アクティビティウェアを通じてライフスタイルをサポート
ワールドフィットは2017年に創業し、パーソナルトレーニングジム「BEYOND Life Style Gym(ビヨンド ライフスタイルジム)」を開設。ジムとしては後発ながら、トップアスリートをはじめとするトレーナーによるパーソナルかつ専門的な指導で急成長を遂げ、現在は全国に168店舗を展開している。その軸となっているのが、「well-being(ウェルビーイング)」なライフスタイルのトータルサポートだ。ビヨンドは心身の健康やパフォーマンスの向上へ向けたトレーニング環境を提供し、そのモチベーションを高め、健康と毎日のライフスタイルの充実をサポートする「ラグジュアリーフィットネスウェア」としてジムの開設と合わせて立ち上げたのが「クロノス」だ。


ウェアは、身体を鍛え上げた人たちが快適に着られて動きやすいことを重視し、それを実現する素材やパターン、縫製にこだわり、ミニマルでスタイリッシュなデザインが大きな特徴。元格闘家の魔裟斗氏や元プロ野球選手の糸井嘉男氏をアンバサダーに起用し、俳優のモデル起用やインフルエンサーによる発信も話題を呼び、筋力トレーニングに取り組む男性や女性のファンを増やし、フィットネス以外のシーンにも共感を広げた。「トレーニング関係の方々に認知が広がった中で、現在はアスレジャーを網羅するアクティビティウェアとしての確立を目指している」とワールドフィット社。昨年以降はサイズとフィット感へのこだわりはそのままに、アイテムもカラー展開も拡大し、ミニマルでありながらタウンユースに対応するファッション性を高めている。
ショッピングを超えたイマーシブなブランド体験を提供
クロノスはデビュー当初、自社ECを販路としていたが、ブランド認知の拡大へ向け、18年から主要都市への常設店舗の出店をスタートさせた。23年にはジム運営で培ったノウハウを生かしてFC展開も進める一方、海外進出を視野にポップアップストアで好評を得たギンザ シックスにも直営店を出店した。25年に入ってからも梅田、鹿児島、富山、柏と5店舗を出店。満を持して、5月31日に旗艦店としてオープンさせたのが、「クロノス表参道店」だ。
表参道店は神宮前交差点を目の前に望む一等地に立地する路面店。キーカラーのブラックとイエローを配した2階までガラス張りのファサードは、高級感を感じさせるとともにクロノスの世界観を伝える。その4分の1ほどのスペースには最新の錯視技術を取り入れた大型LEDウォールをウインドーディスプレイとして設置。ダンスやカポエラの動きを学習したマネキンが自在に動く3D映像が映し出され、店内での未知の体験を予感させる。
売り場面積はブランド最大規模で、1階と2階を合わせ約200㎡。壁面や天井などに鏡を多用し、大理石調の壁やタイルの床の素材感と融合した空間の随所にブラックとイエローを差し込むことで、近未来な世界を演出している。石の階段はイエローで覆い、光の演出により一層の近未来感を生み出し、アミューズメントパークのようなイマーシブな体験へ誘う。ワールドフィット社は「クロノスの世界観を存分に体感できるよう設計された革新的な空間で、ショッピング体験を超えた新たな体験を提供したい」としている。
エントランスから見た1階のメンズフロア
鏡を多用し、随所にイエローを配した店内
メンズウェアの集積(1階)
階段は近未来に没入するような感覚
2階フロア。写真左側はウィメンズの集積
2階フロア。正面には「クロノスブラック」の集積
「機能性×快適さ×洗練されたデザイン」が支持
1階はメンズ、2階はウィメンズとゴルフラインで構成。オープン以降、メンズでは「今季は夏らしいブルーカラーを取り入れたTシャツなどのアイテム、通年ではけるロングパンツ、バンブー素材のセットアップなどが好評。機能性と快適さと洗練されたデザインを兼ね備えたアイテムが引き続き人気になりそう」という。
「CRONOS AIR STRUCTURE oversize S/S TEE(クロノス エアストラクチャー オーバーサイズ ショートスリーブティー)」は、クロノスらしい構築的な生地の切り替えが特徴。オーバーサイズのリラックスシルエット、素材は伸縮性と接触冷感機能を備え、軽量で通気性にも優れる。同素材でスキニーシルエットのロングパンツとのセットアップで、スタイリッシュな着こなしを楽しめる。「CRONOS Bamboo Pile Jacquard Logo S/S TEE(クロノス バンブーパイル ジャカードロゴ ショートスリーブティー)」は、環境に優しく肌触りの柔らかなバンブーパイル素材を使い、これからの季節にうれしい抗菌防臭、接触冷感、吸水速乾機能を施した。ジャカード織で表現したロゴが、シンプルなデザインに高級感を生んでいる。同素材のショーツとのセットアップは、スポーツやアウトドア、ワークアウト、さらにデイリーにも活躍する。
「クロノス エアストラクチャー オーバーサイズ ショートスリーブティー」(前)
「クロノス エアストラクチャー オーバーサイズ ショートスリーブティー」(後)
「クロノス バンブーパイル ジャカードロゴ ショートスリーブティー」
より気軽に素材感やスタイリングを楽しめるパックT「CRONOS 2PACK REGULAR CREW NECK T-SHIRT(クロノス ツーパック レギュラークルーネックティーシャツ)」は、クロノスの定番人気アイテム。クルーネックのレギュラーシルエット、無地のミニマルなデザインで、袖にさりげなく刺繍したロゴがアクセント。ストレッチ性と耐久性に優れた素材を使い、身体にフィットするカッティングでスマートな着姿を生む。2枚入りで1万1000円とリーズナブルな価格も魅力。

今春から展開を始めたのはコーデュラファブリックを使用したライン。摩耗や引き裂きに強い高強度ナイロンとして定評のある同素材を使い、「耐久性×軽量性」を両立したマウンテンパーカ「CRONOS Utility Hooded Jacket(クロノス ユーティリティーフーデッドジャケット)」を5月にリリースした。左胸にロゴをあしらった洗練されたデザインで、アクティブシーンにもタウンユースにも対応する。暑くなったら脱いで、付属の紐で背負って持ち運ぶことができる。8月には同素材を使った盛夏向けアイテムも登場予定。
電動二輪モビリティブランド「YADEA(ヤディア)」とのコラボ電動アシスト自転車も目を引く。昨年11月に発売したところ瞬く間に完売し、今年6月に再リリースされた。
ウィメンズは「以前はトレーニングウェアやセットアップが中心だったが、シャツなど普段にも着られるアイテムが増えた」。その中で、表参道店ではフィット感が強めのアイテムや短丈のアイテムが動いている。
「CRONOS WOMEN 2WAY LONG SLEEVE(クロノスウィメン ツーウェイ ロングスリーブ)」は、前後ツーウェイで着用できるコンパクトトップス。テレコ生地によるボディコンシャスなシルエット、脇と袖下の配色の切り替え、裾のラウンドカットを特徴とし、こちらもツーウェイで楽しめる。
タウンウェアとして着こなせるのは「CRONOS WOMEN 2LINE SHORT SHIRTS(クロノスウィメン ツーライン ショートシャツ)」。綿とポリウレタン混紡の新素材はしなやかな肌触りで、トレーニング後のお出掛けにぴったり。裾のアジャスターで気分やシーンに合わせてシルエットを変えられる。

「CRONOS WOMEN SWITCHED T-SHIRTS(クロノスウィメン スイッチトティーシャツ)」は、肩と肩から袖にかけて施した切り替え、程よく詰まったラウンドネックがおしゃれ。ショート丈ながら短すぎない絶妙なバランス感で様々なボトムスとのコーディネートを引き立てる。程よいショート丈のアイテムでは「CRONOS WOMEN PILE SHORT T-SHIRTS(クロノスウィメン パイルショートティーシャツ)」もおすすめ。パイル素材を使い、夏はもとより通年着用できるワンマイルウェアに仕上げた。着用時のシルエットの美しさを追求した1着だ。

ゴルフラインのクロノス ブラックは、同ブランドで最大規模の表参道店だけにジャケットやシャツ、パンツ、キャップなどフルラインナップを集積する。クロノス ブラックはクロノスのラグジュアリーラインとしてスタートしたが、「あらゆる色を混ぜ合わせたときに生まれるカラーであるブラック」はプレーヤーの個性がぶつかり合うゴルフに通じることから、24年4月に新たにゴルフラインとしてスタートさせた。
ディレクションを手掛けるのは俳優・タレントとして活躍し、ゴルフ番組のMCも務めるユージ氏。コレクションは通年で企画し、自らも本格的にゴルフを愛好するユージ氏らしく、プレーに適した機能性を確保しつつ、クロノスのスタイリッシュさに昇華させている。2年目の25年は長期化する夏を意識し、高機能素材を多用しているのが特徴だ。
「CRONOS BLACK Arcshell stand jacket(クロノス ブラック アークシェル スタンドジャケット)」は、悪天候時にも快適にプレーできるよう、透湿フィルムをラミネート加工した撥水生地を使用し、帯電防止機能も搭載。スタンドカラーとジップで冷たい風の侵入も抑える。クロノスが得意とする切り替えデザインは、プレーでもタウンでもスマートに着こなせる。「CRONOS BLACK AirRidge stand jacket(クロノス ブラック エアリッジ スタンドジャケット)」は、スポーティーなピステ風デザインを取り入れたウィンドブレーカー。撥水加工を施したリサイクルナイロンを採用し、環境への配慮も覗かせる。
ポロシャツにも「高機能×デザイン×環境配慮」を追求。ボディ全面にアートを描いたような「CRONOS BLACK splash print Polo(クロノス ブラック スプラッシュプリントポロ)」は、リサイクルポリエステルによるドライ鹿の子素材を使用。通気性はもとより、4方向へのストレッチ性、UVカットも備える。ウィメンズの「CRONOS BLACK WOMAN AirLoop Polo(クロノス ブラック ウーマン エアループポロ)」は、リサイクルポリエステルのダブル鹿の子素材による吸湿速乾性と通気性に優れた半袖ポロシャツ。左袖と背中央で生地を切り替え、モノトーンの配色でスポーティーかつ都会的なデザインに仕上げた。
「クロノス ブラック アークシェル スタンドジャケット」(左)と「クロノス ブラック エアリッジ スタンドジャケット」
ゴルフバッグも扱う。写真右上は「クロノス ブラック スプラッシュプリントポロ」
「クロノス ブラック ウーマン エアループポロ」
ブランドらしさ、日本らしさ、「ここだけの価値」を届ける
表参道店はオープン以降、20代から40代、50代以上の世代も来店し、訪日外国人客も多く、幅広い客層となっている。店舗デザインと呼応する「ブラック×イエロー」の店舗限定アイテムも好評で、メンズはオーバーサイズTシャツやロングパンツ、ウィメンズではショート丈Tシャツやロングパンツを中心にソックスやショルダーバッグなどが活発に動く。外国人客には「黒之須」の漢字Tシャツも人気。今後も新たなバージョンを展開予定だ。
幅広い客層を確保しているのは、92歳の現役トライアスリート稲田弘氏を起用したキャンペーンへの共感もあるだろう。クロノスでは稲田氏の挑戦する姿への共鳴から「さぁ、やろうか」をスローガンに掲げ、年齢や経験にとらわれず新たな挑戦を続ける人を応援するメッセージを発信している。表参道店のオープン前からファサード全面の仮囲いに稲田氏のビジュアルを設置し、話題を呼んだ。


今後も「日本らしいテイストの限定アイテムや、ブランドを体感していただく表参道店独自のイベントなどを企画し、ここでしか感じられない体験価値を届けていきたい」と同社。ワールドフィットでは、25年内にFCを含む10店舗の出店を計画し、7月には宇都宮にFC店をオープンさせる。
写真/遠藤純、ワールドフィット提供
取材・文/久保雅裕
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久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター。ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。元杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。