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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



──世界的にファッションサイクル改革の意識が高まってきている状況ですが、御社として「セール時期の見直し」についてはどのようにお考えでしょうか?

「見直した方が良いと考えています。 現在のMDの考え方に"セールでどのくらい売るのか?"という部分もあり、つまり残すという前提でものづくりをしている点がそもそもおかしい。プロパーで売っていくということに向き合わないといけないと考えています。特に都市部に関していえば、お客様のセールに対するモチベーションもかなり低くなってきていて、安く買うというよりも"良いものを買いたい"という考え方に移行しはじめていると感じています。」

──セール時期に関してはいつが適切だと考えますか?

「春夏物であれば、8月の第1週の週末くらいからお盆くらいまで。お盆が終わったら秋になるのが良いと考えますね。ただ、まだ分かりませんが、今年オリンピックがある場合は時期が被ってしまいますから、ちょっと早くても仕方がないのかなとは思っています。秋冬は現状の1月の第1週、または第2週のままでいいと考えています。」

──夏に関して言えば、商業施設によっては6月末からセールをはじめられる所もあると思いますが、その辺りに関してはどのようにお考えでしょう?

「"理想で最良の結果が出るのか?"といえばそうではなく、その中で色々調整しながら、現実の環境の中でどういう最良の結果を出していくかという部分だと思います。結局、作る側のファッション小売業だけの問題ではなく、売る側の商業施設とが業界を超えてお客様のニーズに応えていかないと変わっていかないですよね。 加えてファッションの春夏秋冬というコレクションの考え方も、そもそも"どうなのか?"と思う部分があります。ファッション自体が流行りの物で"今年の物を着たい"という衝動そのものなのですが、結果、商品のライフサイクルが短いものになってしまうという問題が残る。現状のままではSDGsの実現に逆行する業態となってしまう。ある意味、パラドックスではありますが、そこに対してどういう答えを出していくのかは、トライ・アンド・エラーをしながらやっていかないといけない。単純にセール時期というだけの問題ではなく、理想を言えば、そもそもセールをしないで良い業態にならないといけないと考えます。」

──メーカーとして、適時適品適量を組むためのMD的な考え方はありますか?

「ひとつは定番商品化していくという考え方です。例えば、春のトレンチコートは毎シーズン作っている訳ですが、素材や襟の大きさ、丈などが、その年々で多少違ったりはあるにせよ、基本は一緒ですから。極力、定番商品にして、セールせずに売っていくなり、作り足しという方向にするといった構想はあります。 それと作る際の商品の売上予測に対する生産量を、セールを前提にした供給量にしないということですよね。」

──セールを前提にしない形とは、つまりどれだけ積むかという部分になりますよね。

「プロパー消化のパーセンテージをどのくらいで見積もるかによって、その生産量が逆算されて出てきますから、その方程式をシビアに見ていくという事ですよね。でも、商品原価率は上げられますし、それによってお客様により価値のあるものを提供できるという利点もあります。 あとは現場レベルでの話になりますが、例えば、2点10%オフなど、商品そのものの魅力よりも価格訴求を優先してしまっている現状がある。つまり商品の特徴をお客様に訴求していくという、本来の姿に戻していく事も大切だと考えています。」

──需要予測に関しては、AIを導入されている会社もありますよね。ただ、業界自体が長年の経験でやっている部分もありますが、御社もその蓄積は強みとしてあるのでしょうか?

「今って大きなトレンドがないじゃないですか。だから、流れに身を任せて、どう推移するのかを想像すること自体にはあまり意味がないような気がしています。それよりも自分たちで当てに行ったり、他社ブランドとのコラボ商品を作って、独自でしっかり売っていくとか。流れを予測するというよりは、どう流れを作るか。そっちなんじゃないかな。結局、今売れているブランドって発信力のあるブランドが多いですから、その方向が正しいと考えますね。」

──このコロナ禍になって、事業としての大きな変化はありましたか?

「今までがどんぶり過ぎたということもあるのかもしれませんが、仕入れをかなり細かく見るようになったんです。その分、生産調整が早く出来るようになったので、第一波の時も売り上げは減少しましたが在庫も増えなかったんです。」

──やはりECに力を入れられた部分はありますか?

「EC事業に関しては、このコロナになって初めて本腰を入れました。仕事の進め方や商品開発、分析なども含めて、ECネイティブになってきています。日によってはECの売り上げの方がリアル店舗よりも大きい時もありますし。EC化率も延べで言って40%強くらい、日によっては60%とか。通常ですと30%弱くらいでしたから、今年度のEC化率は半分くらいまでいくかもしれません。在庫に関してもコロナが始まった時くらいに一元化して、今は自動的に引き当てになっています。」

──リアル店舗の現状では、店頭スタッフのモチベーションを保つのが大変ですよね

「現在販売スタッフには、EC上でチャット接客に力を入れてもらっています。また、スタッフのスタイリングをECだけでなく、SNSなどでも発信することで、売上に直結することが会社の中でも浸透してきました。これらの新しい取り組みに貢献してくれているスタッフにはインセンティブを与えることで、モチベーション向上を図っています。」

──EC事業においては、昨年はギフト企画などの面白い企画もやられていましたが、そういう企画に対する反応などはいかがでしょうか?

「実際のところ、EC上で何かの企画を認知させたり、集客したりの部分にはかなりのパワーがいるし、カロリーを使うんですよね。そういった意味では、集客に苦労しているというのが実状です。ただ、訪れていただいたお客様に関して言えば、買い上げ率は高いです。ECに関しては、どうしてもレッドオーシャンとなっていますので、広告のパワーゲームが必要だったり、その中で戦っていかないといけない現実もありますよね。昨年からは認知の部分も考慮して、オンライン上での展示会やイベントなどもはじめています。」

──どのようなイベントをやられたのでしょうか?

「昨年末に、"ジュンの大望(忘)年会~ショッピングフェスティバル~"というB2Cのイベントを開催しました。内容としては、ズームを利用して販売スタッフがコーディネート相談をしたり、フォトグラファーでジャーナリストのシトウレイさんをお呼びして"2021年先取りスタイリングコーデ紹介"のトークショーをやったり。日替わりで体験型のコンテンツを開催する、いわゆるオンラインフェスです。 今後は、これまでに取り組んできた"ジュンの文化祭"などのイベント事業をオンラインで開催することで、集客および購買に繋げていく仕掛けをしていきたいと考えています。」

──最後に、今年、御社として取り組んでいく課題がありましたら教えてください。

「オンラインでのイベントの事業化ももちろんですが、まずは本業のアパレルでのEC事業をさらに伸ばしていきたいと考えています。ECってあらゆることが空中戦になりがちですから、三現主義で現場、現実、現物をしっかり見据えながら、お客様に対してより満足頂ける付加価値の提案に繋げていきます。 このコロナの状況が正常に戻ったとしても、恐らく以前とまったく同じ状況には戻らない。だから、ECでしっかり売っていくという部分は、今後、会社としても重要になっていくと考えています。」

──ありがとうございました



「最良の結果を出していくためには、トライ・アンド・エラーをしながらやっていかないといけない」と佐々木氏。



[section heading="佐々木進"]

株式会社ジュン 代表取締役社長
1965年生まれ。アメリカ留学後、四方義朗氏が率いるサル・インターナショナルで国内外のファッションショーの演出や選曲に携わる。89年ジュンに入社。「アダム エ ロペ」ほか、「A.P.C.」のオンリーショップなども立ち上げる。98年常務に就任。2000年9月から現職

(おわり)

写真/野﨑慧嗣
取材・文/久保雅裕、カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。





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