この店舗は 東京という都市自体に触発され、そのミニマルな美学と視覚芸術の影響を組み合わせることで、ブランドを特徴づける研究ベースのアプローチを体現している。
店舗内は2つの異なるスペースで構成されており、1つ目のギャラリー部分は、日本を拠点に活動する関祐介の「YUSUKE SEKI STUDIO」によってデザインされた。関は、場所や空間の歴史などの文脈的要素を巧みに取り入れながら、シンプルさとミニマリズムを強調するスタイルをとっている。そうした彼のデザインアプローチは、既存の建築と対話し、拡張させ、環境全体の感覚を再文脈化する。関はこの空間に対して、慎重に思考を重ねた後、創造性と変容を育む場として機能する白紙のキャンバスとして位置付けた。これによりどこかポエティックな舞台のような位置付けへと昇華させている。
2つ目のスペースでは、定期的にアーティストが招待され、没入型のインスタレーションを作成し、常に進化し続けるスタイルを表現している。これらのインスタレーションは従来の型を破り、キコ・コスタディノフのクリエーションを新しい視点で見ることができるだけでなく、アートとファッションの関係性を解釈する新たな方法を模索する空間となっている。
最初に参加を招待されたアーティストはライアン・トレカーティン。1981年アメリカ生まれのトレカーティンの幅広い表現手法には、映像、インスタレーション、彫刻、サウンドデザイン、写真ベースの作品が含まれ、アイデンティティーの流動性、コミュニティーの定義の展開、および主題形成の複雑さに焦点を当てている。最近の主要な展示には、『Another Surrealism』(デン・フリー現代美術センター/デンマーク・コペンハーゲン/2022年)、
『World out of Joint』(クンストミュージアム・ヴィンタートゥール/スイス・ヴィンタートゥール/2022年)、『Lizzie Fitch / Ryan Trecartin: Whether Line』(フォンダツィオーネ・プラダ/イタリア・ミラノ/2019年)、『Lizzie Fitch / Ryan Trecartin』(アストゥルプ・フェアンリー美術館/ノルウェー・オスロ/2018年)が含まれる。トレカーティンの作品は、30以上の主要なアメリカおよび国際的機関のコレクションに収蔵されている。
今回のインスタレーションで、トレカーティンは2部にわたって視覚的な物語を表現した。第一段階は、制作途中の状態を想起させる「保留中」の場所として存在する。長年のコラボレーターであるレット・ラルーとともに作成したフォトリアリスティックなレンダリングプラン、素材のプレースホルダー、使用済みの足場、その他の建設資材などを組み合わせて、「下書き設定」ともいえる感覚をはらんだ店舗空間を作成した。
トレカーティンが日本の職人たちとともに2024年夏に続くインスタレーションの制作に取り組む間、観客はインスタレーションの第一段階である「下書き設定」の状態が閲覧できる。
このプロセスは、トレカーティンのコミュニティーベースの芸術的アプローチに沿ったものであり、コラボレーターがアーティストのプロジェクトの実現において重要な役割を果たす。空間の最終的な反復はこのプロセスを通じて進化し、その開発とともに明らかになり、映像、オブジェクト、インスタレーション、彫刻を含む、典型的ではないリテールのコンテクストに空間を再構成し、奇妙なまでに馴染みのある一連の家庭的環境を生み出す。
このユニークで斬新な空間では、キコ・コスタディノフのウェア、バッグ、アクセサリー、フットウェアだけでなく、コラボレーションプロジェクトや限定商品も展開する。
キコ・コスタディノフ 東京
東京都渋谷区神宮前2-32-3
11:00~19:00