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2020.09.01

堀内孝雄「アコースティックライブ2020」インタビュー――言うなれば静かな祝賀会

昨年再始動したアリスでの全国ツアーも完遂し、ソロとしてのタームに入った堀内孝雄。ここ数年のライフワークともいえる「アコースティックライブ2020」について、充実感を滲ませるアリスの再始動について、そしてコロナ禍に見舞われた新しい日常のなかでの音楽との向き合いかたについて、ツアーの合い間を縫って応じてくれた貴重なインタビューを。

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――堀内さんにまつわるトピックスとして、まずは2019年のアリス再始動を挙げないわけにはいかないと思いますが、春先に行われたリハーサルでの感触というか手応えはどうでしたか?

「そうですね、まあ再始動といっても、2018年にはラジオの「ヤングタウン」が先にスタートしていたんでね。チンペイさん(谷村新司)、キンちゃん(矢沢 透)とはそこで毎週のように顔を合わせていましたから。そこで新曲の話とかもして、ツアーの話もして。バンドとしてのコミュニケーションがとりやすかったというのはありますね。いや、番組を持つっていいなと思いました(笑)」

――ちょうどいい助走期間というか、ウォーミングアップができたと。今回の再始動は、やはり全国ツアー「ALICE AGAIN 2019-2020 =限りなき挑戦=」に照準をあわせて取り組まれたんでしょうか?

「アリスは1981年に活動停止してから6回くらい再始動しているんですよ。ステージに立たなかった年もありますし、CDだけとか、TVだけのときもありました。でも今回はね、いままでの再始動とは全然違う感覚がありますね。3人が還暦を迎えたタイミングでの再始動では東京ドーム公演もありましたし、2013年のツアーでは全国47都道府県を回りましたけど。それが今回は70歳ですからね。もう、格好悪いことできないなって思っちゃう。たぶん、チンペイさんにも、キンちゃんにもそれぞれそういう自負があったと思うんですよ。だからね、今回のツアーを見れた人はラッキーですよ。これまでとは気合が違う。もしまた再始動ってなったら相当くたびれてるはずですから(笑)」

――なるほど(笑)。今回のツアーは、当事者がそう言い切れるほどの出来映えだったということですね。

「だって、いままでにないくらいみんな必死でしたから。もう崖っぷちっていうか、体力も、気力も限界まで追い込んでね。2019年の5月にスタートして今年の2月まで全国を回る長いツアーでしたけど」



――長いツアーだと、回数を重ねるごとにバンドとしての完成度が高まったり、新しいアイデアが生まれたりするものですか?

「うん、やっぱりいい具合にこなれていきますよね。最初はね、なんて言うのかな……お客さんに乗せられている感じ。最初が僕の地元の神戸だったから特にそうかもしれないけど、様子見っていうか、お客さんの反応を見ちゃう。でも、場数を踏んでいるグループですから、全国を回っているうちに、そこからだんだん巻き返せるようになっていくんですよ。だから“アリスってすごいなあ!”って思いますよね」

――そしてアリスのホームグラウンドでもある大阪に戻って大阪城ホールで無事ファイナルを迎えました。

「いや、ぎりぎりでしたね。城ホールが2月7日、8日の2デイズだったんですけど、そのときはまだ“コンサート中もマスクをしていても構いませんよ”って会場に貼り紙していましたから。そのあとコロナ禍が急激に悪化しましたでしょう?だから運も味方してくれていたのかなと思いますね」



――そうしてアリスとしてのツアーを完全燃焼し、今度はソロとしてのタームに入りましたが、ご自身のなかでアリスの堀内孝雄からソロの堀内孝雄へスイッチを切り替えている感覚はありますか?

「うーん……ないんですよね、実は。無意識のうちに自然に切り替わっています。それこそ、今回のアコースティックライブも「影法師」から行くか、それともアリスの新曲「DAY BREAKER ~解放~」から行くか、会場の雰囲気を見て決めようと思ってるくらいだから。お客さんの雰囲気はアリスもソロもそんなに変わらない。なんかね、会場の皆さんが温かく包み込んでくれるんですよ。やっぱりね、お客さんもいい感じに年齢を重ねてるから(笑)。とはいえ、歌の内容だとか毛色はだいぶ違いますから。変な話、僕は得していると思うんですよ」

――と、言いますと?

「だってね、アリスの色と、ソロとしての堀内孝雄の色をそれぞれ楽しめているわけだから。そりゃ得してますよ」

――でも、逆も然りですよね?お客さんもアリスの色と堀内さんの色を楽しんでいるはずだから。

「まあ、“えーっ!今日は「恋唄綴り」歌わないんだ……”なんてこともあるかもしれませんけど(笑)」

――今回の「アコースティックライブ2020」ですが、東京はコットンクラブ、大阪はビルボードライブということで、どちらもロケーションが素敵ですね。

「そうですね。ビルボードライブ大阪は2015年からずっとお世話になっていますし、もはやレギュラーというか、ホームグラウンドと言ってもいいかもしれない。めちゃくちゃやりやすいですよ。あの空間とか、客席との距離感、演出も含めたパッケージそのものがすごくアットホームに感じられるんです。何よりステージからお客さんの顔を見てると、すごく寛いでいるのがわかる。ときどき、“おいおい、ちょっとリラックスし過ぎじゃないの?”って思うくらいアットホーム。これがホールクラスのハコだと違うテンションで臨まないとちゃんと伝わらないし、お客さんのリアクションも距離に比例して遅れて返ってくるんですよね。だからホールのときは振る舞いも、ちょっとこう、大きくなりますし、トークもゆったりめになったりしますしね」

――今回のバンド編成は?

「僕と、キーボードの林 政宏くん、ギターの経田 康くんというスリーピースですから、フルバンドのときとはセットリストがだいぶ変わりますね。やっぱりアコースティックだと、セットを工夫しないと平坦な感じになっちゃいますから。うまくメリハリを付けないと淡々とし過ぎちゃうんですよ」



――ビルボードライブ大阪は、毎年足を運んでいる常連さんもいるんじゃないですか?

「あ、いますね。毎年見かける顔が。ビルボードライブはハコ好きのお客さんもいますしね。これは大阪城ホールもそうなんですが、関西人気質というか、あちらの人たち、人を乗せるのが上手いんですよね。よく言うでしょ?芸人を育てるのは関西だって。そのせいもあるんでしょうね。当時のアリスなんかは“やっぱ、アリスは歌よりも喋りがええわ!”なんて言われて、こっちも“やかましいわ!”って返したりしてね(笑)」

――時節柄、自粛続きでしたし、お客さんもライブに飢えていると思うんですよね。だから今年のビルボードライブはちょっと雰囲気が違うかもしれませんよ。

「ああ!確かにそうかもしれませんね。とはいえ、客席を煽るわけにもいかないしなあ……言うなれば、静かな祝賀会ですかね。僕も長いこと歌ってきたし、お客さんも僕のノリがわかってくれていますから、“今日はこういう感じなんだ……”ってライブが進むにつれて打ち解けていくんじゃないかな。それこそデビュー当時の僕らは、お客さんの入ってないコンサートなんていくらでもやってますからね。“おいおい!全然入ってへんやん!”ってね。アリスはそうやって鍛えられたグループですから。それに比べればいまのこの状況なんてどうってことないですよ」



――こんな状況といえば、アップフロントグループのテレワーク合唱「愛は勝つ」の反響は大きかったですね。

「あれは、こんな状況になって、わりとすぐ立ち上がりましたね。以前、東日本大震災のときにも同じような取り組みをしていましたけど、今回のコロナはそのときとはまた違う意味でみんな苦しんでるんじゃないかって、スタッフもいろいろ考えたと思うんですよ。参加しているアーティストの顔ぶれも、厚みがありますでしょう?」

――堀内さんをはじめ、KANさん、現役とOGのモーニング娘。メンバー、ハロプロメンバー、つんく♂さん、森高千里さん、中島卓偉さん、因幡 晃さん、田中義剛さん、ばんばひろふみさん……世代もジャンルも振り幅が広いですよね。

「しかしまあ、あの「愛は勝つ」って曲は本当にオールラウンドだよね。甲子園でも、震災でも、新型コロナでも立ち向かえる素晴らしい曲ですから。だって、どんなに困難でくじけそうでも最後に愛は勝つんだよ?すごく単純明快じゃないですか(笑)」

堀内孝雄

写真はすべて昨年のビルボード大阪公演より



――堀内さん自身は、ステイホーム期間中どんなふうに過ごされていましたか?

「僕は歌い手なんでね、歌うことが好きなんでしょうね。家で毎日レパートリーを変えて歌っていましたね。それこそ最近歌っていなかった曲を引っぱり出してきて毎日ね。長くやっていますと、作るだけ作って放っぽらかしにしていた曲がたくさんありましてね。やっぱりそれじゃ曲たちがかわいそうでしょ?それでマネージャーがそういう曲たちをリストアップしてくれましたんで、その資料を見て、思い出しながらギターを弾いて……夕方から晩ご飯の時間まで毎日練習してましたね。そうするといろんなことを思い出したりするんですよ。“ああ、この曲の歌詞はこんなことを歌っていたんだな”とか“こういうコードの鳴りだったのか”とかね」

――むしろコロナ禍に見舞われなければ、そういった気付きもなかったかもしれませんね。

「ああ、そうでしょうね。ふだんは目の前にあるものにしか興味が向かわないですから。たぶん世界中の人がそうなんでしょうけど、いまは身動きができない状況でいろんな制限もあるし。じゃあ自分のテリトリーでできることをやるしかない。僕はラッキーですよ。だってすぐそばに歌があるんだから」

――さて、2021年は堀内さんにとってデビュー50周年という節目の年になるわけですが、今後の展望についてはいかがでしょうか。

「これといって50周年らしいことは何も考えていませんけどね(笑)。僕のなかでは49周年も50周年もいっしょですよ。切りのいい数字ってだけで。まあ、いまの日常がどれくらいもとどおりに回復するか予測できませんし、かと言って、いつまでもYouTubeだ、配信だってわけにもいかないですしね。さしあたっては東阪のアコースティックライブを全うして……というところでしょうね。今回のアコースティックライブも、たまたまこんな状況になってしまいましたけど、コロナだからってノリを変えてしまうのももったいないですし、特にホームともいえるビルボードライブ大阪のステージはいつもどおりにこなしたいですね。客席のほうはいつもよりお客さん同士の距離が離れてしまいますでしょ?そのぶんゆったり寛いだ雰囲気を楽しんでいただけるんじゃないですか」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
取材協力/Billboard Live 大阪



堀内孝雄 アコースティックライブ2020(Billboard Live 大阪)

ベーヤン

※ライブ、イベントの内容は開催当日までに変更される場合があります。必ずアーティスト、レーベル、主催者、会場等のウェブサイトで最新情報をご確認ください。



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