まずは『ゴーストダイアリーズ』に出演するオファーをいただいた際の率直な感想を聞かせてください。

北村 諒「作品が映画ということだったので、シンプルに嬉しかったです。それに日向野祥くんの名前は知っていたんですけど、共演経験はなかったんですね。だから、日向野くんとご一緒できることも含めて楽しみでした」

日向野 祥「僕も映画が大好きな人間なんですよ。だから、やはり自分が映画に出られるのは幸せですし、すごくワクワクしたのを覚えています。諒ちゃんとは“はじめまして”だったんですけど、同じ年っていうこともあって、結構すんなり打ち解けたんですよ。そのおかげでクランクインしてクランクアップするまで、とても楽しく和気あいあいと過ごせました」

北村「祥ちゃんがどんな人かっていう前情報は、ほぼなかったんですよ。でも、しゃべってみたら共通の知り合いも多かったですし、変な壁もなかったよね?」

日向野「なかった?それならよかった(笑)。僕も諒ちゃんが出ている作品は、見たことがなかったんです。ただ、共通の知り合いはいましたし、誰が見てもイケメンじゃないですか?しかも、シュッとしている。僕は、どっちかというとドン!としているので(笑)、会う前は横にいくのが怖かったですね。それにクールで寡黙な人なのかなっていうイメージもあったんですけど、実際は、すごく明るくて気さくな人で。だから、いい意味でイメージ通りではなかったです」

出演者も少ない作品ですし、お2人の役柄は親友。それだけに撮影以外での関係性も大切ですよね。

日向野「メインの登場人物は4人ですからね」

北村「ここ(北村と日向野)が仲悪かったら、現場の空気は最悪だよ(笑)。でも、最初に本読みをした段階でスタッフさんも含めて打ち解けることができたので、なごやかな雰囲気でスタートしました」

物語の内容もハートウォーミングですしね。タイトルだけ聞いたときは、ホラーじゃないか?と思っていたんですけど。

北村「タイトルから受ける印象は怖い感じですからね(笑)。でも、脚本を読んでいても笑えるというか、ほっこりしつつも、“いやいや!”っていうような突っ込みどころもあったので(笑)、すごくバランスがいい脚本だなって思いました。だから、“これを実際に演じたらどうなるんだろう?”って、すごく期待がふくらんだんです」

日向野「僕も最初はホラー映画だと思っていたんですよ。でも、脚本を読んだら、結構人間味あふれるお話だったので、余計撮影が楽しみになりました。霊は出て来るんですけど、コメディ要素が多いのが新しいですよね」

そのコメディ要素は、かなり日向野さんが担っていらっしゃいますよね。

日向野「そうなんですよ(笑)」

北村「劇中で呪文みたいなのを唱えるシーンがあるんですけど、そのパートが、めちゃめちゃ長かったんですよ(笑)。だから、“これ、どうするんだろう?”、“覚えるの、全部?”って思って楽しみでした」

日向野「単発呪文もあれば長文呪文もあったんですけど、僕は全力でやらせていただきました(笑)。実は長文呪文はちょっと間違ったりもしたんですけど、監督から“フリーでやっていいよ”って言われたので」

間違っても、誰にもわからないですしね(笑)。

日向野「そうなんです。特に正解はないので、アドリブが多くて(笑)。だから、自分なりにアレンジしてやらせていただきました」

北村諒
日向野祥

日向野さん演じるフリーライターの雅は、ちょっとお調子者。それに対して北村さん演じる慎一は冷静なキャラクターです。そこには、どうアプローチしていったんですか?

北村「基本的には雅とのバランスだなって思っていたので、自分がどうしようというのではなく、雅がこうだったら自分はこれくらいかなっていう感じで合わせていきました。雅と慎一が仲がいい友だちでセットになっている感じだったので、そこのコントラストは意識しましたね」

日向野「ある意味、慎一と雅は対極な2人ですし、そのほうが見ている方にとって面白いと思うんですよ。慎一にないものを雅が持っていて、雅にないものを慎一が持っている。だから、僕は、はっちゃけるところは思いきりはっちゃけました。でも、雅が慎一を支える部分もあるので、そういったところでは正面からぶつかっていったんです。雅は、とても真っすぐで不器用な人だからこそ、何事に対しても全力でやろうということは、本読みの段階で思っていましたね」

慎一は霊が見えているけど、それを口にしない人で、霊は見えないのに、いると信じているのが雅。そこも真逆ですよね。そして、映画の中では慎一だけに柿本光太郎さん演じるカズキの霊が見えているわけですが、実際はその場に柿本さんはいますよね。それって日向野さんは大変ではなかったですか?

日向野「そうなんです。見ちゃうんですよ、やっぱり(笑)。そうすると“カットでーす!”ってなるので大変でした(笑)。それに同じシーンでカズキがいるバージョンといないバージョンの2通り撮ったりもしたんですけど、そのときは全く同じ動きをしなくちゃいけなかった。だから、すごく集中力を使いましたね」

北村「僕が大変だったのは、カズキが言った言葉を雅に伝えるシーン。映画の中では雅には聞こえないんですけど、現場では祥ちゃんに聞こえているじゃないですか(笑)。それを聞こえていない体でやるので“、聞こえていないんだよ”っていう間を作るのに気を遣ったんです。それはお芝居として初めての経験だったので、不思議な感じがしましたね」

監督から演技や動きの面でアドバイスはありましたか?

日向野「監督は画角にこだわりがある方だったので、画面に入るときや出るときに、監督の中に理想のバランスの入り方、抜け方があったんです。だから、そういう部分は最後まで追及しながらやらせていただきました」

監督なりの微妙なタイミングとかがあったんですね。

日向野「そうですね。本当に微妙な誤差だったとは思うんですけど、カズキという見えない人間を使っている題材だったので、細かくこだわったんだと思います。例えば、雅の目線の先にカズキがいると見えてるみたいに映っちゃうから、そうならないようにしよう、とか。それって普段だったら考えなくていい部分なんですけど、今回に関してはそこも追及していきました。特に僕と倉田てつをさん演じる民宿の管理人・田崎にはカズキは見えていない存在。だから、目線の動きとかもわざとずらすというようなことを演技指導でも言われましたね」

北村「今回、監督がカメラマンもやっていたんですよ。だからこそ、画になったときのイメージが監督の中に具体的にあったんだと思いますし、ちょっと目線がズレているのがわかったら、すぐにやり直したりしていましたね。監督とカメラマンの間にタイムラグがなかったので、僕らも意見を言いやすかったですし、すごくスムーズにやれました。それに結構リアルな導線でやれたっていうのも演じる上で大きかったです」

リアルな導線というのは?

北村「ドラマや映画の場合、例えばある角を曲がった続きのシーンをちょっと離れた場所で撮ったりするじゃないですか。でも、今回は本当に曲がった場所で続きを撮っていたので、すごくイメージがしやすかったんです。道だけじゃなく、民宿の縁側から幽霊が出る小屋が実際に見えたりもしたので、そういう位置関係もリアルな感覚でやれましたね」

たぶんオールロケだったと思うんですが、そういう点での大変さはなかったですか?

北村「基本的には民宿という設定だった古民家を使ったワンシチュエーションでずっと撮影していて、移動したのは滝に行く部分くらいだったんですよ。だから、撮影自体に特に大変なことはなかったです。ただ、自然に囲まれたところだったので、虫がたくさん出たのは大変でしたけど……」

北村さん、虫が苦手なんですか?

北村「わりとみんな苦手でした」

日向野「僕は極限に苦手です(笑)」

北村「僕は途中から戦っていましたけどね」

日向野「僕は、戦うのすら無理。古民家で障子とかも開けっ放しだったので、彼ら=虫は自由に動けるんですよ。だから、不意を突いてやってくる(笑)。それにいい年した男たちが、“ギャー!ギャー!”言ってました」

北村「しかも、いろんな虫がいたからね」

日向野「そう!森の中なのでデカいんです」

北村「マジで手のひらサイズくらいのクモがいたもんね。あれはヤバかった。でも、僕はだんだん慣れてきましたけど」

幽霊じゃなく虫に悩まされていたんですね(笑)。ちなみに、この作品の中では北村さんが霊が見える役で日向野さんは見えない役。実際のお2人自身はどうなんですか?

北村「全く見えないです(笑)。霊感は全然ないので。それに別に見たいとも思わないんですけど、昔は心霊スポットに行くのが好きでした」

それはどうしてでしょう?

北村「免許を取り立ての時期って、車に乗りたいじゃないですか。そういうときは、だいたい夜中に男4~5人で心霊スポットに行きがちなんですよ(笑)。でも、誰も何も見えないので、“怖いな~”っていう雰囲気を味わうだけなんですけど」

日向野「実は、僕は小学校のときは、ずっと見えていたんですよ」

えっ!?見える人なんですね!

日向野「はい。うち、特殊な家系で2番目の子供が見えるんですよ。おばあちゃんが6人兄弟の次女なんですけど見えていて、三姉妹の次女のお母さんも見えていたんです。そういう家なので、おばあちゃんの家に行くと、いつも縁側にお水と白米が置いてあったんですよ。それでちっちゃいときに“なんで、これが置いてあるの?”って聞くと、“もう少ししたらわかるよ”ってずっと言われたんですね。それは僕がお姉ちゃんがいる2番目の子供だったからだと思うんですけど、実際に小学校に入ってからおばあちゃんの家に行ったら、ボロボロの恰好をした真っ黒い顔の女の子が、そのお米を取ろうとしているのが見えたんです。でも、手が通り抜けちゃって取れないんですけど。あの光景は一生忘れないですね」

本当に通り抜けるんですね!

日向野「そうなんです。僕にもうっすら姿が見える感じで、脚もくるぶしくらいからなくて……。それで“あれは何?”って聞いたら、“やっと見えたね”って笑っていて。だから、うちの家族にとっては、特に怖いことではないんです。僕もそこから小6まで見えていたんですけど、ほとんどがもやみたいに見える。ハッキリ見えるのは生霊なので、白いもやかグレーのもやが多かったですね」

北村「へぇ~!」

すごい……でも、日向野さんの場合は期間限定だったんですね。

日向野「そうですね。この話、今まであまり言ったことがなかったんですけど、僕は小6で終わって、中学校に入ったら、全く見えなくなりました。だから、今となっては怖いですけど、当時はそれが普通だったんですよ」

ということは、実際のお2人は役柄とは逆だったわけですね。

日向野「確かに(笑)。でも、正直見えないほうがいいと思いますよ」

北村「だよね。見えないから、心霊現象っぽいことが起こっても、“まぁ、こんなこともあるよな”で済みますから(笑)」

『ゴーストダイアリーズ』も、見えない人にも楽しめる作品ですしね。

北村「そうですね。今はコロナ禍で、人とのつながりを作ることがなかなかできないじゃないですか。だからこそ、その心の隙間に入り込むような映画になっていると思います」

日向野「やっぱり人と人との関係性って大事だと思うので、それを思い出させてくれる映画になっていると思いますね。それに映画の中に幻の蝶を探す場面が出て来るんですけど、“そんなのいるわけがない”っていうように、はなからダメだと決めつけることって、人生にはたくさんあると思うんですよ。でも、そういう一見無謀なことにも、“もう一度挑戦してみよう!”って思わせてくれるような作品にもなっている。だから、そういうものも感じてくれたらなって思いますね」

シャツ、パンツ(LIDNM)
シャツ、パンツ(Et baas)、Tシャツ(AMUY TRYSBAY)

では、もし今後またお2人で共演する機会があったとしたら、次は、どんな作品で、どんな役がいいですか?

北村「今回はわりとクールな役だったんですけど、次は、どちらかというと僕もふざけたいですね(笑)。だから、コメディ的な作品とかで弾けた役がやってみたいです」

日向野「僕は、和が好きなので、和の舞台で共演したいですね。それで一緒にアクションをやるとかがいいなって思います。『ゴーストダイアリーズ』は日常的な世界の物語でしたけど、それとは全く違うタイプの作品でからみたい。そしたら必然的にキャラクターも変わってくると思うので、それはそれで楽しそうだなって思いますから」

(おわり)

取材・文/高橋栄理子
写真/いのうえようへい
衣装協力/Sian PR(Et baas、AMUY TRYSBAY、LIDNM、ATTACHMENT)
【北村諒】
シャツ\20,900、パンツ\19,800(共にEt baas/Sian PR)、Tシャツ\4,400(AMUY TRYSBAY/Sian PR)
【日向野祥】
シャツ\8,800、パンツ\9,900(共にLIDNM/Sian PR)

映画『ゴーストダイアリーズ』

9月10日(金)より池袋HUMAXシネマズ他にて順次公開

こちらもオススメ!

関連リンク

一覧へ戻る