「次のコンビニ」の可能性を拓くファミリーマート初の旗艦店

ファミリーマートは創立45年の今年、「Next FamilyMart Project」を始動。「次のコンビニ」の可能性を追求し、具現化する新ブランドとして「FAMIMA(ファミマ)」を立ち上げた。クリエイティブディレクターとして迎えたNIGO○R氏との共創のもと「立地や客層に合わせた店舗・空間デザイン」「VMD(店舗体験)の新たなチャレンジ」「“次のコンビニ”らしいIPビジネス」「生活をもっと楽しく、もっと豊かにする商品」など、従来のコンビニエンスストアでは実現しきれなかった様々な挑戦を通じて「新たなコンビニ体験」を提供し、「わざわざ行きたくなるコンビニ」を追求する。その象徴として7月10日、ファミリーマート初の旗艦店「FAMIMA PARK AZABUDAI」をオープンさせた。

2026年7月10日にオープンした「FAMIMA PARK AZABUDAI」

店舗は独立した建物で、その建築と店内の売り場空間をインテリアデザイナー片山正通氏のWonderwall○R(ワンダーウォール)が手掛け、麻布台の街との親和性を生みつつ、従来のコンビニ店舗とは一線を画すデザインへと収斂させた。東京メトロ日比谷線・神谷町駅の地上出口からすぐの立地にあり、コンクリートのミニマルな外壁と開放的なガラスのウインドー、青と緑のFAMIMAのストアロゴが都会的な佇まいのファサードを構成し、加えて屋上に森をつくることで、麻布台の洗練された街と緑の多い環境と呼応する建築を出現させた。「屋上の森」の一角と中央には「F」を愛らしく表現したFAMIMA公式キャラクターを配置し、歩行中や高層ビルからも視認でき、遊び心を感じながら新たなコンビニへの想像を膨らませることができる。

「屋上の森」
麻布台の街と自然と呼応する建築を採用

入り口が開いてまず現れるのは、ポップアップコーナー。奥のレジカウンターはキオスクさながらに壁全面を使って商品を陳列し、支払いの直前まで選ぶ楽しさと発見のある買い物体験を提供する。飲食メニューに関しては、都市部で働く・暮らす多様な客層のライフスタイルに対応した中食としてのデリカテッセンや、麻布台店限定のコーヒーメニューやティーも開発。店舗の外からドリンクやフライヤー商品をテイクアウトできる「FAMIMA STAND(ファミマスタンド)」も設けた。スタンド前には公式キャラクターを造形したベンチを設置し、まさに「PARK」で過ごすようにフードやドリンク、コミュニケーションを楽しめる。新たな取り組みが数ある中で、「次のコンビニ」像を特に象徴しているのが「コンビニエンスウェア」売り場だ。

店舗に入らずテイクアウトできる「FAMIMA STAND」
店奥のレジカウンターはキオスクスタイル

店舗に入らずテイクアウトできる「FAMIMA STAND」

コンビニエンスウェアは2021年3月にファミリーマートのオリジナルアパレルブランドとしてローンチ。出張中や終電を逃したり、豪雨でびしょ濡れになったなど急に着替えが必要になったときに購入する「緊急需要」がメインだったコンビニ衣料のイメージをがらりと変えた。日本のコンビニエンスストアは、おにぎりや弁当など中食の開発はもとより、公共料金や税金の支払いを可能にしたり、ATMを導入するなど、社会や生活の変化に伴い革新を続け、街のインフラと呼ばれるまでに進化を遂げた。その中で緊急需要に対応してきたアパレルに着目し、「日常使いができて、来店の目的になる商品へ、さらに『コンビニで服を買う文化』の創出へと挑戦した」と、ファミリーマートのライフスタイル本部でコンビニエンスウェアを担当する須貝健彦さん。実現に向けてファミリーマートが選択したのは、クリエイターとの共創だった。
白羽の矢をたてたのは、ストリートモードを提案し、国内外でコレクションを発表してきたファッションブランド「FACETASM(ファセッタズム)」のデザイナー落合宏理氏。コレクションデザイナーとマス流通企業のタッグは、その意外性から話題を呼んだ。年間で約55億人が来店するファミリーマートで、ジェンダーや世代を超えて選んでもらえるアパレルをかたちにしていくため、コンセプトとしたのは「いい素材、いい技術、いいデザイン。」。ベーシックで汎用性の高いデザインと品質にこだわり、繊維に強い親会社の伊藤忠商事の生産背景を生かし、全国約1万6500店舗への供給で買いやすい価格帯を実現。アイテムもTシャツやパンツ、パーカ、スウェット、ソックス、ハンカチタオルなど多様に開発し、トータルコーディネートもライフスタイル提案もできる商品ラインナップへと拡充していった。24年からはコクヨと協業し、文具シリーズも開発・販売している。

「コンビニエンスウェア」のクリエイティブディレクターを務める落合宏理氏

最初に製作したのは、「ラインソックス」だったという。ファミリーマートのコーポレートカラーである白地に青と緑でラインを表現し、部位によって編み方を変え、足底は肉厚なパイル編みで頑丈に仕上げ、抗菌防臭加工も施した。価格は税込で429円。これがSNSで話題を呼び、シーズンごとの新色の投入やグローバルブランド、「フジロック」などとのコラボレーションも相乗して大ヒットした。ごっそりとまとめ買いをする外国人客も多く、コンビニエンスウェアのアイコンアイテムとなった。

大ヒット中の定番アイテム「ラインソックス」

「アウターTシャツ」もブランド初期からの人気定番アイテムだ。「アウター」というワードに、下着ではなく、1枚で着られるTシャツを作るという意志を感じる。USAコットン100%の生地を使い、縫製はもとより、トレンドのビッグシルエットを取り入れたサイズ設計、肩の落ち具合や袖丈の長さにもこだわった。抗菌防臭加工がつき、価格は1498円と千円台で購入できる。「暑さが年々厳しくなっていることから、今夏はより機能に寄った機能Tシャツも展開した」と須貝さん。表糸には吸水速乾性に優れたナイロン・ポリエステル混紡糸、裏糸には熱伝導性に優れ肌当たりが柔らかいナイロン糸を使い、成型編みで縫い目がないため肌に優しく、発汗量の多い箇所にはメッシュを配置した。一方、今夏は天然素材も充実させ、初めて綿麻生地によるシリーズを展開。開襟シャツ、イージーパンツ、シャツコートの3型を揃え、色柄はそれぞれブラックとストライプの2種類がある。シャツとシャツコートにはくるみボタンを採用し、高級感を演出。シャツとイージーパンツはセットアップも楽しめ、上下で6000円以下という価格も嬉しい。

定番の「アウターTシャツ」(くろ)
定番の「アウターTシャツ」(しろ)
綿麻シリーズの開襟シャツ(くろ) ※店舗によって取り扱いの無い場合あり
今夏から展開を始めた「機能Tシャツ」 ※店舗によって取り扱いの無い場合あり
綿麻シリーズのイージーパンツ ※店舗によって取り扱いの無い場合あり
綿麻シリーズの開襟シャツ(ストライプ) ※店舗によって取り扱いの無い場合あり
綿麻シリーズのシャツコート ※店舗によって取り扱いの無い場合あり

この2、3年ではファッション雑貨にも力を入れている。ブランド立ち上げ当初から展開しているタオルハンカチは今治製で、ファミマカラーのグラデーションや和の千鳥柄、ポップなドットなどの定番柄に加え、1~2カ月ごとに新柄も投入。「コンビニエンスウェアの中では柄を前面に出せる数少ないアイテム。タオルハンカチを一つのメディアとして捉え、多様なデザインを表現している」と須貝さん。普段使いにリピート買いする人が多く、お土産として購入する人も多い。
昨年発売し、好調を続けているのは「コンビニサングラス」。ウェリントン型とボストン型を融合した「ボスリントン型」のオリジナルデザイン。フレームは再生プラスチック、UVカット率99.9%で光の乱反射を抑える偏向レンズは植物由来のトリアセテートで成形した。黒1色だったが大ヒットし、「目の健康に対する意識が高まる中で、様々なメディアでも取り上げられ、発売以来好評いただいている」。今年7月にはスクエア型も投入した。4月に発売して早々に完売となったのは、シチズンと共同開発した腕時計。時計機能に絞り込み、文字盤は子供から大人まで使える小ぶりなサイズ、白と黒の2色展開とシンプルシックなデザインに仕上げた。税込1998円とリーズナブルで、「お子さんのファーストウォッチとしてもお薦め」の一本だ。

  • 「今治タオルハンカチ」(コンビニグラデーション)
  • 「今治タオルハンカチ」(ドット)
  • 今治タオルハンカチ」(千鳥)
  • 「コンビニサングラス」(ボスリントン型) 
  • 「コンビニサングラス」(スクエア型) 
  • シチズンと協業した「腕時計」。好評につき9月頃に再販する

約1万6500店の店舗をメディアに、ブランドの世界観を発信

コンビニエンスウェアは現在、全国のファミリーマート店舗で展開し、約100型のウェアや雑貨を販売している。売上高は毎年130%超の勢いで伸び、25年度には200億円を突破した。「店舗というインフラがあるからこそ、5年間でこれだけ成長できた。1店舗、1店舗がメディアなんですね。店舗に入ってすぐの売り場でコンビニエンスウェアを展開し、トップボードなどのビジュアルや販促物もこだわり、ブランドの世界観を伝えています。1日に約1500万人が来店されるので、ビジュアルプレゼンテーションは妥協することなく追求している」と須貝さんは話す。その発信の起点となるのが麻布台のファミリーマート旗艦店だ。

FAMIMA PARK AZABUDAIのコンビニエンスウェア売り場のウインドー

FAMIMA PARK AZABUDAIは約217㎡の売り場を持ち、その中でコンビニエンスウェアブランドとして国内最大級のエリアを設けた。ブランドのシーズンコレクションと通年で提案する定番、さらに旗艦店限定のアイテムの計約300アイテムを展開する。通常店舗には無いアイテムとの出会いも旗艦店ならではの魅力だ。オープニングでは旗艦店限定として、前述したFAMIMA公式キャラクターのアイテムに加え、撥水加工・UVカット機能を備えたノースリーブワンピースなどを揃えた。旗艦店限定ビジュアルも制作。モデルに俳優の浅野忠信氏を起用し、数々の映画や広告で独自のクリエイティビティーを発揮してきた北村道子氏がスタイリングを担い、国内外のファッション誌やポートレートで活躍するフォトグラファーの荒井俊哉氏が撮り下ろした。店内壁面にその大型ビジュアルパネルを掲示し、ブランドの理念である「じぶんを愛そう。」のメッセージと共に世界観を表現した。

浅野さんをモデルに、北村道子氏がスタイリングし、荒井俊哉氏が撮影した旗艦店限定ビジュアル
浅野忠信氏をモデルに起用した大型ビジュアルパネル。アウターTシャツと綿麻シリーズのストライプパンツのコーディネート
旗艦店限定のテーラードジャケット
旗艦店限定のノースリーブワンピース

商品を透明パッケージ入りで提案するスタイルは、コンビニエンスウェアではすでにお馴染み。コンパクトなスペースながら、カラーバリエーションも豊富なアイテムの入ったパッケージが床から天井まで壁一面の什器棚に整然と並ぶ光景はインパクトがある。商品名やブランドロゴはもとより、使用した素材やサイズ、洗濯表示などが日本語と英語で併記され、その文字を含めたメディアとしてデザインされている。通常はこのパッケージでスペックを確認し、そのままレジで購入するが、旗艦店ではもう一歩踏み込んだ買い物体験を用意した。素材の質感や色などを確認できるようハンガー陳列を取り入れ、シーズンコレクションや旗艦店限定アイテムなどの全身コーディネートを提案するタッチパネルや試着室も設け、コンビニエンスウェア専門のスタッフも常駐する。

麻布台店ではハンガー陳列も導入
各アイテムのカラー展開が鮮やかな壁一面のディスプレイ
店奥には試着室も設置
コーディネートを提案するタッチパネル(写真右下)

旗艦店は初日にファミリーマートで過去最高の売り上げを記録し、以降も計画を上回る数値で推移。コンビニエンスウェアも、「日本人客と外国人客による買い上げがほぼ半々の割合で、展開している商品量の多さもありますが、通常店舗を大きく上回る売り上げです」と須貝さん。店舗空間と商品、それぞれのクリエイティブのシナジーといえるだろう。今後、FAMIMAブランドは都心部に2、3店舗の出店を予定し、コンビニエンスウェアも立地特性に応じた商品構成で展開していく考えだ。
一方、海外展開も本格化する。24年11月には台湾に進出。現地のファミリーマート約700     店舗でコンビニエンスウェアの販売をスタートし、現在は約1400店舗に拡大している。「台湾でもラインソックスを履いている人を見かけるようになり、ブランドが浸透してきているのを実感します。コラボアイテムの発売日には行列ができたりと、熱狂度の高いファンが多い」という。日本のコンビニ発のアパレルブランドとして「コンビニで服を買う文化」のグローバル化を着々と進めている。

写真/ファミリーマート提供
取材・文/久保雅裕

関連リンク

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター。ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。元杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

Journal Cubocci

一覧へ戻る