような曲になったらいいなと思って。みんなと一緒にできるものということは意識しました」
酒井「いろいろ考えてみたんですけど、最終的に結局最初に考えていたのが良かった。パーティーだし、演奏中にあんまり考えずに弾ける、シンプルで踊れるものが一番いいんだなと思いました」
大山「「パーティーヘッド」に関しては、絵に描いたようなパーティーにしたくって。そういうサウンド作りは意識しつつ、同時に、“軽いんだけど質量があるようなアレンジ”というものも考えました。印象としてはライトだけど、サウンドとしては質量がある、みたいな雰囲気の曲になればいいなと」
──重たさが必要だと思ったのはどうしてですか?
大山「パーティーというと、ウェイウェイしたノリがあると思うんですけど、僕らは“チャラチャラ楽しく生きようよ!”というバンドではないと思っているので。ボトムがしっかりしている感じというのは、この曲に限らず、BRADIOの音楽全体に対して、なくさないようにしています」
──それがBRADIOのパーティーなんですね。
──それがBRADIOのパーティーなんですね。4曲目の「ヨルゾラTreasure」は切なさを感じるミドルチューン。パーティーというテーマから、どうやってこの曲が生まれたのでしょうか?
真行寺「この曲はもともとオケがあって、あとは歌詞だけという状態だったので、オケの持つ世界観に負けないような言葉が付けられたらいいなというところからスタートしました。週末にパーティーやダンスをするという文化がない日本で、どうやって“パーティー”や“ダンス”を伝えたらいいんだろう?ということは長いこと自分の中にテーマとしてあって。ファンクのノリに日本語を乗せることもそう。そのために、自分のなかでパーティーというものをしっかり解釈しないといけないって考えていて。この曲に関しては、日々の生活や自分たちの背中を押すもの、それこそブーストをかけるようなもの=パーティーと捉えて、そういう助力になるような曲にしようと思いました」
──すごく素敵な歌詞ですよね。
真行寺「よしっ! 自分で言うのもなんですけど、これまで“詩的な歌詞”というものを一度も書けたことがないと思っていて…基本的に自分は“ハマりゃいい”、“楽しければいい”みたいな歌詞書きだと思っているんです。だけど、この曲に関しては詩的歌詞が書けたかなという手応えがあります。昔は洋楽が好きで、“歌詞に日本語なんか使いたくない”と突っ張っているときもあったんですけど、最近は日本語ってすごくいい言語だなと思うようになってきて。日本語でファンキーするような歌詞が書けるようになりたいという最終目標ができたのですが、この曲はその一歩になれたかな?と思います」
──詩的な歌詞というのは“この曲で書いてみよう”と思ってチャレンジしたんですか? それとも出来上がってみたら詩的なものになっていた?
真行寺「チャレンジでした。いつかそういう歌詞が書きたいと思っていて、今作ではどれかの曲で詩的な歌詞にトライしてみようと思っていました。そしたらオケを聴いて「ヨルゾラTreasure」しかないなって」
──お2人は「ヨルゾラTreasure」の歌詞を読んでどう感じましたか?
大山「“いい歌詞だな”と思いました。バンドとしてじゃなくて、一個人として、今作の中で一番共感できるのが「ヨルゾラTreasure」です。僕の好きなパーティー感ってこういう世界観なんですよね。頑張った日にお酒を飲みながらアニメを見て自分なりに楽しい時間を作ったり、ダメだってわかっているけど“今日は頑張ったし”って23時過ぎにポテチを開けちゃったりとか、そういうのが自分にとってのパーティーで。別にこの曲はそういう曲ではないですけど(笑)、そういう自分も投影できる、いい曲だなと思います」
酒井「僕は“キラキラしてるな”って受け取ったんです。確かにサウンドは切ないですけど、悲しくなるというよりも前向きになれる。そういう意味で、『PARTY BOOSTER』にぴったりだなと思いました。歌詞の語感とかもあると思いますけど、キレイな歌詞だなって思いました」
──先行配信された「真夜中プライスレス」はアルバムでは6曲目に収録されています。<Midnight無料(タダ)>というキラーフレーズが印象的な1曲です。
真行寺「ダンスミュージックではよく“言葉に意味があると踊れない”と言われるんですが、「真夜中プライスレス」や「永劫DISCO」は「ヨルゾラTreasure」とは対照的に、いつもどおりのBRADIOの歌詞の書き方をした曲です。僕らのライブを見に来てくれている方々の話をちょこちょこ小耳に挟むんですが、ライブハウスで出会ってお友達になったり結婚したり、ライブの後にみんなで飲みに行ったり、そういう素敵なコミュニティがどんどんできているらしくて。そういう話を聞いて、僕らのライブがそういうプライスレスなもの…まぁ、チケット代は払っていますけど(笑)、お値段以上のものになっているというか。みんながライブを見る以外にも何かを持って帰っている、プライスレスな空間になっているんだなと感じさせてもらって、そこから書き始めました。最初は「ミッドナイトラバー」とかを考えていたんですが、いろいろ考えて、手繰り寄せて<Midnight無料(タダ)>にたどり着きました」
──ミュージックビデオもライブ映像ですが、実際にライブで演奏してみて感じたことや気づきがあれば教えてください。
大山「サウンド的には王道のニュージャック。揺れて気持ちいい音楽で、“ライブもそりゃ気持ち良いよね”っていう感じです。僕は演奏している側ですけど、演奏していてもお客さんと同じような気持ちになれます。気持ちいいなと思って、パッとみんなの顔を見たらみんな気持ち良さそうで」
酒井「僕は楽しいだけじゃない曲のような気がしていて。“終わりたくない”みたいな切なさを感じるんですよね。だから演奏しながら“ずっとこの時間が続けばいいのに”と切なさを感じながら演奏しています。ああいうサウンドにこの歌詞が乗ると、ぐっとくるんだなと感じました」
──まさにプライスレスな時間ですね。
酒井「はい」
──先ほど詩的な歌詞というお話がありましたが、9曲目の「Sweet Groove」も詩的な歌詞だなと感じました。
真行寺「本当ですか!? やった! 基本的に愛と宇宙とセックスはファンクの根幹ですし、アルバムに1曲はこういうセクシーな曲を入れたいなとは思っていて。今回はどうしようかな?と考えていて…でも、そう考えるとやっぱり「ヨルゾラTreasure」の影響があったかもしれないですね。いつものように男女の営みを書いてはいるんですけど、ストーリーをガッと書くんじゃなくて、行間を読ませるようなものができたらいいなと思いながら書きました」
──実際、行間を読ませるような美しい歌詞ですよね。
真行寺「うれしいです。エロスやセクシーな歌詞を書くとき、下品にはしたくないという思いで書いています。今回は特に、ただセクシーなだけじゃなくて、映像として素敵に映る歌詞になればいいなと思いながら書いたので、新しいエロの書き方みたいなものが表現できたかなと思います」
──そしてラストはTVアニメ『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』オープニングテーマ「ファンファーレ」。今作で唯一のタイアップ曲ですが、アルバムのラストナンバーとしてぴったりハマっていますね。
大山「そうなんですよ。僕もすごいなと思いました。この曲だけレコーディングの時期も違うし、他の曲と馴染むのか?、むしろ収録するのかすら悩んでいたんですが、全曲がそろってこの順番で並べてみたら、“この曲順しかねえ!”みたいになって。別に「ファンファーレ」をここに置くために他の曲を作ったわけでもないし、帳尻をあわせたわけでもないんです。「ファンファーレ」が送り出すような冒険譚だからとかでもないし。ちょうどここに必要だったという感じでした。むしろこれがなかったらアルバムとして形にならなかったかなとすら思います。不思議ですけど、よかったなと思います」
──ここまでお話を伺って、今作では真行寺さんは新たな歌詞も書き方にトライされているような印象を受けました。
真行寺「そうですね。“俺、本当にちゃんと歌詞を書いてねえな”と思って。ずっと“詩的な歌詞って何だろう?”とは思っていたので、今回は「ヨルゾラTreasure」や「Sweet Groove」で、そういう歌詞がハマりそうなサウンドの曲もあったので、チャレンジするいい機会かなと思って。良いトライができたかなとは思います」
──大山さん、酒井さんは今作でトライしたことやチャレンジングだったことはありますか?
酒井「「Purple Bubble」のベースですね。最初にこの曲が(大山)聡一から送られてきたときに“めっちゃカッコいいな”と思ったんですけど、実際に演奏してみようと思ったら“全然弾ける気がしない…”ってなっちゃって(笑)。普段の自分の手グセと全然違うし、左右の感覚が普段と全部逆で。“とにかく一回全部捨てないとだめだ”と思って、ひとつひとつ構築していきました。僕が口頭でベースを言って、それを打ち込んでもらって、それを持ち帰って家で弾くっていうのがよくあるパターンで、あとから“これはシンセのほうがよかったかもな”って思うことはよくあるんですけど、そのなかでも「Purple Bubble」は最高峰にチャレンジでしたね」
大山「ギターのアレンジに関して、自分としても面白みを持てるものにするとか、そのときの自分のテンションやマインドを反映させるみたいなことは毎回チャレンジしていることなんですけど、今回は全体的な雰囲気みたいなものも意識しました。楽器が鳴ったときの全体の雰囲気として、パーティーというテーマから外れないように、と。前回の『DANCEHALL MAGIC』を作っているときに、貴秋が“これはファンキーか、ファンキーじゃないか”みたいなことをすごく言っていたんですけど、何を言っているのか僕には全然わかんなかったんです。何が違うのかが全然わからなかった。でも今回はそれに近かったかも。自分の中で“これはパーティーだ”、“これはパーティーではないな”みたいな、誰にも伝わらない線引きがあったのかなという気がします」
真行寺「匂いがあるよね」
大山「そうそう。自分の中のパーティーに当てはまるかどうかを考えていたというのは、自分の中では今作のチャレンジでしたね」
──そんな多彩で、皆さんのチャンレンジも詰まった『PARTY BOOSTER』ですが、どんな1枚になったと思いますか?
真行寺「作るときからライブを見据えていたし、なんならライブをやるためにこれを作ったところもあるので、早くこの10曲を生かしたライブをやりたいです。ライブでファンの人たちと一緒にやって初めて完成する曲たちだと思うので、ライブで一緒に完成させたいです」
(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFROMATION
BRADIO『PARTY BOOSTER』
2024年5月22日(水)発売
初回生産限定豪華盤(CD+GOODS)/CRZP-57/12,100円(税込)
※クラウン徳間ショップ限定商品
LIVE INFORMATION
PARTY BOOSTER Release Tour 2024
2024年6月22日(土) 福岡 DRUM LOGOS
2024年6月23日(日) 広島 広島CLUB QUATTRO
2024年6月29日(土) 宮城 仙台darwin
2024年7月5日(金) 北海道 札幌PENNY LANE24
2024年7月13日(土) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2024年7月14日(日) 大阪 大阪BIGCAT
2024年7月19日(金) 東京 渋谷Spotify O-EAST