時代変化の中、ライフスタイルショップとして進化
メンズ・ウィメンズアパレルを軸にファッション雑貨やインテリアなど多様なカテゴリーを手掛け、SPA(製造小売業)型企業として成長してきたアバハウスインターナショナル。ライフスタイルの多様化に伴い、2001年にインテリア雑貨と家具をメインとするセレクト型ライフスタイルショップとして出店したのが「コレックス リビング」だ。アパレルで経験を積んだ社員が次に活躍できる場作りも意図し、別会社の事業として始まった。
collexとはcollection(蒐集)とexhibition(展示)を組み合わせた造語。北欧モダンのデザインと機能性を兼ね備えたプロダクトで世界的に支持を得ていたスウェーデンのインテリアデザイングループDavid Design(デイヴィッドデザイン)と提携し、目黒区青葉台の旧山手通り沿いに出店すると、話題のインテリアショップとなった。その後、買い付けは世界各地に広がり、ビンテージ物も扱うなど、独自のミックスによるライフスタイル提案で支持を集めた。
06年からはより日常生活に寄り添うMDへと改変。アパレルを充実させ、セレクトに加えてオリジナルのアイテムも投入し、買いやすい価格帯のファッション雑貨や生活雑貨も複合したライフスタイルショップ「エブリデイ バイ コレックス」へと進化させ、新たな商業施設が続々と開発される中で店舗数を増やした。10年からはコンパクトなスペースに「楽しい×便利」の観点でセレクトしたアイテムを軸とする「コレックス イン」も展開し、SCやエキナカなどに出店した。コレックス リビングは11年にエブリデイ バイ コレックスに転換し、代官山アドレス・ディセに移転。現在の半分ほどのスペースで売り場をスタートさせた。
拡大基調にあった頃に起こったのがコロナ禍だった。小売業にとって厳しい状況が続く中、「店舗数を絞り込み、代官山アドレス店を旗艦店としてMDの再構築を進めた」と佐藤靖智コレックス事業部長は振り返る。富裕層をメインターゲットに設定し、「心地良い暮らしを提案するライフスタイルショップ」へと舵を切り、アパレルやファッション雑貨、テーブルウエア、インテリア雑貨、フレグランスなど、作家や職人の手仕事によるプロダクトを含め、ギフトを重視したMDを強化した。21年には代官山アドレス店の全スペース、約250㎡に増床し、店名も「コレックス」へと変更。現在は都内に3店舗、名古屋、大阪、京都に各1店舗を出店している。
インテリアは世界各国からセレクト、毎月のポップアップも魅力
店舗の立地や客層に応じてカスタマイズしたMDを展開している中で、ほぼフルラインナップを提案しているのが代官山アドレス店だ。ストアコンセプトは、「古くから受け継がれ伝わってきたもの、今の気持ちに溶けこむもの、この先もずっと傍に置きたいものと、過去から未来へとつながり、日常がより豊かになるアイテム」を提案すること。ファッションもインテリアも手仕事が入ったプロダクトを多く揃え、生活シーンを想像させるVMDにより空間にリラックスした時間の流れを生んでいる。
「インテリアに対する日本人の意識や価値観はこの20年余りで大きく変化しました」と、コレックス リビングだった時代を知る、現在はアパレルのディレクターを務める福元ちひろさん。「当時はアメリカのミッドセンチュリーモダンと北欧モダンの2軸があり、どちらが好みかという感じ。今は暮らしの楽しみ方が個々人にあり、お客様自身が様々なテイストやブランドをミックスするようになっています。魅力あるミックス感をどう売り場として表現するか、創意工夫の積み重ねがライフスタイルショップとしての個性になっていくと思う」。
「インテリアはヨーロッパを中心に世界各国からセレクトし、ファブリックではオリジナルアイテムも3割ほど展開しています」と話すのは、インテリア雑貨のディレクターを務める深川智子さん。リビングやダイニング、バス用品、フレグランス、ケアグッズなど多岐にわたる中で、強化しているのがファブリックだ。クッションやマルチカバー、ラグなどのアイテムを売り場の随所に配置し、オリジナルやビンテージの生地を吊りで展示することでデザインバリエーションを見せる。
ビンテージのファブリックやクッション、ラグ、食器、古家具は、代官山アドレス店のみの取り扱い。「古いものを入れることで新しいものの価値も実感される。そうなってほしいという思いでビンテージ物をセレクトしています」と深川さん。取材時には、テーブルウエアではフランスで買い付けたビンテージ食器やドイツ製のビンテージフラワーベースが陳列されていた。一品一品にプロダクトの由来などを紹介するPOPが付され、読みながら博物館のように散策するのも楽しい。無垢材を削り成形したインドネシア製の家具「GARMET(ガーメット)」は、椅子としても、テーブルとしても使え、オブジェとしても映える。代官山アドレス店ではそのアンティークを揃えた。
売り場の中央ではコレックスが注目するブランドやテーマに基づいて編集したMDによるポップアップを毎月、20日間ほどにわたり展開する。
例えば、今年7月にはエスプリが効いたフランスのブランドにフォーカスした「The French Edit POP UP(ザ フレンチ エディット ポップアップ)」を開催。フランス北部・ピカルディ地方に伝わる幾何学模様をインドの伝統技術で織り上げたスカーフを提案する「moismont(モワモン)」、天然素材を使い洗練された遊び心を表現するフランスのハンドメイドジュエリーブランド「LITCHI(ライチ)」、最高級のエジプト綿をフランス独自の編機で絵画のように編み上げるソックスブランド「Bonne Maison(ボンヌ メゾン)」、自然の素材と伝統的な技法で現代の日常に馴染むデザインのカゴやバッグを生み出す「Bagatelle FRANCE(バガテル フランス)」、使用済のワインボトルを新たなデザインのテーブルウエアへとアップサイクルする「Q de Bouteilles(キュドブテイユ)」の5ブランドで構成し、各ブランドからセレクトした夏を楽しむアイテムを提案した。
8月には化学素材メーカーの小松マテーレが手掛けるサステイナブルブランド「mate-mono(マテ・モノ)」を特集。「もったいないを、みたことないにかえる」をテーマに、素材の製造過程で出る端材など廃棄せざるを得なかった生地を生かし、製作した同ブランドのプロダクトを揃えた。遮光カーテン素材の光沢がある裏面を表に使用した「ひかるバッグ」、屋外スタジアムの観戦シートに使われる特殊素材の余剰分を生かした「つよいバッグ」など、各アイテムの背景にあるストーリーも興味深い。
このほか、コレックスが取り扱うプロダクトの作家を招いた個展も随時企画している。今年は6月に陶芸作家の児玉修司さんの個展を開催し、好評だった。9月にはシンプルなデザインとマットな質感の器が人気の陶芸作家・馬場勝文さんの個展を予定する。
アパレルはオリジナルを軸に、独自の服作りを追求するプランドをミックス
多様なプロダクトが混在しているのはライフスタイルショップならではの楽しみだが、コレックスはアパレル企業を母体とするだけに、オリジナルを中心とする洋服が充実しているのも魅力だ。ファッションをライフスタイル提案の中にしっかりと位置づけていることが感じられる。
「ファッションコンテンツが無いライフスタイルショップもある中で、コレックスのアパレルはシーズンごとにトレンドを分析し、打ち出していく方向性を練り上げています。その情報をもとにオリジナルアイテムを作り、バイヤーと共有して洋服や小物をセレクトしている」と佐藤さん。品番数は現在、オリジナルが7割ほどに拡充し、服作りに独自のこだわりを持つブランドのアイテムをセレクトで入れることで、コレックスらしい服の世界が売り場に体現される。定番アイテムが多いのも特徴的。「ベーシックなTシャツやシャツ、デニムなどのパンツはリピートするお客様が多く、最低でも7~8年間は同じ型をプロパー価格で継続する」と福元さん。セールにかける品番は絞り込み、できる限り正価で提案し続ける姿勢はコレックスアパレルの信条といえる。
今春夏の人気アイテムの一つは「エアリーローンオーバーシャツ」。100番手の極細糸で織り上げたコットンローン生地は、ほのかな透け感を醸し出し、さらりとした肌触りを生む。軽やかな素材感を引き立てる背中のヨーク切替えとタックによるドレープ、自然な抜け感を演出する前後差のある着丈も魅力。タンクトップやノースリーブワンピースに羽織るだけでレイヤードスタイルが決まり、暑い季節も快適に過ごせ、初秋の軽い羽織りとしても活躍する。自宅で手洗い可能なのもうれしい一着だ。「カットワーク刺繍サイドリボンベスト」は定番のTシャツとのコーディネートが好評。コットン100%の生地を使い、ボタニカル柄をインドの職人がカットワーク刺繍で表現した。存在感のあるデザインながら、Vネックを深めにとることで顔まわりをすっきりと見せ、軽やかな印象を生む。サイドにリボンを施すことで重ね着もしやすく、背面のギャザーもデザインポイントだ。
セレクトでは前述したようにエッセンシャルな服作りを追究する粒選りのブランドが揃う。ニットアイテムは象徴的で、今春夏は2ブランドから厳選した。「Boussole(ブソル)」は、「一本の糸から始まる表現」をコンセプトに、糸作りに始まり一着一着の世界を編み上げていくニット専門ブランド。異なる編み方やカラーリングでボーダーを表現したタンクトップなど緻密な設計によるアイテムが揃う。「enrica(エンリカ)」は、日本の天然素材、草木染めなどその土地で育まれた技術や伝統に今の感性を組み合わせ、丁寧に作り込んだ服を特徴とする。コレックスでは、今季コレクションからニットアイテムに絞り込んでピックした。「いずれのブランドも固定ファンがいて、一目惚れするお客様もいます。アルチザン的なものが好きなお客様に好評」という。
コレックスになって以降、幅広い客層を集客、進む顧客化
コレックスとして歩み出して以降、店舗によって客層の中心世代は異なるが、新規の女性客を増やしながら顧客化も進んでいる。「セルフで購入するスタイルのエブリデイ バイ コレックスの頃と比べ、MDと接客を通じて店にお客様が着いてきているのを実感する」と佐藤さん。特に代官山アドレス店は40~50代を中心に、週末はより幅広い客層が来店するようになった。「何度も足を運ばれるお客様が多いという印象を持っています。買い物をするという気持ちではなくても、ここにいると癒される、楽しいという感じで来店されます」と福元さん。ストーリー性のあるプロダクトを集めたポップアップを長い期間開催していることも、来店頻度を高めている一因だろう。また、ギフトを目的とする来店客も多く、「初めて来店して品揃えを確認し、その後も何度か来店して思い描いていたものと出会うということも、最近は多くなりました」と深川さん。女性客が9割ほどを占めるが、ギフト需要では男性客も訪れる。
今後は新たな出店も視野に入れる。とはいえ、一気に成長を目指すのではなく、コレックスのコンセプトとMDと販売スタイルを着実に実践していける環境を最重視し、ライフスタイルショップとしての世界観を体現できる規模も考慮しながら、「慎重に進めていく」。その一環として今年5月、コレックスとしては初めてディベロッパーやメディアに向けた展示会を開いた。会場は営業中の代官山アドレス店。売り場の3分の1のスペースを使い、26-27年秋冬シーズンのテーマを体現したVMDでコレクションをお披露目した。物販のスペースを割いて行った展示会だったが、コレックスのコンセプトを体感できる空間は来場者の好評を集め、「これから」へ一歩を踏み出した。
写真/遠藤純、アバハウスインターナショナル提供
取材・文/久保雅裕
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久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター。ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。元杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。