アート・ブレイキーは1960年代、ジャズの代名詞的存在として知られた人気グループ「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」のリーダーとして日本のファンに紹介されました。1961年、リー・モーガン、ウエイン・ショーターといった人気若手ミュージシャンを引き連れて来日し、一大ジャズ・ブームを巻き起こしたのです。そしてライヴで見せる華々しいドラムソロは、ブレイキー人気に拍車をかけました。

こうした背景があるので、ブレイキーというとウィントン・マルサリスに至る歴代メッセンジャーズ・バンドのスターたちや、豪快な得意技、ナイアガラロールのイメージがまず印象に残り、バンド・サウンドを支える一ドラマーとしてはどうだったのか、あまり語られることが無かったようです。サイドマン・シリーズの9回目は、サイドマンとしてのアート・ブレイキーを取り上げ、脇役としてのブレイキーの魅力に迫ります。

まずは、人気テナー奏者ソニー・ロリンズの快演『ソニー・ロリンズVol.2』(Blue Note)でブレイキーは、セロニアス・モンク、J.J.ジョンソンといった超一流のジャズマンと共演していますが、華麗な技を存分に発揮し、大物連中に一歩も引けをとらない堂々とした風格を見せています。

一方、マニア好みのテナー奏者クリフ・ジョーダンの隠れ名盤『ブローイング・イン・フロム・シカゴ』(Blue Note)では、ハードバップ・ドラムの定番、脇から煽り立てるドラミングで、渋い味わいのクリフ・ジョーダン、ジョン・ギルモアの2テナーを引き立てています。まさにハードバップの名脇役です。

ブレイキーとブルーノート・レーベルは切っても切れない深い繋がりがありますが、もう一人のブルーノート名物男、オルガンのジミー・スミスのサイドを務めたのが『ザ・サーモン』(Blue Note)です。リー・モーガン、ルー・ドナルドソン、ティナ・ブルックスの3管にケニー・バレルが加わった豪華な編成によるジャム・セッション風演奏を、ブレイキーは派手なワザは一切見せず渋く支え、まさに裏方に徹しています。

一転して、まさにブレイキー印の派手なドラミングで始まるハンク・モブレイ『ロール・コール』(Blue Note)は、ハードバップ・マスター、ブレイキーの面目躍如。演奏の勢い、躍動感がいかにドラマーによって支えられているかがよくわかる快演です。ふだん控えめなモブレイもフレディ・ハバードに合わせ、ゴリゴリと吹きまくりです。

ケニー・バレルの『ブルー・ライツVol.2』(Blue Note)は、ブルーノートの隠れ名盤『ヒア・カムス・ルイ・スミス』で一部に強固なファンがいるトランペッター、ルイ・スミスと、これまたブルーノート幻の名盤『トゥルー・ブルー』でマニアご存知、ティナ・ブルックスがフロントを務める渋めの好盤です。そしてここでもブレイキーの、快適かつメンバーを活気付けるドラミングが演奏を気持ちの良いものにしています。

さて最後は、アート・ブレイキーにザ・ジャズ・メッセンジャーズの名称を譲ったホレス・シルヴァー初期のピアノ・トリオ・アルバム『ホレス・シルヴァー・トリオ』(Blue Note)。《サファリ》では、シルヴァーもまたバド・パウエル派の一員だったことが伺えます。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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