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ジョン・レノン80回目のバースデーに当たる10月9日から東京のソニーミュージック六本木ミュージアムにて開催中の『DOUBLE FANTASY - John & Yoko』東京展。すでに多くの来場者が訪れた本展もいよいよ終盤。そこで未だ訪れていない方とリピーターのために、その模様をあらためてレポートしておきたい。

本展は2018年5月から2019年11月までの一年半に渡って、ジョンの故郷であるリバプール博物館で開催された展示の東京展にあたる。オノ・ヨーコ自身もキュレーションに深く関った同展は、当初の予定から7ヵ月も延長され、期間中70万人もの驚異的な動員を記録した。そして、この東京展も好評を博し、当初2021年1月11日までであった会期が2月18日まで延長されることが決定した。ちなみに2月18日はヨーコのバースデー。つまりジョンのバースデーからヨーコのバースデーまでの開催という粋な計らいとなったのだ。

今回の東京展ではリバプールの展示を再現しつつ、日本エクスクルーシブの内容も追加されている。コロナ禍のため一時は開催の先送りも検討されたが、関係者の熱意と徹底した感染対策への配慮によって、無事実現に漕ぎ着けたという。

「DOUBLE FANTASY」とは1980年11月17日にリリースされたジョン&ヨーコのアルバムのタイトルである。ジョンにとっては5年ぶりのスタジオアルバムとなったが、同作リリースの直後の同年12月8日、ジョンは凶弾に倒れ、帰らぬ人となってしまう。そのため同作は結果としてジョンの生前最後のアルバムとなった。ちなみにジョン逝去後の84年にもふたりの名義で『Milk and Honey』がリリースされている。

ジョンとヨーコが生み出したアート、音楽、映像などの作品群と共に、ヨーコ自身のプライベート・コレクションから提供される貴重な品々を含めた100点以上ものアイテムが時系列で展示されている。互いの誕生から、1966年ロンドン・インディカ・ギャラリーでの出会いを経て、互いに影響を与え合ったアーティスト活動の全般、さらには現在まで続く"IMAGINE PEACE"キャンペーンまでを深く知ることの出来る内容となっている。

エントランスをくぐると、白と黒の配色によってディレクションされた空間が広がり、1966年ビートルズ初来日時の写真を過ぎると、二人の誕生から1966年までのプロフィールに迎えられる。

幼くして両親のもとを離れ、母の姉夫婦に育てられたジョン。銀行員の父を持つ名家に生まれ、英才教育を受けて育ったヨーコ。ビートルズの一員としてデビューし、ポップスターとして絶大な支持を集めるジョン。前衛芸術家としての活動をスタートさせ、数々の作品を発表していくヨーコ......9000キロをも隔てたリバプールと東京で生まれ、出会う前は互いに結婚も経験していた二人が、運命的に出会いを果たすまでの軌跡が秘蔵写真と共に記されている。驚くことにヨーコがジョンにプレゼントした作品集「グレープフルーツ」の現物も展示されている。




序盤の展示から窺い知れるように、本展は二人の軌跡を縦軸とするならば、世界中の関心を集めた時事が横軸となって進んでいく。60年代といえば、第二次世界大戦、東京オリンピック、さらにはベトナム戦争である。こうした時事との照らし合わせから、二人がどのような背景の時代を生き、その時代とどのように関わってきたのかを深く知ることができる。展示に添えられたキャプションや映像、オーディオ音声などの解説も非常に充実している。

次に驚かされたのは、前述の1966年インディカ・ギャラリーの再現だ。「未完成の絵画とオブジェ」で展示されていた2作の美術作品「天井の絵」「釘を打つための絵」は、いずれも当時のオリジナルである。

脚立の先に見えた小さな「YES」の文字にジョンはどんな感銘を受けたのかと思いを馳せる。二人は出会ってすぐに"ピンときた"そうだが、一方で、ジョンが展示物の青林檎をかじってしまったため、ヨーコの第一印象はあまり良いものではなかったというキャプションに思わず笑ってしまう。もちろん再現だが、その青林檎もちゃんとその場に置かれている。




互いに見つめ合うように配置されたジョンの眼鏡とヨーコのサングラスは、最早それ自体がすでにミニマルアートの佇まいだ。

それにしても多くの現物が残っているものだ。ジョンが少年時代に描いた水彩画やノート、イラスト満載の手作りの本「The Daily Howl」、学校の成績表、かの「イン・マイ・ライフ」や「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」の手書きの歌詞etc......いちいち驚いていてはキリがないし、なかなかその先へと歩を進められないのだが、それでもやっぱり驚かされる。


ダブルファンタジー

「The Daily Howl」

ジョン&ヨーコ

「イン・マイ・ライフ」



筆者は幸運にも2015年にロンドンでザ・ジャムの「The Jam: About The Young Idea」、2017年に日本でデヴィッド・ボウイの「DAVID BOWIE is」を観ているのだが、あの二つの展示といい本展といい、アーティストと関係者の物持ちの良さに感心させられると同時に、"取っておいてくれてありがとう"と感謝するばかりだ。

音楽活動やパフォーマンスを共に行うようになった二人はアリバムリリースやイベント開催を経て、1969年3月20日、ジブラルタルで結婚式を挙げる。その際のジョンのジャケットとヨーコのスカートの現物もある。タグを見ると、ジョンの白のダブルジャケットはピエール・カルダンだった。

そしてこの挙式から6日後の3月26日から31日にアムステルダムのホテルで、次いで5月26日から6月1日にはモントリオールのホテルで「ベッド・イン」イベントに臨む。ベトナム戦争をはじめとするアメリカ・ヨーロッパの社会不安のなか、人々に愛とユーモアを持って平和を訴えようとしたアクションだ。

このパートではジョンが弾いていたギブソンのアコースティックギター J-160Eも、部屋の窓に貼られていた「HAIR PEACE.」、「BED PEACE.」のプラカードも現物があって驚いた。個人的に「ベッド・イン」はモノクロ写真の印象が強かったせいか、プラカードの地色が黄色っぽかったことにも、妙に感心してしまう。同年3月31日の「バギズム」記者会見の映像も観ることができる。




1971年、ジョンとヨーコはアメリカに渡ると、急進的な政治運動に関わっていく。この年にリリースされた「パワー・トゥ・ザ・ピープル」「イマジン」の手書きの歌詞など、思わずまじまじと観てしまい、あっという間に時間が過ぎていく数々の展示品が続いていく。

ジョンのニューヨーク時代の象徴とも言えるアイコニックな「NEW YORK CITY」Tシャツ――切りっぱなしのノースリーブ!――やアメリカ軍シャツは今も十二分のインパクトで在りし日のジョンの存在感を彷彿とさせる。




ジョンとヨーコの「パワー・トゥー・ザ・ピープル」に代表される、反戦を柱とする平和と人権のための抗議運動や架空国家「ヌートピア建国宣言」、「積極行動主義(アクティビズム)」といった発想の軌跡は、今も絶えない各地の紛争、昨今のLGBT+、BLACK LIVES MATTER関連の運動を鑑みることで、あらためてその視点の先鋭性と意義について考えさせられるものだ。

冒頭でも書いた通り、本展はヨーコ自身がキュレーションに参加している。しかし、以前は互いに別の相手と結婚していたことや、二人が出会った当時のマスコミによる「東洋の魔女がジョンをたぶらかした」といった論評や「ベッド・イン」をはじめとする表現活動に向けられた好奇の眼差しについてまでもが克明に解説されている。

時代に則していると言えばそうなのかもしれないが、忖度や美化のない、ある意味ストイックなドキュメンタリーのようなキュレーションだからこそ、当時の二人がどんな姿勢で表現活動に臨んでいたのかが、しっかりと伝わってくるのだ。

こうして展示は1973年にジョンとヨーコの別居期間「失われた週末」の断片へと続いていくのである。

(後編に続く)

取材・文/内田正樹
文中写真/山中慎太郎(Qsyum!)



■『DOUBLE FANTASY - John & Yoko』
会期:2020年10?9?(?)から2021年2?18?(木)まで
        ※2020年12月31日(木)、2021年1月1日(金)は休館
会場:ソニーミュージック六本?ミュージアム(東京都港区六本?5-6-20)
主催:株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント/株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ





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