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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」 by SMART USEN



世の中の動きや気分が影響を与えるのは、ファッションの世界も同じです。近年では女性の権利や尊厳を、これまで以上に大切に考える意識が盛り上がっていて、ファッションにもそうした考え方が映し込まれるようになってきました。

正統派の装いや気品を漂わせる服が勢いづいているのも、女性の「プラウド(誇り、自負)」な気持ちが背景にあるようです。良家の令嬢風の「ブルジョワルック」や、両肩を張った「パワーショルダー」、女性的な曲線を印象づける「ウエストマーク」などは新ムードの象徴と映ります。

ファッションのトレンドは今までの流れを打ち消すような方向に振れる傾向があります。これを「揺り戻し」と呼びます。ストリートやスポーツの次はその逆方向、つまり、ドレッシーやグラマラスに向かうわけです。実際に欧米の主要ファッションウイークで打ち出されたスーツやケープ(マント)、ボウタイ・ブラウス、キュロット、コルセットなどの復活は分かりやすい表れでしょう。



jun ashida 2019-20年秋冬コレクション

HYKE 2019-20年秋冬コレクション



しかし、単純に古風でゴージャスな服がリバイバルするわけではありません。現代の消費者が求めるニーズをしっかり反映した格好で、進化形に練り直されるのです。

今の消費者は着心地や機能性を重視する傾向が強くなっています。扱いやすさや重宝感、コストパフォーマンスなども服選びの条件として重みを増してきました。来秋冬に登場する「新古典派」のアイテムにも、これらのユーティリティを重視して、便利で使いやすい系の要素が織り込まれるはずです。要するに、エレガントな服なのに機能性があるといった新たな価値をまとった服です。

たとえば、ポケットをたくさん備えた服が増えるのは、目立った変化です。スマートフォンを筆頭に、持ち運びたい品が増えて、ハンズフリーで過ごせる服へのニーズは大きくなっています。性別にとらわれない「ジェンダーレス」ファッションが支持される背景にも、機能性を求める女性が男性的な素材やシルエットを便利と感じていることがあるようです。



POSTELEGANT 2019-20年秋冬コレクション



ラグジュアリーブランドの相次ぐファーフリー宣言や、中綿をダウン代わりに使うケースが増えてきたように、素材を取り巻く事情は様変わりしつつあります。従来はフェイク(=偽物)ファーと呼ばれていた人工ファーは上質なエコファーとなり、遊びの利いたパフィーなアウターといったデザイン性に富むウエアも登場しています。 コーディネートに頭を悩ませずに済む上下そろいのセットアップは時短効果が大。雨に強いPVC(ビニール)素材は年々、不安定になっていく天気への備えにも頼もしい存在です。アウトドアやワークウェア、ミリタリーなども、実用性が評価されて、ロングトレンド化しそうな気配。



LANVIN en Bleu 2019-20年秋冬コレクション



現代の消費者が重んじるのは、見た目だけではありません。環境保護や動物愛護に象徴される、服の成り立ちも強く意識するようになっています。そういった条件を代表する言葉が「サステイナビリティー(持続可能性)」。

分かりやすく言えば、「地球や生き物を痛めつけず、長く続けていけるものづくり」といったところです。動物に由来しないエコファーはさらに広がり、もはやフェイクファーという名前に取って代わりそうな勢いです。原料のほか、労働環境、製造工程などにも目が向くようになって、ブランド側の取り組みも一段と本格化してきました。



H&Mのハイエンドでサステイナブルな2019年コレクション「Conscious Exclusive」



来秋冬の目立った変化としては、主張の強まりも挙げられます。気品やクラス感を損なわないようにバランスを取りながらも、自分らしさを適度に押し出すのが新トレンドの特徴です。

たとえば、グッドガール風の着姿に、ロックやボヘミアンなどのテイストをミックスして、ひねったポジティブ感を添えるようなスタイリングが提案されています。妖しいムードを帯びた「ダークロマンティック」やロック風味の「グランジ」などもその一例です。

シルエットではくびれを強調するウエストシェイプやドラマティックなマント系、首元をアピールするボウブラウス、ビクトリアン調のスタンドカラーなどが盛り上がりそうです。さらに、顔周りを彩るヘッドアクセサリーや大ぶりイヤリング、印象的な足元をつくるロングブーツ&チャンキーヒール靴、素材ではフェザー、ラメ、色では紫系やメタリックなどが強めの主張を印象づけてくれるでしょう。



THE Dallas 2019-20年秋冬コレクション

malamute 2019-20年秋冬コレクション



ただ、実際に着こなしを組み立てるにあたって、勘違いしてはならないのは、こうした新トレンドが登場したからといって、来秋冬でいきなりきれいに切り替わるわけではないという点です。ここが最先端のモードと、街中のリアルモードとの違いです。

賢いおしゃれを楽しむうえでは、最先端モードに目配りしつつ、ふだんの生活になじむようなアレンジを考えながら、リアルモードに落とし込む必要があります。四大コレクションと呼ばれるNY、ロンドン、ミラノ、パリのファッションショーでも披露された最新トレンドに加え、ストリートから派生したスタイリング主体のトレンドも見ておくと良いでしょう。



CONVERSE TOKYO 2019-20年秋冬コレクション

近年のファッションはトレンドが微妙に表情を変えたり、ミックスされたりしながら長期化する傾向にあります。たとえば、パーカやスニーカーに代表されるスポーティーなアイテムは、フェミニンで華やかなアイテムと合わせるようなスタイリングが提案され、ムードを変えつつ長く続いています。

性別にとらわれないジェンダーレスをはじめ、場面にしばられないシーンフリー、季節をまたぐシーズンレスといった、自在のアレンジはもはや新たな常識となっていて、この先も勢いが衰えることはないでしょう。このような基本軸を押さえた上で、新モードの中から、自分好みのトレンドやアイテムに絞って、いい意味で“つまみ食い”式に取り入れていくのが、来季のおしゃれを自分らしく楽しむコツになりそうです。

(おわり)

取材・文・写真/宮田理江(fashion bible)



宮田理江(みやた りえ)
「fashion bible」編集長。ニコル、アナ スイを経てファッションジャーナリストに転身。日本経済新聞社、読売新聞のウェブサイトをはじめ、「WWD JAPAN,com」や、ファッション誌「プレシャス」のPrecious.jpなど、多彩なメディアで連載を手掛けている。ショップチャンネルでは自身のブランドをプロデュース。著書の『おしゃれの近道』、『もっとおしゃれの近道』は台湾、中国、タイでも刊行された。







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