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――『C3』以降、ツアーがままならなかったと思うんですが、バンドのテンションはいかがでしたか?

「受け止め方はメンバーそれぞれなところはあって。ライブに対しての温度感なども3人それぞれ違ったりするので、そこはよくよく話し合いました。一個前のライブも、状況を見て元々は有観客の予定だったのを無観客で配信のみにしましょうとか、途中でそういう転換をせざるを得なくなったりしたんですけど、その時もできるならやりたいって言ってるメンバーもいましたし……って、他のふたりの話ですけど(笑)」

――小出さんは違ってたんですか?(笑)

「お客さんの前でライブできる貴重な機会だから、そりゃやりたいとは思ってます。だけど、それよりも興行を打つ側の立場として、やっぱり当時は一日1000人とか感染者が出ちゃったピークの時だったんで、リスクの方が大きいなと。会場に着くまでに皆さんおうちから移動して、その間で感染しちゃうかもしれない。そう思うと、ライブやりたいっていう気持ちもわかるけど、ここはもうちょっと大きい目で見て、考えて、ゆくゆく機会はあると思うから、そこに備えて、改めて準備し直しましょうって感じですね」

――『C3』って、この時代にアルバム出すって何?っていう意味が詰まったアルバムだったと思うんです。

「そうですね、『C3』ってアルバム自体、3ピースバンドとしてのBase Ball Bearの基礎編みたいな意味合いで作っていたので」


――あれが基礎編ってすごいですね(笑)。

「ま、自分たちなりの基礎編っていうことで(笑)。サウンドの話ですけど、ダビングもあんまりしてないし、一個一個の楽器の生鳴りというか、そういうものが感じられるような音にしたいと思ってました。厳密に言えば全然ナチュラルではないんですけど、かなりナチュラル風に作っていって、その他、空間の使い方でちょっとこう、今の海外トレンドとの融合点みたいなところを探ったりしつつ。ただ、曲の作りとしてはすごくシンプルでしたし、どれも。制作中の曲の中にはファンキーなものや、複雑な構成の曲も結構あったんですけど、それを敢えて外していって、“ギター弾くの楽しいねー”みたいな(笑)。そういう方向に振っていたんです。で、そういう意味では、これから作っていくアルバムとかはちょっと演習編というか応用編みたいなものにしていこうっていうビジョンがあるといった感じです。そんな中でも今回の2曲はやっぱりバンドでジャーンてギター弾いて“楽しい!イエーイ!”みたいな……ま、それが根っこにあるものを2曲選んだんですよね」

――むしろ今回のシングルが基礎編に聴こえるぐらいで。

「うん。さらにシンプルですよね(笑)」

――音像の話でいうと『C3』って、例えば「L.I.L」とか、ジャンルじゃなくてビリー・アイリッシュ聴く人も自然に聴けるような――エレクトロのローの出し方とは違うけど――バンドのローの出し方を感じましたし。

「ありがとうございます。バンドものなのに。そこは結構、狙ってたラインですからね」

――あとはバンド史的なことでいうと「EIGHT BEAT詩」のような曲があったので、Base Ball Bearってなんぞや?って時にあれだけ小出さんがセルフボーストしてたので大体わかります。

「大体わかります(笑)」

――あれだけ細かい固有名詞が出てくる曲ってあんまないですね。

「あんまないですけど、ラップでは当たり前なんですよね。それをバンドで、普通の歌の中でやっちゃうと確かに違和感はあるんですよね。でも、ラップにすると固有名詞が出てこないと逆に輪郭がぼやけてくるっていう。そこは表現の特性もあるのかなと思うんですけどね」

――今から復習する人はぜひ。

「そうですね。『C3』は踏まえて」

――明らかに2020年の感覚がまだ最近の感覚なので。今回の先行配信の「ドライブ」のイントロのギターサウンドだけで泣けるという(笑)。

「ははは!ありがとうございます」

――このギターサウンドが聴こえた時に確実に掻き立てられるものがあると思うんです。

「はいはい!」

――小出さんの中では何からできてきた曲なんですか?

「「ドライブ」は……あんまり何にも考えずに作ると、こういうシンプルな曲がいっぱいできちゃうんですよ、僕の場合。高校生ぐらいの曲作りはじめた時からずっと、ほっといたらできるというタイプの曲なので、あんまり制作に持ってかないんです。自分の中でボツにしちゃうんです、いつも。しょっちゅうできるから(笑)。自分の中では凝ったことをやりたいとか、ややこしいことをやりたいとかってやっぱあるんですよね、せっかくやるなら。ただ、この曲に関しては、コード弾きながら同時にリフを弾けるみたいなタイプの曲なので、アイデアは面白いかなと持って行ったんです。そしたら堀之内さんも、関根さんも“これいいじゃん”、“あ、これでできたらもうOKだ”みたいな感じで、“ええっ!ほんとにー?」って(笑)」

――ふたりにとってはこれが今良い作品として完成できたらいいと?

「と、思ったのかもしれないですよね。歌詞とか全然ないんですよ。メロとリフと全体の曲の構成ぐらいしかないんですけど、“もうこれだ”みたいな。“ほんとに?いいの?これで?”みたいな(笑)。ただ、最初の段階ではかなりシンプルだったのでもうちょっと自分的にややこしいポイント欲しいなと思って、バレないようにちょっとずつややこしくしていった感じですかね。制作過程としては」

――これはもう80年代ぐらいから鳴ってて、好きな人は死ぬまで反応するサウンドだなと。

「はいはい。そういう話はやっぱしてましたね。録ってる時に。『C3』もそうですけど、ドラム、ベース、ギターの音で基本的にやってるんで、サウンドのムードが大事なんです。で、最近の若い子たちはどういうことやってんだろう?“こういうギター聴かないね”って。みんなおしゃれじゃないですか。いわゆるシティポップ的なムードを纏ってる子たちがすごい多かったりするから、なんかギター1発でみたいな非常オーセンティックですけど、こういうのあんまりないからこそ自分でやっときたいとか、自分で聴きたいみたいなところがあって。ギターの音色など、かなり拘りましたよね」


――「ドライブ」の主人公は女子ですか?

「性別決めてないですね」

――パンチラインが多すぎてですね。<何しても気に入らない夜に>という歌詞の<気に入らない>は強めにいうと“何してもしんどい”って感じにも近いと思うんですけど、<何しても気に入らない>ぐらいに留めてるのがいいなと。

「うん。そこ、すごいいいポイントです。特に2020年の自粛期間中に感じていたのは、漠然とした低空飛行というか“全然気分あがんないな!”みたいな……すっごいネガティヴとかなわけじゃないんですよ。かと言ってアッパーでもない。割とニュートラルなんですけど、それでも気分はあがんない。そういう中で自分の機嫌を日々どうやってとっていくかみたいなのは大事にしていて。今までは部屋に物増えるからやだなと思って、あんまりやらなかったけど、マンガの一気買いしてみますか、とか(笑)。あんまり外食とか出前に頼るのも体に良くないし、じゃあ思い切って料理に凝ってみますかとか。そういう細かいことで、テンション上げていく。電気炊飯器じゃなくて土鍋でご飯炊いてみましたとか。“すげえ!米立っててうめえ!”みたいな……なんかそういう自分の機嫌を上手にとってくみたいなことを意識してたんですけど。ま、これって別に自粛期間じゃなくったって、ほんとは常に大事なことなんだろうなと」



――確かに。

「ずっと外出て仕事してて、外で友達と会って、なんとなく気が紛れていくけど、なんとなく気が紛れてるだけでこういうふとした低空飛行、ふとした低調みたいなのはいつでも起きうるわけで。上手に自分の機嫌をとっていくっていうのは去年だけじゃなく、今後も大切なことかもと実際思いましたね」

――忙しい時に比べて体調とかも気になるから、そこに向き合う時間もできて。

「忙しいとちょっと悪くても、仕事行かなきゃ、で、栄養ドリンク飲んで誤魔化すとか全然あるけど。家にずっといたらそうもいかないじゃないですか(笑)。家にただいるのにリポビタンDガバガバ飲むわけにいかないし」

――不安なんだけど、今結構自分のこと見つめてるなっていう気持ちと背中合わせな。

「そうですね……うん、そういう曲ですね。確かに」

――これも日常的に感じますけど外の空気に当たると人間、我に返るところがあるし。

「そうですね。“気持ちいい!”ってなりますよね。”冬、寒ぃ!けど気持ちいい!”って」

――小出さんの書く歌詞が初期のティーンエイジャー的なものとはまた違う、すごい素直さがあるなと。

「うん。素直になってきたんですかね」

――どう思います?

「自分の書いてる歌詞に飽きたってわけじゃないですけど、もっと改善点があるとしたら何だろうな?と、テクニカル面でいろいろ考えてて。“僕”、“君”と言わない。っていうのは今回、意図的にやってます。僕とか君が出てくるとどうしても、こう“お話”になってくるというか……それを一回取り除いた、もっと主観的な書き方、角度だと書きやすいことっていっぱいあるんだなって発見がありました。そうなってくると僕とか君に文字を使うのがもうもったいなくなってくるというか(笑)」

――僕、君が頻繁に出てくるとなおさら?

「僕と君を使わないことによって、より感情表現が濃くなってくるというか。僕と君を多用するような歌詞になると、どうしてもストーリーテリングになりがちで。情報や設定を文字にする必要が出てきて、歌詞っていうかあらすじになっちゃうんです。そうならないよう、もともと気をつけてはいたんですけど」

――一人称や三人称が出てくると聴き手としては曲に馴染めるんですけど、初見――というか初めて聴くときは――主語がない方が曲の中で自分が動けるんでしょうね。

「うんうん。たぶんあると思うんですよね」

――「ドライブ」も部屋から出た温度とかわかりますし。

「そういう表現の方にもっと重きを置きたかったので、そんな文字数多い曲じゃないですけど、ひとつひとつの言葉遣いから背景が見えるように、さっき言ってくれた“しんどい”みたいな言い方せずに“気に入らない”、その背景が見えるような歌詞を目指しました」

――洋楽とかだと1ヴァースを繰り返す短い歌詞が多いですし。

「多いですね。そんなんばっかですよね(笑)。昔は手抜いてんのかなと思いましたよね。海外のロックバンドの曲聴くと、今も昔も韻をすごく大事にしてますよね。リズムを優先して意味をわざと置き去りにする。でも、それによって面白いフレーズが生まれたりもして」

――二極化してきたのかもしれないですね。ラップで言葉が詰め込めるから、メロディ部分はリフレインでもいいとか。

「日本で“あ、この人すごい考えてんな、歌詞”って思う人、あんまり多くなくって。やっぱり星野 源さんは想像してる範囲が並じゃないなっていうか。同業者だからわかることかもしれないですけど、どこまで言葉を行き渡らせようとしてるのか。それを考えきってないと、新曲の「創造」とか、「うちで踊ろう」とか、ああいう歌詞にはならない。出てこない」

――世界のニンテンドーですからね(笑)。小出さん、何かそういうタイアップあったら何作りたいですか?

「ははは!ニンテンドー並みのタイアップは胃が取れちゃうんじゃないですか。ストレスでね」


――いや、行けますって(笑)。そして「SYUUU」、これはもうBBBと言えば……なスピード感もあり、2020年らしいなとも思いました。

「自粛期間の中で、メンバーとですら3月の半ばぐらいから7月ぐらいまで4ヵ月会ってなくて。YouTubeに上げる映像を撮ったりしてたので、データのやり取りや打ち合わせは、LINEのビデオ通話とかでやってはいたんですけど。メンバーでそれだから、友達とか家族とかになると全く会ってないし、連絡もずっとしてるわけじゃないから、SNSで近況を知るくらいの感じになってくる。そうすると、メンバーや友達などの身近な存在ですら“生きてるんだろうな”みたいな、予感でしか感じてないというか。でも、これ何かに似てるなと思って」



――おお!何ですか?

「通ってた小学校が転校生するのもしてくるのも多かったもんで、仲良かった友達がバンバン転校してっちゃうんですね。転校するまでは名残惜しむように遊んで、“ずっと友達でいような”みたいな(笑)。涙涙の送別会があったりしたんですけど、それでも引越し先とかって――僕、江戸川区なんですけど――横浜とか千葉のちょっと行ったとことか、せいぜい電車で1時間くらいのとこなんですよね、転校したって言っても。今だったら全然会いに行ける距離。でも小学校の時は今生の別れみたいに勝手に思ってて。で、親同士は年賀状のやり取りしてる。でも本人同士は連絡を取らない。で、だんだん疎遠になっていって。でも、その間、別に“死んだだろうな”とは思わないわけですよ。当たり前ですけど、“生きてんだろうな”って思ってるというか。その予感だけで人のこと感じるって、すごい雑な感じしますけど、それに近いことになってたなと思ったんですよね、自粛期間中に。っていうところから、転校の曲になったという」

――なるほど。聴く人によって、どうにでも取れるなと思いました。

「はい。どうにでも取れる」

――例えばこの状況下で病気になっちゃって会えないとか、ラブソングにも聴こえて。<ありがとう ばかやろう>も、もう存在しないのかなとも思えるし。なかなか去年の状況に重ね合わせてしまいます。

「そういう曲です」

――こういうシンプルな2曲だからこそシングルなのかなと思いました。

「そうですね。2曲の束で最初から考えてたので。両方ともシンプルに聴こえますけど、あんまりわかんないように、ややこしいことをしてるって感じですね。コード進行とか」

――その微妙なややこしさが歌詞と相まった時に、カチッとハマるというか。

「うんうん。ありがとうございます」

――そして今年は結成20周年ですが。

「早いもんで」


――この状況の中で今年の20周年、どう楽しんで行きますか?

「いろいろ予定は立ててますけど、それもね、状況がどうなるかまだわかんないので。いろいろスタンバイはしつつ、いつ何がどうなってもいいようにプランを立ててるって感じですね。なにせ東京オリンピックですら、まだやるかどうかわかんないし」

――やらなかったらやらなかったで他のイベントもやりにくくなるし。

「やったらやったで……っていうのもあるし(笑)」

――ほんとですよ(笑)。でも、みんなでサバイブしていかないと。

「この状況下で分断がいちばん怖いですからね。そういうものが広まるのがね」

――そういう意味で言うとさっきの「ドライブ」の話じゃないけど、まずはてめえのことというか。

「そうですね、その集合ですからね。社会は。個を尊重したいですよね。性別設定しないことで、そういうことも表現できるかなと思います」

――いろんなことが大変な時こそドラスティックに変わる可能性もありますし。

「うん。コロナのおかげで価値観、個人個人の世界観が揺さぶられましたよね。単純に感染症が広がった、それだけじゃなくていろいろ試される状況になってるなと肌で感じていて。今後、感染も収まっていきました、で、終わりじゃなくて、揺さぶられた価値観がどうなっていくかが重要だなと。音楽もまた、その状況に追従してかなきゃいけないって言うか。時代と人の心の移ろいをちゃんと注視しないとね」

――それを楽しく聴ける音楽にする?

「それがいちばんの課題ですよね。今回ですでに、バランス感はすごく考えましたよ。“お前、落ち込んでんな”みたいな感じのもの出してもしょうがないし、“コロナでみんな大変だね、頑張ろうね”みたいなのだけ出してもな、と。せっかくやるなら音楽としての聴き心地や楽しさが、まず大切。その上で、自分の気持ちや歌いたいことをどう編み込んでいくかじゃないでしょうかね」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/柴田ひろあき



Base Ball Bear TOUR 「Over Drive」
5月19日(水)@SHIBUYA CLUB QUATTRO(東京)
5月20日(木)@SHIBUYA CLUB QUATTRO(東京)
5月24日(月)@DIAMOND HALL(愛知)
5月25日(火)@BIGCAT(大阪)
6月4日(金)@無観客配信ライブ

Base Ball Bear

僕らにとって1年半ぶりとなるツアーの開催が決定しました。現場でのライブができなかったこの1年で、配信には配信の面白さがあることを知り、配信への愛着をもって、今回は「現場のみ」&「配信のみ」のライブで構成してみました。ニューシングル「SYUUU/ドライブ」は、バンドで音を出す喜びを込めた作品となっています。やっぱり、でけえ音を出すのって気持ちいいっす。この気持ちよさをみなさんと共有できる日が楽しみ過ぎて、ふるえるぞハート!(小出祐介)







Base Ball Bear
Base Ball Bear「SYUUU / ドライブ」
2021年3月24日(水)発売/配信

VIZL-1880/3,850円(税込)
DGP RECORDS / ビクター




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