ヒトとモノ、ヒトとヒトがつながるリアルな場としてのセレクトショップ

WEBがあるのが当たり前、AIも進展・普及し始めているこの世の中で、リアルならではの五感を通じた体験価値を提供/享受できる場としての実店舗の在り方が、ますます求められるようになった。LIBERATEの岡本勇樹さんは「普段のデザインの仕事は、WEBの世界でより多くの人にサービスを届けるとか、利便性を向上させるといった仕事を主にしています。違和感がなくなる・マイナスを無くしていくことが非常に重要で、『これめちゃくちゃいい!』みたいな感情の溢れる瞬間は作れない・作らないほうが良いんです。だからこそ、感情を引き出せるような本物を見て触れることができ、そこに集まったヒトとヒトがつながってカルチャーができたり、ムーブメントを起こしていくようなリアルな場をデザインしたかったんです」という。そうしたコミュニティー醸成の出発点として2025年5月、東京・浅草橋に出店したのがセレクトショップ「UNI(ウニ)」だ。

浅草橋にオープンしたセレクトショップ「UNI(ウニ)」

今日に至る起点となったのが高校時代の経験だった。大学生と共に起業などを通じて実践的なビジネスを学ぶ一方、現在はスタイリストとして活動し、UNIのバイイングやルックのスタイリングなども手掛けるSHIKI(シキ)さんと出会い、ファッションにのめり込んだ。その頃、二人が夢中になったのがロンドンでスタートしたクリエイティブユニット「ART COMES FIRST(アートカムズファースト)」だった。「初めて見た時は単純に『めっちゃカッケー!!!』っていう感じで。調べてみていくとその背景にブラック・カルチャーやパンクに象徴される反骨精神があり、英国の伝統的なテーラーリングのバックボーンもしっかり持っていることを知り、それがすごく刺さって。その生き様も含めて衝撃を受けました」と岡本さん。自身の価値観が形成されるタイミングでビジネスとファッションから受けた刺激は、その後の生き方を変えた。ITスタートアップでデザイナー・プロダクトマネージャーの経験を積み、2021年1月に独立、2022年7月に自身の会社LIBERATEを設立。UIデザインやUXデザインを軸に包括的なアプローチで企業の事業創出・推進を支援する活動を本格化した。
一方、SHIKIさんはスタイリストになりたいという想いはあったが、高校を卒業すると別の定職に就いた。だが、20歳の頃に「この仕事をこのまま続けて死ぬのか、これはヤバいと思った。そこで岡本に相談し、言われた言葉を今も覚えていて。『攻め続けろ』と言われたんですね。で、その後師匠となるスタイリストの方の門を叩いたんです。なかなか本人と連絡がつかなかったのですが、連絡をし続けたらようやく通じて、まさに攻め続けることで道が拓けた。今、スタイリストをやれているのは、20歳のときのあの一言があったから」と振り返る。聞けば高校時代の他の友人らも、現在はクリエイティブな分野で独立し、活動しているという。

LIBERATEの岡本勇樹さん(左)とスタイリストのSHIKIさん

「みんなをつないでいるのがファッション」と岡本さん。「LIBERATEを設立したときからデザインの受託仕事だけではなく、様々な事業の展開を構想していたんです。その中に高校時代からの仲間との共通項であるファッションがあった。そこでファッションを軸に、スタイリングや撮影などそれぞれの得意分野を生かし、僕が培ってきたサービス設計などの知見を掛け合わせて、ヒトとモノ、ヒトとヒトがつながるリアルな場を作ろうと。その形態としてセレクトショップが相応しいと思ったんです」。

「尖って、丸くなれ」。個性を消されず、認められる存在になる

ショップ名の「UNI」は、まさにトゲトゲのウニに由来する。出る杭は打たれると言われるように、尖れば叩かれがちな社会にあって、尖り続けることで個性を消されることなく丸くなり、誰からも認められる存在になろうというメッセージを込めた。「尖って、丸くなれ」はUNIの全ての活動に通底するテーマだ。

「尖って、丸くなれ」のイメージビジュアル

ショップを構えたのは東東京エリアの浅草橋。昔から人形や文具、玩具などの老舗メーカーが集積し、アクセサリーや皮革、ハンドメイド材料などの問屋やショップ、隣接エリアには横山町・馬喰町の現金問屋街や蔵前の新進セレクトショップやカフェなどもあり、渋谷などの西東京エリアとは異なる多様なカルチャーが混交する場だ。UNIのショップはその一画、JR浅草橋駅西口から程ないビルの1階と2階にある。駅からは近いのだが、マンションや住宅が立ち並ぶ細い路地を入るため、袋小路に迷い込んだ感覚でショップを発見するのも楽しいかもしれない。
2フロアの空間はスケルトンの状態から全て造作した。1階はシャッターが開け放たれ、剥き出しのコンクリートによる天井やモルタルの床、「実は未完成の状態」という下地の石膏ボードを張ったままの壁面、工事現場にあるような照明が秘密基地のような空気感を醸し出す。
象徴的なのは、空間の中央に伸びるブルーの柱。「海には多種多様な生物が共生しています。ショップ空間にもそんなコミュニティーとしての役割を持たせようと、海のイメージから鮮烈なブルーをブランドカラーに設定し、様々なものをつなぐ象徴としました」と岡本さん。1階の床から伸びるブルーの柱は天井を突き抜けて2階に通じ、空間をつなぐ。客とスタッフが会話をするレジカウンターにもブルーが施されている。

  • 1階店内。ブルーの柱が記憶に残る
  • セレクトアイテムにはさり気なくブルーが混じる
  • 2階へと続く「階段状の造作棚」

スチール製の「階段状の造作棚」が連なり、上った2階は小石の吹き付け塗装で仕上げられた壁面の質感とスケルトンの天井やスチール製の什器の無機質感が融合し、落ち着いた印象。服とアイウェアやファッション小物を提案し、岡本さんが蒐集しているデザイン関連の書籍がインテリアとしてディスプレイされ、アートなムードが感じられる。奥にはLIBERATEのオフィスを併設した。

  • ブルーの柱は1階と2階をつなぐ
  • 2階へ上がるとグッと落ち着いた空間
  • アイウェアや小物も提案

「FUN IS COOL!」のコンセプトに基づき、気鋭のブランドを集積

「尖って、丸くなれ」の考え方と直結しているのが、「FUN IS COOL!」というバイイングコンセプトだ。「楽しんでいる人のほうがカッコ良く見えますよね、だから人生を楽しんでいるような人が着る服や、着る人の個性や生き方が表現できるような、その人自身のアイコンになるような服をセレクトしています。服好きとしての僕だけの感覚ではなく、プロとしてのファッションの知見があるスタイリストのSHIKI、お客様や着ている人を見る側の目線を加える意味で僕の妻、3人の感性を入れた上で最終的に僕が判断しています」と岡本さん。ブランドはメンズが約7割、ウィメンズが約3割で構成し、ユニセックスで着られるものも多い。「購入したお客様が他人と被ることのないよう、一部を除いて同じアイテムは積まないようにしています。基本は一期一会」という品揃えも特徴的だ。

服は「自分たちが本当に良いと思うものを発信し続けていく」と、都内のセレクトショップとは差別化されたブランドラインナップを実現。「KIDS LOVE GAITE(キッズラブゲイト)」、「SEVESKIG(セヴシグ)」、「TENDER PERSON(テンダーパーソン)」、「BODYSONG.(ボディソング)」、「tokio(トキオ)」、「PHOTOCOPIEU(フォトコピュー)」、「BELPER(ベルパー)」、「NaNo Art(ナノアット)」、「GEN IZAWA(ゲン イザワ)、「jisetsu(ジセツ)」、など、気鋭の15ブランドを取り扱う。ドメスティックブランドを中心にブランド展開を増やしていく予定で、26年秋冬からは「bemerkung(べメルクング)」の取り扱いが決まっている。アイウェアは全てのプロダクトをハンドメイドで生産するイタリアのブランド「RETROSUPERFUTURE(レトロスーパーフューチャー/RSF)」、そしてRSFが手掛ける「MARNI(マルニ)」「MM6(エムエムシックス)」といったファッション要素の強いアイテムの取り扱いを行っている。UNI別注の「SEVESKIG × KIDS LOVE GAITE」コラボシューズなど、ブランドカラーであるブルーを基調とした全7ブランドのオープン別注アイテムも展開、今後も「1シーズンに1ブランド以上の別注・コラボ」を予定している。

クリエイティブな発信で共感を増やし、地域に根差すコミュニティーへ

それぞれに確かな背景を持つブランドから独自の視点でセレクトしたアイテムを提案しているが、UNIでは現在、オンラインストアを展開していないため、購入できるのは実店舗のみとなる。しかも実店舗の営業は土曜日のみで、平日及び日曜日は予約が必要。リベレイトの活動と並行して展開していることもあるが、「様々なコンテンツが消費されていく中で、消費されるという感覚を持ちながらも、どれだけ人の意識に残るブランドにしていくか」を最重視し、マーケットとの接点を絞り込み密度の濃い提案で「尖り続ける」。
実店舗以外の接点として注力しているのが、ホームページやインスタグラムで発信している独自制作のルックだ。岡本さんがディレクションし、SHIKIさんがスタイリングを組み、ヘアメイクや撮影はUNIのメンバーだけで行っている。キャスティングも友人や知り合いのモデル・俳優などを起用し、「つながり」を重要視。それがグルーブを生み、自分たちの「生き方」を届いた相手に伝わるようビジュアル表現に落とし込んでいる。

  • 25年ルック(モデル:面高ケンスケ、朝日ななみ)
  • 25-26年冬コラボコレクションルック(モデル:小倉史也)
  • 25年春夏ルック(モデル:koma)

「一般的には商品画像とスペック紹介、スタッフが着用した画像をオンラインストアに載せたり、ライブ配信をしたりすることが当たり前になっています。それを否定はしないし、そういうマーケティングはLIBERATEの本業に近いのでもちろんできるんですけど、商品画像と言葉による説明的な手法で売っていくのではなく、ストレートに『カッコいい』と共感する人が増えていく流れを作りたい」と岡本さんは話す。「アートや自然の景色を見て美しいと思うのと近い感覚というか。ファッションが堅苦しくならないようにしたいんですよ。だから、一点一点のアイテムにしっかりとした背景はあるけれど、それを言葉で説明するよりもスタイルで提示する。スタイリングやカメラワーク、モデル、シーンなど全てにクリエイティブを通わせ、ルックに収斂させています」。
例えば、兵庫県西脇市の地場産業である播州織のファクトリーブランド「jisetsu(ジセツ)」のルックは、店舗のリノベーション前の安全祈願祭に合わせて撮影した。「jisetsu」というブランド名には「時節(時代の流れを汲み取ったデザイン)」「自説(着る人が自分自身を説明できるような服)」「地説(ものが生まれてくる場所を伝える)」という背景がある。その中の地説にフォーカスし、jisetsuの魅力を伝えていく浅草橋という地にある店舗空間で、UNIのメンバーがモデルとしてその服を着用し、伝え手としての思いをルックに体現した。「ルックは消費コンテンツではなく、作品。購入した人が作品の中の服を着ているという感覚を醸成していきたい」としている。

UNIのメンバーで制作した「jisetsu」のルック

UNIはファッションのセレクトショップとして立ち上がったが、「STYLISH & COOL NEIGHBOR(おしゃれでクールなご近所さん)」をコンセプトとして、地域に根差し、地域に開かれたトータルライフスタイルブランドへの進化・拡充を構想している。構想はLIBERATEの創業2周年のタイミングで発表し、その第1段をファッションからスタートさせた。今後、商品面では雑貨や美容品、飲食品、家具などのプロダクトを複合し、店舗空間はクリエイターやアーティストがギャラリーとして使用したり、企業が商品のテストマーケティングに利用するなど多様な用途に向けて開放する。今は未完成の1階フロアは、「完成したらバーとしても営業する計画」だ。「多種多様な人たちがボーダーレスに交わり、コミュニティーを活性化させ、地域や社会に新たなムーブメントを起こしていく。そこまでを総合的にデザインしていく」考えだ。

写真/野﨑慧嗣、LIBERATE Inc.提供
取材・文/久保雅裕

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久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター。ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。元杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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