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2021.04.19

eill「ここで息をして」インタビュ―――心の底から息ができる場所

USやK-POP出自のR&BとともにJ-POPのエッセンスをも取り込んできたシンガー・ソングライター、eill。ミディアムバラードの「片っぽ」や、NEWS、さなり、m-flo、SKY-HIとのコラボレーションでもその片鱗を見せつつ、この「ここで息をして」で満を持してのメジャーデビュー。屈託のない笑顔で野望を語るミレニアルズ、きっと相当な大物です!

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――15歳のとき、ジャズバーで歌い始めたとのことですが?

「歌の先生がジャズばたけの人で、先生が歌われるときに私も見に行って、飛び入りで“歌って”って言われて歌ったのがきっかけでした」

――何を歌ったんですか?

「初めて歌ったのはエタ・ジェイムスの「At Last!」と、スタンダードナンバーの「fly me to the moon」とかだったかな……二人の先生に習ってて、日本人の先生がジャズで、もう一人、韓国人の先生がいて、その人はボイストレーニングをやってくれたんです」

――ほどなくして打ち込みとかも始めるわけですよね。曲作りを打ち込みで始めた理由は?

「K-POPが自分の軸にあったので。かなりK-POPはトラックものというか、ダンスミュージックが多いじゃないですか。だからそういう部分に惹かれて、勝手にやり始めたのかなって思います」


――歌いたい!と強く思ったモチベーションになったアーティストはいるんですか?

「もともとK-POPのアーティストに憧れて、韓国の事務所のオーディションをずっと受けてたんですけど、絶対、歌手になってやると思ったのは『ドリームガールズ』っていう映画あるじゃないですか。で、そこでビヨンセが「リッスン」って曲を歌唱してるシーンがあって、なんかもうよくわかんない感情に覆われて涙止まんない、なんなんだろう?って、パワーを感じたんですよ。それで私もそういうパワーを与える人になりたいって思った、それはきっかけでした」

――じゃあずっとアメリカのR&BもK-POPもどっちも好きなんですね。インディーズ時代のデビュー作もなぜこんな三連フロウとかできるの?って感じだったので。

「嬉しい(笑)。でも最初はカバーしかやってなくて、難しい曲をたくさん練習してたイメージがあります。だからそういう三連のフロウとかも意識して作ってるわけではなく、そういうものをずっと歌ってきたから、自然にたぶん出てくる感触です」

――難しい曲といえば?

「リアーナの「アンブレラ」とか、ビヨンセは「ヘイロー」とかいろんな曲を歌ってましたし、そういうディーヴァの曲を歌ってたので、かなりそこで歌のスキルというか、もともとすごい音痴だったんですけど、その曲を頑張って歌うことによって、なぜか歌が歌えるようになったという(笑)、過程を経て今いるので。だから気を抜いてカラオケとかで歌うとものすごい下手です、未だに」

――ビヨンセはここ数作は女性をエンパワーメントするような内容が多いですけど、歌詞の内容や発言にも影響を受けてたりしますか?

「そうですね。K-POPもそうで、可愛いだけじゃない女性像みたいなものをすごく教えてもらったんですよ。強く生きていくっていう。当時、音楽っていうものに出会うまではモヤモヤしてて、強くなれない自分が嫌いだったんですよ。でも彼女たちにはその強さとか輝きがあって、それを得るためにはどうすればいいんだろう?ってすごく考えたんですね。で、私にとって結果それは音楽というもので、明確に何か発言するとかではなくても、雰囲気で何かを引っ張っていく力というか、そういうものにすごく惹かれました」


――中学高校時代、友だち同士のブームはどんな感じだったんですか?

「中学校の時は私しかいなかった、モータウンとか好きな中学生は(笑)。中学校の3年間ぐらいはJ-POPほぼ聴いてなくて。でも高校生になってから一人でライブもし始めたので、シンガー・ソングライターの友だちがすごく増えて。その人たちの影響でYUIとかback numberとかJ-POPっていうものに触れて、すごく好き!と思って。そこから日本語で歌詞を書くってことに意味を感じて。自分は日本人だし、日本語話すし、今まで韓国で歌手になりたかったけど、やっぱ私は日本語で歌詞を書いて、曲を作って歌手になりたいって気持ちに高校生のときに変わって行きました」

――eillさんの作品性って現行のR&Bとリンクしているけど、あくまでも日本語で歌っている、それが新しいなと思います。しかも自分で作っているし。韓国に行ってたらまた全然違ってましたね。

「全然違ってました。たぶんへこたれて今頃日本に帰ってきてると。行ってたとしても(笑)」

――BLACKPINKのドキュメンタリーを見たら、その厳しさは分かりますよね。

「友だちに目指してる子がいて、ちょっとだけ韓国でレッスン生してたんですけど、すぐ戻ってきて。やっぱり辛いって。肉体的にも精神的にもすごく追い詰められるんだと思います」

――だからこそなのか彼女たちはコーチェラに出たし。

「ほんとですよ。私もコーチェラ出るの、夢です。ロード・トゥ・コーチェラ(笑)」

――それはぜひ(笑)。ところでインディーズデビューの「MAKUAKE」にたどり着くまでがなかなか大変だったそうですね。

「それこそ前の名義の時からeillのプロジェクト、動いてて。でも、結局2年間ぐらい出せなかったんですよね。まわりの人とかも今と環境違いましたし。でも結局、「MAKUAKE」って曲は自分で歌詞も曲も書いて、アレンジも参加してやれたので、その時間が逆に自分の新しい一歩を開くための時間だったんだなって、今は思ってます」


――eillさんってR&B界隈のプロデューサーやDJもだけど、バンド界隈とも交流があるのが特徴的だなと思うんです。それもあってeillさんの応援団的な人たちにいろんなジャンルの人がいるのが納得できるというか。

「やっぱりフィーチャリングの作品とかすごくやらせていただいたので、おかげで自分もいろんなものに対応できるようになりましたし、すごいありがたかったです」

――フィーチャリング作品でボーカリストとしての扉が開いたと思う客演はなんですか?

「ひとつはSKY-HIさんの「New Verse-Remix feat.eill-」という曲はかなり大きくて、あれは初めて自分で書いたものではない歌詞とメロを歌唱したんですけど、そこにある言葉にどうやって息を吹きかけようかな?って初めて考えた。自分が書いてない歌詞だからこそ、音と言葉にどれだけ強弱をつけたりすることが大事なんだなっていうことをすごくその曲で学んだので、大切な経験になりました」

――m-floのlovesのプロジェクト「m-flo♡Sik-K & eill & 向井太一/ tell me tell me」も?

「あれは☆Takuさんから“lovesがすごく長い時間が空いて、再開する際の第一弾は絶対eillがいいんだよね”って直接お電話いただいて。すごく光栄でした。作り方とかも、タピオカ飲みながらずっとセッションしてて(笑)。しかもなんかサビは“わからない”ってひとつの単語を連続で歌う曲なんですけど、あれなんかも向井太一さんと3人でアニメとか見ながら遊びながら作ったので新鮮でした。私はスタジオ入るとガツっと30分で1曲作るぞみたいな感じなんですけど、でも、遊び心もどんな時代も新鮮な音楽を作る本質なんだなっていうのをすごく学んで。それからちょっとそれを意識して作るようになりました、休憩も(笑)」

――節目節目に象徴的な曲が出てますよね。アルバム『SPOTLIGHT』の時のタイトルチューンはFM各局でかかっていたし。

「エアモニチャートで1位にずっとなってて。不思議でした。結構忙しい時期で、“疲れたな”と思ってるときの朝、自分の曲である「SPOTLIGHT」が流れてきて、自分の曲に勇気をもらうみたいな(笑)、謎の体験をしました」

――作った時とは違う感覚でしたか?

「全然違います。作った時、あの曲は真っ暗な中にいて、そこに自分の友だちだったり仲間が自分に光を当ててくれたことを書いてるので、今度はその「SPOTLIGHT」って曲が自分に光を当ててくれてるなっていうのを感じるんですよ。だから不思議です」

――自分で救命具を作ったみたいな感じじゃないですか?

「そうですね。なんか昨日見た映画と繋がっててすごい怖いです。未来の自分がメッセージ送ってた、みたいな。『インターステラー』ですね。見終わった時は“意味わかんない”とか思ってたけど、今ちょっとヤバイです(笑)。ドキドキしました」

――もうダメかもとか思いながら書くことも多いんですか?

「次に出した「片っぽ」って曲も“もう無理”みたいな極限状態のときにできた曲でした」

――「片っぽ」の時の極限状態はどういう種類の?

「あれは書きたいことがずっとあったんですけど、それを形にするのが怖いっていう状態がずっと続いてて。でも曲を書かなきゃいけないっていう時期に入って、それを書きたいって自分でわかってるんだけど、見て見ぬ振りをずっとし続けてきて。もうタンクが溢れそうになって、ババーって泣いた瞬間に意識朦朧としながら歌った曲で(笑)。曲を書いた後は、その前はずっと寝れなかったんですけど、もうスヤーって寝れました」

――ある意味デトックスだったのかも。

「デトックス(笑)。私があんまり辛いこととか人に言わないタイプなので、それを唯一表現できる場所が音楽なんですよ。だからそれが溜まりに溜まり切らないと、音にできないっていうのがたぶん自分の中にあるみたいで。それ、結構辛いんで、そろそろやめたいんですけど(笑)」

――削ってますね。

「思い出さなくていいことってあるじゃないですか。それを歌うたびに思い出すんで、胸は苦しくなりますけど、そういう仕事なのかな、それが宿命なのかなって」


――そして昨年リリースの『LOVE/LIKE/HATE』が非常にカッコ良くて、収録曲も多彩で。自分ではどんなアルバムだと評価してますか?

「コロナ禍に入る前に書いた曲もあったり、逆にコロナになってから書いた曲もあって。だから自分の感情の変化がものすごく現れてるアルバムになって、ジャンルがとっ散らかってると思ってて。でもずっと“ジャンルなんなの?”って聞かれてたのがすごくコンプレックスで、“いや、私は私なんだよ”ってずっと言い続けてたけど、やっぱり作品出さないと認めてもらえないし、それが『LOVE/LIKE/HATE』で、“これがeillなんだよ、この色とりどりの作品がeillなんだよ”っていうのが、もう一度、提示できたアルバムになったかなと思ってます」

――「片っぽ」みたいな曲もあるし、かなりハードな「FAKE LOVE/」や「Night D」あるし、少しインディーR&Bっぽさのある「Into your dream」もいいですね。

「「Into your dream」はKan Sanoさんにプロデュースしていただいて、そのほかにも80KIDZさんとかいろんな方にプロデュースしていただいたんですけど、「MAKUAKE」の時から毎回、リードトラックはライブをしてもらってるバンドのメンバーといっしょにやってるので、その人たちとやると、誰か一人がアレンジャーではなく、いろんな知恵が集まってひとつの作品になるので、eillカラーってものに勝手になってくれるんですよ、毎回。それがなんかひとつeillっていう作品の軸になってるんだろうなと思います」

――バンドだからというのは今回のメジャーデビュー曲の「ここで息をして」でもダイレクトに感じますね。

「ああ、あれはもうフルマックスって感じで(笑)」

――『LOVE/LIKE HATE』の生っぽい曲もそうでしたけど、今回、イントロから驚きました。

「ほんとですか(笑)。今回の「ここで息をして」は生ドラム、生ホーンセクションでもう初のバンド感で作ったので、曲を。原始的に私がギターのリフを口で歌って、それをリフにしてもらったりとか、あんまり考えないで自分が感覚的に作った曲なので、それをバンドに落とし込んだときにみんなの知恵が混ざって、もっと新しい作品になったなって感じてます」

――今まで以上に生身の人間!って曲だなと思ったんですが、チームの総意としてどういう曲でデビューしたいなっていうのはありましたか?

「いや、最近そういうのがなくて、なんでかっていうと、「片っぽ」を出したときに、実は自分の中で怖くて。バラードっていう作品を受け止めてくれるのかな?ってすごく不安だったんですけど、思った以上にみんな受け止めてくれたし、その曲を聴いて、いいって言ってくれる人も増えたので、その日を境に私はなんでもなれるわ、みたいに(笑)思えたので、今回、アニメ「東京リベンジャーズ」っていう作品のエンディング主題歌で、そういう作品とのイメージとももちろん合わせて作りましたし、自分にとっても第二の“MAKUAKE”幕開けっていうのも込めて作れたなって感じはしました」


――アニメ「東京リベンジャーズ」に関してはどの辺を意識して書きました?

「これはヒナちゃんへの気持ちを書いてて。彼女はすごく太陽みたいに光り輝いてる子なんですけど、なんか私はその笑顔の裏にどんな気持ちがあって、その笑顔を支えてるものはなんなんだろうっていうふうに考えたときに歌詞を書いた曲になってます」

――じゃあ結構書き下ろしたという感じ?

「最初、1番の歌詞を書いた時はそういうつもりでいたんですけど、自分の中で何か自分の感情に寄り添うテーマをずっと探していて、その中で2020年、私はすごく生きてて、息苦しさを感じていたんですよ。やっぱライブができなくなって自分の居場所っていうものがぼやけてしまったりとか、自分が心の底から息ができる場所ってどこだろ?って考えてて。それに限られてくるじゃないですか、会う人とかも。なんかこの時代になって。そういう人に会うとすごくやっぱ安心するし、自分が心のそこから笑ってるんだなと思えたりとか、そういう居場所っていうものがずっとこれから先も自分にとって生き続けるんだなっていう風に気づいて。で、ヒナちゃんもそうだし、真っ直ぐな思いだったり、ほんとに愛のある場所が息をし続けるのかな、って意味を込めて「ここで息をして」っていう曲にしました」

――生音のこの迫力の中で歌うっていうのも…。

「かなり難しかったです、今回歌を歌うのは。やっぱり自分にはないこの力強さがあるボーカル出さないと楽器に勝てないので。それは自分ですごく悩みながら歌のRECはしました」

――ソウルとジャズの融合的な間奏や、その後エレクトロニックな音像もあり、いわゆるパッシブなソウルやファンクだけじゃない面白いアレンジでもありますね。

「そうですね。それはアニメの作品も一瞬で、握手したらその時代に戻ってっていうタイムリープものなので、曲の中でも景色がガラッと変わる場所を作りたいなと思って、ソロセクションの後にトラップのセクションを作ったりしました。プラス、シンセのブラスと重ねたり、キックもエレクトリックなキックと重ねてるのでそれも新しい質感に繋がったのかなと思います」

――蓄積がたくさんあるeillさんですが、改めてメジャーデビューする今の気持ちっていかがですか?

「最初、eillとしてインディーズ時代にずっとやってた時はもうメジャーとかインディーズとかの区別とかないよねって思ってやってたんですけど、やっぱその前、自分一人で活動してた時はメジャーデビューって場所にすごい憧れを抱いてたし、ひとつの区切りとして、自分が今そういう場所に立ててることのありがたみだったりとか、もちろん私がいなきゃ何も始まらないというのはありますけど、バンドメンバーはもちろんそうですし、スタイリストとかメイクさんとかいろんな人にeillってものを作ってもらってここまできてるので、そういう人たちにこれからもっと大きな場所を見せられること、もちろんファンの皆さんもそうですし。すごく嬉しいなって気持ちでいっぱいです」


――これからやってみたいことや気になってることは?

「今年絶対!やりたいことは二十歳のときに「20」って曲を出してるんですけど、そのときに自分でミュージックビデオの監督をして。地元の友だちとかいっしょに音楽を作ってきた友だちがMVに出てくれてて、みんな二十歳の子なんですけど。その時、お腹に赤ちゃんがいて、今は二児の母になってたりとか、特に何もしてなかった友だちもネイリストになって、私のネイルをやってくれてたり、一人一人前に進んでいて。その姿をファンの人たちに見せたくて。自分も23歳になって今思うことって曲を書きたくて。それは一個、絶対やりたいリストみたいなところに入ってます」

――では歌いたいテーマは?

「私が伝えて行きたいことは人生は一度きりだし、誰がなんて言おうと自分がこの人生の主人公なんだからってことはずっと伝えて行きたいのでそこはずっとブレないです。ずっとそれを歌って行きたいし、一人でも多くの人にそれを知ってもらいたいしっていう風に思ってます」

――音楽的にはどんな挑戦をしたいですか?

「絶対、トラップの超ギャルい曲を(笑)。実はもうあるんですけど。それは絶対、アルバムに入れたいって今、交渉してます(笑)」

――アルバムスケールになるといろんなジャンルを取り込めそうですね。

「そうなんです。逆にレーベルの人は大変だと思います。“eill、何者?”みたいな(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香





eill Live Tour 2021「ここで息をして」
2021年6月25日(金)名古屋QLUB QUATTRO
2021年6月26日(土)心斎橋ANIMA
2021年7月15日(木)渋谷TSUTAYA O-EAST





TVアニメ「東京リベンジャーズ」公式サイト

eill

©和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会






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eill「ここで息をして」
2021年4月9日(金)配信
ポニーキャニオン




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