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――家入さんの「読書日記」読んでましたよ。

「え、本当ですか?うれしい!日経新聞、読まれてるんですね」

――あのなかで言うと、僕も灰谷健次郎さんが好きで『太陽の子』と『兎の瞳』は何回も読みましたね。たぶん初めて読んだのは小学5、6年生だったと思うんですが……

「ふうちゃん、私も大好き。でも児童文学とはいえ、小学生が読むにはちょっと重たい物語ですよね。沖縄の戦争の話もあったりしますし、ふうちゃんのお父さんの話とか……」

――家入さんも“子供にも伝わるやさしい言葉で、とても厳しいことを言う”と灰谷作品を評していましたが、『天の瞳』のワンシーンを、家入さんが16歳のころに見ていた東京の風景に重ね合わせて、歌うことへの覚悟を記していて、それがすごく素敵だなと思いました。

「ありがとうございます」

――さて、そろそろ本題に入りましょう。今日のテーマは、もちろん、8月1日リリースの14thシングル「もし君を許せたら」についてなんですが、その前に、まずはフィニッシュしたばかりのTIMEツアーを振り返っていただきましょう。

「はい。5月から約2ヵ月間、12公演のツアーだったんですが、こんなに音楽と向き合ったツアーは初めてでしたね。やっぱりバンドメンバーを新しく迎えたということが大きくて。私が小さなころから大好きだった『スワロウテイル』でYEN TOWN BANDにも参加していたギタリストの名越由貴夫さん、さまざまなアーティストさんの作品やライブでドラムを叩かれている玉田豊夢さんをはじめ、素敵なメンバーが参加してくれました。贅沢だなと思ったのが、バンドメンバーが毎回すごいフレーズを弾いてくれるんですけど、それを次に持ち越さないというか、常に新しいんですね。成功体験を潔く捨ててしまう。ツアーの最終日が東京国際フォーラムだったんですよ」

――僕も見させてもらいましたが、素晴らしかったです。

「あの日、収録のカメラが入ってたじゃないですか。にもかかわらず、当日になって、豊夢さんが「Relax」の時にスネアを変えたいって言いだして。“えっ!でも今日最終日だし、収録も入るよ”って言ったら、“いや、そうなんだけどさ……”って(笑)。最後の最後まで研究し続けるっていう姿勢を見せつけられましたね」

――プロフェッショナリズムですね。

「そう。だから私もバンドが出す音に、耳を澄ませて、心を澄ませて、もっと新しい自分を出そうという気持ちになりましたし、だからこそ歌がうねっていたと思うんですね。そしてそれを聴いて、お客さんが喜んでくれて――なかには目を潤ませている人もいて――すごく幸せでした」

――もしかしたらここまでのエピソードが答えになっているのかもしれませんが、家入さんが新しいメンバーに求めているものって?

「『TIME』というアルバムがとてもバラエティに富んだ作品になったということが理由としては大きいと思うんです。さまざまな楽曲があって、参加してくださったアーティストやミュージシャン、作家さんもたくさんいらっしゃったわけですが、それをライブで演奏するということは、いかなる喜怒哀楽も、音として表現できる人が必要だと思って。それがこのメンバーなのかなと」

――たとえば武道館の時のサウンドにはロックバンドのようなドライブ感があったように思うんですが、TIMEツアーのサウンドには、もっとタイトでシャープな印象を受けました。

「それは私も感じていました。クールっていうかソリッドな感じ。まわりのスタッフさんとか、ゲストのかたがたにも“いま、過渡期だね”って言われたんですが、でも、私自身には変化しようという意図はないんですよね。たぶん、その感覚もなく変化してるってことは、純粋に進化しているんじゃないかと捉えているんですけど。何て言ったらいいんだろう――熱くて、ヒリヒリしているんだけど、その真ん中にはちゃんと歌心があるっていうか――そういう雰囲気は作り出せたんじゃないかな」

――『TIME』以前の家入さんの作品って、ストレートな感情表現であったり、熱さ、若さといったキーワードで語られることが多いと思うんです。でも『TIME』では表現の幅が格段に広がっているし、深みも増しているので、聴く側の捉え方も変化しているんじゃないでしょうか。

「そうですね。私のなかでは『TIME』という作品の最終形が見えているんです。聴き手側の家入レオ像ってさまざまだと思うんですが、少なくともライブに来てくれた人たちは全員頷いてくれるっていう自信があって、ライブがひとつの完成形というか、そこでまとまりを得るはずなんです。そういう意味ではいいツアーになったなというのが率直な感想です」

――僭越ながらとてもいいセットリストだなと思いました。ツアータイトルに違わず、『TIME』の楽曲はすべて入っていますよね?

「はい。曲順もほぼアルバムと同じにしました」

――でも「Shine」や「サブリナ」をはじめとする代表曲もちゃんと入っているし。特に終盤の「恍惚」から「TOKYO」、「アフターダーク」、「サブリナ」、「ファンタジー」というパートのアガり具合が本当にもう……あの曲順は計算して?

「もちろん(笑)。めちゃくちゃ考えました」

――「恍惚」にはちょっとぞくぞくさせられましたし、なんというか、とても気持ちのいい疲れ方をしました。

「よかった。あっちにもこっちにも揺さぶりたくて。今回は“伝えたかったことがちゃんと伝わってきました”って満足してもらうことだけを目指していないんです。“えっ!これって答えはどっちだろう……”って考えてもらいたいっていう気持ちがあったので、そういうパッケージになっていますね」

――オープニングとエンディングも素っ気ないというか、さらっとした印象でかっこよかったです。

「そうなんです。ちょっと物足りないくらいの感じ。曲中で感情はマックスなんだけど、MCでは伝え過ぎないようにしようと思いました。それは武道館のときとは違いますね。武道館は、ありがとうという気持ちと、その喜びをみんなと分かち合うスタイルでしたけど」

――ライブ終盤のMCで“みんなじゃなくて、ここにいるひとりひとりに歌を届けたい”という言葉がありましたが――もちろん武道館もホールAも大きな会場ですが――もっとステージの近いライブハウスにいるような親密な雰囲気でした。

「ライブって、どうしてもお客さん対私という見え方になるじゃないですか。でも、本来は1対1の世界観だと思ってるんです。結局、聴いている人は、個人的な体験を歌に重ね合わせているわけですし、きみと私、あなたと私……って気持ちかな」

――なるほど、すごく真摯に音楽と、聴き手と向かい合っている印象です。5周年と武道館を経て、いま現在の家入さんの心境というか、テンションは?

「すごい気合入ってますよ(笑)。入ってはいるんですけど、デビュー当時のように、来たものはなんでもやってやる!っていうテンションではないです。17歳でデビューしてずっと突っ走ってきて、それが自信になったけど、ひとりの人間としてはどうなんだろう?って揺れる気持ちもあって。何か新しい挑戦をしたり、アップデートしたいということから、ドラマに出演させていただいたり、朗読劇をやらせていただいたりもしたんですね。そこですごくいろんな視点を持つことができたし、繋がりもできたんです。だけど、いまはいろんなジャンルのお仕事に挑戦する!というよりは、改めて音楽と向き合って、さらに大事に育んでいきたいなと思ってます。量や本数でやっている気になっていたとしたら、それは良くないことだし、結局は8割、9割のアウトプットになってしまう。それがいちばんよくないということを、きちんとスタッフのみんなとも話し合っています」

――ちゃんとお休み取れていますか?

「はい。実は今回、やっと長いお休みがいただけて、ロンドンをひとり旅してきたんですけど、もちろんスタッフさんもいませんし、全部自分でスケジューリングして、チケットやホテルを手配したり。“あ、これが自然なことなんだ”と改めて思いました。客観的に自分の置かれている環境を見つめることができたんです。そして、やっぱり音楽が好きだと思いました」

――何か新しいことにチャレンジするのではなく、原点に立ち戻ろうということですね。

「ミュージックビデオ、楽曲、ジャケット、ライブという4本の柱をもっと強くしていくことが大事だなと思いました。いま持っているものを育んでいくって気持ち。ロンドンから帰国して、そう思っていたところに今回の「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」のお話をいただいたので、改めて私を知ってもらう大きなチャンスだなと。自分で曲を作り、いろんなクリエイターさんたちとも曲を作った中で、「もし君を許せたら」がいま私がお届けするべき曲なのではないかな、って」

――「もし君を許せたら」は、家入さんのなかで、いまもっともブームかもしれない杉山勝彦さんの作詞です。

「ははは!いや、ブームとは言わせません!だって杉山さんは、この先もずっといっしよにやっていきたい人ですから。この曲の構想は、Jazzin' parkの久保田真悟さんとごいっしょしたいというところからスタートしたんです。順番としては、先にいきものがかりの水野良樹さんに書いていただいた「あおぞら」があって、私も水野さんの曲にはすごく思い入れがあったので、時間がない中ではあったのですが、絶対妥協したくないと思っていたんです。その厳しい状況の中、久保田さんがすごく素敵なアレンジをしてくださったんです。レコーディングにも立ち会っていただいて、いろいろとお話していくなかで、すごく共鳴する部分があったので、よかったら主題歌の制作にも参加していただけませんか?ってお願いしました。そうしたら、“僕もレコーディングで家入さんの声を聴いて制作意欲が掻き立てられました”って言ってくださって。それで上がってきたのが「もし君を許せたら」のメロディだったんです。そのときJazzin' parkのスタイリッシュなメロディと、「ずっとふたりで」のように感情の繊細な揺らぎを表現できる杉山さんの詞がコラボしたらおもしろい作品になるんじゃないかなと。そうしたら杉山さんにもよいお返事がいただけて」

――ということは、書き下ろしではあるけれど、それほどドラマの世界観に寄せるというアプローチではなく?

「いえ、もちろんドラマの主題歌ですから、画に合う、ということも大事にしました。プロデューサーさんとお話をして、脚本も読み込んで、私がそこから感じ取ったものは、みんなが理想とか正義を持っていて、だけど正しいことばかりを選べなくって。自分の弱さを見せつけられたり、そんな風に葛藤する姿が生きることの尊さなんだというメッセージです。私は、仄暗さというか、虚無的なことを歌いたかったので、求められていることとやりたいことは一致しているなと思って、それを杉山さんにお伝えして……というやり取りを繰り返して詰めていきましたね。TIMEツアーの最中だったのですごく消耗しましたけど」

――タイアップに手を抜かないんですね。

「抜かないです。私のことを知ってもらうチャンスだし、ドラマの制作サイドの人たちが、自分の作った画に合う主題歌がほしいという気持ちも伝わってきましたし、とてもよく分かるから。そして、私は主題歌としての役割を終えたその後も歌い続けられる歌になってほしいと思いますから」

――メロディもそうですし、こうやって歌詞を目で追っても、すごく痛々しい印象ですが、歌い手としては、そういう部分にぐっと感情移入して歌うものですか?

「感情移入しなかったです。むしろ何かを伝えようとするんじゃなくて、淡々と虚ろなニュアンスの方が悲しさを表現できるはずなんですよ。そういうアプローチをしようと思いついたのも「もし君を許せたら」という曲に出会えたからこそですね」

――一転、2曲目は底抜けにハッピーな「めがね」です。

「ハッピーな曲です。逆に、「もし君を許せたら」と「あおぞら」は聴くときに心構えが必要な曲だと思いませんか?」

――体力を削られますよね。よし、聴くぞ!って感じです。

「そうそう(笑)。最初に「もし君を許せたら」と「あおぞら」を収録することが決まっていたから、間にラフでポップな曲を挟みたいなと思ったんです。で、1年くらい前に自宅のピアノで作ったデモがあったので仕上げようと。ツアー中だったので、ツアーメンバーの康兵さん(キーボーディストの宗本康兵)にアレンジしてもらって、レコーディングもバンドのメンバーに参加してもらいました」

――「ずっと、ふたりで」のインタビューのときに、でたらめな英語詞で歌っている「だってネコだから」のモチーフを聴かせていただいたんです。

「スマホのボイスメモに録ったやつですよね?」

――そうです。で、「めがね」の“今日は久しぶりのお休み/でたらめ英語でビートルズを歌う”という詞に、“ああ!あれのことか?”ってひとりにやにやしてしまって。

「ふふふ……でも本当にそんな感じ。私の日常からこぼれ落ちたような曲ですよね」

――3曲目の「あおぞら」は、チアーソングにも聴こえるし、ラブソングにも聴こえます。

「ヒューマンラブソングというか……男女の恋愛ということは私の頭にはなくって、恋愛の愛ではなくて、愛情の愛ですね。初めて自分よりちいさい子どものために応援歌を作るっていう気持ちだったんですが、“そんなちっちゃな手で、ちっちゃな足で本当にがんばったね!”っていう母性を感じました。そういうニュアンスを含んだものにしたいなと思って」

――さきほども言っていましたが、水野さんのメロディありきといった曲ですね。

「実はだいぶ前に曲をいただいていて、違う歌詞を書いていたんです。だけど、お届けするのはいまのタイミングじゃないなあって気がしていて。ずっと温めてたんですよ。でも今回「ライオンのグータッチ」のお話をいただいて、そのときに、水野さんのメロディがいいなと思ったんです。老若男女を問わずみんなを包み込んでくれるあの感じ。だから、もういちど歌詞を書き直しました」

――ちなみに家入さんが初めて耳にした、あるいは記憶に残っている水野さん作品って?

「んー……いきものがかりの「帰りたくなったよ」かな。よく歌ってました。TVでも拝見していたので、水野さんといっしょに作品を作れる日が来るなんて幸せです」

――さて、2018年後半戦の家入さんのモチベーションはどこに向かっているのでしょうか?

「ひとつひとつ丁寧に曲を作る。自分で発信したいことをきちんと発信する。あとは……やっぱりライブでしょうね。8月には大きなフェスもありますし、後半戦はライブに力を注ぐって気持ちです」

――家入さんがライブでがんばっていなかったことなんてないように思いますけど(笑)。

「(笑)。でも、TIMEツアーを終えて、正直なところ、もっと本数を入れればよかったなと思ってるんですよ。もっと歌いたかった。これは全然ネガティブな意味じゃないんですけど、いまやっていることに常に疑問を呈しながら進みたい。惰性で動きたくないというか……そうじゃなければそこで自分も音楽も止まってしまう気がします。常にもっと、もっと、って自分とも音楽とも向き合っていきたいですね。それがいまの私のモチベーションです」

(おわり)

取材・文/encore編集部





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2018年8月1日(水)発売
初回限定盤A(CD+DVD)/VIZL-1402/1,700円(税別)
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