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――前編では、前々から温めていたものが、さまざまなきっかけや縁によって実を結んだエピソードをお伺いしました。そんな中、バンドに新しい風を吹き込んでいるのが、育休中の菅原愛子さんに代わって参加しているアイシャさんの存在なのかなと。

「愛子ちゃんの代わりはなかなかいないので、まったく違うタイプがいいなと思ったんですね。アイシャちゃんのことは、以前に関内のライブハウスで歌っているのを見たことがあって、知ってはいたんです。で、新しいボーカルを探すにあたり、愛子ちゃんとは違うんだけど、やっぱりどこかに必然性というか、繋がりがある人じゃないと……と思っていたら、あ、そうだ、アイシャちゃんがいた!ってなって。ライブハウスで見たときは確かアリシア・キーズの曲を歌ってたんですけど、存在がまずエキゾチックだし、ムードもなんかいいなと思ったんですよね。聞けば、本牧ふ頭で中古建機の輸出業をやってるとか、お父さんはパキスタン人とか、これはもうCKB「シャリマール」の世界そのまんまだ!と。「プーナ」とか「シャリマール」、「ヒルトップ・モーテル」の世界にぴたっとハマるなと思ったんですよね。ただ、彼女の歌声を何年も聴いていなかったので、まずはカラオケに連れて行きまして。もう1回、アリシア・キーズを歌ってもらえますか?合格!みたいな(笑)。何もかもがぴったりでしたね」

――アイシャさんがいることで、それまでなかったような楽曲が生まれることも?

「「KARAOKE International」なんかは、まさにそうです」

――この曲は本当に港町のカラオケスナックそのものという感じがします。

「そうなんですよ。もう何年も前に、こういうスナックに連れて行ってもらったことがあって、いつか歌にしたいなと思っていたんです。そこにはいろんな国から来た労働者がいて……と同時に演歌を歌うおじさんもいて、ひとつの縮図になってたんですよ。しかも、連れて行ってくれたのがパキスタンの業者さんっていう(笑)。アイシャちゃんが参加してくれたことで、ようやく実現することができました。曲のテイストとしては、ちょっとカンボジアン・ポップスを意識しつつ、彼女はインドのボリウッド映画みたいな歌い方も出来るので、エコーを効かせた甲高い声で歌ってもらいました」



――また、「Disc Jockey part1&2」の繋がりも素敵でした。ラジオのディスクジョッキーと思しき男性が、別れた恋人に向けて音楽をかけるという「part1」に、アイシャさん作詞作曲による「part2」では、元恋人の女性がドライブ中にその曲を耳にするという。

「これは僕がFMヨコハマの「PRIME TIME」という番組にゲストで出演したことがきっかけで生まれた曲です。ラジオのディスクジョッキーって、昔は自分で曲をかけて、自分で喋るっていうやり方が主流だったんですけど、今はそういうことをする人がどんどん減ってしまって。そんな中、FMヨコハマの栗原治久さんは、いまだにそういう古典的な方法でやってらっしゃるんですね。リスナーとして聴いているだけだと、そういうことにあまり気づかないんですけど、ゲストでお邪魔したときに初めて、自分でレコードをかけてるんだ!と驚いたんです。カッコいい!って。さらに、ランドマークタワーにあるスタジオの窓から観覧車が見えてて。深夜だったので観覧車は止まってるんだけど、その代わりにディスクが回ってる。その感じにグッときちゃいまして。メロディはわりと古くからあった曲なんですけど、歌詞をがらりと変えて作り直しました。結局、最終的にはメロディも思いっきり変えてしまったんですけどね。設定としては、港で仕事にあぶれた男性が、紆余曲折あってDJとなり、昔の恋人に向けて曲をかけたら、その女性に届いたというストーリーです」

――ラジオって、離れている人同士が繋がれるツールですよね。そして、この2曲で描かれているような出来事は意外とあるんじゃないかなとも思います。

「うん、結構あると思います。やっぱり僕もFMヨコハマでレギュラーをやっていて、特定の誰かにっていうのはないにしても、こういう感じの人に、こんなふうに感じてもらえたらっていう気持ちで曲をかけたりするわけです。そこに対してメールやお手紙がきたりすると、すっごいうれしいんですよ。そこに反応してくれたか!みたいな(笑)。そういうのもあって、アンサーソングを作ったんですが、最初は作る予定はなかったんです。ハミング、もしくは楽器でそういう雰囲気のものをやろうと思ったんですけど、いや、アンサーをアイシャがやったらいちばんいいんじゃないかと思い当たりまして。それで、こういう感じっていうニュアンスを伝えて、それを英語で書いてほしいとお願いしたんです。そしたら、メロディも自分で考えると言って、できたのが「part2」でした」



――どの曲もすごく細かいところまで事前にイメージされているように思うのですが、ひとつひとつのディテールは、楽曲を作った段階で剣さんの頭の中に明確に浮かんでいるものなのですか?

「もともと出来上がってるものもあれば、やりながら行き当たりばったりで構築していくものもあったり、両方あります。でも、今回はあまり迷うことなく、わりと早い段階で決まりましたね。それにはひとつ理由があって、会社の中にデモ音源を作れるスタジオを作ったんです。以前は毎回スタジオを借りていて、入ったはいいものの1日何も浮かばなかったってなると、あ~スタジオ代が無駄になった!……みたいなプレッシャーが(笑)。でも、今は何時間でもできるっていう気楽さから、スムーズに作れるようになりました。それから、サウンドという点ではもうひとつ、今回はベースにすごい力を入れました」

――たしかに「風洞実験」のイントロであったり、「車と女」などはベースラインが印象的でした。

「「風洞実験」のイントロは、バイクのエンジン音をベースで表現してるんです。それは、セルジュ・ゲンスブールがブリジット・バルドーに提供した「ハーレー・ダビッドソン」のイントロをオマージュしています」

――今回ベースにこだわったのは何か理由があるんですか?

「昔からベースが好きなんですよね。山下達郎さんの「BOMBER」とか、ベースばかり聴いちゃうくらい、カッコよくて。やっぱりベースだな、と。それに、自分が歌うときもベースで歌うというか。なので、ベースがあんまり聴こえなかったり、ベースがよくないときは調子が出ない。逆に、ちょっと声の調子が悪くても、ベースさえよければ声が出るようになったりして。僕にとってはすごく重要なんですよね」



――『PACIFIC』は点と点が繋がったり、剣さんが長年やりたいと思っていたことが実現した一枚なんですね。

「そーそーそー!かなり一致した感じですね。だからね、逆に次どうしようかなって……次のことを考えると結構不安になります(笑)」

――毎回おっしゃっている気がしますが(笑)。

「あ、気が付いちゃいましたか(笑)。そう、毎回なんですよ。いつアイデアが枯渇するのかなとか、次はカバー集にしちゃおうかなとか、弱気なことを思ったりします(笑)」

――CKBのカバー集って、響きが新鮮です。これまで出されていないですよね?

「バンドとしてのオリジナリティってむしろカバー曲で出たりするんですけど、CKBの場合、だったら原曲聴いたほうがいいってくらい完コピが好きなのでカバーアルバムとして成立しなくなっちゃう!みたいな(笑)。その曲のオイシイ部分とか最高な部分って、変えちゃダメだと思うんですよね。なので、人の曲をアレンジするのが苦手なバンドで。だったらオリジナル曲のほうがいいやってことで、毎回オリジナルになっちゃうんですけど(笑)。大胆にアレンジを変えられる人とか、尊敬します。でも、カバーアルバムはいつか本当にやってみたいですね」

――どんなカバーアルバムを作りたいですか?

「昔の歌番組みたいに、洋楽チックなものもあれば、急にド演歌が入っているみたいなめちゃくちゃな選曲でやりたいですね。カバー曲って、昔の名曲を若い人に知ってほしいっていうのがあってやるんですよね。だから、どんどんやりたいです。僕はクルマでも古いものが好きですけど、それもコレクションとかじゃなく、走らせてこそ。だから、古い楽曲もライヴでやってこそだと思うので、どんどんチャレンジしていきたいですね」

――とはいえ、CKBも20周年を越え、レパートリーも相当数ありますし。ライヴのセットリストを組むのもひと苦労ですよね?

「僕らの場合、20年前の曲でも何でも、馴染む前に次が出ちゃうから(笑)。よくこんな曲あったっけ?って言われるんですよね。ライヴのときに5、6年前のアルバムからやったりすると、新曲良かったよ!とか言われたり(笑)。だから、「ハワイの夜」ツアーで新曲をやっても、立ち位置的には変わらないんです。だから、自由なんですよね。やっぱり代表曲が7、8曲あったりすると、絶対やらなきゃいけないとか、あれをやってくれなかったと!かありますけど。そういう中で「タイガー&ドラゴン」は必ずやるんですけど、なんか、今の「タイガー&ドラゴン」がいちばん興奮するんですよ」

――そうなんですか !?

「ええ。一時期ちょっと飽きちゃったこともあったんですけど、今、何も変えてないのに響きがよくなって。やっとチューニングが合ってきた感じがあって、すごく興奮するんです」

――では、8月24日からスタートする全国ツアー「CRAZY KEN BAND TOUR PACIFIC 2019」はどんな感じになりそうですか?

「セットリストは新旧織り交ぜつつ、2019年の、今の気分にフィットするものを選曲していこうかな……と。ニューアルバムの曲はもちろんですけど、そればっかりじゃなくて。オールディーズであろうとも、今響いてればそれが新曲なんだっていう感じで、フレッシュな感じのものを選曲していく予定です」

――つまり、ライヴでこそ今のCKBのテンションがわかるということですね。

「そうですね。それが僕らの気持ちです。まあ、それとはまた別に、お客さんの気持ちもあると思うので、そこはリクエストコーナーで(笑)。そうね……2、3曲くらいはね」

――でも、いつもリクエストコーナーを見てると収集がつかなくなって、2、3曲どころじゃなくなってますよね(笑)。

「そーそーそー!そうなんですよ。いろんな曲をリクエストされるんですが……できない曲は聞こえないふりをしてます(笑)。歌詞が不安な曲は、お客さんに聞きながら歌ったりね。リクエストコーナーは、そんなゆるさも含めて楽しんでもらうコーナーなので。お客さんにいい顔で帰っていただければ、それがいちばんうれしいです」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/柴田ひろあき



■クレイジーケンバンド横山剣による実演販売
8月10日(土) トレッサ横浜(神奈川)
8月11日(日) エアポートウォーク(愛知)
8月12日(月) 阪急西宮ガーデンズ(兵庫)
8月17日(土) イオンレイクタウンmori(埼玉)

■CRAZY KEN BAND TOUR PACIFIC 2019 Presented by NISHIHARA SHOKAI
8月24日(土)福生市民会館(東京)
9月7日(土)秋田県児童会館 子ども劇場(秋田)
9月8日(日)田園ホール(矢巾町文化会館)(岩手)
9月15日(日)常陸大宮市文化センター ロゼホール(茨城)
9月16日(月)太田市民会館(群馬)
9月20日(金)広島JMSアステールプラザ中ホール(広島)
9月22日(日)NHK大阪ホール(大阪)
9月27日(金)日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(名古屋市民会館中ホール)(愛知)
10月2日(水)中標津町総合文化会館(しるべっと)(北海道)
10月4日(金)帯広市民文化ホール 大ホール(北海道)
10月5日(土)札幌市教育文化会館 大ホール(北海道)
10月11日(金)レクザムホール小ホール(香川県県民ホール)(香川)
10月12日(土)神戸国際会館こくさいホール(兵庫)
10月14日(月)福岡国際会議場メインホール(福岡)
10月18日(金)倉敷市芸文館(岡山)
10月26日(土)中野サンプラザ(東京)
10月27日(日)仙台電力ホール(宮城)
11月4日(月)赤穂市文化会館ハーモニーホール 大ホール(兵庫)
11月6日(水)北國新聞赤羽ホール(石川)
11月8日(金)ロームシアター京都サウスホール(京都)
11月9日(土)長泉町文化センター ベルフォーレ(静岡)
11月16日(土)神奈川県民ホール(神奈川)
11月17日(日)神奈川県民ホール(神奈川)
11月22日(金)鹿児島CAPARVO HALL(鹿児島)
11月24日(日)ナムラホール(沖縄)



クレイジーケンバンド『PACIFIC』
2019年8月7日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/UMCK-7023/3,800円(税別)
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2019年8月7日(水)発売
通常盤(CD)/UMCK-1633/3,000円(税別)
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2019年8月7日(水)発売
CKB友の会限定盤(3CD+DVD)/PDCS-1910/16,000円(税別)
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