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――コロナ禍によって活動の停滞を余儀なくされる中、aikoさんはどんな想いで日々を過ごしていましたか?

「コロナ禍になって思ったのは、いずれコロナが終息したときのために色々な準備ができる人と、心にポッカリと穴が開いてしまうタイプの人がいるんじゃないかなって。で、私は後者のタイプで、本当に何も手につかない状態になってしまったというか。洗濯や掃除をして晩御飯の献立を考えてたらあっという間に1日が終わってしまうし、YouTubeばかり観て、何もしない日もたくさんありました。でも、レコード会社のスタッフの方が色々な提案をしてくださったこともあり、ちゃんとみんなに曲を聴いてもらいたいと強く思えるようになったんです」

――しっかり前を向けるようになったと。

「はい。そこから今の状況の中で何ができるんだろうっていうことを考えた結果、8月30日に公開した『Love Like Aloha memories 砂浜に持って行かれた足』や、10月17日の『Love Like Rock ~別枠ちゃん vol.2~』の開催に繋がったんですよね。その間、曲作りもするようになりましたし」




――aikoさんにとって約7ヵ月ぶりのライブとなった『Love Like Rock ~別枠ちゃん vol.2~』はいかがでしたか?

「久しぶりのライブだったので、めちゃくちゃ楽しかったです。最初から最後までずっと楽しく歌えました。ただ、今回は初めての有料配信だったこともあって、不安もちょっとありました。『別2』のライブを観て、みんながほんまに“別に……”って言ったらどうしようって思いました(笑)」

――いやいや(笑)。Twitterなどの反応を見ていても、みんな久々のライブを心底楽しんでいましたよ。配信とはいえ、aikoさんの熱がしっかり届く内容だったと思いますし。

「そうやったらいいんやけど。みんな楽しみにしてくれてるのかなっていうのは伝わってきていたので、楽しんでいただけていたら私もすごくうれしいです。でも内容的に言うとMCがほんまに難しかったですね。“バナナよりも長ネギのほうが滑る”とか、ほんまにどうでもいいことばっかり話してしまって(笑)」

――あははは!それもaikoさんらしいなと思って笑いながら観てましたけど。

「私もすごく楽しかったですね。MCでも言ったけど、長年やってきてメンタルが強くなってるから、誰も笑わなくても平気っていう(笑)」

――とはいえ、通常のライブとは空気感は明らかに違いますからね。aikoさんのライブはお客さんと密にコミュニケーションを取っていくスタイルだから、無観客だとどうしてもやりづらさはあるのかなぁと。

「うん、そこはほんまに全然違いました。そういう意味で、今までの私はお客さんたちに甘えていたところもあったんだなって思ったところもあって。MCでは特にそれを強く思ったかな。いつもみたいにみんなから飛んでくる突っ込みがないから、ひとりで右に左に揺れながら歩いてしゃべり続けてしまうっていう(笑)。でも、バンドメンバーやスタッフのみなさんが支えてくれたので、すごく心強かったところもありましたね。スタッフの方々がみんな拍手してくださったり、笑ってくださったりしていたので、とても助かったし、ただただうれしかったです」

――ライブ中は、おなじみのバンドメンバーと楽しそうに絡んでいましたね。

「バンドメンバーと逢うのも久しぶりでしたからね。楽しかったです。「こいびとどうしに」という曲ではバンドのみなさんにも口笛を吹いていただいたんですけど、リハの段階でははまちゃん(浜口高知/ギター)が全然吹けなかったんですよ。でも、たぶん毎日たくさん練習してくれたんやと思うんですけど、本番ではちゃんと音が出るようになっていて。佐野さん(佐野康夫/ドラム)はマイクがないのにいっしょに吹いてくれていたし。みなさんに助けられたライブでした」

――現状、コロナはまだまだ完全に終息したとは言いがたい状況ですけど、ライブに関してはここからどのようにしていきたいと思っていますか?

「正直、ここまでコロナ禍が続くとは思ってなかったです。本来なら新たにツアーをやってるはずだったんですよ。でも、それも実現が難しくなってしまったので、今までとは違った形態のライブも試していかないとなっていう想いで『Love Like Rock 別枠ちゃん vol.2』をやったところもあって。現段階ではこれからどうなるのかはわからないから不安はあります。でも動き続けたいという気持ちはあるので、そのつど状況を見ながらやっていけたらいいかなとは思っています。有料の配信ライブはね、それはそれでいい経験ではあったけど、でもやっぱりお客さんのいるライブがいちばんなんです。みんなといっしょのライブが早くしたいです!」




――そして10月21日にはaikoさんにとって40枚目となるシングル「ハニーメモリー」がリリースされました。表題曲はコロナ禍に生まれたそうですね。

「はい。外出自粛期間に曲のカケラみたいなものも合わせると23曲くらい作ることができたんですよ。その中でしっかり形になっている18曲をレコード会社のスタッフに聴いてもらい、そこで“この曲をレコーディングしようか”ってなったのが「ハニーメモリー」だったんですよね」

――aikoさんとしてもこの曲には強い思い入れがあったんですか?

「そうですね。最近はスタッフに新曲を聴いてもらう段階で、“この曲のここが好き!”っていうことをめっちゃ伝えるようになったんですよ。「ハニーメモリー」に関しては、“Aメロの終わりとサビ、あと歌詞がすごく好き”っていうことをしっかりプッシュ、プレゼンしました(笑)。この曲は、自分が作りたいと思う曲の一歩先のところにちゃんと届いたような気がするんです。いつも以上に“ちゃんとやれてるのか?”って自分と向き合いながら作ることで、ちゃんと“大丈夫!”と思える曲になったのがうれしかったです」

――曲はどんな流れで生まれていったんですか?

「歌詞は“いつも悪いなと思ってたよ”から書きましたね。曲はサビから作りました。サビを作って、その調子が良かったらそのまんま2番という設定で間奏をつけてからAメロ、Bメロを作るんです。で、その順番を変えて、AメロBメロサビの並びにするっていう。曲によっていろんな作り方はあるんですけど、今回はそういう流れでしたね」

――歌詞ではせつない未練の感情が“僕”目線で綴られています。

「どうあがいてももう二度と戻れない、ふたりの間にある甘ったるくて重たくて、そしてとても大切だった気持ちを歌詞にしました。私自身、はちみつが苦手だったりもするので、楽しかったことはもちろん、イヤだったことも含め、重くて粘着性がある、でもどこかで幸せだったし苦々しかった思い出として書いていった感じです」

――なるほど。タイトルを直訳すれば“甘い記憶”ですけど、そこには甘さだけではなく苦さをも含んでいるわけですね。

「うん。思い出って振り返ったら絶対に甘いだけではないじゃないですか。ぶつかってケンカして、いろんなことを繰り返したからこそ、その思い出は“ハニーメモリー”になるんだと思うんです。この曲の主人公は別れてしまうきっかけを作ってしまったわけやから、余計にそうですよね」

――この“僕”は大切な人と別れた後、流れ落ちないほどの未練を抱き続けたことでようやく……。

「“ハニーメモリー”って言えるようになったんじゃないかなって。きっと別れてすぐにそうは思えなかったはずなので」

――この曲は歌始まりで歌終わりになっているところも大きな特徴だと思います。リピートして聴いているとどこが曲の境目なのかわからなくなって、延々聴き続けてしまうんですよね。それがものすごく心地いい。

「ありがとうございます。アレンジャーのふわしなさん(OSTER project)がアウトロをつけてくれたバージョンも作ってくださったんですけど、今回は歌始まりで歌終わりの方がいいんじゃないかなと思って、今の形にしました。今まで作ったものの中でも、歌で終わる曲はあまりないので自分としても新鮮だったし、最後の“素直になれなかった”はメロディに対して字余りなんですよ。だからそれによってちょっとグシャっとした感じが出ているところが好きなんですよね」

――柔らかなサウンドとせつない歌詞、そしてaikoさんの繊細な歌声は今の季節にものすごくマッチしていると思います。そのあたりは意識して作られているわけではないんですよね?

「そうですね、意識して作ってはいないですね。ただ、今回のメロディラインや曲の流れにはせつない感じがあるので、物悲しい季節というイメージのある秋に寄り添えたところはあったかもしれないです。一方では、歌詞に“桜”という言葉も入っているので、春に聴けば春っぽさを感じてもらえるところもあるとは思います。これから先も、いろんな季節に聴いて欲しいですね。この曲といっしょに、みなさんの心の中でいろんな季節を繰り返してもらえたらうれしいです」




――「ハニーメモリー」はMVも素敵な仕上がりで。今のお話を具現化するように、季節の移ろいが映像で表現されていますね。

「MVの撮影も楽しかったですね。今回は「夢見る隙間」や「Good Morning~ブルー・デイジー feat.aiko」の田辺秀伸監督に撮っていただきました。曲を流しながら撮影するんですけど、曲よりもスタッフのみなさんの声が聞こえてくる現場なんですよ。“いいよー!いい感じ!”っていう声がたくさん聴こえてくるから、長丁場の撮影でしたけど最後まで楽しく頑張れましたね。砂浜での撮影では飛んできた砂が口や目の中にめっちゃ入ってくるんですよ。なのでクリアファイルをフェイスシールド代わりにして顔を覆ったりもしたんですけど、それはそれで前が全然見えなくて、スタッフの方に手を引かれながら歩くという不憫な状態になってました(笑)」

――砂浜の街灯が灯る夜のシーンは幻想的な美しさですよね。

「実はあの街頭も全部、砂浜に設置したセットなんですよ。私の顔に光の粒が映るところとか、地面に映るピアノとか、あれもCGじゃなく全部現場で投影してます。強風の中、映像を映す紗幕をスタッフのみなさんが頑張って持ったり、すべてを人力で撮影しているところに感動しました。ちなみに撮影場所の砂浜からロケバスまで歩くと往復で18分くらいかかって大変だったんで、途中から軽トラで移動することになったんですけど、真っ暗な中、めっちゃきれいな星空を眺めながら移動したのは映画みたいで楽しかったですね」

――ではカップリングのお話も。2曲目には「58cm」というロックンロールナンバーが。まず気になるのはタイトルの数字が何を意味しているのかですよね。

「なんだと思います? 誰も当てられないんですけど(笑)、これはZeppのステージから客席の最前列までの距離なんです」

――えー!そんなに近いんですか?

「いや、ほんとは90cmなんです(笑)。でも、私としては“そんな遠かったっけ?58cmくらいに感じてたけど”っていうことで、このタイトルにしました」

――ラブソングにも聴こえる曲ですが、ここで描かれているのはライブでのお客さんとの関係ですよね。

そうですね。私はライブが終わっても、ファンの人とずっとしゃべっていたいなって本気で思うんですよ。なので、ライブの帰りに、気になっている人とこんな感じになれたらいいな、こんな時間を過ごせたらいいなって思いながら書きました。ライブハウスでライブをしていると、ほんまに1人ひとりのお客さんの顔がはっきり見えるんです。目が合うと笑ってくれたりもするし。それがいつもうれしいので、この曲を書いているときは、そこで見たみんなの顔を鮮明に思い浮かべていましたね」

――レコーディングはいかがでしたか?

「久々のロックンロールなので、とっても楽しかったです。この曲は「あたしだけのもの」というタイトルですでにライブで歌っていたことがあったので、レコーディングはスムーズでしたね。最初から最後までライブで歌っている感覚で。久しぶりにブラスのみなさんとお逢いすることもできて、“いい曲だねー”って言ってくれたのがうれしかったです。曲の中のクラップをバンドメンバーといっしょにみんなで録れたことも、すごくいい思い出になりましたね」

――歌詞の“今夜が終わってもねぇちょっと離れないでよ”というフレーズはすごくリアルですよね。ライブでのaikoさんがよく言ってますけど、他のアーティストへ心変わりされてしまうことをすごく不安に思っている感じがあって。

「そうなんですよね。そういう不安は常々あります(笑)。だから曲の中では“あたしだけのもの”ではなく、“君だけのもの”って言葉を使ったのかも。でも、1人ひとりのファンんのみなさんと、ライブが終わっても離れない関係でいられたらなっていつも本気で思います」


aiko

写真はすべて「Love Like Rock~別枠ちゃんvol.2~」より
??ポニーキャニオン



――そして、3曲目には「心焼け」が。

「この曲のメロディラインは、どこか懐かしい感じがするなって思いながら作っていた気がします。今まで曲ごとにいろんなメロディを作ってくることが出来たと思っているんですけど、その中で自分の中にずっとある大切なメロディの雰囲気がここでまた形にできたというか。それはきっとここまでちゃんと活動してこられたからこそなのかなって思います。歌詞に関しては、これまであまり使ってこなかったメールという言葉を使ってますね。“メールや手紙は捨ててしまえばなくなるけど”っていう頭のフレーズがまず出てきて、“ほんとにそう!記憶は簡単に捨てられないよな”って自分で思いながら続きをバーッと書いていきました(笑)」

――簡単には消えない記憶が心に焼きついている……それがタイトルの「心焼け」の意味するところなわけですね。

「はい。あともうひとつ、イヤな“焼け”ってあるじゃないですか。胸焼けとかそういう、ちょっともたれた感じというか。そういう意味合いも込めてますね。もう絶対相手に対しての気持ちは戻らないんだけど、でもまだちょっとモヤモヤしてる、そんな曲です」

――後半に出てくる“いいようなそじゃないよな悪魔のような”というフレーズがかなり刺さりました。誰かの言葉が毒にも薬にもなることってありますよね。

「その前のフレーズに“痛み止め”って言葉を使ってるんですけど、痛み止めって効いてきた瞬間にカラダがふわっとして血の気が引く感じがあるというか。カラダが一気に冷えていく感じがするんですよ。それって頭痛にはいいことなのかもしれないけど、身体にとってはあまり良くないのかもしれない。で、それを使い続ければ悪魔になるのかもしれないなって。それと同じように、好きな人の言葉に心温まることもあれば、身体をえぐるような傷跡をつけられてしまうこともある。それを繰り返せば身体は麻痺して悪魔にも変わるんかもなって思ったんですよね」

――オシャレな聴き心地のサウンドの上に、“悪魔”や“細胞分裂”という強いワードが踊っている絶妙なバランスもまたaikoさんにしかない感性だと思いました。

「“悪魔”って言葉はほとんど使ったことがないし、“分裂”って言葉にはすごく怖いイメージもありますからね。でも、この曲を書けたことで、言葉にはいろんな使い方があって、人を傷つけることもあれば、そうじゃないこともあるなって気づけたような気がします」

(おわり)

取材・文/もりひでゆき





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aiko「ハニーメモリー」
2020年10月21日(水)発売
初回限定仕様盤/PCCA-15002/1,200円(税別)
ポニーキャニオン
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