ベーシックウェアにプラスαの価値を生むデザイン

マーチアンドサンズはアパレルメーカーで経験を積んだ蒔田秀光さん夫妻が2016年に設立。OEM(相手先ブランドによる生産)を軸に、自社ブランドとして「ソソット」をスタートさせた。「ウィメンズブランドで僕は販売、妻は商品企画を手掛けていました。社長が独立推進派だったので、ずっとそのつもりで仕事をしてきたんですね。妻と話し合い、自分たちの経験を生かして卸売り型のブランドを立ち上げようという青写真はできていました。担当してきた取引先を引き継がせてもらえたので、43歳のときに独立し、OEMと並行して自社ブランドも展開し始めたんです」と蒔田さんは話す。

女性らしい清らかな美しさを表す「楚々」という言葉を語源とするソソットは、そのブランド名が象徴するように、コットンやリネンなど天然素材を軸に、ベーシックなアイテムに「清潔感のあるクリーンな女性らしさ」をプラスしたカジュアルスタイルを提案する。無地やボーダー、チェックなど素朴なデザインを中心にスタートし、袖口や胸元、襟元などのゴムシャーリング、バランスの良いチビ襟やフリルのスタンドカラーなどのディテールにソソットらしさを覗かせた。
ブランドを設立して翌年には現在につながる変化があった。「ある卸先から『リバティの生地を使ったアイテムを作れないか』と依頼されたんですね。リバティジャパンとは前職でお付き合いがあったので問い合わせると、取引をしてもらえることになり、生地別注をするようになりました」。以来、柄の大きさを変える、色を変える、アーカイブを復刻するなど他には無いリバティファブリックを使ったコレクションも製作し、ソソットのもう一つの「顔」として充実させていった。

当初は「展示会を開いても数社しか来場がなく、OEMの相手先に卸していた」が、徐々に卸先を増やした。前職時代から交流のあったマイク・グレーから連絡を受けたのは、19年のことだった。「マイク・グレーが第2創業へ動き始めた時期で、お話をするうちに互いのリソースを生かすという方向性が見えてきたんですね。マーチアンドサンズは僕ら夫婦だけなので、営業面はマイク・グレー、僕らは企画・生産を担うというパートナーシップを組むことにしました」と蒔田さん。20年にこの体制を組み、展示会の共同開催や卸先の開拓、マイク・グレーが展開するブランド「ポンデシャロン」の実店舗や、同社が21年から本格化したEC、さらにポップアップストアでの小売りも始めた。マイク・グレーの社長を務める長浜友信さんは「当時のマイク・グレーはポンデシャロンの実店舗を展開しているものの1店舗で、卸の比率が95%。卸は当社の核なのですが、依存度が高過ぎた」と振り返る。間もなくコロナ禍になるとオンラインストアを立ち上げ、ポンデシャロンとソソット、21年には「道具服」をコンセプトにベーシックウェアを展開する「lelill(レリル)」も加え、3ブランドでリテールを強化した。

コレクションのフルラインを体感できるブランドの発信拠点

両社の役割を明確にすることで卸先が増え、リテールでもブランドへの認知は広まった。その過程で増えてきたのが「ソソットの商品はどこで買えるのですか」という声だった。「オンラインストアを紹介できるけれど、実際に服に触れて、試着することはできない。ポンデシャロンや卸先の店舗でも、当然ながら全品番は無いわけで。増えてきた要望の受け皿となる場を作りたいと思った」と蒔田さん。そこで、中目黒のビルの1階という好立地にあるマーチアンドサンズの事務所を店舗空間に転換することを決めた。
「ちょうど空きが出た同じ建物の2階に事務所を移し、1階をショップにしました。私たちは卸を大事にしたいので、卸先に対してはこのぐらいのスペースでこういう売り場が作れるという提案になるのではないかと思います。展示会では見せ切れないアイテムやカラーバリエーションなどのプレゼンテーションにもなれば」と蒔田さん。営業日は木・金・土・日曜日とし、ブランドが10周年を迎えた今年3月14日に「ソソット中目黒店」をオープンさせた。

ソソット中目黒店

店前のアプローチには自然の木が茂り、経年変化した建物のコンクリートとヨーロッパのブティックのような木製のエントランスが味わい深い。内装はもともとはコンクリート打ち放しの無機質な空間だったが、床を木のフローリングに変え、壁面はソソットのナチュラルな服が映える白を基調として、部分的に煉瓦を積み上げることでリバティの背景にある英国のトラッドなムードを演出した。

  • 柔らかで優しい空気感が感じられる店内
  • 入り口ではブランド名を入れたタイルがお出迎え

ディテールと着心地で魅せる服たち、幅広い世代に広がる共感

オープニングでは26年春夏コレクションを提案。優しい色使いのアイテムとリバティプリントのアイテムが並び、温かな空気感を醸し出している。今季もリバティは人気だ。「リバティ タナローン スタンドギャザーワンピース」は、野兎と蔓(つる)のモチーフをアール・ヌーヴォースタイルの連続模様で表現したアーカイブデザイン「COTTONTAIL(コットンテイル)」を復刻し、柄を小さくして色も替えることで大人っぽさの中に可愛らしさを生んだ。スタンドカラーは襟元をすっきりと見せ、袖口にシャーリングを施すことで丈の調節もしやすく、季節を超えて着用できる。オフホワイトとブラックの2色。同素材の「リバティ タナローン チビ襟シャーリングブラウス」は前開きで羽織にもなり、こちらも袖口シャーリングを採用した。オフホワイト、ブラック、ネイビーの3色。
密集した花をプリントした定番柄「CHIVE(チャイブ)」は、通常はリバティが独自開発したコットン生地「タナローン」にプリントされるが、ソソットでは今季、100番手の双糸で織られた薄手のコットン生地にダークカラーで染めた。「リバティ100/2ボイル バンドカラーウエストドロストワンピース」は、前開きでウエストのドロスト仕様、スリット入りの八分袖を特徴とし、上品な透け感の生地は羽織りスタイルでもレイヤードでも涼し気な印象。同素材のブラウスはタックフリル襟仕様で、前後ツーウェイで着用できる。

  • 「リバティ タナローン チビ襟シャーリングブラウス」
  • 写真右は「リバティ100/2ボイル バンドカラーウエストドロストワンピース」、左はチャイブを大胆に使ったドッキングカーディガン
  • 店内にはリバティファブリックの柄を編集したアンソロジーブックも

総柄は苦手という人のためには、無地ベースの前身頃のみ、ヨーク部分のみ、前立てや袖裏に施すなど、「少しだけリバティをプラスしたアイテムも好評」だ。また、ソソットオリジナルのプリント物もシーズンごとに新作を提案。定番の蔦(つた)柄を更紗調にデザインした「ツタ柄細ピンタック ウエストドロストワンピース」、異なる印象の2色のタータンチェックを切り替えた「チェックシャーリングワンピース」、点描で表現した格子の中に花や木、ギンガム、ドットと様々な柄をミックスした「格子花柄ピンタック ウエストドロストワンピース」など、個性的なプリントを展開する。
デニムもパンツやワンピースなど様々なアイテムに使うが、ライトオンスの薄手にこだわり、軽やかなはき心地を追求しているのが特徴。装飾や加工を抑えることで、ソソットの服と合わせやすいテイストに仕上げている。「5.5オンス デニムタックスカート」はゆったりとしたドレープ、裾の飾りステッチ、タックを入れたサイドポケットなどでさりげなくアクセントを効かせている。

「チェックシャーリングワンピース6分袖」
「ツタ柄細ピンタック ウエストドロストワンピース」
5.5オンス デニムタックスカート」
「格子花柄ピンタック ウエストドロストワンピース」

21年に発表し、現在はソソットを象徴するアイテムとなっているのが、「アンティークサテン消しプリーツスカート」だ。アンティーク調のサテン生地によるウエスト総ゴム仕様の無地のプリーツスカートで、はきやすく、生地は速乾性に優れ、静電気防止加工を施した裏地付き。プリーツは細かく、あえて裾のプリーツを消すことでフェミニンなシルエットと軽やかな動きを生む。「通常のプリーツスカートよりもカジュアルに着こなせ、ペチスカートとしてもはける。ワンピースとセットで購入するお客様が多い」と蒔田さん。シーズンごとに新色が発表され、9900円(税込)というリーズナブルな価格もあって、リピート購入の多いアイテムとなっている。

「アンティークサテン消しプリーツスカート」

ブランドの10周年を記念して、今季はポンデシャロンとのコラボレーションアイテムも3型を製作した。ポンデシャロンの定番モデルにソソットがリバティに別注したプリント生地とディテールを融合。「ツーウェイフリルブラウス」は、身頃にシルケット加工を施したコットンカットソー、襟、肩から袖に兎と蔓草のコットンテイルを施した。前後で着られ、コーディネイトの幅も広がる一着。「天竺リバティ袖フリルフレンチTシャツ」は、フレンチスリーブの袖口にあしらったリバティプリントがポイント。フリルはバイヤス裁ちの布帛で軽やかな印象に仕上げた。「ペチコートパンツロング」は、ポンデシャロンの定番クロップド丈パンツの裾でリバティプリント生地に切り替え、ロング丈に。ワンピースとのレイヤードもお薦めだ。

ポンデシャロンとのコラボアイテム。写真は「ツーウェイフリルブラウス」

この間、コロナ禍もあったが、マイク・グレーとタッグを組んで以降は卸先もリテールの客数も増加。マイク・グレーは現在、売り上げベースで卸の比率が約60%となり、その3割ほどをソソットが占めるようになった。一方、「小売りではポンデシャロンの店舗で展開してきたため、ポンデシャロンの中のブランドのようなイメージが強い。マーケットにおけるソソットの見え方をECやポップアップを含め、もう少し変えていきたい」と長浜さんは話す。直近では5月にソソット単体でのポップアップを日比谷シャンテで展開する。
その発信の基盤となるのが中目黒の路面店だ。まだオープン間もなく週末だけの営業だが、40~50代の女性客を中心に30代、上は80代まで幅広い世代が来店している。「顧客の来店が多いのですが、フリーのお客様では近隣にお住まいの人やリバティプリントが好きだったり興味があるという人、『普段はあまり服を買わない』という年配の方々が結構、フラッと立ち寄って買い物をされます」と蒔田さん。今後は多店舗化などによる拡大は志向せず、世界観の表現やイベントなど路面店だからこそできる発信や対応を通じて「お客様に楽しんでいただける体験を提供し、ブランドの付加価値を高めていきたい」としている。

写真/遠藤純、マイク・グレー提供
取材・文/久保雅裕

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久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター。ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。元杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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