いい歌でありさえすれば必ずヒットする。
これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか?と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。
音楽評論家の富澤一誠です。
いい歌を見つけて紹介するのが私の仕事です。「Jポップ」でもない。「演歌・歌謡曲」でもない。良質な大人の音楽を「Age Free Music」と名づけて私は提唱していますが、「歌の上手い50歳以上のおじさん、おばさんを捜せ!」というのがキャッチコピーでもあるのです。いくつになっても歌手として、シンガー・ソングライターとしてメジャー・デビューしたっていいじゃないか?そんな気持ちを私が持っているからです。
今回は大手広告代理店を定年退職されて歌手デビューした2人のアーティストを紹介したいと思います。「ふるさと 信州 ありがとう」でデビューされた上條典夫さんと「人生は歌ワルツ」でデビューされたあらいまことさんです。お二人のエイジフリーな生き方にせまってみたいと思います。ということで、今回のゲストは上條典夫さんとあらいまことさんです。
★定年とは?定年後の人生こそメインステージ!
私が初めて「定年」を意識したのは今から19年ほど前のことです。
私はいつしか53歳になっていました。それまでは自分の年齢を気にしたことはありませんが、そのときはなぜかしみじみと感じ入るものがあったのです。2004年の春頃、久しぶりに実家に戻ったときのことです。私には兄が2人いますが、2つ違いの次兄が酒を飲みながらしみじみと言った言葉が、私には衝撃的でした。「ぼくも今年で定年だな」。
会社勤めをしたことのない私にとって、定年という言葉はリアリティーのないものですが、さすがにこのときばかりはドキッとしました。なぜならば、長兄ではなく、2つしか違わない次兄が定年を迎えると知ったとき、「ぼくもあと2年で定年なんだ」と感じて、正直言って、がく然としてしまったのです。20歳から音楽評論家稼業を始めてから33年間は紛れもなく“学生気分”そのものでした。そんな気分に“次兄”の定年、は見事なまでに冷や水をかぶせてくれました。
「そうか、ぼくは53歳か。若くはないんだな」。そう思うと、こんなことをしていていいのか、という思いが湧き上がってきました。
夜、眠りに落ちる前に考える機会がいつしか多くなりました。「最近の音楽は本当に好きなのか?本当に理解できているのか?」
それに対する答えを明確にすることは、これからの人生を選択すること。それだけにすぐに答えは出ませんが、いずれにしても、私は大きな“決心”をせざるをえない前段階に立たされていたのです。
そして得た結論は、これまでの33年間は、自分にとって最高の助走期間だった、ということ。だとしたら、最高の助走スピードに乗って、自分が行きたい方向に思い切って飛ぶことです。そのとき私は確信しました。定年後の人生はセカンドステージなんかではなく、こっちの方が本当の「メインステージ」なのだということを。以来、それこそが私にとっての旗印になりました。
★定年の時の決心とは人生のアクセルを思い切り踏み込むこと!
2006年8月、歌をきっかけにして知り合って以来、上條典夫さん、あらいまことさんとは「歌仲間」として親交を深めてきました。共に歌が好きで、共通していたことは「歌手志望」だったこと。私は会うたびに言っていました。
私はここ10年ほど「Age Free Music」を提唱しています。「Age Free Music」とは「演歌・歌謡曲」でもない、「Jポップ」でもない良質な「大人の音楽」のことですが、こんなキャッチフレーズもつけています。「歌の上手い50歳過ぎのおじさん、おばさんを捜せ!」。
上條典夫さん、あらいまことさんはまさにどんぴしゃの存在です。そして定年後の人生をまさしくメインステージに塗り変えようとしているのです。さあ、あなたも遅くはありません。定年後のメインステージで「スター」になって下さい。定年の時の決心とは、人生のアクセルを思い切り踏み込む、ということです。
radio encore「富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損!」 第16回 上條典夫さん あらいまことさん
「こんないい歌、聴かなきゃ損!(音声版)」第16回目のゲストには上條典夫さんとあらいまことさんをお迎えしてお送りします。同じ志を持ってユニットも組むお二人。上條典夫さんのデビュー曲「ふるさと 信州 ありがとう」、あらいまことさんのデビュー曲「人生は歌ワルツ」のお話もたくさん伺いました。ほかにもここでしか聴くことができない貴重なお話が満載です。ぜひお楽しみください。
富澤一誠
1951年、長野県須坂市生まれ。70年、東大文Ⅲ入学。71年、在学中に音楽雑誌への投稿を機に音楽評論家として活動開始し、Jポップ専門の評論家として50年のキャリアを持つ。レコード大賞審査員、同アルバム賞委員長、同常任実行委員、日本作詩大賞審査委員長を歴任し、現在尚美学園大学副学長及び尚美ミュージックカレッジ専門学校客員教授なども務めている。また「わかり易いキャッチコピーを駆使して音楽を語る音楽評論家」としてラジオ・パーソナリティー、テレビ・コメンテーターとしても活躍中。現在FM NACK5〈Age Free Music!〉(毎週木曜日24時から25時オンエア)、InterFM〈富澤一誠のAge Free Music~大人の音楽〉(毎月最終水曜日25時から26時オンエア)パーソナリティー。また「松山千春・さすらいの青春」「さだまさし・終りなき夢」「俺の井上陽水」「フォーク名曲事典300曲」「『こころの旅』を歌いながら」「私の青春四小節~音楽を熱く語る!」など著書多数。