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――まず、日本のアニメソングをクラシックアレンジでカバーするアルバムを制作した理由から聞かせてください。

「2019年から“アニメソングをクラシックアレンジしたコンサートをやりましょう”っていうお話をいただいていたのが最初ですね。本当は春と冬にライブをする予定だったんですけど、コロナの影響もあって、春のライブができなくなって。オリジナルの2ndアルバム『magic moment』のライブも春から2回延期になって、2021年の開催になっちゃったんですけど、Anime Classicの2回目のライブは12月に決まっていたので、じゃあ、それはやろうって決めて、みんなでまずは選曲から動き始めたっていう感じですね」

――収録曲はどんな基準で選曲したんですか。

「ステイホーム期間中にファンの方にリクエストを募ってみたり、スタッフさんからの提案もあったり、自分でもいろんな曲を選んでは歌ってみたりして。自分が知らない曲もあったし、あえてチャレンジした曲もあったし、今回は泣く泣くカットした曲もあって。それはもう大変でしたけど、基本的には私が大好きなスタジオジブリ作品の曲と、YouTubeチャンネルで歌う曲、ライブで歌う曲、という3つの方向性を見ながら選んびました。あとは、アレンジャーさんやスタッフさんと話し合いながら決めていった曲もあって。いい1枚になったなと思います」




――全10曲中5曲がジブリ作品からの楽曲ですね。

「あははははは!多いですよね。もともとジブリ作品が本当に大好きなんですよ。子供の頃から見ていたし、自分の中では自然とジブリ作品とともに生きてきて。今でも、いちばん好きなアニメが同率1位で『風の谷のナウシカ』と『魔女の宅急便』で、憧れの女性がナウシカ、友達になりたいのがキキなんですね」

――今回は『風の谷のナウシカ』の曲は入ってないですね。

「そうなんです。<金色の花びら~>って、ここで歌っちゃう!」

――あはははは!もったいないです!

「また機会があれば入れたいなと思いますし、とっても好きな曲なので、ライブでお披露目できたらいいなと思いますね。だから、まずは私の希望として、「やさしさに包まれたなら」は入れたかったんですよ。私は節目の時は、絶対に『魔女の宅急便』を見るって決めていて。一人暮らしを始めてから人生でこれまでに2回しか引越しをしてないんですけど、引越しした日の夜、最初の一夜は必ず見てて(笑)。自分が何か新しくスタートしたり、何かを始めるきっかけとなる時は、必ず観ようって決めているくらい大事なんですね。好きな作品だったからこそ、改めて自分が歌うとなると、最初はすごく悩む部分もあって。自分が歌っていいのかな?って思っちゃったんですけど、それを考えると本当にキリがないから、自分がこの曲と向き合った世界を見せようって決めて、レコーディングに臨みました。とはいっても、かなり悩みました。この10曲の中でいちばん悩んだ曲でした」

――それはどんな悩みだったんですか。

「本当に思い入れの強い作品なんですよ。当たり前のように子供の頃から歌ってきたし、いつもそばにあった曲だったんですね。ユーミンさんの声も大好きだし、ユーミンさんの声あっての曲だとも感じていたので、すごく悩んだんですよね」

――Wakanaさんはこの曲をどう捉えてますか。

「アニメのエンディングで、トンボが飛行機を完成させて、海を飛んでて。その隣でキキが笑顔で箒に乗って、一緒に飛んでる。街にも友達がたくさん増えて、届け物をしたり、グーチョキパン店に友達が遊びにきたり。そんな中、“私は元気です”っていう手紙を両親に書いて、その手紙をお母さんお父さんが読むっていうシーンで流れてる曲だから、前向きですよね。キキのようにどんな場所でも元気にやっていくのが私の理想だし、そういう前向きな思いが私の憧れでもあって。その思いで歌ったので、あのエンディングのシーンを忠実に再現したいっていう気持ちがありました。と、同時に、ユーミンさんは大人になっても少女の頃の思いを歌っていて。一昨年に大阪城ホールでのコンサートを見させてもらったときに、MCで“自分が少女の時に感じた思いを歌った曲が今でもたくさんの人に愛されているのはとても嬉しい”っておっしゃってたんですね。いつまでも少女の思いを忘れずに歌ってるユーミンさんがとっても素敵でしたし、あんなに偉大な人でも最初の思いを絶対に忘れないんだっていうことに感動して泣いてしまって。今でもその信念で活動してるんだなってことを感じたので、その思いもちゃんと受け止めて歌ったつもりですね」

――そういった名場面を連想させつつ、原曲アーティストへのリスペクトも込めて歌ってるんですね。

「そうですね。難しかったし、心配も多かったんですけど、ああだこうだ言いながらも歌いたかったですし(笑)。挑戦してよかったなって思ってますね」




――一方、アルバムのリード曲はアニメ映画『紅の豚』の「時には昔の話を」になってます。

「これは、YouTubeチャンネルで歌った時に、低音部がすごく響いていて。私の声のイメージにあまりなかったけど、意外としっくりきたなって自分でも思ったんですよね」

――Wakanaさんといえば、世間的には高音部担当のイメージがありますもんね。

「自分の新しい部分がちょっと見えたかもしれないって思って。今までのWakanaじゃないところっていう意味でもリードに選ばせてもらいました」

――原曲はシャンソンですが、歌ってみていかがでしたか。

「これは、私自身の捉え方どうこうではなく、ほんとに曲と向き合わなきゃいけない曲だったので、何もこねくり回さないって思いました。シンプルに、流れる音に乗ろうっていう気持ちですね。歌詞は考えると感動して、感極まっちゃう部分があるんですけど」

――今の状況で聞くとより沁みますよね。特に<見えない明日を/むやみに探して/誰もが希望をたくした>というフレーズが。

「そうなんですよ。でも、あまり作り込みすぎない方が、きっと人に伝わると思って。だから、大袈裟じゃない、私なりの“昔の話”を伝えようっていう思いでしたね。誰にでも過去があって、時代がある。誰しもが自分を重ねて聞ける曲なんだと理解して歌いました」


Wakana

USENのトーク番組「Music ⇔ Culture」の収録でMCのケリー隆介と



――そしてジブリ作品に続いて多いのが、新海 誠作品です。

「新海誠監督の作品は全部見てるんですけど、とにかく空の描き方が素晴らしいなと思っていたし、男女の友情と恋愛の描き方が独特で、胸が痛くなるような描写もあったりして。すごくリアルだなって感じていたんですね。でも、『君の名は。』では、男女間の胸が痛いリアル感を経て、SF感を強く出してきていて、面白いなと思ったし、音楽の使い方も素晴らしいなと感じて。その後の『天気の子』は雨の描き方がほんとに素敵でしたね。私、雲間から晴れ間が見える、天使の梯子が大好きなんですよ。その光の描き方がほんとに綺麗で。新海さんがずっと描いてきている空なんですけど、劇場で見ると、自分も一緒にその空を飛んでるような錯覚に陥るくらい美しい描写なんですよね。ストーリーやRADWIMPSの野田洋二郎さんが手がけた劇伴、意外性のある声優さんのキャスティングも素晴らしかったけど、とにかく空と水の丁寧な描き方、映像美がすごかったです」

――『天気の子』の「愛にできることはまだあるかい」を選曲したのはどうしてですか?

「劇場に映画を観に行ってすごく好きになって、何回も聴いていたんですね。野田さんの歌い方が、いい意味でずっと変わらない。温度感がずっと一緒で安心して聴けるのが素敵だなって思ったんですね。ビデオクリップもずっと長回しみたいな映像で、天気の子を少し模しているのも素敵だし、最後にピアノだけで歌うのもカッコいいなと思って。全ての世界観が好きだったので、これは歌いたいって思ったんです。7分以上ある、すごく長い曲なんですけど」

――淡々とした歌い回しの中にも、一瞬だけ感情の発露があって。

「これは当日の思いを大事にしたかったので、思っていなかった方向に行った1曲ですね。自分が思い描いていた設計図からはみ出た1曲になったなと思っていて。いちばん制御できなかった曲です」

――特に<この星は今日も/抱えて生きてる>という部分ですよね?

「ありがとうございます。私、その部分が好きなんですよね。ちゃんと読むと泣いちゃうくらい、すごい歌詞だし、全部を表現しきれるわけがないなって思って。最初は感情を出さないように歌ったり、カッコつけようとしたりしてたんですけど、そんなのは全く通用しない曲だなと思って。結果、こうなりました(笑)」

――新海作品からはもう1曲、『言の葉の庭』から、「Rain」をカバーしています。

「映画では秦基博さんが歌ってましたが、原曲は大江千里さんです。この曲はスタッフさんからの提案だったんですけど、男の人のガムシャラな恋愛観が入ってる曲なので、女性目線じゃなく、自分も男性目線で歌いたかったんですね。でも、歌詞を読み解く過程で意外性がいっぱいあって」

――Wakanaさんはどう読み解きましたか?

「いろんな人に聞いて、いろんな思いを聞くたびに、なるほどってなって面白いんですけど、私の中で、は誰かにこんなに愛されるなんて、この女の人、すごい!って思いました。でも、最初は怖かったんですよ。口笛吹いてついてくるって」

――ちょっとストーカーっぽい雰囲気もありますよね。別れた後に寄りを戻そうとしてるんですけど。

「でも、アレンジャーの兼松 衆さんと話していく中で、こんなにも追いかけるのはすごいし、この男の人はカッコつけてたんだなってことにも気づいて。<人前ではやさしく生きていた/しわよせで>、君を雑に抱き締めたわけですからね。この人、カッコつけマンなんだって思ったら、ものすごく近く感じてリアル感が増したんです。これが人間味なんだって思いました。自分が恋愛をテーマにして書くと、カッコつけちゃって、もっと可愛い感じにしてしまうけど、これが本当の恋愛なんだと思ったら、今まで見ていたドラマや自分の経験も、新しい面が見えてきた気がして。“本当はこう思ってたのに、クールに流しちゃってたのかな”って振り返ってみると、人間って素晴らしいなって思ったし(笑)。こうでありたいとも思いましたね。だって、誰しも好きなら追いかけたくなるじゃないですか。そこで、追いかけたい人は、カッコつけてるからじゃないか、と個人的には思います。カッコつけないで、追いかけられる誰かがいるってそれは、すごいことだなって。そうやっていろんな解釈を考えて、理解して、自分なりの「Rain」を構築するのが楽しかったですね。

――とてもリアリティーのある「Rain」になってると思います。ちなみに最初に言っていた、知らなかった曲というのは?

「「やつらの足音のバラード」は知らなかったです」

――そうですよね。Wakanaさんが生まれる前のアニメだから。でも、シダ類と恐竜がお好きと聞いていて。

「あははははは!そうなんですよ。ディレクターさんにも“恐竜出てくるし”って言われました。「じゃあ、これ、歌いたいです」って言って。その後、仮歌を録って、橋本しんさんに送ったら、“ピアノ一本だけで静かに落ち着いた感じでやりたい”って言われて。“落ち着いた感じで、<ブロンドザウルス>って言うんですか?”って思ったんですけど(笑)。でもピアノに寄り添うことで、自然とこの曲の世界観が出せたし、<ブロントザウルス>と<イグアナドン>という歌詞も、最初はどうしても恥ずかしさが出てしまったんですけど、ピアノに完全に寄り添ってグルーヴを作ることで恥ずかしさもなくなって、何も気にならない温度に行くことができた。歌い込むことでわかって、見えてきたものがありました」

――とても静謐な美しさが漂う歌声になってます。

「うれしいです。これは10曲中唯一、座って歌ってますね。静かにしたいと思ったから」




――この曲をはじめ、本作は全てドラムレスになってますよね。今、“グルーヴを作る”というお話がありましたが、ビートに関してはどう考えてましたか。

「曲によっては、その感覚を体に入れるには時間が必要な曲もありましたね。『千と千尋の神隠し』の「いのちの名前」は特にそうでした。ピアノもなしで、弦のみなんですけど、すごい張り詰めた空気を表現していただいたいて。オケ録りも全部見に行ってるんですけど、なんかね、弦が響いてるって言うより、泣いてる声っていう感じだったんですね。だから、聴いてるだけでも、すごく緊張感があって。自分の手を使って“トントントン”ってリズムを刻みながら歌う曲でもないし、ずっとクリックを聞いてるのももったい無いと思ったので、オケを何度も何度も聞いて、自分の体の中にこの曲のグルーヴを取り込みました。そうしたら、自然とここで息を吸いたいし、ここで出したいっていう部分が出てきたから。それは、やっぱり曲と向き合うっていうひとつの道だったと思います」

――重く低く地に足ついた状態から少しずつ未来に向かって進んでいく「いのちの名前」もそうなんですが、全体的に未来や明日への希望を感じる作品だなと感じました。

「うれしい。ありがとうございます。「夢のゆくえ」で締めているのも、私自身、これが絶対に最後だって決めていてたんですね」

――「夢のゆくえ」は『ドラえもん のび太のドラビアンナイト』のED主題歌ですが、この曲を選んだのはどうしてですか?

「私自身もこの曲、ずっといいなと思ってたんですけど、この曲のファンの方もすごく多かったんですよね。アルバムの収録曲を公開したときに、コメントがすごく多かったので、やっぱりねと思って。当時のドラえもんの映画の曲は全部、武田鉄矢さんが作詞して。武田さんの描く詞って優しさがあるんですよね。誰も恨まないし、みんなと仲良く優しくっていう世界を描いているのが大好きなんですよね。だから、私は前のドラえもんの劇場版のシリーズを全作品観てるんですけど、ほんとにいろんな作品があって、いろんな曲があって。とにかく、武田さんが書く詞が大好きでしたね。島崎和歌子さんが歌ってる曲もいい曲なので悩んだんですけど」

――惜しくも今作には収録しきれなかった曲がたくさんあるんですね。

「歌いたい曲はまだまだいっぱいありますね。このカバーアルバムには全部、一個一個に新しい自分を盛り込んだつもりですし、たくさんの発見がありすぎて、早く次に繋げたいと思っていて。オリジナル作品の自分の曲への思いもまた変わってくると思うので、すごく勉強になりました」

――今後もカバーも続けていくと期待してもいいんですよね。

「そうですね。アレンジャーさん、エンジニアさん、スタッフさん、みんなが自分の思い入れを話してくれるので楽しい時間でしたし、カバーアルバムやカバーライブも大事にしながら、オリジナルのWakanaとしての活動も励んでいきたい。それぞれを年間を通してやっていきたいなと今は考えています」




――12月22日には有観客&配信ライブ「Wakana Anime Classic 2020」が開催されます。

「リーダーの松浦梨沙さんがアレンジしてくださる曲もあるので、1966カルテットさんと一緒に、できるだけアルバムを再現しつつ、みんなで構築していきたいなって思ってます。ライブだけの曲も聞いてもらいたいし、会場に足を運んでもらえた方だけに、さらに驚く曲もお披露目できたらいいなとは思ってます」

――クラシックのテクニックをベースに洋楽アーティストのカバーを演奏する1966カルテットとは、アルバムでも「Get Wild」でコラボしてますね。

「元々はビートルズやUKロックをやっている方々で、バイオリン2人に、チェロとピアノという編成なんですね。女性がガシガシ弾いてるのがカッコいいから、「Get Wild」をぜひ弾いてほしいって話をして、アルバムではダブルピアノで作ってもらいました。最初はあまりにも有名すぎる曲だし、TMネットワークさんの世界でしかないと思って。最初はちょっと引いて、歌はバラードっぽくしようかなって考えちゃう自分がいたんですけど、いや、引いちゃいけないって思ったから、アレンジャーの橋本しんさんに“ガツンといきます!”って言って。まず、YouTube用のアレンジがあって、その後、ダブルピアノの1966カルテットさんとのアレンジになって。自分が歌っていいのかって思ってたけど、これを歌うと、スタッフさんがすごくよろこぶんですよね(笑)」

――あはははは!特に男子はみんな好きですよね。

「みんな一緒に歌いますね。YouTubeの撮影の時も、カメラマンの方が“俺のカラオケの十八番”って言ってて。いつもビクターでお世話になってる方も、レコーディング中、一緒に歌ってました。“ちょっと歌入れしてる時はやめてください”ってお願いしたりしてましたけど(笑)。幅広い世代の曲を歌ってるので、そんなふうにいろんな人に響けばいいなって思ってます」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/桜井有里





■「Wakana Anime Classic 2020」 BSフジ
2020年12月22日(火)@紀尾井ホール(東京)w/ 1966カルテット

■「Wakana Anime Classic 2020」オンライン配信 LIVE2U
2020年12月22日(火)@紀尾井ホール(東京)w/ 1966カルテット



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Wakana『Wakana Covers ~Anime Classics~』
2020年12月9日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/VIZL-1830/4,950円(税込)
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