公園寄贈の第1号は宮城県女川町に

今回で7回目を迎えた、「子どもたちに最高の笑顔を届ける」をコンセプトとする、子どもから大人まで参加できるチャリティーイベント「マッシュパークプロジェクト 2023」。

初回は、2016年に「SNIDEL PARK PROJECT(スナイデルパークプロジェクト)」というという名前で、マッシュグループで最初に誕生したブランド名を冠したプロジェクトとして開始し、2017年からはグループ全体の取り組みとしてマッシュパークプロジェクトに改名。その後、コロナウイルスの影響で中止した2020年以外、7年開催を続けている。


マッシュパークプロジェクトでは、21年8月に宮城県女川町に第1号となる公園「マッシュパーク 女川」を寄贈した。

公園設置の場所に女川町というエリアを選んだ理由は、「被災率の高さでした」と広報部の牧野霞さん。

内閣府の「防災情報のページ」によれば、宮城県女川町は、最大14.8mの高さの津波が襲い、人口約1万人のうち死者、行方不明者は827名、町の住宅の約9割にあたる約3900棟が被害を受け、被災市町村の中でも被災率が高いとされている。

「ありきたりな遊具ではなく、世界にひとつだけの公園を作りたいと提案したところ、町の方も快諾していただき、21年に開園することができました」と牧野さん。

公園の設置場所は、高台ではなく海のすぐそばに作ったという。

牧野さんは「女川町は景色を大事に、海とともに生きると決めた町なんです。津波対策は防潮堤ではなく、町の居住区を高台に整備することを選択されました。それで海の近くの広い敷地の一画にマッシュパーク 女川を作らせていただきました」と話す。

公園内には、「さんごちゃん」や「うみうしくん」、「ちんあなごくん」など海の生き物をモチーフにしたオリジナリティーある遊具を設置している。

「うみうしくんは12メートルもあって、滑り台やトンネルなどもあり、子どもだけではなく大人も楽しめる遊具となっています。でも、遊ぶお子さまの安全面の基準がとても厳しくて、完成までには想定よりも時間が掛かってしまいました」と牧野さん。
「大きな公園ではありませんが、近くの石巻市から家族で遊びに来てくださったり、平日でもたくさんの方が訪れているとのことで、とても嬉しく思っています」と続けた。

笑顔を届けるさまざまなコンテンツが盛りだくさん

今回のイベントでも、「子どもたちに最高の笑顔を届ける」をコンセプトに、お笑い芸人やDJ、イラストレーター、マジシャン、バルーンアーティストなどを招いたライブパフォーマンスやワークショップなど、さまざまなプログラムを開催。

メインビジュアルのアヒルの絵は、パラアーティストの奥野恵市氏による作品だ。これはマッシュグループのウェルネスデザイナーをつとめる木梨憲武氏により、数多くの作品から選出されたものだという。会場内には、アヒルのほか、奥野氏が描いた犬やパンダ、ゾウなどが展示されていた。

マッシュグループでは、「あらゆる人に等しくチャンスがあってほしい、アートが持つパワーを多くの方に届けたい、などの考えのもと、パラアーティストの作品をブランドの広告や商品など、様々なところで起用させていただいています」と牧野さんは語る。

さて、今回も会場となったマッシュグループ本社。
1階では、お笑い芸人やDJライブなどのパフォーマンスとともに、マッシュグループが展開している飲食ブランドも出店している。それぞれのブランドは、この日のためのメニューを考えて提供し売上金額の一部が公園建設の費用として寄付される。

さらに、サステイナビリティーも大切にしているマッシュグループは、会場内にコンポストを体感できる場所を設置した。
昨年2022年のマッシュパークプロジェクトでは、イベントで発生した食品残渣を回収し、コンポスト化。これらを土壌改良剤として有機・無農薬栽培で安全な野菜を育てる農家に提供するとともに、収穫された野菜はフードドライブ(食品の寄付)へと回したそう。

このコンポストとは、家庭からでる生ごみや落ち葉、下水汚泥などの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させ、堆肥(コンポスト)をつくることで、実は昔から伝承されてきた日本の知恵のひとつだ。「生ゴミとして捨ててしまうことは避けたいけど、コンポストって、なかなか分かりづらいですよね。実際に体験いただくことでどんなものなのかを楽しく理解していただければ幸いです」と牧野さん。

また、今回は、マッシュグループのものづくりと共通点がある点から、次世代型ナチュラルエナジードリンクの「penta(ペンタ)」が出店。同イベントでの他社との協業も初の試みだという。


2階は、今回のメインビジュアルや各ブランドがデザインしたチャリティーTシャツの販売とお得なファッション&コスメアイテムの販売会場。ハートのロゴTシャツは、マッシュパークプロジェクトを代表するデザインのひとつだそう。ショッピングエリアは、いま着られる洋服やコスメをここだけの価格で販売し、福袋も用意。いずれも売り上げの50%がチャリティーに回されるという。この採算度外視なチャリティー企画に関しては、「純粋に楽しいイベントであることが重要なんです」とのこと。

さらに3階では、ヘアメイクアップアーティストのイガリシノブ氏が代表をつとめるコスメロス協会の協力のもと、廃棄されるコスメをクレヨンなどの画材にして、メインビジュアルのアヒルの絵に色を塗る「お絵かきワークショップ」のコーナーを展開。

牧野さんは「画材が安心安全であることはもちろん、ゴミになってしまう予定だったものが、素敵なものに変わる体験が感性を育んだり何かの気づきになればとても嬉しい」と話す。

3階のワークショップコーナーは、例年も人気のコンテンツで、多くの子ども連れが参加していた。

さらに、会場内の一画には、おむつ交換や授乳室のスペースも設置しており、「子ども連れの親御さんも、出来るだけ身軽に楽しめる空間にしたいと考えています」と牧野さんは話す。

新事業の「セサミストリートマーケット」

3階会場の一画では2023年11月30日(木)、池袋サンシャインシティにオープンした「セサミストリートマーケット」の世界観を、一足早く楽しめるお披露目会場を併設し、セサミストリートの人気キャラクター「エルモ」と「クッキーモンスター」も登場した。このセサミストリートマーケットはショッピング、カフェ、ワークショップを掛け合わせた複合施設となっており、世界 で唯一だという。

牧野さんは「セサミストリートは、色鮮やかで個性的なキャラクターを通して、ダイバーシティーや社会問題という重要なテーマ を自然と理解し、新しい発見に繋がる、広い意味での教育番組でもあります。“どんな生き方も間違いではない”“君が嬉しいと僕らも嬉しい という考え方をともに日本中にお届けしていきたい。だから、協業する意義がすごくあると思っています」と話す。

深かった7年

今回のイベントに関してマッシュグループ代表の近藤氏は「サステイナブルやエコロジー、パラアーティストのアートを通しての社会活動など、弊社は様々な取り組みを行っています。このチャリティーイベントは年に1回だけですが、7年間継続して続けてきました。災害の多い日本だからこそ、被災したエリアに何かしら行動を起こしたいという思いから、先駆けて約1億円をかけて女川町に子どもたちの遊ぶ場所をつくりました。町の復興に対して力になりたいという思いもあって、他にはないデザイン性豊かな公園を寄贈しました。7年間イベントを重ねることで、約9000万円のチャリティー金額を貯めることができました。今回のチャリティー金額の目標は850万円で、今回と来年でマッシュパーク 女川の総工費にようやく到達するんですよ。石の上にも7年ではありませんが、公園って大変だなという思いですね」と語る。

ちなみに近藤氏は、提供後にメンテナンスなどで自治体に負担がかかることから、その費用1億円を個人寄付で行ったそう。
「復興ってそんなに簡単なことではないですし、みんなの思いがしっかり持続できるようにという考えからです。この公園が町の象徴のひとつとして息づいてくれればいいと思っています。とにかく僕にとっては深い7年でしたね」。

次の構想に関しては、「女川町に対してまだまだやれることがあると考えていて、もう少しプラスになるような貢献ができればという思いから、しばし女川町に集中という感じですね。それに釣りもまだできていないので、1回くらいはやりたいです(笑)」とこのプロジェクトへの思いを話した。

また、今回初のお披露目となった「セサミストリートマーケット」に関しては、「セサミストリートは非営利団体で、売り上げに関してはすべて子どもたちのために寄付している団体です。非営利団体だからこそ、ビジネスに関しては、積極的に仕掛けられなかった事情もあるんですよね。今回、ソニー・クリエイティブプロダクツを通して、本国の団体とマッシュとパートナーシップを築くことで、世界で唯一の業態を生むことができました。ライフワークにセサミストリートのキャラクターのようなカラフルさを与えられたら、楽しい気持ちになれるのかなって。だから、コロナ明けに相応しいブランドのコンセプトとビジネスだと思っています。ちなみに、幼少期はセサミストリートのペンケースを使っていました(笑)」と締めくくった。

マッシュパークプロジェクトは、2日間の開催で子どもも含めて約2千人の来場者数があり、年々参加人数も増えているという。チケット代の800円(税込)は、売上全額をチャリティーとして公園の建設費に充てるとのこと。

これからも、まだまだ続くマッシュグループによるマッシュパークプロジェクトの構想。今後、この企画がモデルケースとなり、さまざまな企業が、さまざまな形で地方を盛り上げていくような流れが生まれてくることを期待したい。


写真/田村尚行
取材・文/カネコヒデシ(BonVoyage)

<イベント情報>

『MASH PARK PROJECT 2023』

開催日
2023年11月17日(金) 13:00~19:00
2023年11月18日(土) 11:00~18:00

場所
株式会社マッシュホールディングス1階・2階・3階
(所在地:東京都千代田区麹町5-7-1 麹町ダイビル)

入場チャリティーパス
価格:800円(税込)

関連リンク

カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。
WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。「Japanese Soul」主宰。音楽イベントの企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、イベントのオーガナイズ、ラジオ番組制作&司会、選曲、DJなど活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に駆け巡る仕掛人。

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