<PR>
J-POPフリークの音楽アプリ「SMART USEN」



──前作『ROADSIDE PROPHET』から1年5ヵ月ぶりのニューアルバムになったわけですけど、スタート当初から何かしらのイメージがあって制作を進めていったかたちでしょうか?

田中和将「ここ近年というか、あるいは最初からかもしれないですけど、アルバムに対してそんなに具体的なイメージを持つことは、今回もなかったです。今回、ホッピー神山さんをアルバム全体のプロデューサーに招いていっしょに作ったんですけど、ここ最近はずっとセルフプロデュースで作っていたんですよね。そろそろプロデューサーをという話は、過去2作ぐらいの間にもあったんですけど、それが今回実現したというか。これまでは具体的なビジョンがないバンドだけに、こんなサウンドを目指しているからこういう人にお願いしたいというところまで行かないもんですから、毎度決まらずだったという」

──ホッピーさんに決まるまでは、結構3人で話したんですか?

田中「この2作ぐらいの間にいろいろと話してきましたよ。前々作の『BABEL, BABEL』では高野 寛さんに4曲だけプロデュースしてもらいましたし。いろんな人たちの名前を挙げてはあれこれ話してきたんですが、これまでは気がつけば自分たちで制作を進めてしまっていることが多かったです。そこから、今回こそ誰かにプロデュースをお願いしたいねっていう話をしていて、ホッピーさんは以前に2度ほど絡んだことがあるし(1998年のデビューアルバム『退屈の花』と2004年の同名ミニアルバム収録の「Everyman, everywhere」に、キーボードと編曲で参加)、その当時から、僕らもある程度は成長しているでしょうし、再びやってみるのも面白いだろうと。かなりストレンジな人だというのは知っているので、どうなるんだろうってワクワクもあって」

亀井 亨「前にやってもらったときは、キーボード奏者としてとか、ストリングスアレンジとしてだったんで、楽曲のプロデュースとなると、またちょっとどんな感じかなというのは楽しみにしていましたけどね」

田中「あとは、久々にアルバムを丸ごとプロデュースしてもらうっていう。そうなると、それはそれで違ってくるでしょうし」

西川弘剛「正直、どうなるかわからなかったですけど、新しい人とやること自体が目的といえば目的なので」

田中「我々に新たな風といいますか、そういうものをもたらしてほしいわけですからね」





──ホッピーさんと会うのは久しぶりだったんですか?

田中「久しぶりでしたね。変わってなかったですよ」

亀井「変わってないね」

西川「20年前とあんまイメージが変わんない(笑)」

──久しぶりに集まって、まずはどんな話をしたんでしょう?

亀井「一回、打ち合わせで集まったんですよね。なんとなくこういう感じでやっていこうって話は、そのときにしましたけど。そんなに口は出さないよっていうことは言っていましたね。ホッピーさんいわく、僕らのいままでのアルバムが割とかっちりしたものが多いので、そこにもうちょっと緩急をつけるというか、抑揚のついた感じにしたいとは言ってました。そこからプリプロをして、僕らが持っていった楽曲をいっしょに作ったり、セッションで作っていったり」

──冒頭で、いつもそうだし、今回も特に何かしらのイメージを持っていたわけではないという話がありましたけど、結果的にひとつの塊というか、アルバム全体から匂い立つものがある作品になったと思います。GRAPEVINEの場合、それは今作に限らずではあるんですけど。

田中「イメージしてなくても、そのときのモードが出て、毎度なんかしらコンセプチュアルにはなるんですよね。特に今回は、全曲をホッピーさんがプロデュースしているわけですから、サウンド的にもよりコンセプチュアルな感じになってるんじゃないですかね。ホッピーさんも、近作をすごく聴き込んでプロデュースしてくれたみたいですし」

亀井「アカペラで曲が始まるとか、弾き語りが入っているとか、ホッピーさんのアイデアで始まったんですけど、僕らだけでやっていたらそういうことにはなってなかった。ホッピーさんがプロデュースした効果は、すごくあったと思います」

西川「バラエティに富んだ楽曲がそろっていて、振り幅が大きくなった気がしますね。それってすごくホッピーさん色なのかなって。幅の広さというか、不思議な感じというか、ホッピーさんの人となりっぽい雰囲気をもったアルバムになったのかなと思いますけどね。ぶっ飛んでる曲もいっぱいありますし」

──今回、全面的にプロデュースを任せたアルバムを作ってみて、バンドには何がもたらされたと感じていますか?

田中「いままでいっしょに制作してきた方々の誰とも違うカラーの方なので、また新しい刺激はもらいましたよね。僕らだけではあり得ないやり口だったり、そういう刺激はたくさん得られた気がします」

亀井「作業の早さ、ですよね(笑)。レコーディング環境がいつもと違ったということもありましたけど、テイクも少なかったですし、アイデアが出てくるスピード、判断、行動の早さはすごいなと思いました」

西川「最初にお願いしたのは、最後にもうひとアイデア欲しいということが自分たちにはままあるので、たくさんアイデアを出していただきたいということだったんですけど、実際、本当に多くのアイデアをいただいたと思います」

──今回のアルバムを制作するにあたって、インスパイアされたものって何かあったりしますか?

田中「今回、そういう意味ではあまりなかったかもしれないですね。ただ、歌詞に関して言うと、前作や前々作は古典からの引用とかをしていましたけど、そういうのはやめましたね。そういうのがわからないように忍ばせました」

──今作での田中さんの歌詞について、亀井さんと西川さんが感じたことを教えてください。

亀井「やりだしたころと比べたらですけど、やさしくなってきたなとは思いますけどね。20代のころは、もっと毒々しかった気がします(笑)」

田中「やさしくなったとかじゃなくて、単純に年を取ってるっていうのと、視点が変わる、やり口を変えるっていう話ですよ。同じやり方をずっとやってたいわけないですからね。昔の歌詞を見ると、幼稚やなと思いますけど」

西川「けっこう身近なことを歌っていると思ってるんですけど、そういう意味では切実ですよね。切実さは、ずっと変わらない。切実だということは、身近なことが非常に大問題だという意味なんじゃないですか。ただ、柔軟にはなってると思うんですよ。それは、僕らの演奏もそうだと思うんですけど」





──田中さんが歌詞を書く時は、どの世代に向けて書いているとか、そういった部分を意識されているところはあるんでしょうか?

田中「老若男女、どの世代にも向けているつもりなんですよ。ただ、そこに出てくるシチュエーションだったり、曲の中で設定している主人公だったり登場人物は、若者ではないですね。社会性みたいなものも含めて、いろんな含みを持たせた歌詞の書き方をしているので、それがメッセージとして老若男女問わず届けばいいなと思ってますけど、設定として若者は出てきてないと思います。それは、僕の視点で書くからでしょうね」

──僕の視点ということは、田中さんが歳を重ねれば、その視点も自ずと歳を重ねていくということ?

田中「そういうことですね。若者の僕が書く歌詞は若者の歌詞だと思いますし、いまの僕が書く歌詞は45歳のおっさんの目線で書いている歌詞なんじゃないですかね」

──『ALL THE LIGHT』というタイトルは、どのタイミングで決めたんですか?

田中「アルバムのタイトルは、いつも最後に決めますね」

──ストレートにアルバムの全体像を表しているタイトルだなと感じました。

田中「わかりやすいタイトルがいいなと思ってたんですけど、「すべてのありふれた光」という曲が収められていたり、その他の曲でも光のことを歌ってる曲が多くて。結局、歌詞に引っ張られてるわけですけど、これは『ALL THE LIGHT』でいいんじゃないかと思いましたね」

──結果、にじみ出たいまのモードって?

田中「具体的にひとことで言えるものなのかどうかわからないですけど、まあ、かなりの分量で社会性みたいなものは入ってると思うんですよね。ただ、もう少しそこに、歌詞から言葉を借りるんであれば、少しやさしい光を差し込ませておきたいような感じなんじゃないですかね」

──アルバムがアカペラでスタートしていることもあるのか、『ALL THE LIGHT』はGRAPEVINEなりのゴスペルというか、ソウルミュージックというか、人間賛歌、人生賛歌のような印象も受けるんですよね。

田中「うーん……まあ、そうですね。「すべてのありふれた光」とか「Era」とかは、まさにそう言っても過言ではない気もしますし」

──能天気に人間や人生を全肯定するのではなく、光があるからこそ本当は見たくない影の部分も見えるということも含めての賛歌というか。

田中「そうですね。そういうことだと思います」

──「Alright」という楽曲が収録されていますが、これは『ALL THE LIGHT』とかけてます?

田中「たまたまなんですけどね(笑)」

──言われませんか?

田中「意外と言われないですね」

──『ALL THE LIGHT』≒「Alright」だとしたら、ダブルミーニングとしても深みがあるじゃないですか。

田中「そうですけど、自分ではややこしいなとしか思わないですけどね(笑)。ラジオで曲紹介をする時とか、“『ALL THE LIGHT』から「Alright」を聴いてもらいました”って、聴いている人はなんやそれって思うだろうし(笑)」

──さっき、「20数年の中で」という言葉がありましたけど、長い間バンドをいっしょにやってきた中で、話す内容にも変化などはありますか?

田中「まず、いまは話さないですね(笑)」 亀井「会わないですね、もう(笑)。会う機会は年々減ってきてて、今年入って会うのは今日が初めてですからね」

──じゃあ、今日は「あけましておめでとう!」って言い合ったり?

亀井「言ってないですね(笑)」。

田中「言うの忘れました(笑)。1月2日か3日に会ってたらちゃんと言うと思うんですけど、もうあけましておめでとうの気分じゃないですからね(笑)」

西川「今日会ったレコード会社のプロモーターは、ちゃんとあけましておめでとうございますって言ってきたけどね」

田中「えらい!」

西川「社会人とバンドマンの違い(笑)」

──きっと、話さなくてもいっしょに演奏すれば何も問題ないんでしょうね。

田中「ライブの打ち上げではいっしょに飲んでしゃべってるけど、何をしゃべってるか覚えてないですしね」

亀井「年齢とともに、じじくさい話になってきますよ。どこが痛いとか、肩が上がらへんとか、老眼とか(笑)」

田中「明日のライブでこんなことやってみようとか、そんな話はしますけどね」

西川「あと、ほかのバンドの話はしますね。気になってるバンドの話をして、“あれ聴いた?”とか、そんな話を」

──4月からは、全国ツアーが決まっています。

田中「まだ何も決まっていないですけど、今回のアルバムの楽曲にはホッピーさん的な味付けが施されているので、再現不可能な曲がいつにも増して多いです。まずは、そのへんをどうやってライブで演奏していくかってところからですかね。ただ、いつもあんまり忠実に音源を再現しようと思っているわけじゃないし、ライブはライブで変わればいいと思うんですけど、いい方向に変化させるためにはリハでいろいろとやっていくことが必要ですよね」

亀井「自由にやれればいいかなと思いますね。再現できる部分はしつつ、今回のアルバムには自由にできそうな曲、もしくは自由にやったほうがいい曲がたくさんあると思っているので」

西川「やってみないとわからないですけど、ツアー中にライブとしてできあがるんじゃないですか。いままで以上に、苦労というか、苦悩するんじゃないかとも思っています」

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真/encore編集部



USENのトーク番組「野村義男のおなか(ま)いっぱいラジオ」の収録にて。GRAPEVINEの出演は2月11日から2月17日まで



■GRAPEVINE TOUR2019
4月12日(金) LIQUIDROOM(東京)
4月14日(日) 新潟LOTS(新潟)
4月20日(土) 神戸ハーバースタジオ(兵庫)
4月21日(日) Live House浜松窓枠(静岡)
4月27日(土) 札幌ペニーレーン24(北海道)
5月11日(土) B.9 V1(熊本県)
5月12日(日) CAPARVO HALL(鹿児島)
5月18日(土) YEBISU YA PRO(岡山)
5月19日(日) 松山Wstudio RED(愛媛)
5月25日(土) 金沢EIGHT HALL(石川)
5月26日(日) CLUB JUNK BOX(長野)
6月01日(日) 盛岡Club Change WAVE(岩手)
6月02日(日) 仙台Rensa(宮城)
6月08日(土) DRUM LOGOS(福岡)
6月09日(日) 広島クラブクアトロ(広島)
6月14日(金) 名古屋ボトムライン(愛知)
6月15日(土) なんばHatch(大阪)
6月22日(土) 宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2(栃木)
6月23日(日) 郡山CLUB#9(福島)
6月28日(金) Zepp DiverCity(東京)



GRAPEVINE『ALL THE LIGHT』
2019年2月6日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/VIZL-1505/4,500円(税別)
初回限定盤(CD)/VICL-65092/3,000円(税別)
SPEEDSTAR RECORDS






J-POPフリークの音楽アプリ「SMART USEN」



アプリのダウンロードはこちらから

Get it on Google Play
Get it on Google Play
一覧へ戻る