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――まずは11年ぶりの出演となったフジロックのステージを終えた感想から聞かせてください。

「フジロックとは、音楽にある種のエネルギーと一定以上のクオリティを持っていなければ声をかけてもらえないフェスだと思っているので、招待されてとても光栄でした。しかも大きなステージで長い時間をもらえたので、責任重大でしたね。良いショー、良いバイブスを届けなければと、ワクワクしながら臨みました」

――ライブでは、お揃いのカラフルなオールインワン姿のバンドメンバーと共に、軽やかなステップを披露する場面が度々見られましたが。

「約2年前、音楽の仕事を少し休んで、ブロードウェイのミュージカル『ウェイトレス』に出演したのですが、毎晩、役に扮して徹する機会はとても楽しいものでした。音楽活動を再開した時、その経験を活かして、自分らしいメッセージを発信する一方で、遊び心のあるカラフルなステージや、役を演じたり踊ったりして人々を楽しませるようなパフォーマンスもやってみたいと思いました。結果、自分のライブに新しい風を吹き込むことができました。今後も探求していきたいですね」

――あなたとバンドとの一体感が素晴らしいライブでした。

「ありがとう。僕自身もそう感じました。現在のバンドは、何年もいっしょにプレイしている親友たちで構成しています。今回のバンドメンバーでもあるモナ・タヴァコリ、チャスカ・ポッター、マイ・ブルームフィールド、ベッキー・ゲブハートからなる女性4人のグループ「レイニング・ジェーン」とは、2014年に『イエス!』というアルバムをいっしょに作りました。他のメンバーとも、2003年以来、様々なバージョンのバンドでいっしょにプレイしています。メンバーを決めるにあたっては、もちろんプロフェッショナルでパーフェクトなミュージシャンだけを集めることは出来ます。でも、そこに最高の人間関係は望めないかもしれませんよね?つまり、僕は人間関係を重視してバンドを組んだのです。僕らはとてもオーセンティックな音楽を奏でていると思います。それでいて、まだ音楽を学んでいる学生のような気分で、新しいパートをクリエイトしています。毎晩、新しい音楽表現で、互いを驚かせ合っているんですよ!」



ジェイソン・ムラーズ


Photo by Teppei

ジェイソン・ムラーズ


Photo by Kazumichi Kokei



――昨年、6枚目のアルバム『ノウ。』をリリースしました。ご自身のなかで、楽曲への思い入れや歌詞が意味するメッセージなどは、歳月を重ねることで変化していくものでしょうか?

「そうですね。大抵、アルバム制作には締め切りがあるものなので、必ずしも細部まで全てを完璧に仕上げられるとは限らなくて(笑)。でも、ライブでは、そこを変えることもできるし、リリースした後にも様々な発見がありますよ。『ノウ。』はすでにリリースから1年ほど経っているので、オーディエンスもアルバムを楽しむ時間がたっぷりあったと思いますし。特にツアーへ出ると、自分で書いた楽曲への理解がより深まります。去年と今年では、ライブでの演奏の雰囲気も違うし、時にはリズムやテンポを変えて、歌詞を微調整する曲も出てきます。楽曲への愛情も、より増していきますね」

――『ノウ。』に収録されている「ラブ・イズ・スティル・ジ・アンサー」の歌詞は、前回のアメリカ大統領選の最中に書かれたそうですね。現在のアメリカ情勢に対するあなたの見解を聞かせてください。

「僕らアーティストや、愛についてのプラクティショナー(専門家、実践者)と呼ばれるような人々がもっと声を上げて、みんなの目を覚まし、気付かせていかなければならないと感じています。なぜなら、今回の選挙を経て、実際にはまだ多くの国民が平等に扱われていないことが明らかになったからです。彼らは思いやり、受容、共感を享受できていません。現在のアメリカでは、人々が互いに対抗しなければならない状況が強いられているのです。例えばヘルスケアがいい例です。誰だって健康でいたいですよね?それなのに、メディアや政治家、企業は、ヘルスケアを保証するためにはどうすればいいか?という問題において、我々を混乱させているんです。そのせいで怒り、競い合い、憎しみ合いが起こり、ドロドロとした状態に発展してしまうのです。だからこそ、全ての人が同じものを求めているのだということを、みんなが互いに理解し始めなければなりません。だって、みんな愛が欲しいし、愛されたい。自分の存在に気づいて欲しいし、声を聴いてもらいたい。誰かが誰かより優れていることなんてない。一人一人がかけがえのない存在なのですから」

――同感です。

「でも、状況が悪くなればなるほど、何が問題なのかを見極めようとするきっかけが生まれるのもまた事実です。「ラブ・イズ・スティル・ジ・アンサー」という曲は、いま何が問題かを伝え、その答えをどう導き出すべきかという、僕なりのひとつの取り組みでした。アートや音楽は、求められるべき美徳……つまりは思いやりや、受容や、共感についてのアクセスを可能にします。音楽やアートによって、互いを理解し、最終的には平等が得られるのではないかと、僕は考えています」

――あなたのレパートリーには様々なタイプの曲がありますが、その多くがポジティブな見解へと向かっています。そう歌おうと思ったきっかけがあったのでしょうか?

「この仕事を始めて間もない頃、僕の歌を聴きにライブへ来てくれる人たちは、“時間”という最大の富を僕に差し出してくれているのだということ、僕のことを信頼してくれているのだということに気付いたんです。僕にとって、それはまさしく“愛”でした。彼らオーディエンスが会場まで来て僕に愛を与えてくれるのなら、僕も同じように歌で愛を返す責任がある。そう思うようになりました。もしかしたら、僕の音楽が誰かの直感を確信に変える、愛についてのメッセージになったり、興味はあったけれど、まだよく聴いたこのなかった、感じたことのなかった愛への新たなアクセスの手段になるかもしれない。だから、違う世代や様々な文化の知恵を拾い集めて、それを音楽に取り入れようと試みてきたのです」

――なるほど。

「人には誰しも辛い時期があります。僕はそれについても言及する価値があると思っています。憂鬱、不安、心配、嫉妬、自尊心の問題など、人には様々な種類の苦しみがあります。でも、自分がそれらに打ち勝った時、それをステージに持ち込むことは、とてもパワフルな行為だと思っています。きっとオーディエンスだって、少なからず同じような体験をしているはずですよね?すでに苦難を乗り越えた人もいるかもしれないし、もしかしたら、今現在、何かと戦っている人だっているかもしれない」

――そうですね。

「なぜ僕はステージに立つのでしょうか? “ねえ、俺ってクールだろ?”とオーディエンスに問いかけるためでしょうか? 正直に言うと、20代前半の頃、一瞬だけそう思ってしまったような時期もあったんです。でも、それ以降は、自分がステージに立つ目的について、ずっと真剣に考えてきました。“なぜここでこんなことをしているのか?”、“なぜ僕はみんなの貴重な時間をもらえているのか?”、“なぜ僕はみんなに僕のことを信じてほしいと思っているのか?”と。そう考えることによって、昔よりも少しだけより良い人間になれたのではないかと思います。つまり、質問の答えは、“人々が僕の歌に耳を傾けてくれたから”です」



ジェイソン・ムラーズ


Photo by Kazumichi Kokei



――ありがとうございます。最後に、あなたの今後について聞かせてください。例えば、新作についてのプランはすでに何か持っていますか?

「すでに三つの異なる制作に着手し始めています。ひとつは、祖母が大好きだった音楽――カントリーやアメリカーナ、ブルーグラスのようなサウンド――にインスピレーションを得ています。もうひとつはレゲエです。レゲエは歴史的にも革命の音楽ですよね?今の政治情勢の中でポジティブな気持ちになることは、僕にとってとても重要です。だから政治についてコメントするためのプラットフォームとして、レゲエに取り組んでいます。そして、あとひとつはレイニング・ジェーンとのプロジェクトです。彼女たちとは『イエス!』をいっしょに作り、『ノウ。』にも参加してもいましたが、また5人だけでアルバムを制作したくなったんです。秋にはツアー(2019年10月にカリフォルニアからスタート)を行って、オーディエンスの前で新曲を披露してみるつもりです。他にも、政治情勢や気候変動の問題についても、さらにアートやメッセージを発信していく必要性を感じています。忙しくて、時間がとても貴重に感じられますが、日々たくさんのインスピレーションを得ているので、ぜひ楽しみに待っていてください」

――大いに期待しています。そういえば、あなたはサンディエゴ郊外でコーヒーやアボカドの農園も手掛けていらっしゃいますが、今回、日本でコーヒーを飲む時間はありましたか?

「今朝、東京・丸の内のサザコーヒーに行ってきました。実は僕がムラーズ・ファミリー・ファームズで育てたカリフォルニア・ゲイシャが8月3日と4日の2日間だけサザコーヒーで売られているんですよ!(現在は販売を終了している)初収穫したゲイシャ・コーヒーなので、とてもレアな瞬間です。楽しみですね」

(おわり)

取材・文/内田正樹
通訳/岡村有里子



ジェイソン・ムラーズ


Photo by Justin Bettman



ジェイソン・ムラーズ『ノウ。』
2018年8月10日(土)発売
WPCR-18063/2,457円(税別)
ワーナーミュージック ジャパン




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