enj_200914_aim_main

ピックアップ
2020.09.14

あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』インタビュー――満たされ過ぎてる自分は好きじゃない

あいみょんが3作目のフルアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』を完成させた。最新シングル「裸の心」や、CMでもおなじみの「ハルノヒ」などヒット曲を多数収録。変わることのない反骨精神を刻んだ全12曲について、そして自身の現在地について、あいみょんが語ってくれた。

<PR>
SMART USENのあいみょん特集チャンネルはこちら!



――ステイホーム中はどんなことを考えていましたか?

「ライブがなかなかできない中でも、まずはいい音源を作れば、みんなに忘れられへんように残っていけるかなとは思っていて……でも幸か不幸か、グリーンラベルのCMがあったり、ドラマ(「裸の心」が主題歌に起用されたTBS系火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」)もあったので、世の中が止まってしまっても、私自身の活動は止まってない風に見えたと思うので、それは運がよかったなって。その中でもいちばんありがたいと思ったのが、DISH//の「猫」(2017年にリリースされたシングル「僕たちがやりました」のカップリング。作詞作曲はあいみょん)ですね。あれに結構助けられた自粛期間でした。私自身はテレビに出演する機会がない中、DISH//がテレビに出てあの曲をやってくれて、すごく聴かれて。あの曲を私が作ったことを知らなかった人もたくさんいたと思うので、ホントにありがたかったです。当時からいい曲を作ったと思ってたけど、そういう曲を作ってればこんな風に這い上がってくることもあるんやって、それはすごく嬉しかったです」

――「裸の心」は、バラードが売れないと言われる中、あえてあいみょん流のバラードを提示したわけですが、結果、たくさんの人に聴かれていますよね。

「「裸の心」がいろんな人に聴いてもらえてるのはすごく嬉しいし、自分が“この曲をシングルで出したい”って言い張ったのもあるから、“失敗したらどうしよう?”っていう気持ちもなくはなかったので、今はただただ安心です。“こういうところに自分を持って行っても、聴かれるようなアーティストになれたんやな”みたいに思えたし、“これからも思いっ切りバラードに振れるな”っていう、ひとつのきっかけにもなりました」

――『おいしいパスタがあると聞いて』というタイトルは?

「アルバムを作るときはいつもコンセプトは決めずに進めて、その中で“何てタイトルがいいかな?”って考えるんですけど、あるときにいろんな言葉を書き留めてるメモ帳を開いたら、そこになぜか“おいしいパスタがあると聞いて”って書いてて、それを見たときに“いいな”って思って。なので、ほぼ直感で決めたタイトルです。もちろん、これまでの2枚のアルバムと同じように、漢字とカタカナの組み合わせも考えたんですけど、出てくる言葉が全部かっこつけすぎていたというか、あんまりしっくりこなくて。『おいしいパスタがあると聞いて』はリズムがいいんですよね。前の2枚も全部で14文字で、そこは共通してるんです」

――『青春のエキサイトメント』、『瞬間的シックスセンス』……確かに!

「あと毎回そうなんですけど、タイトルには後からだんだん意味がついてくると思ってて。今思ってるのは、“ここで美味しいご飯が食べれるって聞いたんですけど”みたいな、そうやって暖簾をくぐるくらいの軽い気持ちで聴いてもらえるようなアルバムだったらいいなって。あとやっぱり私はフォークソングへの憧れが強いから、“パスタはフォークで食べるし”とか(笑)。オザケンさんへの憧れも、このタイトルには出てるかなって」

――あえてバラード曲をシングルでリリースしたり、漢字+カタカナかと思いきや、全然違うアルバムタイトルになっていたり、これまでもイメージを限定せず、驚きを与えるような活動をしてきた印象がありますが、今またその思いが強くなっているのでしょうか?

「“面白いことをもっとしていきたい”っていうタームではあったと思いますね。まあ、昔から変わらないと言えば変わらないですし……そこまで意識はしてないです。前からやりたいことをやらせてもらってるんで。もしかしたら、今回のタイトルを見て、“あいみょん、ついにおかしくなったか?”って思う人もおるかもしれんけど(笑)、“そう思うなら、私はずっとおかしいんです”っていうくらいの感覚。アートディレクションをとんだ(林蘭)さんがやってくれることも大きくて。とんださんはご飯系のもので何かを作るのが上手いから、パスタってタイトルに入れたら、“とんださん、パスタで何をやってくれるかな?”って、そこまで考えてる自分がいるかもしれない。だから、曲のことだけじゃなくて、もっと全部を考えてのタイトルでもあるかもしれないです」

――収録曲はどのように決めていったのでしょうか?

「選曲はファーストアルバムをひとつの基準にして、バランスよく並べていった感じです。“「ふたりの世界」みたいなのって、「ポプラの葉」じゃない?”とか、“ちょっとクズな女っぽい曲あった方がよくない?”みたいなことを考えながら味を調整しました……パスタなんで(笑)。でも、今回最初の曲と最後の曲だけははじめから決めてましたね。1曲目の「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」は、意思表示に近いというか、この曲のアレンジを進めていく中で、『青春のエキサイトメント』の頃を思い出したんです。当時はまだ今ほどみんなに知られてなかったので、今よりもっと反骨精神があったと思うんですよね。ファーストの1曲目は「憧れてきたんだ」で、当時はまだ憧れの人に全然会えてなかったけど、でも今はそういう人たちと同じ場所にいて、どこか満たされてしまっている自分もいるかもしれない。そういう中でこの曲ができて、自分にもまだこういう気持ちがあるんだっていうことがわかったので、それはよかったです」

――「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」の中には<余裕のある生き方がしたい/でも鐘のなる方へは行かないぞ>や<だからもっと刺激を もっと混乱を もっと人生を>など、強い意志を感じさせる歌詞が詰まっていますね。

「憧れの人たちといっしょに音楽ができるのはすごく特別なことですけど、でも満たされ過ぎてる自分はすごく気持ち悪いし、嫌いなんですよね。“鐘のなる方”は“お金の成る方”とかけていて、甘い蜜がある方には行きたくないなって。そこは大家族で育ったことが関係してると思っていて、ちょっと余裕がない方が気持ち的にも制作しやすいんですよね。そうやって、あえて自分を奮い立たせるというか……なんか懐かしい。『青春のエキサイトメント』のインタビューをしてるときをすごい思い出します。「憧れてきたんだ」は“昔々あるところに……”みたいな感じの1曲目で、主人公の女の子がいろんな人に憧れて、その子が後に書いた曲が1曲目以降の曲です、みたいな言い方をしていて、「黄昏に~」もそういう1曲目というか……アレンジは今回の方がオープニング感すごいですけど(笑)」

――表情豊かな歌声も非常に印象的です。

「今回歌録りはほとんど時間かかってなくって、苦労したのは「裸の心」くらい。声色とかもいろいろ変えられるようになったと思うんですけど、歌が上手くなったというよりは自分の曲の歌い方がわかってきたみたいな感覚かもしれないですね。“こういう曲調やったら、自分のこういう声がいい”みたいなのがわかってきて、「朝陽」だったら、ちょっと高めの声をわざと出したり。「朝陽」と「ポプリの葉」は私の経験を基に書いてる曲で……「朝陽」の<「終電逃して何のつもり?」って聞かれた恥ずかしさ>とか、実際聞かれたわけじゃないですけど、こんなこと聞くやつヤバいですよね(笑)」

――「マシマロ」は「裸の心」と同じトオミヨウさんのアレンジですが、バラードから一転オルタナ色の強いロックな仕上がりですね。

「「マシマロ」は“私と言えばこういう歌詞やな”って自分でも思っちゃうくらいで、これはおっぱいの曲。めちゃめちゃSEXソングなんですよ」

――<目の前にあるマシマロの丘/チョコレイトで汚したい>……なるほど!

「官能小説をよく読んでた頃の自分を呼び覚まして、平井 堅さんの「鍵穴」の意味を知ったときに近いような感覚で書きました。私トオミさんのバラードも大好きですけど、アップテンポな曲のアレンジも大好きなので、こういう曲を「夢追いベンガル」ぶりにトオミさんとできてよかったです」

――ファンキーな「チカ」もいいですよね。<A.P.Cの黒い財布/なくしてしまって海へダイブ>というインパクトのある歌詞で始まりますが(笑)

「固有名詞を入れるの好きなんですけど、メジャーデビューしてから固有名詞が意外と引っかかることを学んで、避けてきてたんです。でも私「アーペーセー」っていう響きが好きで、ここは私の中で変えることができなくて。で、スタッフさんがA.P.Cに聞いてくれて、オッケーが出たので、よっしゃー!と思って(笑)。この曲はうちのイチ押しの子なんですけど、最初は「○○ちゃん」シリーズみたいなイメージで、タイトルも「ちゃん」にしようと思ってたんです。でも、<海へダイブ>とか、よくわからない神秘的なことを歌ってるから、この子を人魚姫だと仮定して、魚の名前から「チカ」にしました。アレンジは田中ユウスケさんで、これまで田中さんとはシングルでごいっしょすることが多かったんですけど、今回「黄昏に~」と「チカ」もやっていただいて、嬉しかったです」

――ラストの「そんな風に生きている」は?

「この曲は2年くらい前に書いた曲なんですけど、今までの曲で言うと「いつまでも」に近いですね。不幸面をしてればチヤホヤされるなら、私だってできるけど、でも“私は私の風に乗って生きていきます”っていう。なので、歌ってることは「黄昏に~」ともほぼいっしょというか、これも意思表示の曲なので、アルバムの最後にふさわしいかなって。雰囲気的にも最後の女感がすごいし(笑)」

――初回限定盤特典の弾き語りCD『風とリボン』はどういった経緯で生まれたんでしょう?

「もともとは弾き語りツアーの沖縄公演を収録するつもりだったんですけど、行けなくなってしまったので、いつも使っているPOTATO STUDIOで録りました。一軒家で、地下にスタジオがあるんですけど、そのキッチンで歌ってます。ライブみたいな感じにしたかったので、環境音もそのまま入れました。NG出しまくりで大変でしたけど(笑)」

――「サラバ」は唯一の未発表曲ですね。

「「サラバ」はかなり昔に作った曲で、知る人ぞ知る、みたいな曲なので、もともと入れる予定はなかったんですけど、他にもインディーズ時代の曲をやってみたりした中で、“「サラバ」とかやっちゃう?”ってなって。まだ音源にはなってないけど、今さらアレンジをしてもらうような曲でもないかなと思って、だったらここに入れちゃってもいいかなって」

――部屋での弾き語りというムードもそうだし、「悲しみから一歩を踏み出す」という歌詞のテーマも含めて、時代に寄り添った選曲でもあるように思いました。

「そうですね。まあ、シンプルにみんなに喜んでもらえたらっていう気持ちで入れたんですけど、最近こういうちょっと暗めの、俯いてるような曲を書いてなかったので、この曲なら今の時期に合ってるなって、どこかで思ったのかもしれないです。私はもともと制作が好きで、ライブには苦手意識があったので、ライブができない状況になって、ライブのプレッシャーから解放されたような感覚もあるにはあるんです。ただ、ウィズコロナとかは全然嫌ですね。ポジティブな意味で使ってるのはわかるけど、でもホンマは元に戻したいわけじゃないですか?もちろん、テレワークが見直されたりするのはいいことでもあると思うけど、やっぱり人と人とが会わないとわからないこともある。なので……私はやっぱりこれまでと変わらずに活動したいです」

(おわり)

取材・文/金子厚武





あいみょん

『おいしいパスタがあると聞いて』初回限定盤特典の弾き語りCD『風とリボン – POTATO STUDIO, June, 2020 -』
01. ふたりの世界
02. 愛を伝えたいだとか
03. サラバ
04. 二人だけの国
05. ハッピー
06. 葵
07. ハルノヒ
08. 裸の心
09. マリーゴールド
10. 青春と青春と青春



おいしいパスタがあると聞いて
あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』
2020年9月9日(水)発売
初回限定盤(2CD)/WPCL-13235/13236/4,000円(税別)
unBORDE


おいしいパスタがあると聞いて
あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』
2020年9月9日(水)発売
通常盤(CD)/WPCL-13210/2,800円(税別)
unBORDE

「ハルノヒ」 ※映画『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』主題歌
「真夏の夜の匂いがする」 ※TBS系火曜ドラマ『Heaven?~ご苦楽レストラン~』主題歌
「空の青さを知る人よ」 ※映画『空の青さを知る人よ』主題歌
「さよならの今日に」 ※日本テレビ系『news zero』テーマ曲
「裸の心」 ※TBS系 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』主題歌 他全12曲収録







SMART USENのあいみょん特集チャンネルはこちら!



あいみょん


アプリのダウンロードはこちらから

Get it on Google Play
Get it on Google Play