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――前作『WHALE LIVING』から2年7ヵ月、この間、畳野さんのボーカリストとしての活動などもありましたが、いつも堂々としているなと思いながら見ていました。

福富優樹「彩加さんに関してはASIAN KUNG-FU GENERATIONのゲストでフジロックのグリーンステージや京都音博にも一人で出たり、くるりのレコーディングに参加するとか、そういう一つひとつの出来事で、どんどんどんどんボーカリストとしての自覚みたいなのが生まれていってるなという気はします。それは今回の歌入れで、全然今までと違うなと思ったし、ライブでも堂々としてるなっていう感じは見てて思いますね。僕自身に関していうと、この2、3年もそうだし、メジャーデビューするっていうのもあるし、自分の発言とか自分の作品が持ってるメッセージとかそういうものに責任を持つというか、自覚的になろうっていう思いはすごい強くなったと思います」

――この間、メンバーが東京と京都で離れていた期間もあったわけですけど、バンド活動としては歯痒かったりはしませんでしたか?

福富「そこまではなかった気がします。最初は彩加さんが一人で東京に出て、僕たち3人が京都にいるって状況で。関西でライブがあるたびに一日早く前に来て練習してとか、僕らが東京に行って練習するっていうのが、1年ぐらいは普通に続いてたんで、そこに対して、やりづらいなとかあんまり思ってなかった気がしますね。まあ、僕らはなんですけど、彩加さんは1対3なんで、寂しい思いはしてたんかな(笑)」

畳野彩加「割とメンバーが近いところにずっといるのが当たり前だったんで、東京にライブ来たら、みんなが車で京都に帰っていく時とか、生活しててもふとした瞬間、メンバーも友達だと思ってるので、近い人たちがすぐに行ける距離にいないっていうのは不安というか――なんかそこまで気にしてなかったんですけど――ちょっと日常的にも寂しさが大きかったというか……そういう感じはありましたね」 ――そのタイミングと去年からのコロナ禍は重なってるんですか?

福富「僕らが全員、関東に揃ったのは2019年の秋なんで、ほんとコロナ禍になるちょっと前って感じで、すぐこういう状況になったんですけど、逆にそれまでの1年間とか離れて制作を始めてたんで、そこはいい意味でいうと、あたふたするとかはあんまりなかった気がします」

――流動的であるということが今回のアルバムのテーマになってる気がしますね。

福富「そうですね。そう思うと、京都っていう街も一つこう、テーマの中に入ってるって気がしますね」

――面白いです。Homecomingsも上京するんだとも思いましたし。逆に最近は地方在住のままで活動できるから。それこそ今回、参加しているNOT WONKの加藤修平さんみたいに。

福富「もちろん、僕らもそういうシーンというかいろんな各地にローカルシーンがあって、それが面白くなってるというところから出てきた部分はあって、京都を出どころにしているっていうのは一個、バンドのアイデンティティじゃないけど、Homecomingsの後ろに“京都”ってつくような状況で出てきたところもあるんですけど。2018年に京都アニメーションの主題歌とか、京都新聞との仕事をやるようになったり、α-STATIONでレギュラーも始まってたし、地元にいたからこそできるような活動とか仕事をいっぱいやって。多分そのままそこにい続けることはできたと思うんですけど、それをやったからこそ、逆に僕らはどこにでも行けるなって気になったんだと思います」

――今回、アルバムは芯の強さがすごいなと思ったんです。普通にリスナーとしてアルバムの配信開始のタイミングでサブスクで「Here」を聴いたんですね。その時、こんな最高なバンドアンサンブルは世界でもあんまりないんじゃないかと。

畳野/福富「ありがとうございます」



――おふたりも手応えがあるんじゃないですか?

福富「結構、リモートで作り上げたアルバムにはなるんですよ。スタジオには入れなかったんで。4人で音出してっていうよりかはそれぞれ自分のフレーズを足したりしていくっていうので、逆に自分たちのグルーヴじゃないですけど、逆にそれが分かりやすくなるというか、自分たちがそれぞれが思う、こうしたらグッとくるなとか、いいなと思うことを全部詰め込めたような気がしてて。それをしたから逆にバンドっぽくなくなったとか、Homecomingsっぽくなくなったとか全然なくて。演奏する形とか、作る形が変わっても、全然、Homecomingsやし、特にこの「Here」って曲は今までの集大成的な感じでもありつつ、新しさもあって、バンドのアンサンブルって面でも、いろんな音の配置とか今までの感覚で、さらにそれを突き詰めれた曲なので、「Here」って曲は一つ大きな大切な曲やなって感じはしますね」

――素朴な疑問なんですけど、畳野さんは最初、どれぐらいのデモを作るんですか?

畳野「デモはそうですね……先に福富くんの歌詞があって、ある程度のイメージがあってから曲を作るので、なんかその分は作っていくって感じなんですけど、その中でのメロディのパターンみたいなのはすごく多くて。今回は前作の『WHALE LIVING』に続いて、日本語詞っていうのをやってるんですけど、今回もっともっと言葉とメロディみたいなのを意識して作ってたので、トミーの歌詞の聴こえ方がもっと良くなる方向にメロディを作っていくっていうのをメインに考えてました。デモは歌詞がある分、って感じなんですけど、その中でのパターンっていうのがすごく多かったですね」

――なるほど。例えば畳野さんは「Here」で福富さんが書いた歌詞の何を膨らませていくというか、何を大事にしたいと思いましたか?

畳野「空気感というか、やっぱり聴いて情景が浮かぶ曲が私は好きなので、それが一番イメージできるような感じにしたいなというのと、歌詞の中でも光とかそうワードが浮かんでくると思うんですけど、そういう朝の夜明けの光だったり、そこの澄んだ空気感とかそういうのを音で表現できたらなというのは結構、意識はしました」

福富「彩加さんの曲って、僕が歌詞を書いた時点で大体、時間帯がある感じというか、朝っぽいとか夜っぽいとかがあるんですけど、それを“こうこうこういう風に夜っぽくして欲しい”とか言わずに渡すんです。それでも彩加さんから返ってくるデモが最後まで完成しきってなかったりしても、どの曲もちゃんと時間帯が合ってるというか。「Here」なら、夜明け、深夜から夜明けの時間帯ってイメージで書いたものがちゃんとサウンドもそうなって、メロディもちょっとしたフレーズも、そういう時間帯になってるんで、それがやっぱ彩加さんの才能すごいな、と思うのはそういうコンビネーションというか、もしかしたらこの二人だからできることかもしれないし、そこら辺はまだ試してみたいというか。なんか一個、作家チームとしていいものができてるなって気はしますね」

――前作はお伽話っぽかったですが、今回はいろんな人が聴いて割と自分の日常に近いと感じるのかなと思いました。

福富「そうですね。『WHALE LIVING』はフィクションというか――例えば自分たちのメッセージを伝えたい時に一つの長編のストーリーを考えて、そこからいろんな風景とか場面を切り出して作ったアルバムなんで――ファンタジーっぽい感じはするアルバムだったんですが、『MOVING DAYS』は自分たちが暮らしてる社会のこととか、日常のことをそのまま写真に撮るみたいな感じで、曲にしていったんで、『WHALE LIVING』も地続きなんですけど、より生活って感じをすごく意識して作りました」

――アルバムの収録曲は映画『愛がなんだ』主題歌の「Cakes」のアルバムバージョンなど、原曲は2019年にリリースされたものも入っていて、制作スパンが長いですよね。

福富「そうですね。結構、引越しする前、引越ししたあとの生活っていうのを一筆書きじゃないですけど、全部ずーっとカメラ回してたってイメージですね」

――なるほど。「Cakes」では福富さんはどんな恋人に対しても居場所のある歌詞を書かれたのかなと思っていて。

福富「“僕”とか“私”という一人称を使わずに作るっていうのは「Cakes」を作る時に意識したことで。映画の曲を作るにあたって、完全に書き下ろしの曲なんですけど、あの映画の中では男女の恋愛を描いてて、でもそれを観にくる人がみんな、なんかそういう恋愛をするわけじゃないやろうし、おこがましいですけど、一個、映画にそういう広さっていうものを付け足したいなって思ってて。映画が見られれば見られるほど、ちゃんとそこに責任があるなって気はしたんで。全然、監督とそういう話をしたわけじゃなくて、言えば僕が勝手にしたことなんですけど、そういう作品が一つでも世にあればいいなと。アメリカから入ってくるものとかはそういうのが多くなってきてるし、Netflixの作品とかも当たり前のようにそういうものに配慮があるんですけど、日本の音楽でもなんでも、まだやっぱりそういうとこまでは行けてないって言い方はあれですけど、それがまだ当たり前にはなってない気がするんで、このアルバムもそうやし、『愛がなんだ』って映画もそうやし、「Cakes」って曲もそうやし、そこはすごくそういうものを一個でも多く存在させるっていう思いで作ってますね」

――確かにこの2、3年は社会的なことが若い人にとって身近になりましたね。LGBTQのことにしても、ジェンダーに関することにしても。

福富「それは映画とかの力が強いなと思う。カルチャーの力みたいなのがすごい大きいなと思うので、そこに自分たちもちゃんと参加したいというか、それはこの時代にものを作ってる人としては思いますね」

――メンバー間で、このアルバム制作中に話題になったイシューや本や映画はありましたか?

福富「ドラマは「セックス・エデュケーション」とか映画『ハーフ・オヴ・イット:面白いのはこれから』とかはすごく話題に上がったし、あと、BTSをみんながすごい好きになって。Black Lives Matterにいち早く声明も出してるし、そういうところもちゃんとしてるとか。日常会話として4人の中に出てくることで、そういう話がすごく多くなってた気がします。だから、別にこのアルバムを作るにあたって、僕がこうこうこう思ってるからこうですというよりかは4人がちゃんと共有できてる感じがすごい良かったなと思いますね」

――そして事務所の先輩にもなったYOUR SONG IS GOODのサイトウジュンさんは全体の共同プロデューサーではないんですか?

福富「「Moving Days Pt.2」の1曲だけプロデュースしていただいてて。最初は演奏で参加していただけたらなって話だったんですけど、せっかくやし、そういう作業したことなかったので、丸ごとお願いできたらなってことで。もともと、YOUR SONG IS GOOD、SAKEROCK、ceroって昔からめちゃめちゃ憧れてるバンドで――角張さんもそうやし――こうやってレーベルに所属になったこと以上の関わりというか、音楽を一緒に作るっていうことができたのは嬉しかったですね」

――ジュンさんとのレコーディングはどんな感じでしたか?

畳野「レコーディングはジュンさんがこの曲の細かいところまで、考えてくれて。自分だとここまでしないなってところまで細かく入ってくれてたので、どんどん任せていけるというか、委ねて行ってた感じなんですけど、自分で作った曲がどんどん良くなってる実感があって、それを感じながらのレコーディングだったので、全員がワクワクしてできてるレコーディングだったなっていうのは思います」

――ジュンさんが参加してるのは「Moving Days Pt.2」のみですが、アルバムの中に割とソウル的な要素が見えて、例えば「Good Word For The Weekend」にはフルートが入っていたり、モータウンビート的で新鮮でした。

福富「今までのHomecomingsっぽさもあるし、常に変化もしてたいし、自分たちがその時好きな音楽をちゃんと取り入れていきたいっていうのもあって、そこでレックス・オレンジ・カウンティとかキャロル・キング的ソウル感っていうのが、ちょうど良かった、バッチリハマってたような気がしますね。違和感があんまないというか。ポップスとしてのソウルというイメージはすごいありますね」

――「Tiny Kitchen」のビート、これは誰のアイデアなんですか?

畳野「これはアルバムの中で、一つ、最初は弾き語りみたいなポジションの曲を作るっていうので作ってた曲だったんですけど、打ち込みっていうのを今まで挑戦したことがなかったのと、ずっとやってみたかったことで、ちょっと頭の中の隅にあったことだったんですね。それで、このデモのやり取りの中で、ドラムのなるちゃん(石田成美)が結構、打ち込みができるっていうのがわかってたんで、ちょっとこの「Tiny Kitche」で入れてみてっていうのをお願いしたら、本人もすごく楽しんでやってくれて、それがどんどん曲が良くなって行ったことも、初めての打ち込みっていうところで大きかったと思います」

――音数はミニマムなんですけど、それが逆に効いてますね。

畳野「そうですね。結構、食器の音だったりいろんな音も後半から入ってきたりとかするので、そういうちょっと面白い要素も含まれてるっていうのも良さの一つだと思います」

――そして「Herge」はNOT WONKの加藤さんがギターで参加しています。先日公開されたアコースティック・セッション動画では黙々と弾いてましたが。

福富「そうですね(笑)。なかなか手数も多いし、自分たちだけでやってたらないようなフレージングとか、隙間を埋めていく感じは面白いし。それはすごい面白かったです。なんか僕が埋めていく方じゃない隙間を埋めていくタイプのギタリストって感じで、裏表になって、それが重なるとすごい気持ちいいアンサンブルになってると思います」

――バンドのNOT WONKというより加藤さんと知り合った感じなんですか?

福富「もともとはバンドとして昔からやってて。でも加藤くんがどういう音楽聴いてるかは知ってるし、NOT WONKのアルバムとかあの音楽性だけが加藤くんではないし、ソロもいっぱいやってたりするし。そういうとこで、ソウルっぽいものやるって時に、加藤くんにお願いしました。それは別にNOT WONKとかで聴けないけど、加藤くんにきっとあるやろうなってとこで、一緒にやることで、Homecomingsにとっても加藤くんにとってもなんかのきっかけになればと思った気はしましたね」

――聴いた人がいろんなルーツに行けたりすると思います。そういう意味でも長く聴けるアルバムなのかなと。

福富「そうですね。長く聴いて聴くたびに何か発見があるような感じになってくれたらいいなと思いますね」

――そして7月のツアーはできるといいですね。

福富「そこは無理せずというか、無理してやるようなものじゃないという気はしてるので。健康を第一に判断したいと思いますね」

――お客さんを入れたライブはやっているんでしたっけ。

福富「僕らは要所要所でできてて、タイミング良く、去年の12月もそうやし、4月も2本、羊文学と開催したライブもできたんですよ。でも、それはたまたま運がいいだけで、周りの友達とかは中止になっちゃったりしてるんで。僕らはどっちかというとライブしてなかったら、うわぁって、落ち込んでしまうタイプではないっちゃないんで、無理やりやらないようにしたいし、配信でもいいし、こないだのアコースティックセッションもそうで、直接的なライブじゃないものをたくさん作って、提供するっていうのも一つのバンドのあり方なのかなと思うので、そこらへんは状況を見つつ進めていきたいですね」

(おわり)

取材・文/石角友香





■「音ナ図鑑」113頁目 5月31日(月)~6月6日(日) のゲストはHomecomingsの福富優樹と畳野彩加!(musice.usen.com)


■Homecomings"Tour Moving Days"
2021年7月17日 (土) 名古屋 CLUB QUATTRO
2021年7月18日 (日) 梅田 CLUB QUATTRO
2021年7月23日(金) 渋谷 CLUB QUATTRO
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