今回は、天才ジャズギタリストの名をほしいままにしたウェス・モンゴメリーの名盤の数々をご紹介いたします。ウェスは、オクターブ離れた音を同時に弾く“オクターブ奏法”や、コードでフレーズを表現する“コード奏法”、そしてピックを使わず、親指をタコのようにくねらせて弦をはじく独特のギター奏法など、超絶技巧の限りを尽くして演奏を展開しました。

しかし、彼の凄いところは、それらとてつもないテクニックを極めて自然に披露すると同時に、そうした演奏技術が音楽を心地よくファンに伝えるための実に効果的な手段となっているところです。つまり、単なる“テクニックのためのテクニック”に終わってはいないのです。

まず最初にご紹介するのは、泣く子も黙るウェスの名盤『フル・ハウス』(Riverside)。ほとんど初顔合わせに近いテナー奏者ジョニー・グリフィンとの、まるでレギュラー・グループであるかのような息の合い方は尋常ではありません。また、ライヴであるにもかかわらず、無駄なフレーズや冗長な部分がほとんど無いのは驚くべきこと。サイドのピアノ、ウィントン・ケリーのソロも絶品です。

ウェス・モンゴメリーにはベース奏者の兄、モンク・モンゴメリーと、ピアノ、ヴァイブ奏者の弟、バディ・モンゴメリーがいます。彼ら3兄弟が共演した『グルーヴ・ヤード』(Riverside)は、まさに“グルーヴィ”な演奏が満喫できるモンゴメリー・ブラザースの代表作にして、実に渋い名盤です。家族ならではの親密な気分が心地よい。

 ビートルズ・ナンバーを取り上げ大ヒットとなった『ア・ディ・イン・ザ・ライフ』(A&M)は、1960年代ジャズ喫茶でも大人気でした。連日リクエストが掛かり、アナログ盤が擦り切れたほどです。このアルバム成功の秘密は、プロデューサー、クリード・テイラーの慧眼と、ドン・セベスキーの巧みなアレンジに大きく負っていると思います。

 ミスター、ソウル、ヴァイブのミルト・ジャクソンと共演した『バグス・ミーツ・ウェス』(Riverside)は地味なアルバムですが、しみじみとした味わいが聴きどころ。ウェスの暖かいギター・サウンドが深みのあるヴァイブの響きと実に気持ちよくブレンドされています。隠れ名盤と言っていいのでは

そして、オルガンジャズの帝王、ジミー・スミスと共演した『ダイナミック・デュオ』(Verve)は、オリバー・ネルソンの豪快なアレンジによるバック・サウンドから浮かび上がる二人の応酬が素晴らしい。大物どうしの顔合わせが見事決まった快演です。

このようにウェスはさまざまなミュージシャン、楽器と共演し、それぞれ傑作を残していますが、冒頭にご紹介した『フル・ハウス』でもサイドを務めたピアニスト、ウィントン・ケリーのノリの良いピアノとの相性は抜群です。名曲《ユニット7》や《フォー・オン・シックス》で見せる二人の交換はまさに絶品。

そして最後は、ウェスの超絶技巧の集大成とも言うべき代表作『ジ・インクレディブル・ジャズ・ギター・オブ・ウェス・モンゴメリー』(Riverside)です。オクターブ奏法、コード奏法といったハイテクニックが惜しげもなく披露され、それらがごく自然な形で演奏効果に貢献する、技術と音楽の理想的融合が実現した名盤です。サイドのピアノ、トミー・フラナガンとケリーを聴き比べてみるのも一興でしょう。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

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